【推しの子】もしも星野アイの隣人が天才外科医だったら〜命を救う、その先へ〜 作:ペンギンって可愛いですよね
それから二か月半後、長かった撮影も、ついに最終日を迎えた。
この日の撮影に、アクアとルビーの出番はない。
それでも二人は、クランクアップの日だからとアイに連れられ、撮影現場を訪れていた。
スタジオでは最後のシーンが撮り終わり、大きな拍手が響く。
「お疲れ様でした!クランクアップです!」
スタッフの声と同時に、現場は温かい空気に包まれた。
出演者たちは互いを労い、スタッフへ頭を下げる。
そんな中、一人の俳優がアクアとルビーへ歩み寄ってきた。
「二人とも」
「ちょっと前に出てくれるかな」
「?」
アクアとルビーは顔を見合わせながら前へ出る。
すると主演俳優が笑顔で口を開いた。
「この映画の撮影がここまで成功したのは……君たちのお陰だ」
その言葉に、他の演者たちも大きく頷く。
「本当にそう」
「最初の子供時代を見た瞬間、この映画は絶対成功するって思えた」
「あの演技があったから、大人になった俺たちも気持ちを繋げられた」
主人公の相手役を演じた女優も微笑む。
「私たちも、二人の演技に引っ張ってもらったの」
「本当にありがとう」
するとスタッフが、大きな花束を二つ持ってきた。
「これは皆からです」
主演俳優が受け取り、一つをアクアへ。
もう一つをルビーへ手渡す。
「ありがとう。君たちへの花束だ」
「えっ……」
ルビーは驚きで目を丸くする。
「わ、私たちに?」
「もちろん」
「受け取ってくれ」
アクアも少し驚いた表情を浮かべながら花束を受け取る。
「ありがとうございます」
ルビーも両手で大切そうに抱えた。
「ありがとうございます!」
現場には自然と拍手が起こった。
その様子を見ていた五反田監督も前へ出る。
「みんなの言う通りだ」
監督は二人の前に立ち、満足そうに笑った。
「アクア」
「ルビー」
「本当によく頑張った。特に子供時代のシーンは、この映画の土台そのものだった。観客が十五年後の再会で涙を流せるかどうかは、あの時間に掛かっていた。そして、その期待を二人は遥かに超えてくれた」
監督は力強く頷く。
「俺は今まで何人もの子役を見てきた。だが、お前たちみたいな子役は初めてだ。だから頼む…ぜひ、次の作品にも出てくれ」
アクアは少し照れたように目を逸らす。
「機会があれば」
ルビーは満面の笑みで答えた。
「はい!」
「また呼んでください!」
その返事に現場から笑いが起こる。
少し離れた場所…アイは静かにその光景を見つめていた。
両手を胸の前で組み、何も言わない。
ただ、目には涙が浮かんでいた。
(アクア……)
(ルビー……)
二人が大勢の人に認められ、心から褒められている。
それが嬉しくてたまらなかった。
以前なら見ることのできなかった未来。
子供たちの成長を、こうして隣で見届けられる。
その幸せを噛み締めるたび、涙が溢れそうになる。
「アイ」
隣へ来たミヤコが優しく声を掛ける。
「泣いてる?」
アイは慌てて目元を拭き、笑った。
「えへへ……」
「ちょっとだけ」
「嬉しくて」
ミヤコも優しく微笑む。
「良い子たちに育ったわね」
「うん」
アイは花束を抱えたアクアとルビーを見つめながら、小さく頷いた。
「世界一、自慢の子供たちだよ」
その言葉を聞いたミヤコも、思わず目頭を熱くした。
スタジオには、最後まで温かな拍手が鳴り響いていた。
誰もが確信していた。
この日、映画業界は、未来を担う二人の天才子役が、本格的に羽ばたく瞬間を目撃したのだった。