【推しの子】もしも星野アイの隣人が天才外科医だったら〜命を救う、その先へ〜 作:ペンギンって可愛いですよね
それから一週間後――。
アイたちは再び苺プロダクションへ集まっていた。
「決まったぞ」
壱護が笑顔で一枚の資料を机へ置く。
「えっ!」
アイが勢いよく身を乗り出した。
「本当に?」
「ああ。条件に合う物件が見つかった」
ミヤコも嬉しそうに頷く。
「実際に内見にも行ったけど、とても良いお家だったわ」
壱護は資料を開きながら説明を始める。
「二階建ての一軒家」
「部屋は四部屋」
「広いリビングダイニング付き」
「庭もかなり広い」
「それから、防犯設備はかなり充実している」
アクアが資料へ目を向ける。
「どんな設備?」
「玄関には防犯カメラ」
「庭にも二台設置済みだ」
「夜はセンサーライトが自動で点灯する」
「玄関はツーロック」
「鍵は防犯性の高いディンプルキーを採用している」
「窓にも補助錠付きだ」
壱護は笑みを浮かべる。
「警備会社とも契約済みだから、万が一の時もすぐ対応してもらえる」
アクアは静かに頷いた。
「十分だと思う」
「よし」
壱護は満足そうに腕を組む。
「お前から合格をもらえるなら安心だ」
アイも資料を見ながら目を輝かせていた。
「すごい……」
「お庭もこんなに広いの?」
「うん!」
ルビーも写真を見て大喜びする。
「ルビー、ここで鬼ごっこしたい!」
「ブランコも置けるかな!?」
「お花も植えたい!」
「家庭菜園もできそうね」
ミヤコが笑う。
「トマト育てたい!」
「いちごも!」
「だから最後は畑になるって」
アクアが小さく突っ込む。
「もう!」
ルビーは頬を膨らませた。
「アクアは夢がない!」
「現実的なだけ」
そんな二人を見ながら、アイは自然と笑顔になる。
「こんなお家に住めるなんて……」
壱護が頷いた。
「気に入ったなら、早速引っ越そう」
「えっ?」
アイが驚く。
「そんなに早く?」
「もう契約も終わってる」
「引っ越し業者も手配済みだ」
「仕事が早い……」
アイは思わず苦笑した。
「社長らしいね」
---
数日後――。
引っ越し当日。
朝から大きなトラックが新居の前へ止まっていた。
引っ越し業者が次々と荷物を運び込んでいく。
そして今日は、もう一つ驚くことがあった。
「アイーー!」
元気いっぱいの声とともに玄関へ現れたのは、B小町のメンバーだった。
「みんな!?」
アイは驚いて目を丸くする。
たかみーが笑顔で段ボールを持ち上げる。
「今日はお手伝い!」
ニノも笑う。
「七人揃った方が早いでしょ?」
「それに、お祝いもしたいし!」
「みんな……」
アイは目を潤ませた。
「ありがとう」
「そんな顔しないの」
めいめいが笑う。
「今日は新しいスタートの日なんだから」
「そうそう!」
ありぴゃんが腕まくりをする。
「力仕事は任せて!」
「私も頑張るよ!」
きゅんぱんも段ボールを抱える。
「家具の配置も考えよう!」
みーちゃんも笑顔で頷いた。
「今日は一日よろしくね」
「ありがとう!」
アイは何度も頭を下げる。
リビングでは業者が家具を設置し、B小町のメンバーは小物や段ボールを運んでいく。
「アクア、この箱お願い!」
「分かった」
アクアも自分で持てる大きさの箱を抱え、二階へ運ぶ。
「ルビーも!」
ルビーも小さな箱を両手で抱えて一生懸命歩いていた。
「よいしょ……よいしょ……」
「重くない?」
アイが心配そうに聞く。
「大丈夫!」
ルビーは満面の笑みを浮かべる。
「ルビーもお引っ越しのお手伝い!」
その姿を見たB小町のメンバーは思わず笑顔になった。
一方、アクアは二階へ上がる途中、ふと窓から庭を見下ろす。
広い芝生。
高い塀。
門には防犯カメラ。
夜になればセンサーライトも作動する。
ここなら以前より安心して暮らせる。
四歳児らしくない冷静なアクアだったが、その口元はほんの少しだけ緩んでいた。
新しい部屋。
広い家。
自分だけの部屋。
少しだけ胸が高鳴っている自分に気付く。
その時だった。
「アクアー!」
ルビーが二階から顔を出す。
「見て見て!」
「ルビーのお部屋、すっごく広い!」
アクアは思わず笑う。
「まだ何も置いてないじゃない」
「でも広いもん!」
「アクアのお部屋も見ようよ!」
「あとで行く」
「今!」
ルビーはアクアの腕を引っ張る。
「分かったから」
二人の様子を階下から見上げていたアイは、小さく笑った。
「楽しそう」
その笑顔を見た壱護とミヤコも、安心したように微笑む。
事件によって失われた日常。
その日常は、少しずつではあるが、確実に戻り始めていた。
この新しい家で、三人はまた新たな思い出を積み重ねていく。
そう誰もが願っていた。