【推しの子】もしも星野アイの隣人が天才外科医だったら〜命を救う、その先へ〜 作:ペンギンって可愛いですよね
図書館をあとにした四人は、夕焼けに染まる住宅街をゆっくり歩いていた。
前を歩くアイとルビー。
その少し後ろを、悠真とアクアが並んで歩く。
医学の話で盛り上がっていた空気も少し落ち着き、穏やかな時間が流れていた。
そんな中、アクアがぽつりと口を開く。
「先生」
「はい?」
「さっき、自分のことを一般人って言ってましたよね」
悠真は少し首を傾げる。
「ええ」
アクアは苦笑しながら続けた。
「世界一と言ってもいい外科医が、自分を一般人って言うのは無理があると思います」
その言葉に、前を歩いていたアイが振り返る。
「それ!」
ルビーも勢いよく頷いた。
「私も思った!」
「先生、絶対一般人じゃないよ!」
悠真は困ったように笑う。
「いやいや」
「アイさんに比べたら、私なんて知名度が広がっているだけですよ」
「テレビに出ることもほとんどありませんし、街を歩いても気付かれないことの方が多いです」
「芸能人とは全然違います」
言い終わった瞬間だった。
三人がぴったり息を合わせて叫ぶ。
「「「いやいやいや!」」」
あまりにも綺麗に揃った声に、悠真は思わず立ち止まる。
「え?」
ルビーが真っ先に反論した。
「先生、自分のこと分かってなさすぎ!」
「ニュースで先生の名前、何回聞いたと思ってるの!」
アイも苦笑しながら続ける。
「そうそう!」
「医療特集やニュースで先生の話題になるたびに、SNSでもすごく話題になってるよ?」
「私の知り合いにも先生のこと知ってる人、たくさんいるし」
アクアも静かに口を開く。
「先生は芸能人じゃないだけです」
「でも、知名度だけなら芸能人と引けを取らない有名人ですよ」
「少なくとも、日本で先生の名前を知らない医療関係者はいないと思います」
悠真は少し考え込む。
「そう言われましても……」
「私は患者さんを診て、手術をしているだけですから」
「有名になろうと思ったことは一度もありません」
アイは笑った。
「そこなんだよね」
「先生って、そういうところが先生らしい」
「名声とか全然興味なさそう」
「ありませんね」
悠真は即答した。
「私が有名になっても、患者さんが助かるわけではありませんから」
「私が評価されることより、一人でも多く助かることの方が大切です」
その言葉に、三人は思わず顔を見合わせた。
ルビーが小さく呟く。
「やっぱり先生ってかっこいい……」
アイも優しく微笑む。
「だからみんな先生を好きになるんだろうね」
アクアは静かに頷いた。
「俺もそう思います」
「先生は自分で思っている以上に、多くの人から尊敬されています」
悠真は少し照れくさそうに頭をかく。
「買い被りすぎですよ」
するとアイは笑顔で人差し指を立てた。
「先生」
「先生は医療界のトップ」
「私は芸能界のトップ」
「つまり今日は、日本トップクラスが二人並んで歩いてるってことだね!」
悠真は思わず苦笑する。
「そんな大げさな……」
「大げさじゃないよ!」
ルビーが元気よく言う。
「だから先生、自分のこともっとすごいって思っていいんだよ!」
三人にここまで言われても、悠真は最後まで苦笑するだけだった。
「……やはり、私は一般人ということでお願いします」
その一言に、三人は顔を見合わせる。
そして再び息ぴったりに叫んだ。
「「「無理!」」」
住宅街に四人の笑い声が響き渡る。
そんな穏やかな時間を過ごしながら、一行は星野家へと歩いていくのだった。