【推しの子】もしも星野アイの隣人が天才外科医だったら〜命を救う、その先へ〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第四十話「届かない足跡」

 

アイとの話し合いから数日後、悠真は病院の任務を終えると、自宅の書斎へ向かった。

 

机の上にはノートパソコン。

 

その横には数冊の芸能雑誌や新聞記事が積まれている。

 

「……まずは情報ですね」

 

証拠がない以上、今の自分にできることは限られている。

 

それでも何もしないという選択肢だけはなかった。

 

悠真はパソコンを開き、一つの名前を入力する。

 

『神木ヒカル』

 

検索結果には、いくつもの記事が表示された。

 

その一つ一つに目を通していく。

 

「劇団ララライ……」

 

幼い頃から劇団ララライに所属。

 

天才子役として注目を集め、多くの舞台やドラマへ出演。

 

当時の評価は非常に高い。

 

『将来を約束された天才』

 

『圧倒的な演技力』

 

『次世代を担う逸材』

 

そんな言葉が並んでいた。

 

悠真は記事を印刷し、重要そうな箇所へ印を付けていく。

 

しかし、

 

「……ここから先がない」

 

高校生頃と思われる時期を境に、資料が突然途切れていた。

 

テレビ出演歴。

 

雑誌。

 

新聞。

 

芸能ニュース。

 

どれだけ調べても、それ以降の情報が出てこない。

 

「不自然ですね」

 

引退の記事もない。

 

活動休止の記事もない。

 

まるで、ある日突然、この世から存在そのものが消えたかのようだった。

 

悠真は腕を組む。

 

(表舞台から消えた……)

 

(いや)

 

(消したというべきでしょうか)

 

自分の意思なのか。

 

誰かの力なのか。

 

そこまでは分からない。

 

だが、普通の芸能人なら何らかの記録は残る。

 

ここまで綺麗に情報が途切れることは珍しい。

 

悠真は別の方法も試した。

 

古い新聞記事。

 

舞台のパンフレット。

 

劇団ララライの公演記録。

 

出演者一覧。

 

可能な限り資料を集めた。

 

しかし、分かったのは子役時代の活躍だけ。

 

それ以降は空白だった。

 

「ここまでですか……」

 

悠真は椅子にもたれ掛かった。

 

警察なら違うだろう。

 

戸籍。

 

住民票。

 

捜査資料。

 

一般人では見られない情報へアクセスできる。

 

芸能事務所の人間なら、人脈から情報を得られるかもしれない。

 

しかし、自分は違う。

 

ただの外科医だ。

 

事件で命を救った。

 

それだけの存在だった。

 

「これ以上は難しいですね」

 

悠真は静かにノートを閉じる。

 

自分一人で調べられる範囲には限界があった。

 

「少なくとも、神木ヒカルという人物が、途中から意図的に表舞台から姿を消した可能性は高い」

 

それだけは確信に近かった。

 

悠真は集めた資料を一つのファイルへ丁寧にまとめる。

 

表紙には、ただ一行だけ書かれていた。

 

『神木ヒカル 調査資料』

 

ページ数は決して多くない。

 

だが、今の自分が集められる情報はすべて詰め込んだ。

 

ファイルを閉じると、悠真は静かに窓の外を見つめた。

 

「あなたは、一体どこにいるんですか...」

 

答えは返ってこない。

 

夜の街だけが静かに広がっていた。

 

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