ハズレアな相棒でも最強になれますか?   作:桜庭路傍

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相棒はハズレア、俺は不遇職

 さて、しばらくチュートリアルをした結果。

 多分サモナーは不遇職だ。

 

 なんせ本体ががら空き過ぎる。

 もしこのジョブで無双したいのなら、超強力な幻獣で圧倒するしか無い。

 

 問題はこのシュピネーにそんな能力があるのか、だ。

 まぁたしかに見た目は可愛い。

 こういう人型を付き従わせるのが好きな人がサモナーを選ぶのも納得だ。

 

 しかしサモナーを守りつつ戦えるかという観点だと厳しくないか?

 どう見ても防御力はそんなになさそうだし。

 

 今からでもソーサラーに変えたほうがいいんじゃないか?

 そんな思いがあるのだが……。

 

「いや、でも嬉しいなぁ!!」

「ふん……なにがだ」

 

 しばらく俺の指示に従ってエネミーをしばいていたシュピネーが呟く。

 こっちを向いて満面の笑顔を見せるさまはさながら柴犬だ。

 

「僕、いままで城に閉じ込められてたからさ」

「なぜだ」

「一応、お姫様? だしさ。だから、これから外に出られるかと思うと……」

 

 そう言って、シュピネーが俺の手を掴みブンブンと振るう。

 さながら柴犬の尻尾だ。

 

「ふふっ、これからよろしくね。ハルト」

「ラインハルト、な」

 

 …………なるほど。こんなに喜んでいる少女を、自分に扱える自信がないからってカードに閉じ込めておくなんて俺には出来ない。

 

 決めた。俺はサモナーになってやる。

 ゲームのAiごときに何を言っているんだと思うかも知れないが、ゲームなんて自分のモチベが上がるようにやるのが一番だ。

 

「クク、いいだろう。俺が貴様を最強に導いてやる――!!」

「え、別に最強になんなくてもいいんだけど……!?」

 

 いや普通にモチベとかあったほうが良いじゃん。

 とりあえず最強。細かい目標は後から決めりゃあ良い。

 

「フン、俺が使役する以上、貴様の最強は絶対だ」

「そ、そうなんだ……」

 

 若干引かれている。

 しかしちょっと悩んだ後、意を決してシュピネーは呟いた。

 

「僕、結構弱いらしいけど大丈夫?」

「貴様がスライムだろうと何の問題もない」

「そ、そう? それじゃあよろしくね……!!」

 

 ぎゅっ~~~っと抱きしめてきた。

 なんかふにふにと柔らかいし、ちょっといい匂いもする!!

 これが最新VRかぁ……流石だな、テクノロジー。

 

『あ、それではそろそろ夕方のバトルが始まります!!』

「バトルって何をすれば良いんだ?」

『と、とにかく生き残ってください!! あと他のプレイヤーを倒してください!! 最後の一人になったらクリアです!!』

 

 ……典型的なバトルロイヤルって感じだな。

 よし、まずはそのバトルで一位になることを目指そう。

 シンプルな目標じゃないか。

 

「フン、行くぞシュピネー。我々の初陣だ」

「う、うん!! 僕頑張るよ!!」

 

 周りの景色が溶け出していき、典型的なビル街が現れる。

 とはいえちょっと普通のビル街とは違い、草木が生い茂っている。

 

 ここがバトルロイヤルの舞台ってことか……?

 

『それで健闘を祈ります!! ああ、一つ言い忘れてました』

「なんだ?」

『このバトルロイヤルでは敗北すると、カードをドロップしてしまいます。お気をつけてください!!』

「………………ええ………………?」

 

 負けたら全ロスト的なあれ?

 最悪、今手に入れたシュピネーも奪われるってことか?

 ま、負けるわけにはいかない……!!

 

 俺は少しばかり空を仰いだ後、シュピネーの手を握った。

 

「…………この戦い、勝つぞ」

「う、うん!!」

 

 サモナーで戦うのならば見晴らしのいい場所を手に入れて、そこに隠れるのが一番だ。こういうバトルロイヤルはだいたい一定時間経過すると戦闘地点が収束するのが常だが……それにしたってその時間まで隠れておく場所は大事だ。

 

 ひとまずなるべく動かず、近くのビルの内部に入ってみるか。

 

「よし、シュピネー。まずはあのビルの中で様子見だ」

「あれ? 戦いに行かないの?」

「フン、戦略的な観点というのも必要なのだよ」

「なるほど……ハルトは賢いね!!」

 

 ちょっと馬鹿にされた気がするが、気のせいだろう。

 ともあれ、ビルの内部に入り上層を目指す。

 ふむ、中は大荒れという感じだな。

 

 ……ちまちま羽が生えたウサギとか、角の生えたネズミとかがいるな。

 こいつらを狩ってもカード化出来たりするのか?

