【推しの子】もしも星野アイの隣人が天才外科医だったら〜命を救う、その先へ〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第三十一話「双子の才能」

 

その日の夕方、アクアとルビーが勉強を終えたあと、アイは自室へ入るとスマートフォンを手に取った。

 

どうしても、この驚きを誰かに伝えたかった。

 

相手はもちろん、苺プロダクション社長・斉藤壱護。

 

数回のコール音のあと、電話が繋がる。

 

『もしもし』

 

「社長!」

 

アイは開口一番、大きな声を上げた。

 

『おっ、どうした?』

 

「聞いて聞いて!」

 

「ルビーも天才だった!」

 

『……は?』

 

壱護は思わず聞き返した。

 

『今なんて言った?』

 

「だから、ルビーも天才だったの!」

 

『ちょっと待て』

 

『順番に話せ』

 

「今日ね、ルビーが家にあった小学生の算数ドリルやり始めたの。」

 

『ほう』

 

「そしたら、あっという間に全部終わらせちゃって!」

 

『四歳でか?』

 

「そう!」

 

「私もびっくりしたんだけど、それだけじゃないの!」

 

『まだあるのか……』

 

壱護は嫌な予感がした。

 

「ルビーが『他に何かない?』って言ったら、アクアが自分の部屋から中学数学の問題集持ってきたの!」

 

『……中学数学?』

 

「うん!」

 

『いや、何でそんなもん家にあるんだよ……』

 

壱護は思わず頭を抱えた。

 

アクアに大学数学の本を買った。

 

だが、中学数学の問題集まで部屋に置いているとは思わなかった。

 

「最初はルビーも全然分かんなかったんだけどね。」

 

『まあ、そりゃそうだ』

 

「でもアクアが一から教えたら、どんどん理解していって!」

 

『理解したのか?』

 

「うん!」

 

「まだ基礎だけど、自分で問題解けるようになってた!」

 

電話の向こうで壱護はしばらく黙っていた。

 

やがて、小さく息を吐く。

 

『……あの双子、どうなってんだ』

 

アイは苦笑した。

 

「私も同じこと思った。」

 

「アクアだけでも十分すごいのに、ルビーまでだもん」

 

『アクアは大学数学を読んでる』

 

『ルビーは中学数学を理解し始める』

 

『普通じゃないな』

 

「うん……。」

 

アイも苦笑いする。

 

「普通の四歳児なら、まだ幼稚園で遊んでる年齢なのにね。」

 

『まあ、遊んでもいたんだろ?』

 

「それがね。」

 

アイは笑いながら答えた。

 

「庭で遊ぶのに飽きて、『勉強してやる!』って始めたの。」

 

『ははっ』

 

壱護は思わず笑った。

 

『そのきっかけも変わってるな』

 

「アクアに『少しは勉強しろ』って言われたのが悔しかったみたい。」

 

『なるほどな』

 

壱護は納得したように頷く。

 

『でも、それで勉強するのは偉いじゃないか』

 

「そうなの!」

 

「しかもアクアに『地頭はそんな悪くない』って褒められて、すっごく嬉しそうだった。」

 

『そうか』

 

壱護は少し笑みを浮かべる。

 

『兄妹で教え合えるのはいいことだ』

 

「うん。」

 

アイも優しく微笑んだ。

 

少しの沈黙のあと、壱護が真面目な声になる。

 

『でも一つだけ気を付けろ』

 

「うん?」

 

『あまり外では勉強させるな』

 

『家だからいいが、幼稚園や人前で同じことをしたら目立ちすぎる。』

 

アイの表情も引き締まる。

 

「……それは私も思った」

 

『アクアだけでも十分目立つ』

 

『ルビーまで目立ち始めたら、本当に騒ぎになるぞ』

 

「分かった。」

 

「そこはちゃんと気を付ける」

 

『頼むぞ』

 

「うん」

 

電話を切ると、アイは静かにリビングへ戻った。

 

机ではアクアが本を読み、その隣ではルビーが先ほど教わった文字式を何度もノートに書いている。

 

「お兄ちゃん、これ合ってる?」

 

「ああ、合ってる」

 

「やった!」

 

嬉しそうに笑うルビー。

 

そんな二人を見つめながら、アイは自然と笑みを浮かべた。

 

「ほんと……すごい双子なんだから」

 

その声は、誰にも聞こえないほど小さかった。

 

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