ハズレアな相棒でも最強になれますか?   作:桜庭路傍

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僕っ娘好きかい?


チュートリアル

「むっ……」

 

 目を開くと、そこはまさしく電脳空間と言わんばかりの部屋だった。

 ふわふわと数字と電子的なエフェクトが流れていく。それ以外には何もない。

 なるほど、ここがチュートリアル空間ということか。

 

 しかし俺以外に誰もいない。

 いったい誰が俺にチュートリアルを教えてくれるというのか。

 などと考えていると、どこからともなく本が飛んできた。

 

 まるでページを羽のようにして羽ばたくそれには、間違いなく意思を感じる。

 コイツ喋るのか……?

 

『ようこそ、ヴァーチャス・スフィアの世界へ!!』

 

 うおっ、喋った……!!

 そのままその本は俺の右手に収まった。

 

『それでは、まずはキャラメイクをしましょう!!』

 

 本がそう言うと、目の前に鏡が現れる。

 鏡には、白髪白ランの俺がほとんどそのまま映っている。

 少し違うところと言えば、ややアニメっぽく美形になってるところか。

 

 本のページには髪色だの、背丈だの、自由に操れるらしいボタンが現れた。

 アナログな見た目なのに、タッチ機能がついているらしい……。

 

『お好きな見た目になりますよ! 性別も変えられます』

「ふん……」

 

 とりあえず服だな。学ランでは話にならん。

 せっかくだしファンタジー風の……。

 

 服装のボタンを弄って、と。ふむ、色々種類があるようだな。

 ああ、白いコートがあるじゃないか。これを少々丈を短くして……。

 

 ジャケットっぽくなってしまったが、いいだろう。

 もふもふのファーもついているしな。

 全身白にコーディネートだ。

 

 髪もちょっと長くして、後頭部で括らせてもらおう。

 ちょっとしたポニーテール。これがかっこいいんだ。

 

 顔も……まぁ別に不満があるわけじゃないか、少々目つきを鋭くして、端もちょっとだけ高くして……あんまり弄ると、マナカに揶揄われてそうだ。

 これぐらいにしておくか。

 

「よし、こんなもんでいいぞ」

『お疲れ様です!! 次はジョブを選びましょう!!』

 

 本がそう言うと、ページがめくられる。

 上手いこと三つの職業が描かれている。

 

 一つ目。ウォリアー。

 自分で直接戦うジョブのようだな。

 剣、槍、弓、斧、鎚、短剣、刀、実に様々な武器があるようだ。

 

 二つ目。ソーサラー。

 魔法を使って戦うジョブみたいだ。

 火、氷、雷、土、風、光、闇の七属性の魔法を扱えと描かれている。

 

 三つ目。サモナー。

 幻獣を呼び出して戦うジョブらしい。

 幻獣には実に様々な種類があり、人型の幻獣もいるとか……。

 

 ふむ……どれも魅力的だが、やはり下僕に指示して戦うのがかっこいいかな。

 正直、俺はあまり運動神経に自信がないし……アクションゲームも弱い。

 逆にSRPGなんかは結構得意だからな。

 

「俺はサモナーだな。下僕を操り、勝利へ導く。実に俺らしいジョブだ」

『はぁ……ではサモナーで登録いたしますね!!』

 

 本がそう言うと、目の前にカードの束が降りてきた。

 サモナーのジョブに必要なものなのか?

 

『どのジョブもですが、チュートリアルはSSR確定スコア十連ガチャが行えます!! それではいきますよー!!』

 

 カードが光り輝き、一つずつ裏返っていく。

 N角パンダ、N羽ラビット、N羽ラビット、N石コング、Nソード。

 Nソード、Nソード、R妨害(インターセプト)、N石コング。

 

 効果はよくわからないが、妨害以外ノーマルだったのはわかった。

 妨害はどういう効果なんだろうか……。

 

 さて、最後の一枚。さっきの説明だと、これがSSRらしいが……。

 説明通り、カードが突然虹色に輝いて裏返る。

 

 SSR死祖ヴァンプ。

 そうカード名が現れた後、パキィイイインとカードが消滅。

 したかと思えば、その位置にゴシック風のドレスを着た黒髪の少女が現れた。

 

 艷やかな黒髪は腰ほどまでに伸び、丁寧に束ねられている。

 肌は蝋人形のように白く、瞳はパッチリと、真っ赤なルビーのようだった。

 

 少女はふわぁっ、と眠そうにあくびをして周囲をキョロキョロと見渡す。

 そうして、ようやく俺と目を合わせた。

 

「あれ……ここどこ? 君、誰?」

「ほう? まず貴様から名を名乗れ」

 

 召喚されたSSRの幻獣だよな……?