 

「わぁ~~ここいらの幻獣は可愛いなぁ」

 

 そう言って、飛んでいた羽ラビットを撫でているシュピネー。

 羽ラビットぼうは……そのまんまウサギに羽が生えた感じだな。

 なんというかダチョウとウサギのミックスというか……。

 

 しかし可愛がっているシュピネーに、幻獣を討伐せよとは言えないな。

 ひとまず無害な雑魚は放置しておくとするか。

 

「他に幻獣を見たことあるのか?」

「ああ、僕の城にはコウモリとかデカいクモとかがね……」

 

 …………コウモリはともかく虫系は嫌だなぁ。

 吸血鬼にはふさわしいだろうが……。

 さて、とくに有害な幻獣もなくビルの屋上にたどり着くことが出来た。

 ここから下を眺めて敵を探していこう。

 

「そう言えば、ここからサモナーとして下に指示を送れたりするのか?」

『カードは使役している幻獣に聞こえる場所じゃないと使えません』

 

 ……本が喋る。ヘルプも兼ねているようだな。

 しかしそうなると、下に聞こえるような大声じゃないといけないわけか。

 ぎりぎり行けそうだが、即場所がバレてしまいそうだな。

 

 ま、ともあれここでしばらく待機しておくか。

 …………などと考えていると。

 

 他のビルの屋上から、何かがこちらに向けて駆けてくるっ!!

 

「……シュピネー、ソードだ」

 

 俺はカードを構え、宣誓する。

 シュピネーの手に先程の両刃剣が現れた。

 

 次の瞬間、ドスン!! ……とビルの屋上に男が着地する。

 2m以上はある、さながらゴリラみたいな騎士だった。

 全身を金属鎧が包んでおり、背中には大斧を担いでいる。

 

 なんというか騎士から鎧を奪った山賊って感じだ……。

 山賊騎士と呼称しよう。流石にウォリアーだよな?

 

「ガハハ!! 今回の初心者はおまえか!!」

「ほう? なぜ初心者だと思った?」

「経験無いやつはすーっぐビルの上に登りやがる!! だがこのゲームにはレーダーカードもあるんだぜ?」

 

 ……なるほど、ビルの上は簡単に逃げられないし、すぐ見つかるってことか。

 カードの種類を把握していない初心者がやりがちなミスってことね。

 

「で? 貴様は初心者だと見抜いて寄ってきたってことか」

「ああ!! オレさまの趣味は初心者狩りでねぇ……」

 

 そう言うと、片手に本を出し、俺と同じようにカードを出してきた。

 ま、まさかそのなりでサモナーなのか!?

 

「巨岩コングを召喚!!」

 

 次の瞬間、空が光り輝き、ビルの屋上に巨大な岩でできたゴリラが振ってきた。山賊騎士よりもさらに巨大だし、全身が硬そうな岩で覆われている。

 

 かなり強そうだな……。

 

「行くぞ、シュピネー!!」

「うん!!」

 

 俺がそう言うと、シュピネーが剣を構える。

 剣を大きく掲げて、切っ先を相手に向ける独特な構えだ。

 それを見て山賊騎士は再びガハハと笑った。

 

「なんだ、人型かぁ? ハズレアだな!!」

「ああ?」

 

 ビシリ、とこちらを指差してくる山賊騎士。

 

「知らないようだから教えてやる!! 人型の幻獣はは強化しないとろくに使えないし、使い手も守るのが難しい。どんな特殊能力を持っていたとしても、しょせんはハズレアってことだ!!」

 

 ……なるほど、だいたい俺の予想通りだったようだ。

 まぁ、しかしそうだとしてもシュピネーは使い続けるが。

 

「だからなんだ? 俺には駒の不出来など関係ない」

「ああ? ロールプレイでもしてんのかよ」

 

 山賊騎士はそう言うと、本を消して、背中の大斧を構えた。

 そしてそのまま近づいてくる。サモナーじゃなかったのか!?

