【推しの子】もしも星野アイの隣人が天才外科医だったら〜命を救う、その先へ〜   作:ペンギンって可愛いですよね

44 / 44
第四十四話「初めての訪問」

 

図書館を出ると、外はすっかり夕焼けに染まっていた。

 

「それじゃあ、私たちは帰ります!」

 

アイが笑顔でそう言うと、ふと何かを思い付いたように悠真を見た。

 

「あっ、そうだ!」

 

「先生も夜ご飯食べてく?」

 

「忙しくなかったらだけど!」

 

その一言に、悠真は思わず立ち止まった。

 

「……いや、駄目でしょう」

 

「え?」

 

アイはきょとんとした顔をする。

 

悠真は額へ手を当て、大きくため息をついた。

 

「アイさん」

 

「あなた、自分の立場を分かっていますか?」

 

「今や日本トップクラスの芸能人と言っても過言ではないでしょう」

 

「そんな方が、一般人である私を自宅へ招くなんて駄目です」

 

「しかも住所まで教えることになりますよ」

 

「防犯上、絶対に軽く考えてはいけません」

 

医師としてではなく、一人の大人としての忠告だった。

 

しかし、アイは全く気にした様子もなく笑う。

 

「うーん」

 

「先生ならいいかなって♪」

 

「軽っ!」

 

悠真は思わず小声でツッコんだ。

 

「相変わらずですね」

 

「少しは大物芸能人としての自覚を持ってください」

 

「えー」

 

アイは頬を膨らませる。

 

「いいじゃん」

 

「ルビーもアクアも、もっと先生と話したいことあるでしょ?」

 

そう言って二人を見る。

 

ルビーはすぐに手を挙げた。

 

「ある!」

 

「私も先生ともっとお話ししたい!」

 

「来てほしいかも!」

 

悠真は苦笑しながら視線をアクアへ向ける。

 

「アクア君は?」

 

アクアは少しだけ考えたあと、静かに答えた。

 

「先生には、お世話になりました」

 

「俺たち家族の恩人です」

 

「それに先生なら、家のことを誰かに言いふらすような人じゃないと思っています」

 

その言葉には、迷いがなかった。

 

悠真は三人の顔を順番に見つめる。

 

そして、小さく息を吐いた。

 

「……まったく」

 

「この家族は」

 

三人とも期待に満ちた目でこちらを見ている。

 

その視線に負けた悠真は、肩をすくめながら笑った。

 

「分かりました」

 

「今日だけですよ」

 

「お邪魔させていただきます」

 

「やったー!」

 

ルビーが小さく飛び跳ねる。

 

アイも満面の笑みを浮かべた。

 

「ありがとう、先生!」

 

悠真はすぐに真面目な表情へ戻る。

 

「ですが、一つだけ約束してください」

 

「今日のことは誰にも話さないでください」

 

「もちろん、齋藤社長にもです」

 

アイは胸を張って頷く。

 

「大丈夫!」

 

「絶対に言わないよ!」

 

「私、嘘得意だから」

 

そう言って、いたずらっぽく笑う。

 

その言葉を聞いた悠真は少しだけ首を傾げた。

 

「……嘘は、もう必要なくなったんじゃないんですか?」

 

六年前、アイは確かに「本当の愛」を見つけた。

 

悠真はそう思っていた。

 

しかし、アイは静かに空を見上げ、小さく微笑む。

 

「ううん」

 

「嘘はね」

 

「時には必要だよ」

 

その笑顔はどこか優しかった。

 

「本当の愛を手に入れても、決して嘘はなくならない」

 

「人を守るための嘘もある」

 

「誰かを安心させるための嘘もある」

 

少しだけ間を置き、アイは続ける。

 

「でもね」

 

「自分だけの本当の愛があれば、他は全部嘘でもいいの」

 

その言葉に、悠真は何も返せなかった。

 

それは、アイだからこそ辿り着いた答えなのだろう。

 

「……そうですか」

 

悠真は小さく微笑み、頷いた。

 

「では、お言葉に甘えさせていただきます」

 

こうして、神崎悠真は初めて、星野家の扉をくぐることになった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

一番星は消えない(作者:ディバル)(原作:推しの子)

▼表示絵▼【挿絵表示】▼児童養護施設で暮らす少年・天城彼方は、推しの星野アイと出会い、この世界が【推しの子】の物語だと知る。彼女に待つ残酷な未来を変えるため、彼は“運命”に抗う………一番星は、消えない。▼アニメ勢の方はネタバレ有りなので注意。▼新作▼「あかねちゃん………煙草買ってきてくれない?」▼:https://syosetu.org/novel/4132…


総合評価:3962/評価:8.47/連載:111話/更新日時:2026年08月31日(月) 19:20 小説情報

死ぬ気で戦ったら宿儺に親友認定された件(作者:雨天)(原作:呪術廻戦)

▼ 呪術廻戦のファンだったオリ主が平安時代に転生し、生まれ持った強さから両面宿儺討伐に参加することになり、仲間達がやられても戦い続けたら宿儺に親友と呼ばれるようになった話。▼ 活動報告はXで行っています。▼ → https://x.com/uten80▼タグは随時追加


総合評価:3115/評価:7.63/連載:6話/更新日時:2026年07月19日(日) 02:00 小説情報

櫛田の中学に転校した(作者:スクラップドラゴン)(原作:ようこそ実力至上主義の教室へ)

▼よう実の世界に転生したオリ主が櫛田の中学に転校する話


総合評価:3628/評価:7.33/連載:20話/更新日時:2026年06月14日(日) 15:33 小説情報

第七王子の護衛は胃が痛い(作者:波止場鐸樹)(原作:転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます)

異世界転生した男がロイドに振り回されながら胃を痛める、そんな話▼


総合評価:5416/評価:8.95/連載:7話/更新日時:2026年08月14日(金) 19:07 小説情報

絶対防壁の転生者は平穏に暮らしたい(作者:雨風 時雨)(原作:魔法科高校の劣等生)

「――お兄様、ごめんなさい。私はこの方をお守りします」▼攻撃力最低の二科生(ウィード)として入学した転生者・御守漣。彼の目的はただ一つ、原作に関わらず平穏に卒業すること。▼しかし、過去に偶然『深雪の命を救ってしまった』せいで、氷の美姫から狂おしいほどの愛と庇護を向けられ、結果的にシスコンの極みである『司波達也』からガチの殺意を向けられるハメに!?▼最強の矛(…


総合評価:3063/評価:7.11/連載:15話/更新日時:2026年08月20日(木) 03:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>