【推しの子】もしも星野アイの隣人が天才外科医だったら〜命を救う、その先へ〜 作:ペンギンって可愛いですよね
「それじゃあ、みんな座ろうか」
アイの一言で、全員がソファへ腰を下ろした。
アイは車いすのまま中央へ座り、その両隣にはアクアとルビーが座る。
向かいにはB小町の六人。
改めて顔を合わせると、少しだけ緊張した空気が流れた。
その空気を真っ先に壊したのはルビーだった。
「えへへ!」
「みんなテレビで見てた人たちだ!」
嬉しそうに笑うルビーを見て、たかみーも自然と笑顔になる。
「私たちもまた二人に会えて嬉しいよ」
「ありがとう!」
ルビーは元気よく返事をした。
一方、アクアは静かに頭を下げる。
「よろしくお願いします」
「やっぱり落ち着いてるね」
ニノが苦笑する。
「本当に四歳なの?」
「よく言われます」
アクアは表情一つ変えずに答えた。
その返しだけで六人は笑ってしまう。
するとルビーが勢いよく手を挙げた。
「あのね!」
「ルビー、B小町のお話いっぱいできるよ!」
「え?」
「そうなの?」
きゅんぱんが驚いて聞き返す。
「うん!」
「ママのライブもテレビもいっぱい見てる!」
「じゃあ聞かせて!」
ルビーは目を輝かせながら話し始めた。
「たかみーちゃんはね!」
「みんなが踊りやすいようにいつも周り見てるの!」
「ニノちゃんはダンスが一番かっこいい!」
「めいめいちゃんは歌声が優しくて、ママと歌うとすっごくきれい!」
「ありぴゃんちゃんは笑顔がかわいい!」
「きゅんぱんちゃんはいつも面白い!」
「みーちゃんは最近いっぱい笑うようになった!」
次々と飛び出す感想。
六人は思わず顔を見合わせた。
「え……」
「そんな細かいところまで見てるの?」
「うん!」
「全部見てる!」
ルビーは自信満々に答えた。
その横でアクアも静かに口を開く。
「ルビーの言う通りです」
「皆さん、それぞれ役割が違います」
「たかみーさんは全体のバランスを見るのが上手です」
「立ち位置やフォーメーションが崩れそうになると、自然に修正しています」
たかみーの目が丸くなる。
「そこまで見てたの?」
アクアは続ける。
「ニノさんはダンスだけでなく、表情の切り替えが速いです」
「カメラが来る瞬間を理解されています」
「めいめいさんは歌が安定しています」
「音程がほとんどぶれません」
「ありぴゃんさんはお客さんを見る時間が長いです」
「ファンサービスが上手ですね」
「きゅんぱんさんは場を盛り上げるのが得意です」
「ライブ全体の空気を明るくしています」
「みーちゃんさんは最初は緊張していましたが、最近は自然な笑顔が増えています」
部屋が静まり返る。
六人は口を開けたまま動かない。
数秒後...
「…………」
「…………」
最初に口を開いたのはニノだった。
「いや」
「ちょっと待って」
「ほんとに四歳?」
全員が一斉にうなずく。
「分析力がおかしい!」
「しかも全部当たってる!」
めいめいが苦笑する。
「私、自分でも気付いてないこと言われたんだけど」
ありぴゃんも笑った。
「お客さん見てるって意識したことなかったなぁ」
「でも確かにそうかも」
たかみーもアクアを見つめる。
「すごい観察力だね」
「ありがとうございます」
アクアは淡々と答えた。
「好きだから見ていただけです」
するとルビーが元気よく続ける。
「あっ!」
「この前のライブね!」
「たかみーちゃん、最後ちょっとだけ振り付け間違えた!」
「えっ!?」
たかみーが思わず立ち上がる。
「ばれてたの!?」
「うん!」
「でもすぐ戻したから大丈夫だった!」
「すごいと思った!」
アクアも静かに補足する。
「半拍ほど早く動いただけでした」
「すぐ修正されていたので、一般の方は気付かないと思います」
「…………」
再び沈黙...
そして、
「いやいやいや!」
ニノが思わず立ち上がった。
「何なのこの兄妹!」
「ほんとに四歳!?」
「アイ!」
「どう育てたの!?」
突然話を振られたアイは苦笑する。
「え?」
「普通に育てただけだけど……」
「普通じゃない!」
六人の声が見事に重なった。
事務所中に笑い声が響く。
アイもつられて笑い、アクアとルビーの頭を優しく撫でた。
「この子たち、本当にB小町が大好きなの」
「ライブの日なんて、帰ってきたら二人とも感想が止まらないんだから」
「だって大好きだもん!」
ルビーが満面の笑みで答える。
アクアも静かにうなずいた。
「皆さんの努力は、画面越しでも伝わってきます」
「だから応援したくなるんです」
その言葉に、B小町の六人は顔を見合わせ、小さく笑った。
「ありがとう」
たかみーが優しく微笑む。
「そんな応援してくれる子たちがいるなら、もっと頑張らなきゃね」
「うん!」
「次のライブも絶対行く!」
ルビーが元気よく拳を握る。
その笑顔を見ながら、アイは静かに目を細めた。
秘密を抱えていた頃には想像もできなかった、こんな穏やかな時間。
大切な仲間と、大切な家族。
その距離は、この日一気に縮まっていった。