【推しの子】もしも星野アイの隣人が天才外科医だったら〜命を救う、その先へ〜   作:ペンギンって可愛いですよね

43 / 43
第四十三話「変わり者が二人」

 

「僕は、その覚悟で勉強しています」

 

その真っ直ぐな瞳を見て、悠真は自然と微笑んだ。

 

十歳の子どもとは思えないほど強い覚悟が、その瞳には宿っていた。

 

しばらく二人は声の大きさを抑えながら話を続けた。

 

図書館という場所柄、大きな声は出せない。

 

そのため自然と耳打ちするような距離になる。

 

「ところでアクア君」

 

「今日は一人で来たんですか?」

 

悠真が尋ねると、アクアは小さく頷いた。

 

「はい」

 

「ここなら一人で来てもいいって、お母さんから許可をもらっています」

 

「スマホの位置情報も共有しているので、今どこにいるかはお母さんにも分かるようになっています」

 

その答えに悠真は安心したように息を吐く。

 

「そうでしたか」

 

「それは良かったです」

 

「勝手に一人で来ているのかと思ってしまいました」

 

その瞬間、アクアは少しだけ頬を膨らませた。

 

「先生は俺を何だと思ってるんですか」

 

少しむっとした表情で小声のまま抗議する。

 

その姿は、さっきまで医学を語っていた少年と同一人物とは思えないほど年相応だった。

 

悠真は思わず苦笑した。

 

「ごめん、ごめん」

 

「アクア君なら、そんなことはしませんよね」

 

「……分かればいいです」

 

そう言ってアクアは小さく咳払いをする。

 

だが、その表情はどこか嬉しそうでもあった。

 

「では、続きを話しましょうか」

 

「はい」

 

そこから再び二人の医学談義が始まった。

 

外科医に必要な資質。

 

術前の判断。

 

手術中に最も重要なこと。

 

術後管理。

 

海外で発表された新しい術式。

 

論文に書かれている内容への疑問点。

 

アクアが質問すると、悠真が答える。

 

その答えに対して、アクアがさらに疑問をぶつける。

 

今度は悠真が少し考え、自分の考えを話す。

 

まるで大学の医局で医師同士が議論しているような光景だった。

 

気が付けば二時間近くが過ぎていた。

 

「……」

 

「……」

 

ふと二人は同時に周囲を見回す。

 

(これ……)

 

(誰かに見られたら絶対変な顔をされますね)

 

悠真は心の中で苦笑した。

 

一方のアクアも全く同じことを考えていた。

 

(十歳の小学生と現役の外科医が二時間も外科について討論してるとか、普通じゃないな)

 

すると、その時だった。

 

「あ、いたいた!」

 

図書館の入口から聞き覚えのある声が響く。

 

「アクア!」

 

「もうすぐ夜ご飯だから帰ってきて!」

 

アイだった。

 

その後ろからルビーもひょこっと顔を出す。

 

「お兄ちゃん!」

 

二人はアクアのいる席まで歩いてくる。

 

そして机いっぱいに広げられた専門書とノートを見て、

 

「え?」

 

さらに、その向かい側に座る人物を見た瞬間、

 

「先生!?」

 

アイは驚いて目を丸くした。

 

「お久しぶりです!」

 

「何でここにいるんですか?」

 

「もしかして、アクアのこと見ていてくれたんですか?」

 

ルビーも満面の笑みで悠真を見る。

 

「先生だ!」

 

「久しぶり!」

 

悠真は優しく笑いながら首を横に振った。

 

「いえ」

 

「今日は私が調べ物で図書館へ来ていたんです」

 

「そこで偶然アクア君を見つけまして」

 

「外科の勉強をしていたので、少し一緒に討論していました」

 

「…………」

 

その一言で、アイとルビーの動きが止まる。

 

二人は机の上の医学書を見る。

 

次にノートを見る。

 

最後にアクアを見る。

 

「…………」

 

「…………」

 

