【推しの子】もしも星野アイの隣人が天才外科医だったら〜命を救う、その先へ〜 作:ペンギンって可愛いですよね
そして、なんやかんやあり、六年の月日が流れた。
季節は巡り、それぞれが新たな道を歩み続けていた。
神崎悠真は、相変わらず日本屈指の天才外科医として第一線で活躍している。
命の危機に瀕した患者を幾度となく救い、新しい術式の開発や難手術の成功が相次ぎ、その功績は国内だけでなく海外からも高く評価されるようになっていた。
本人は昔と何一つ変わらない。
「私は患者さんを助けるのが仕事です」
そう言って、テレビ出演やバラエティ番組、雑誌の特集などはほとんど断り続けていた。
それでも、その名は全国へ知れ渡っていく。
ニュースでは、
『天才外科医・神崎悠真医師』
と紹介されることが当たり前となり、医療特集では必ずと言っていいほど名前が挙がる存在になっていた。
本人が表舞台へ立たなくても、その功績だけで世間は彼を知るようになっていたのである。
もちろん、その活躍を喜んでいる人たちもいた。
「お母さん! 先生またテレビで紹介されてる!」
小学四年生になったルビーが、リビングで嬉しそうに声を上げる。
その隣では、同じく小学四年生になったアクアが静かにテレビを見つめていた。
画面に悠真本人は映っていない。
病院の映像や手術実績、医療関係者へのインタビューが流れているだけだった。
それでも二人には十分だった。
「先生、やっぱりすごいね!」
ルビーは自分のことのように笑う。
アクアも静かに頷いた。
「ああ」
「評価されるべき人が評価されている」
それだけ言うと、再びテレビへ視線を戻した。
二人にとっても悠真は恩人だった。
そんな恩人が世間から正当に評価されている。
それが何より嬉しかった。
一方、アイは六年前にすべての診察を終え、完全復帰を果たしていた。
そこからのB小町の快進撃は凄まじかった。
二年前には、悲願だったレコード大賞を初受賞。
一年前には念願だった東京ドーム公演を大成功させる。
さらに年末には紅白歌合戦へ初出場。
今や日本で最も勢いのあるアイドルグループと言っても過言ではない存在となっていた。
しかし、その輝かしい歴史も今年で幕を閉じる。
アイは今年で二十六歳。
デビューから全力で走り続けてきた疲労は、少しずつ身体へ蓄積していた。
ライブ。
テレビ出演。
レッスン。
レコーディング。
全国を飛び回る生活。
体力的にも限界が近付いていた。
そして他のメンバーは全員アイより年上だった。
ここまで七人全員が欠けることなく走り続けられたこと自体が奇跡だったのである。
だからこそ、B小町は今年いっぱいで解散することを決断した。
最後を飾るのは、初となる全国ドームツアー。
全国各地のドームを巡り、その締めくくりは再び東京ドーム。
そして年末、最後のテレビ出演となる紅白歌合戦をもって、B小町は解散する。
もちろん、芸能界から引退するわけではない。
アイは女優やタレントとして活動を続ける予定だった。
他のメンバーも、それぞれ女優、モデル、ソロアーティストなど、自分の道を歩み続けることが決まっている。
B小町というグループは終わる。
しかし、七人の芸能人生はまだ終わらない。
新たなスタートを切るだけだった。
B小町の大活躍によって、苺プロダクションの知名度も全国区となっていた。
しかし、それは事務所全体が飛躍したという意味ではない。
飛び抜けて成功したのは、あくまでB小町だけだった。
所属する俳優や女優、モデル、タレントも着実に活動はしていたが、最高でも中堅クラス。
大手芸能事務所と肩を並べるほどではない。
それでも、
「B小町が所属している事務所」
そのブランドだけで、苺プロダクションの名前は多くの人に知られていた。
だが、その最大の看板も今年で姿を消す。
メンバー全員が引き続き苺プロへ所属すると決めてくれたことは救いだった。
それでも、B小町という存在がなくなる影響は計り知れない。
壱護もミヤコも、そのことを誰より理解していた。
B小町解散後のことに向けて苺プロダクションは、新たな時代への第一歩を踏み出そうとしていた。