【推しの子】もしも星野アイの隣人が天才外科医だったら〜命を救う、その先へ〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第三十四話「事情説明」

 

コンコン。

 

応接室のドアがゆっくりと開く。

 

「失礼します」

 

担任の先生に促され、アクアとルビーが部屋へ入ってきた。

 

しかし、いつもの二人とは様子がまるで違っていた。

 

アクアは普段と同じ無表情を保っているものの、どこか気まずそうに視線を落としている。

 

一方のルビーは、壱護とミヤコの姿を見た瞬間、肩をぴくりと震わせた。

 

(怒られる……)

 

そんな思いが頭をよぎっているのが、表情からも伝わってくる。

 

先ほどまで友達と笑いながら遊んでいたとは思えないほど、二人とも小さく萎縮していた。

 

「こっちへおいで」

 

先生に言われ、二人は壱護たちの前へ並ぶ。

 

ルビーは緊張のあまり、アクアの服の裾をぎゅっと握り締める。

 

その小さな手は少し震えていた。

 

アクアも静かに息を吐く。

 

(さすがにやり過ぎたか……)

 

幼稚園で芥川龍之介の小説を読んでいたこと。

 

ルビーへ中学数学を教えていたこと。

 

園児たちへ文字や算数を教えていたこと。

 

その結果、一つのクラス全体の学力を底上げしてしまったこと。

 

普通の四歳児なら、まず起こり得ない出来事だった。

 

部屋にはしばらく静かな空気が流れる。

 

園長も担任も、二人のあまりの萎縮ぶりにどう声を掛ければいいか迷っていた。

 

そんな空気を壊したのは壱護だった。

 

「アクア」

 

穏やかな声で名前を呼ぶ。

 

「……はい」

 

「ルビー」

 

「……はい」

 

返事はどちらも小さい。

 

特にルビーは今にも泣き出しそうな表情だった。

 

その姿を見た担任の先生は慌てて口を開く。

 

「あ、あの!」

 

「そんなに緊張しなくても大丈夫よ」

 

「怒るために呼んだわけじゃないから」

 

「本当に心配しなくていいの」

 

優しく笑い掛けるが、それでもルビーは俯いたままだった。

 

ミヤコはその様子を見て苦笑する。

 

「完全に怒られると思ってるわね」

 

「みたいだな」

 

壱護も思わず笑ってしまう。

 

「そんなに俺、怖いか?」

 

アクアは首を横に振る。

 

「別に」

 

ルビーも小さく首を横に振った。

 

「……怖くない」

 

「じゃあ、どうしてそんなに縮こまってるんだ?」

 

その問い掛けに、ルビーは恐る恐る顔を上げる。

 

「……怒ってる?」

 

消え入りそうな声だった。

 

その一言で、部屋の空気が少しだけ和らぐ。

 

壱護は思わず吹き出した。

 

「ははは」

 

「怒ってないよ」

 

「……本当?」

 

「ああ、本当だ」

 

「むしろ先生たちも困ってるだけで、怒ってるわけじゃない」

 

その言葉を聞き、ルビーは少しだけ肩の力を抜いた。

 

それでもアクアの服は握ったままだった。

 

壱護はそんな二人を見て優しく微笑む。

 

「ただな」

 

「どうしてこんなことになったのか、それだけ教えてほしい」

 

「理由が分かれば、それで十分だ」

 

ルビーは隣のアクアを見上げる。

 

アクアも小さく頷き、一歩前へ出た。

 

「俺が説明する」

 

応接室の全員の視線がアクアへ集まる。

 

「全部、俺が原因だ」

 

その一言に、園長も担任も、壱護もミヤコも静かに耳を傾けた。

 

アクアは一度だけルビーの方を見る。

 

ルビーは不安そうな表情で見返してくる。

 

「ルビーは悪くない」

 

「全部、俺が始めたことだから」

 

そう言ってアクアはゆっくりと事情を話し始めた。

 

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