ハズレアな相棒でも最強になれますか?   作:桜庭路傍

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アクティブカードバトル的な感じのVRMMOモノです。
よろしくお願いします(シャカシャカ)


ダイブ・オン!

「だからさ! 始めましょうよVS(バーチャス・スフィア)!」

 

 時刻は放課後。

 授業が終わってすぐのこと。

 しかし、俺はこの時間こそ早く終わってくれと思わざるを得なかった。

 

「ちょっと私が変なサークルに入ったとでも思ってるでしょ!!」

 

 バァン、とマナカが両手を机に叩きつける。

 その音はそこそこに大きく、軟弱な精神をしているものならば怯えるぐらい。

 もっとも、この俺がこの程度でビビるわけがないが。

 

「知らないものに突然勧誘されたらそうも思うだろうよ」

「むむむ……」

 

 腰まで伸びた日本人離れの赤髪。西洋人形みたいな整った顔立ち。

 そんなマナカが眉間にシワを寄せている。

 

 せっかくの顔が台無しである。昔からモデルのように可愛いとチヤホヤされているから、わがままは通って当然だと思っているのだ。

 

 ムカつくから俺は髪を脱色して白髪にしている。

 制服もめったに着るものがいない白ランにしたりしてな。

 これぐらいしないと特別感が釣り合わないのだ。

 

 ……まぁ、ちょっとぐらい話に乗ってやってもいいが。

 

「まず……そのVSというのはなんなのだ?」

「ふふん、よくぞ聞いてくれました!」

 

 自慢げに微笑んで少しばかり下がると、使ってない黒板に何やら描き始めた。

 気にする生徒たちはいるものの、マナカ自身はそれらを完全無視だ。

 こいつは心臓に毛でも生えているのだろうか。

 

「まずバーチャルダイブシステムってのは知っているかしら?」

「ふん……当然だ。脳波を外部から操って夢を同期させる──つまりゲームみたいな仮想現実にダイブする事ができるというものだろう?」

「そこまで知ってるのになんでVSのことは知らないのよ……」

 

 マナカは黒板に可愛いデフォルメ絵を描きながらぼやいてくるマナカ。「のうは~~」とか「でりゃ~~」とか喋った人間が描かれている。おそらくデフォルメされたマナカだろう。そこそこに上手い。

 

「俺は興味がないものなどわざわざ調べようとせん」

「今から興味があるようにしてあげるわ!!」

 

 そう言って、マナカがきゅっきゅっとPVPと黒板に描く。

 その筆記速度は非常に早いが、解読にやや難を要する癖字だ。

 

「VSとはつまりバーチャルPVPなのよ」

 

 マナカが黒板に追記する。PVPとはプレイヤー・バーサス・プレイヤー。

 

 つまり”対人戦”をメインにしたゲームだとか。

 とりわけVSは戦士、魔術士、召喚士の3タイプから選んで戦うそうだ。

 

 その他にも色々描いていくが……。

 正直読むのすら面倒だ。

 

「なるほど、理解した」

「ほんと!? やってくれるの!?」

 

 そう言ってマナカが駆け寄ってきて手を握りしめてきた。

 やるとは一言も言ってないが……まぁ所詮、ゲーセンのゲーム。

 千~二千円一緒に遊んだらコイツも満足だろ。

 

「いいだろう。俺を興じさせてみせろ」

「フフン、任せなさい!! 絶対面白いって言わせてあげるから!」

 

 そう言って、マナカはバシンと自分の胸を叩いてみせた。揺れない。

 中学生の頃から全然成長していないからな……。

 

 ひとまず荷物をまとめて、俺達は目的地へと向かう。

 三十分も歩くと、体育館ぐらいに大きな施設が見えてきた。

 

 一つのゲームのために専用のゲーセンまで作るなんてやる気満々だな。

 入口の上にロゴが描いてあるな。この雷が落ちた塔のようなマークは……。

 

