【推しの子】もしも星野アイの隣人が天才外科医だったら〜命を救う、その先へ〜 作:ペンギンって可愛いですよね
アイとの話し合いから数日後、悠真は病院の任務を終えると、自宅の書斎へ向かった。
机の上にはノートパソコン。
その横には数冊の芸能雑誌や新聞記事が積まれている。
「……まずは情報ですね」
証拠がない以上、今の自分にできることは限られている。
それでも何もしないという選択肢だけはなかった。
悠真はパソコンを開き、一つの名前を入力する。
『神木ヒカル』
検索結果には、いくつもの記事が表示された。
その一つ一つに目を通していく。
「劇団ララライ……」
幼い頃から劇団ララライに所属。
天才子役として注目を集め、多くの舞台やドラマへ出演。
当時の評価は非常に高い。
『将来を約束された天才』
『圧倒的な演技力』
『次世代を担う逸材』
そんな言葉が並んでいた。
悠真は記事を印刷し、重要そうな箇所へ印を付けていく。
しかし、
「……ここから先がない」
高校生頃と思われる時期を境に、資料が突然途切れていた。
テレビ出演歴。
雑誌。
新聞。
芸能ニュース。
どれだけ調べても、それ以降の情報が出てこない。
「不自然ですね」
引退の記事もない。
活動休止の記事もない。
まるで、ある日突然、この世から存在そのものが消えたかのようだった。
悠真は腕を組む。
(表舞台から消えた……)
(いや)
(消したというべきでしょうか)
自分の意思なのか。
誰かの力なのか。
そこまでは分からない。
だが、普通の芸能人なら何らかの記録は残る。
ここまで綺麗に情報が途切れることは珍しい。
悠真は別の方法も試した。
古い新聞記事。
舞台のパンフレット。
劇団ララライの公演記録。
出演者一覧。
可能な限り資料を集めた。
しかし、分かったのは子役時代の活躍だけ。
それ以降は空白だった。
「ここまでですか……」
悠真は椅子にもたれ掛かった。
警察なら違うだろう。
戸籍。
住民票。
捜査資料。
一般人では見られない情報へアクセスできる。
芸能事務所の人間なら、人脈から情報を得られるかもしれない。
しかし、自分は違う。
ただの外科医だ。
事件で命を救った。
それだけの存在だった。
「これ以上は難しいですね」
悠真は静かにノートを閉じる。
自分一人で調べられる範囲には限界があった。
「少なくとも、神木ヒカルという人物が、途中から意図的に表舞台から姿を消した可能性は高い」
それだけは確信に近かった。
悠真は集めた資料を一つのファイルへ丁寧にまとめる。
表紙には、ただ一行だけ書かれていた。
『神木ヒカル 調査資料』
ページ数は決して多くない。
だが、今の自分が集められる情報はすべて詰め込んだ。
ファイルを閉じると、悠真は静かに窓の外を見つめた。
「あなたは、一体どこにいるんですか...」
答えは返ってこない。
夜の街だけが静かに広がっていた。