【推しの子】もしも星野アイの隣人が天才外科医だったら〜命を救う、その先へ〜 作:ペンギンって可愛いですよね
夕暮れの住宅街。
四人はゆっくりと歩き、やがて星野家の前へと到着した。
「着いたよ」
アイが笑顔で立ち止まり、バッグから鍵を取り出す。
その横で悠真は、家全体を見渡していた。
玄関。
門扉。
外壁。
そして設置されている防犯設備。
「ほう……」
思わず感心したような声が漏れる。
アイが首を傾げた。
「どうしたの?」
悠真は玄関の鍵へ視線を向けたまま答えた。
「ツーロックのディンプルキーですか。さすがですね。それに防犯カメラまで設置されている。しかも人感センサー付きですか。かなり徹底していますね」
医師というより、一人の大人として純粋に感心していた。
人気芸能人が暮らす家としては、理想的な防犯対策だった。
するとアクアが補足する。
「庭にも防犯カメラが付いています」
「夜はセンサーライトも点きます」
その言葉に悠真はさらに頷いた。
「そこまでされていましたか。素晴らしいですね。これなら簡単には侵入できません。安心しました」
アイは照れくさそうに笑う。
「全部、社長とミヤコさんが考えてくれたんだ」
「私は最初、ここまで必要かなって思ってたんだけど」
悠真は苦笑する。
「必要ですよ。アイさんは自分の人気を少し甘く見ています。これくらいしてようやく安心できるレベルです」
「うぅ……」
アイは少し肩をすくめた。
「先生に言われると何も言い返せない」
「当然です」
悠真は即答する。
「命に関わることですから」
その真面目な返答に、アイは苦笑するしかなかった。
そんな空気の中、アイは玄関の鍵を開けながら悠真へ振り返る。
「そういえば先生」
「社長とミヤコさん、それからB小町のみんな以外では、先生が初めてですよ。この家に入るの」
悠真は少し驚いたように目を見開いた。
「そうなのですか」
アイは頷く。
「うん」
「……あ」
「引っ越し業者さんもいたか」
思い出したように付け加える。
その瞬間、アクアが小さく笑った。
「引っ越し業者は入れなくていいでしょ」
真顔で言われ、アイは一瞬固まる。
そして、
「あはは!」
と声を上げて笑った。
その隣ではルビーも笑いを堪えきれない。
玄関前は和やかな笑い声に包まれた。
悠真も自然と笑みを浮かべる。
「それでも」
「私にとっては、とても貴重な機会です」
「このような大切な場所へお招きいただき、本当にありがとうございます」
その言葉を聞いたアイは優しく微笑んだ。
「先生だからだよ」
「先生じゃなかったら、絶対呼んでないもん」
ルビーも元気よく頷く。
「先生は家族の恩人だから!」
アクアも静かに口を開く。
「先生なら安心できます」
三人の真っ直ぐな言葉に、悠真は少し照れくさそうに笑った。
「ありがとうございます」
「その信頼を裏切らないようにします」
アイは満足そうに頷き、玄関のドアを大きく開ける。
「さあ!」
「先生、どうぞ!」
悠真は軽く一礼した。
「お邪魔します」
そう言って靴を脱ぎ、神崎悠真は初めて星野家の中へ足を踏み入れた。