どこか引いたような視線だった。

 

アクアが眉をひそめる。

 

「なんだよ」

 

アイは額へ手を当て、大きくため息をついた。

 

「いや……」

 

「十歳のやることじゃないでしょ……」

 

ルビーも何度も頷く。

 

「そうだよ、お兄ちゃん!」

 

「普通は漫画とか読んだり、ゲームしたりする年齢だよ?」

 

さらにアイは悠真へ視線を向けた。

 

「それに先生!」

 

「何、一緒になって楽しそうに討論してるんですか!」

 

「普通は止める側でしょう!」

 

思わぬツッコミに、悠真は困ったように苦笑する。

 

「その……」

 

「最初は少し助言をするだけのつもりだったのですが」

 

「話しているうちに、私も楽しくなってしまいまして……」

 

少し申し訳なさそうに頭をかく悠真。

 

その姿を見てアクアが口を開く。

 

「先生だけじゃありません」

 

「俺も楽しかったです」

 

その一言で、アイとルビーは同時に顔を見合わせた。

 

そして、息ぴったりに言う。

 

「「やっぱり変わってる……」」

 

その場にいた四人は、一瞬静まり返る。

 

次の瞬間、

 

「ふふっ」

 

悠真が吹き出した。

 

それにつられてアイも笑い、ルビーも笑う。

 

少し遅れてアクアも小さく笑みを浮かべた。

 

静かな図書館の一角には、小さな笑い声だけが穏やかに響いていた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

一番星は消えない(作者:ディバル)(原作:推しの子)

▼表示絵▼【挿絵表示】▼児童養護施設で暮らす少年・天城彼方は、推しの星野アイと出会い、この世界が【推しの子】の物語だと知る。彼女に待つ残酷な未来を変えるため、彼は“運命”に抗う………一番星は、消えない。▼アニメ勢の方はネタバレ有りなので注意。▼新作▼「あかねちゃん………煙草買ってきてくれない?」▼:https://syosetu.org/novel/4132…


総合評価:3957/評価:8.47/連載:111話/更新日時:2026年08月31日(月) 19:20 小説情報

死ぬ気で戦ったら宿儺に親友認定された件(作者:雨天)(原作:呪術廻戦)

▼ 呪術廻戦のファンだったオリ主が平安時代に転生し、生まれ持った強さから両面宿儺討伐に参加することになり、仲間達がやられても戦い続けたら宿儺に親友と呼ばれるようになった話。▼ 活動報告はXで行っています。▼ → https://x.com/uten80▼タグは随時追加


総合評価:3108/評価:7.63/連載:6話/更新日時:2026年07月19日(日) 02:00 小説情報

櫛田の中学に転校した(作者:スクラップドラゴン)(原作:ようこそ実力至上主義の教室へ)

▼よう実の世界に転生したオリ主が櫛田の中学に転校する話


総合評価:3624/評価:7.33/連載:20話/更新日時:2026年06月14日(日) 15:33 小説情報

第七王子の護衛は胃が痛い(作者:波止場鐸樹)(原作:転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます)

異世界転生した男がロイドに振り回されながら胃を痛める、そんな話▼


総合評価:5413/評価:8.95/連載:7話/更新日時:2026年08月14日(金) 19:07 小説情報

ストライカーから絶望扱いされるまどかちゃん(作者:クロアブースト)(原作:ブルーロック)

サッカーにおける勝利する方法は二つ。▼点を取るか、取られないか。▼そして化け物染みた身体能力によるセービングで点を取られない事に特化し過ぎて世界のストライカー達からクソゲー扱いされる位に畏怖される日本人の男の娘GK 終 円(おわり まどか)がいた。▼絵心「ブルーロックのプロジェクトで日本代表のストライカーが決まるまで戻って来るな」▼まどかちゃん「ふぇ!?」▼…


総合評価:5000/評価:8.18/短編:3話/更新日時:2026年08月14日(金) 13:58 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>