「やはりバベルシア・コーポレーションか」

「軍事産業でめちゃくちゃ稼いでるとはいえ、こんなゲーセンを全国展開するなんてすごいわよねぇ」

「俺は好かんがな」

 

 後ろ暗い噂も多い企業だ。裏で人体実験しているとすら言われている。

 今回のゲームだってそんな技術の産物かもしれない。

 だが、そこまでマナカの前で言うのは憚られた。

 

「ひとまず受付で入会登録しましょ。入会費持ってきた?」

「ないが?」

 

 当たり前だろう。学校から直接ここにやってきたんだから。

 こいつからすると、コンビニで降ろしておけという話なのか。

 

「……まぁ、ここはアタシが建て替えておいてあげるわ」

 

 持つべきものは実家の太い幼馴染である。

 

 俺達はそのまま美人の受付がいるカウンターへ向かい、色々書類を書いた。目を通しておいたが、万が一死亡事故が起きても訴えないでなどと描かれている。

 

 ……別にこの程度でビビったりはしないが。

 

「では入会費二万円になります」

「──────二万!?」

 

 当然のように二万円を高級そうな長財布から取り出すマナカ。

 ちょっと待て、さすがにそこまでするとは聞いてないぞ!?

 

「何驚いてんのよ。月の会員費五千円ぐらいするわよ?」

「毎月、そこまで払う金はないぞ!?」

「おばさんはアタシが説得してあげるから!!」

 

 無理だろ、どう説得するっていうんだ。うちは貧乏なんだが??

 などと言っている間に受付さんがテキパキとパソコンを弄って会員登録を済ませてしまった。すると奥からぶっといスマホのようなものを一台持ってきた。

 

「……? なんだこれは。俺に貸すというのか」

「ええ、こちら我が社のスマートフォンになっております。日常使いしてもらっても構いませんし、プランに入っていただければ携帯代もその分お得に……」

 

 なるほど。流石の俺もスマホぐらい持っている。

 

 スマホをこっちに乗り換えれば、月々の会員費と携帯代が一緒になるからお得ということか。それなら母さんもこっちに乗り換えてくれるかもな……。

 

「ふん、小賢しいことだ」

 

 俺は渡されたスマホを起動してみた。一通り必要そうなアプリは入っている。

 ……知らないアプリも入ってるな。消すボタンもない。

 少々セキュリティリスクのありそうなスマホだ。

 

「じゃあハヤト。もう少ししたら夕方のバトルが始まるから、それまでにチュートリアルを終えておきましょ」

「別に俺にチュートリアルなど不要だが……」

「いいからいいから!」

 

 そう言うと、マナカは俺の腕を掴み走り出した。

 連れてこられたのはカラオケルームみたいな個室。

 その奥に二台、コックピットみたいな椅子が置かれていた。

 

「アレに乗ったらダイブ出来るの」

「……………………」

 

 少々入るのが憚られる。

 躊躇しているとマナカにぐいぐいと押し込まれた。

 

「いまさらビビらない!! 厨二病のくせに!!」

「厨二病ではない!!」

 

 渋々、コックピットに乗る。

 中央にスマホを置く台座のようなものがあり、被ったヘルメットの画面にも『スマートフォンを設置してください』と描かれていた。

 

 指示通り、さっき渡されたスマホをそこに乗っける。するとカウントダウンが始まり、画面に『椅子に横たわって楽な姿勢を維持してください』と出た。

 

「なにか出てきたが?」

「そのまま楽にしてなさい。始まるわよ……!」

 

 

 

 

『システムオールグリーン。ディメンションダイブ・オン』

 

 

 

 

 そのアナウンスとともに、俺の思考は幾何学的な幻影に吸い込まれていく。

 そして一瞬、辺りが真っ暗になった。

 

 この時はまだ思っていなかったのだ。

 この出来事が、俺の運命を動かすことになろうとは。




□登場人物□
ハヤト ……主人公。厨二病で白髪白ラン。態度も荘厳。
マナカ ……赤髪オレンジ目の美少女。最近VSというゲームにハマっている。
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