【推しの子】もしも星野アイの隣人が天才外科医だったら〜命を救う、その先へ〜 作:ペンギンって可愛いですよね
記者会見から数日後…
その日のB小町は、午前中でレッスンを終えていた。
午後は久しぶりの休み。
連日の取材や記者会見がようやく一段落し、事務所には穏やかな時間が流れていた。
休憩スペースでは、たかみー、ニノ、めいめい、ありぴゃん、きゅんぱん、みーちゃんの六人が飲み物を片手に談笑している。
「今日は午後休みって、なんか久しぶりだね」
「ここ最近、本当に忙しかったもんね」
「アイも少しずつ元気になってきたし、ようやく落ち着いてきた感じかな」
そんな話をしていると、事務所の入口がゆっくりと開いた。
六人が一斉に振り向く。
そこには、車いすに座るアイの姿があった。
まだ腹部の傷は完治しておらず、長時間歩くことはできない。
その車いすを押しているのは、小さな男の子。
そして、その隣では女の子が楽しそうに歩いていた。
「ママ、着いたよ!」
ルビーが笑顔で声を上げる。
「ありがとう、ルビー」
アイが優しく微笑む。
その横で車いすを押していた男の子が静かに言った。
「お母さん、この辺で止めるね」
「うん、ありがとうアクア」
車いすが六人の前で止まる。
「あっ!」
めいめいが目を丸くした。
「もしかして、この子たち!」
アイは少し照れくさそうに笑う。
「うん」
「この前約束したでしょ?」
「今日は二人を紹介しようと思って」
「やったー!」
きゅんぱんが思わず立ち上がる。
「やっと会えた!」
ルビーは元気よく前へ出ると、深々と頭を下げた。
「こんにちは!」
その姿に六人の頬が自然と緩む。
「かわいい~!」
「癒やされる……」
その横でアクアも一歩前へ出た。
「星野アイの子供としては初めましてです」
そう言うと、ポケットから一枚の紙を取り出す。
「僕の名前です」
そう言って六人へ紙を見せた。
そこには、大きく丁寧な字で書かれていた。
**『星野 愛久愛海』**
数秒の沈黙。
そして――
「…………え?」
「えぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
六人の叫び声が事務所中に響いた。
アクアはきょとんとした表情で首をかしげる。
「どうかしましたか?」
たかみーが紙を二度見する。
「ちょ、ちょっと待って!」
「これ本名!?」
「はい」
「星野愛久愛海です」
「愛久愛海!?」
「いやいやいや!」
ニノが思わず頭を抱えた。
「ネーミングセンス壊滅的すぎでしょ!」
「愛が二つ入ってるんだけど!?」
めいめいも吹き出す。
「初見で読める人いる!?」
「絶対読めないよ!」
ありぴゃんも笑いながら紙を見つめる。
「愛久愛海って……」
「情報量が多すぎる!」
「さすがアイ!」
「いや、そこ褒めるところじゃない!」
きゅんぱんが笑い転げる。
「アイちゃん!」
「ネーミングセンスどうしたの!?」
「ひどい!」
アイが思わず頬を膨らませる。
「一生懸命考えたんだから!」
するとアクアが小さくため息をついた。
「正直に言うと」
全員がアクアを見る。
アクアは少しだけ口元を緩めた。
「お母さんが付けた名前じゃなかったら、即改名を考えてました」
一瞬の静寂。
次の瞬間――
「ぶっ!」
「アハハハハ!」
「アクア君!」
「四歳が言うセリフじゃない!」
事務所は大爆笑に包まれた。
アイは真っ赤になってアクアを見る。
「アクア!」
「ひどい!」
「今は気に入ってます」
アクアは落ち着いた表情で答える。
「……たぶん」
「最後の『たぶん』はいらない!」
アイが思わずツッコむ。
笑い声はさらに大きくなった。
その様子を見ていたルビーが元気よく手を挙げる。
「ルビーも!」
ポケットから同じように紙を取り出す。
そこには、
**『星野 瑠美衣』**
と書かれていた。
「瑠美衣!?」
「こっちも難しい!」
「やっぱり読めない!」
「ママ!」
ルビーは頬を膨らませた。
「ママが一生懸命考えた名前なんだから!」
「いい名前なんだよ!」
その言葉に、六人は笑いながらアイを見る。
アイは少し恥ずかしそうに笑った。
「二人とも、私の宝物だから」
「世界で一番たくさん想いを込めて付けた名前なの」
その一言で、さっきまで笑っていた六人の表情が少しだけ柔らかくなる。
たかみーが優しく微笑んだ。
「確かに読むのは難しいけど……」
「アイらしい名前だね」
ニノもうなずく。
「愛情がこれでもかってくらい詰まってる」
めいめいも笑顔で続けた。
「将来、名前の由来を聞いたら嬉しくなるだろうね」
アクアは静かに紙をしまう。
「だから今は、この名前を誇りに思っています」
その言葉に、アイは少し目を潤ませながら優しく微笑んだ。
「ありがとう、アクア」
「えへへ!」
ルビーはアイへぎゅっと抱きつく。
「ママ!」
「ルビーも、この名前大好き!」
アイは優しくルビーの頭を撫でた。
その光景を見ていたB小町の六人は、自然と笑みを浮かべる。
記者会見までは想像もできなかった穏やかな時間。
秘密ではなくなった家族。
そして、新しくつながった大切な絆。
その日、アクアとルビーは、B小町の六人と初めて本当の意味で家族になった。