【推しの子】もしも星野アイの隣人が天才外科医だったら〜命を救う、その先へ〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第五話「救命の現場」

 

救急車が都立大学病院へ到着すると同時に、後部ドアが勢いよく開かれた。

 

「患者到着!」

 

「腹部刺創!」

 

「神崎先生同乗です!」

 

その一言で、救急搬入口の空気が一変する。

 

待機していた医師や看護師たちが一斉に動き出した。

 

「救急治療室へ!」

 

「急げ!」

 

アイはストレッチャーごと救急治療室へ運び込まれた。

 

室内では看護師たちが次々とモニターを装着し、救急医が状態を確認する。

 

「血圧八十五!」

 

「脈拍百三十五!」

 

「酸素飽和度九十二!」

 

「酸素投与開始!」

 

「ルート二本確保します!」

 

「採血急いでください!」

 

治療室は一気に慌ただしくなった。

 

 

その頃――

 

悠真は更衣室へ駆け込み、休日に着ていた私服を素早く脱ぐ。

 

休日だったため、シャツにジーンズというラフな格好だった。

 

しかし今は、休日を過ごしていた青年ではない。

 

命を救う外科医だった。

 

慣れた手つきで手術着へ着替え、キャップを被る。

 

マスクを装着し、消毒すると、そのまま救急治療室へ向かう。

 

自動ドアが開く。

 

「神崎先生!」

 

担当看護師がすぐに駆け寄った。

 

「お待ちしていました」

 

悠真は真っ直ぐアイのもとへ向かう。

 

「バイタルは」

 

「血圧八十二」

 

「脈拍百三十八」

 

「酸素投与中です」

 

「輸液開始済みですが、血圧が下がっています」

 

悠真は無言で傷口を確認する。

 

腹部の刺創。

 

出血は圧迫されているものの、腹腔内出血は避けられない。

 

顔色も急速に悪くなっていた。

 

瞳孔。

 

呼吸。

 

脈。

 

わずか数秒で全身状態を確認する。

 

そして静かに口を開いた。

 

「緊急開腹します」

 

その一言で、治療室の空気がさらに引き締まる。

 

「手術室三番を確保」

 

「麻酔科へ連絡」

 

「輸血の準備」

 

「クロスマッチ開始してください」

 

「はい!」

 

看護師たちが一斉に動き出す。

 

悠真はアイへ近付き、優しく声を掛けた。

 

「聞こえますか」

 

「私は神崎です」

 

「これから手術をします」

 

「必ず助けます」

 

アイはゆっくりと目を開ける。

 

「先生……」

 

「子ども……たち……」

 

悠真は優しく微笑んだ。

 

「安心してください」

 

「アクア君もルビーちゃんも無事です」

 

「あとで必ず会えます」

 

アイは小さく頷き、再び目を閉じた。

 

悠真は看護師へ視線を向ける。

 

「手術まで何分ですか」

 

「五分で準備できます」

 

「分かりました」

 

悠真は深く息を吸う。

 

(絶対に助ける)

 

(ここで死なせるわけにはいかない)

 

 

 

一方その頃――

 

星野家では、ルビーが涙を流しながら震えていた。

 

「ママ……」

 

「ママぁ……」

 

アクアは妹を優しく抱き寄せる。

 

「大丈夫」

 

「先生が助けてくれる」

 

「でも……」

 

「ママ、血がいっぱいだったよ……」

 

ルビーは涙を止められない。

 

アクアも本当は不安だった。

 

医者だった頃の知識があるからこそ、あの傷の危険性が分かる。

 

それでも、悠真の言葉だけは信じられた。

 

『お母さんは私が必ず助ける』

 

あの言葉に、一切の迷いはなかった。

 

アクアは悠真から受け取った名刺を取り出す。

 

『都立大学病院 外科

 

神崎 悠真』

 

その名前を見つめると、不思議と希望が湧いてくる。

 

アクアはスマートフォンを取り出し、斎藤社長へ電話を掛けた。

 

数回の呼び出し音の後、電話が繋がる。

 

「もしもし、斎藤社長ですか」

 

『アクア?』

 

「母さんが刺されました」

 

その一言で、電話の向こうは静まり返った。

 

『……何だって?』

 

アクアはできるだけ冷静に事情を説明する。

 

「家に来た男に刺されました」

 

「今は都立大学病院です」

 

「隣に住んでいる神崎先生という外科医の先生が応急処置をして、そのまま担当してくれています」

 

「今から緊急手術になります」

 

『分かった!』

 

『今すぐ病院へ向かう!』

 

『アクアはルビーと一緒に家で待っていてくれ!』

 

電話が切れる。

 

アクアはスマートフォンを握りしめた。

 

そして、悠真から受け取った名刺を胸ポケットへしまう。

 

(神崎悠真……)

 

(あなたに、母さんを託します)

 

病院では、いよいよアイが手術室へ搬送されようとしていた。

 

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