【推しの子】もしも星野アイの隣人が天才外科医だったら〜命を救う、その先へ〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第三十三話「保護者面談」

 

翌日、午前十時。

 

斉藤壱護と斉藤ミヤコは幼稚園を訪れていた。

 

応接室へ案内されると、園長と担任の先生が席に着いている。

 

「本日はお忙しい中、お越しいただきありがとうございます」

 

園長が頭を下げる。

 

「いえいえ」

 

壱護も軽く頭を下げ、ミヤコと並んで椅子へ腰掛けた。

 

「それで、お話というのは?」

 

壱護が尋ねると、園長は少し困ったように笑った。

 

「まず最初に申し上げますが……」

 

「アクアくんとルビーちゃんは、とても良い子です」

 

「友達思いで、先生の言うこともしっかり聞いてくれます」

 

担任も頷く。

 

「喧嘩もほとんどありません」

 

「むしろ、お友達を助けてくれることの方が多いです」

 

壱護とミヤコは顔を見合わせた。

 

(じゃあ何が問題なんだ?)

 

そんな疑問が頭をよぎる。

 

園長は一枚の紙を取り出した。

 

「問題というより……少し困っていることがありまして」

 

「実は最近、このクラスだけ学力が異常に高くなっているんです」

 

「……はい?」

 

壱護は思わず聞き返した。

 

「どういうことですか?」

 

担任が説明を始める。

 

「最初はアクアくんが本を読んでいるところを見つけました」

 

「本?」

 

「はい」

 

先生は苦笑する。

 

「芥川龍之介の小説でした」

 

「…………」

 

壱護もミヤコも固まった。

 

(あいつ……幼稚園にまで持って行ってたのか…てか、なんで芥川龍之介の小説が家にあるんだ…)

 

心の中で同時に思う。

 

「その後、ルビーちゃんも何か難しい計算をしていまして」

 

「後で確認すると、中学校レベルの数学だったようです」

 

「……中学?」

 

ミヤコが目を丸くする。

 

「はい」

 

「最初は私たちも見間違いかと思いました」

 

「ですが、そのあと園児たちが二人に興味を持ち始めまして」

 

担任は少し笑う。

 

「ルビーちゃんが算数を教え始めたんです」

 

「教えてと言われたので、楽しそうに」

 

壱護は頭を抱えた。

 

「なるほど……」

 

「それだけなら、まだ良かったのですが」

 

園長が続ける。

 

「アクアくんも文字を教え始めまして」

 

「分からない子が質問すると、一人一人丁寧に答えてくれるんです」

 

ミヤコは思わず吹き出しそうになる。

 

(家庭教師じゃないんだから……)

 

「結果として」

 

園長は苦笑いを浮かべた。

 

「今ではクラスの子どもたち全員が、ひらがなの読み書きができます」

 

「簡単な足し算、引き算もできます」

 

「簡単な漢字まで覚えてしまいました」

 

壱護は絶句した。

 

「全員……ですか?」

 

「はい」

 

「他のクラスとの差がかなり開いてしまいまして」

 

担任も苦笑する。

 

「保護者の方からも、『どうしてあのクラスだけこんなにできるんですか?』という質問が来るようになりました」

 

「もちろん、私たちは特別な教育はしていません」

 

「なので説明に困ってしまいまして……」

 

しばらく沈黙が流れる。

 

やがて壱護は大きくため息をついた。

 

「事情は分かりました」

 

「ご迷惑をお掛けして申し訳ありません」

 

「いえ」

 

園長は慌てて首を横に振る。

 

「迷惑というわけではありません」

 

「むしろ子どもたちは楽しそうですし、学ぶこと自体は素晴らしいことです」

 

「ただ……」

 

「四歳児としては、あまりにも異例でして」

 

「このまま続くと、周囲への説明が難しくなります」

 

壱護は苦笑した。

 

「確かに、その通りですね」

 

隣ではミヤコも深く頷いていた。

 

(アイ……)

 

(あの子たちにちゃんと『普通にしてなさい』って言わなかったのね)

 

心の中でそう呟く。

 

その時だった。

 

コンコン。

 

応接室のドアがノックされる。

 

「失礼します」

 

担任の先生が一人の男の子と女の子を連れて入ってきた。

 

「アクアくんとルビーちゃんを連れてきました」

 

「保護者の方も来られていますので、一度お話ししていただければと」

 

壱護は二人を見るなり、小さく苦笑した。

 

「さて……」

 

「まずは事情を聞かせてもらおうか」

 

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