【推しの子】もしも星野アイの隣人が天才外科医だったら〜命を救う、その先へ〜   作:ペンギンって可愛いですよね

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第八話「成功」

 

手術開始から約三時間。

 

手術室には静かな緊張感が漂っていた。

 

悠真は最後の縫合を終えると、傷口を丁寧に確認する。

 

「出血なし」

 

助手の医師も確認する。

 

「止血良好です」

 

悠真はもう一度、腹腔内全体を慎重に観察した。

 

修復した小腸。

 

周囲の組織。

 

腹腔内に新たな出血はない。

 

輸血の効果もあり、アイの顔色も少しずつ戻ってきていた。

 

麻酔科医がモニターへ目を向ける。

 

「血圧百十五」

 

「脈拍八十四」

 

「バイタル安定しています」

 

悠真は小さく頷く。

 

悠真は一層一層丁寧に腹壁を閉じていく。

 

筋膜。

 

皮下組織。

 

そして皮膚。

 

どの工程も正確で、無駄な動きは一切ない。

 

最後の一針を終えると、悠真は静かに息を吐いた。

 

「閉腹終了」

 

手術室のスタッフ全員がモニターへ目を向ける。

 

血圧は安定。

 

脈拍も正常域まで回復している。

 

麻酔科医が微笑んだ。

 

「状態は良好です」

 

「このまま術後管理へ移行できます」

 

悠真は眠っているアイの顔を見つめた。

 

穏やかな寝息を立てるその姿を確認すると、小さく微笑む。

 

「お疲れ様」

 

誰にも聞こえないほど静かな声だった。

 

「よく頑張りました」

 

そう呟くと、アイの掛け布をそっと整える。

 

その様子を見ていた助手の医師や看護師たちは、思わず表情を和らげた。

 

世界最高峰の外科医と呼ばれる男。

 

その姿は冷静で厳格な医師ではなく、一人の患者を心から気遣う医師そのものだった。

 

悠真は再びスタッフへ向き直る。

 

「手術終了」

 

その一言で、張り詰めていた手術室の空気が少しだけ和らいだ。

 

助手の医師が笑みを浮かべる。

 

「先生、お疲れ様でした」

 

看護師たちも安堵したように頭を下げる。

 

「ありがとうございました」

 

悠真は軽く頷くと、手袋を外し、手術室を後にした。

 

廊下へ出る。

 

手術室前では、赤く灯っていた『手術中』のランプを見つめながら、斎藤、ミヤコ、アクア、ルビーの四人が静かに待っていた。

 

扉が開く音に気付き、四人は同時に立ち上がる。

 

「先生!」

 

斎藤が真っ先に駆け寄る。

 

「アイは!」

 

「アイは無事なんですか!」

 

ミヤコも涙を浮かべながら悠真を見つめる。

 

アクアは息を呑み、ルビーは不安そうに悠真の顔を見上げていた。

 

悠真はゆっくりとマスクを外す。

 

そして四人へ優しく微笑んだ。

 

「安心してください」

 

一瞬の静寂が流れる。

 

続いて悠真は穏やかな口調で告げた。

 

「手術は成功です」

 

「損傷していた臓器は無事修復できました」

 

「出血も止まり、血圧も正常値まで戻っています」

 

「命に別状はありません」

 

「これからは集中治療室で経過を見ながら、自然に傷口が回復するのを待つだけです」

 

その言葉を聞いた瞬間だった。

 

ミヤコはその場で涙を流した。

 

「よかった……」

 

「本当に……よかった……」

 

ルビーも涙を流しながら笑顔になる。

 

「ママ助かったの?」

 

悠真はルビーの顔の位置までしゃがみ込み優しく頷く。

 

「助かりましたよ」

 

「もう大丈夫です」

 

ルビーはその場で泣き崩れ、ミヤコが優しく抱き締める。

 

斎藤も深く頭を下げた。

 

「神崎先生……」

 

「本当に、本当にありがとうございました」

 

悠真は首を横に振る。

 

「私は医者です」

 

「患者さんを助けるのが仕事ですから」

 

その言葉に、斎藤は再び深く頭を下げた。

 

一方、アクアだけは黙って悠真を見つめていた。

 

(本当に助けた……)

 

(あの状態から……)

 

前世で医師だった自分だからこそ分かる。

 

あの傷から患者を救うことが、どれほど難しいか。

 

目の前の男は間違いなく世界最高峰の外科医だった。

 

悠真はそんなアクアに気付き、小さく微笑む。

 

「約束しましたから」

 

「お母さんは、ちゃんと助けましたよ」

 

その一言に、アクアはゆっくりと頭を下げた。

 

「……ありがとうございました」

 

その声には、心からの感謝が込められていた。

 

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