【推しの子】もしも星野アイの隣人が天才外科医だったら〜命を救う、その先へ〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第六十二話「クランクアップ」

 

それから二か月半後、長かった撮影も、ついに最終日を迎えた。

 

この日の撮影に、アクアとルビーの出番はない。

 

それでも二人は、クランクアップの日だからとアイに連れられ、撮影現場を訪れていた。

 

スタジオでは最後のシーンが撮り終わり、大きな拍手が響く。

 

「お疲れ様でした!クランクアップです!」

 

スタッフの声と同時に、現場は温かい空気に包まれた。

 

出演者たちは互いを労い、スタッフへ頭を下げる。

 

そんな中、一人の俳優がアクアとルビーへ歩み寄ってきた。

 

「二人とも」

 

「ちょっと前に出てくれるかな」

 

「?」

 

アクアとルビーは顔を見合わせながら前へ出る。

 

すると主演俳優が笑顔で口を開いた。

 

「この映画の撮影がここまで成功したのは……君たちのお陰だ」

 

その言葉に、他の演者たちも大きく頷く。

 

「本当にそう」

 

「最初の子供時代を見た瞬間、この映画は絶対成功するって思えた」

 

「あの演技があったから、大人になった俺たちも気持ちを繋げられた」

 

主人公の相手役を演じた女優も微笑む。

 

「私たちも、二人の演技に引っ張ってもらったの」

 

「本当にありがとう」

 

するとスタッフが、大きな花束を二つ持ってきた。

 

「これは皆からです」

 

主演俳優が受け取り、一つをアクアへ。

 

もう一つをルビーへ手渡す。

 

「ありがとう。君たちへの花束だ」

 

「えっ……」

 

ルビーは驚きで目を丸くする。

 

「わ、私たちに?」

 

「もちろん」

 

「受け取ってくれ」

 

アクアも少し驚いた表情を浮かべながら花束を受け取る。

 

「ありがとうございます」

 

ルビーも両手で大切そうに抱えた。

 

「ありがとうございます!」

 

現場には自然と拍手が起こった。

 

その様子を見ていた五反田監督も前へ出る。

 

「みんなの言う通りだ」

 

監督は二人の前に立ち、満足そうに笑った。

 

「アクア」

 

「ルビー」

 

「本当によく頑張った。特に子供時代のシーンは、この映画の土台そのものだった。観客が十五年後の再会で涙を流せるかどうかは、あの時間に掛かっていた。そして、その期待を二人は遥かに超えてくれた」

 

監督は力強く頷く。

 

「俺は今まで何人もの子役を見てきた。だが、お前たちみたいな子役は初めてだ。だから頼む…ぜひ、次の作品にも出てくれ」

 

アクアは少し照れたように目を逸らす。

 

「機会があれば」

 

ルビーは満面の笑みで答えた。

 

「はい!」

 

「また呼んでください!」

 

その返事に現場から笑いが起こる。

 

少し離れた場所…アイは静かにその光景を見つめていた。

 

両手を胸の前で組み、何も言わない。

 

ただ、目には涙が浮かんでいた。

 

(アクア……)

 

(ルビー……)

 

二人が大勢の人に認められ、心から褒められている。

 

それが嬉しくてたまらなかった。

 

以前なら見ることのできなかった未来。

 

子供たちの成長を、こうして隣で見届けられる。

 

その幸せを噛み締めるたび、涙が溢れそうになる。

 

「アイ」

 

隣へ来たミヤコが優しく声を掛ける。

 

「泣いてる?」

 

アイは慌てて目元を拭き、笑った。

 

「えへへ……」

 

「ちょっとだけ」

 

「嬉しくて」

 

ミヤコも優しく微笑む。

 

「良い子たちに育ったわね」

 

「うん」

 

アイは花束を抱えたアクアとルビーを見つめながら、小さく頷いた。

 

「世界一、自慢の子供たちだよ」

 

その言葉を聞いたミヤコも、思わず目頭を熱くした。

 

スタジオには、最後まで温かな拍手が鳴り響いていた。

 

誰もが確信していた。

 

この日、映画業界は、未来を担う二人の天才子役が、本格的に羽ばたく瞬間を目撃したのだった。

 

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