 ゲームキャラの割にはまるでどこかから来たみたいな言い方だ。

 いやまぁ設定上、そういう出身はあるのだろうけど。

 

 ともあれ、彼女は立ち上がり自慢げに胸を叩く。

 無いとまでは言わないが、なんというか薄い。

 

「僕はシュピネー・ベルンシュトルフ!! 高貴なる血祖の姫君さ!」

 

 なるほど……確かに出現するカードにそんなようなことが描いてあったな。

 しかしまぁ、そういう設定だろ?

 

 こうして会話するAIはすごいとは思うが。

 ていうかなんで僕っ娘なんだ。

 

 ……まぁいい。こういうのは楽しんだモノ勝ちだからな。

 俺もロールプレイを始めていくとしよう。

 

「ほぉ、血祖の姫君!!」

「ああ、そうだよ! 君は?」

「俺はラインハルト・ザ・ブリュンスタッグ!! 貴様を呼び出したのは他でもない……この世界を支配するためだ!!」

「ええ!? 普段何をされている方なの……!?」

「……………………………………」

 

 闇の帝王的な存在って普段何をしてるんだ……!?

 ていうか自分の厨二設定は通すんだから変な突っ込みはやめてほしい。

 まったく……そういうロールプレイとかしちゃだめな感じ?

 

「普段は……学校に通ったりしている!!」

「へぇ、見た感じ魔術師っぽいし、頑張って勉強してるんだね!!」

「ククク……」

 

 パチパチ、と拍手してくるシュピネー。

 どういう会話なんだよ、これ。

 

 まぁいい。これでチュートリアルは済んだのか?

 とりあえず本に聞いてみるか。

 

「おい、これでチュートリアルは終わりか?」

『ああ、いえ、ラインハルトさま。一応戦闘演習が残っております』

「いいだろう……学ばせてもらおうか」

 

 そういうと、やはりどこからともなく 長方形を合わせて四足の羊を作りましたみたいなエネミーが現れた。思いっきりポリゴンっぽい。

 

『それではサモナーの戦闘をお教えします』

 

 本がそう言うと、持っている本の少し上に五枚のカードが現れる。

 ソード、角パンダ、石コング、ソード、羽ラビット……。

 さっき引いたカードたちだな。

 

 これを……どうすればいいんだ!?

 

『気になったカードを手にとって、名前と発動を宣誓してみてください』

「ふむ……」

 

 であれば、とりあえずソードか。何事も初めは武器が大事だもんな。俺はソードのカードを手に取り、ビシリとポーズを決めて宣誓することにした。

 

「ソードを発動するッ!!」

 

 ──するとシュピネーの手にソードが現れた。

 両刃の華やかな長剣だ。

 

「うわっ」

 

 それを芝居の小道具でも持つかのように軽々と振るってみせるシュピネー。

 なるほど、装備カードを発動するとあいつが持つのか。

 じゃあこの幻獣が描かれたカードはどうなるんだ?

 

「フゥウウウン!! 羽ラビットを発動ぉ!!」

 

 ……シュピネーの周りに赤いエフェクトが広がる。

 なんか強化されたようだ。幻獣のカードは強化になるみたいだな。

 ん? 全部こいつに関するカードなのか?

 

『サモナーは指定した幻獣をひたすら支援するジョブになります』

「ほう……ちなみにだが、変えることは出来るのか?」

『はい、こちらの設定画面でメインクリーチャーを変更するだけです』

 

 本がそういうと、ページがめくられてバインダーのようなページになった。

 中央にさっき引いた「SSR死祖ヴァンプ」が配置されている。

 今発動したソードと羽ラビットがその下にセットされていた。

 

『ちなみに右のページはアクティブページです』

「どう違うんだ?」

『発動を宣誓しつつこちらにセットしていただくと、メイン以外の幻獣を召喚したり、自分に武装を装備したりすることができます』

「難しいな……」

 

 ほかのジョブはもっと簡単なのか?

 もしかしてこのサモナーってジョブ、外れなんじゃないか?

 今からでも変えたりって出来るのか?

 

「……まぁいい。おい、シュピネーとやら。とりあえずあいつを攻撃してみろ」

「うん、任せてよ!!」

 

 そういうと、その場からシュピネーが消滅した。

 ──かと思えば、次の瞬間にはポリゴンみたいなエネミーの向こう側に。

 遅れて、複数の斬撃がポリゴンをざっくばらんに切り裂いた!!

 

「ふふん、どう? すごいでしょ。剣技はそこそこ学んだんだ」

 

 くるり、とこちらを向いて自慢気に微笑むシュピネー。

 ……な、なるほど。SSRキャラだけはあるんじゃないか……?

 

 よくわかんないけど。




シュピネー・ベルンシュトルフ
……高貴なる血祖の一族らしい。黒髪ロング。

ラインハルト・ザ・ブリュンスタッグ
……ハヤトの厨二ネーム。

本 ……本以外にあるかよ。しゃべる。
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