 

「サモナーの決定的な弱点、教えてやるぜ!!」

「ハルト、下がってて!!」

 

 ガギィン、とシュピネーと山賊騎士の武器が交差する。

 いや、ややシュピネーが力負けしてるな……。

 ステータスが足りてないのか。

 

「石コングを発動!! シュピネーを強化するッ!!」

 

 俺は本の上に浮かんでいるカードをつかみ、そう叫ぶ。

 するとシュピネーの周りに銀色のエフェクトが現れ、一転攻勢。

 山賊騎士を吹き飛ばした。

 

「ククク……サモナーの弱点、本体が脆弱なこと!!」

 

 だが次の瞬間、巨岩コングが俺もろとも殴りかかってきた。

 

「ちっ」

 

 シュピネーは下がってきて、俺を抱きかかえると――。

 そのままビルから落下した。

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおお!?」

「しっかり掴まってて!!」

 

 ビルの壁に剣を突き立て、ガリガリガリと速度を下げていく。

 しばらくすると、剣が折れてしまったが……。

 おかげで無事ビルから着陸できた。

 

 しかし次の瞬間、巨岩コングが追いかけるように飛び降りてくる。

 くそっ、こっちがひと手間かけなきゃいけない行動をいとも簡単に……。

 

 壊れたソードの代わりに新たな手札を取り出して……。

 

「シュピネー、ソードと羽ラビットを使う!! スピードで翻弄しろ!!」

「了解!! どこかに隠れてて……!!」

 

 そういうわけにもいかない。

 たしかアクティブページは俺が使えるんだったな。

 手札は残り二枚……あるのは妨害(インターセプト)と角パンダか。

 

 妨害は取っておいて、角パンダを召喚だ。

 お、角の生えたパンダが出てきた。実際のパンダよりかなりもふもふだ。

 

 アクティブページは、ステータスじゃなくてちゃんと召喚できるようだな。

 これならサモナーもそこまで産廃じゃないかも。

 

「ヘヘッ、アクティブページで呼び出した幻獣は弱いぜ? 自分のステータスにしたほうがいくらかマシだ。方法は召喚じゃなくて強化と宣誓することで……」

「うるせぇな……」

 

 巨岩ゴリラの上に乗っていた山賊騎士が野次を飛ばしてくる。

 まぁ、プレイを教えてくれるのはありがたいけど……。

 

「よし、叩き潰せ巨岩コング!!」

 

 巨岩コングがその巨大な拳を振り下ろしてくる。

 それをなんとか俺の角パンダがもふもふの毛皮で防いだ。

 

「ぴぎゅっ!?」

 

 ……が、俺を突き飛ばして一瞬で潰れてしまった。

 たしかに弱いな……。

 

 だが、その一瞬の隙でシュピネーが巨岩コングの身体に乗り上げる。

 速度がさっきよりも遥かに上昇してる……!!

 

 そのまま山賊騎士に向かったかと思うと……。

 ザンッ!! と山賊騎士を肩口から切り裂いた!

 

「なぁっ……!?」

 

 そのまま、虚空に飛んだかと思えば……。

 落下して、巨岩コングを頭部から切り捨てる。

 

 半分も切り裂くことは出来なかったが、頭部は真っ二つ。

 そのまま巨岩コングは崩れ落ちた。

 

 シュピネーは華麗に地面に着地すると、そのままこちらに走ってきた。

 

「へへ~~、どう? 僕、強い? 強い?」

「ああ、流石だな」

 

 突進するような勢いで抱きつかれる。

 薄い胸が顔面にぶち当たるが、なんとか我慢した。

 

 よしよし、ひとまず幻獣を召喚したり、自分のステータスを上げて攻撃を回避。その間に強化したシュピネーで相手を倒す。これが俺の必勝法らしいな。

 問題はもう手札がないってことだが……。

 

 おっ、消滅していく巨岩コングと山賊騎士からカードが現れた。

 そういえばドロップすると言っていたな。

 どれどれ……。

 

 N岩コング、Nアックス、R鎧カブト。

 三枚だけか。だが、ありがたく貰っておこう。

 

「というか手札は五枚だけなのか? いつ追加される?」

『一定時間経つと、自動で手札が追加されます。破損した手札以外は復活しますね。さっきの角パンダとソードは墓地に送られました。修理すれば使えます』

「…………」

 

 ……けっこうシビアなバランスだな!!

 




□現在のアイテム□

【稼働中】
[ステータス(シュピネー)]
N羽ラビット(素早さ↑↑)、N石コング(筋力↑、防御力↑)
Nソード(装備中)

【手札】
N岩コング、Nアックス、R鎧カブト、R 妨害(インターセプト)

【墓地】
N角パンダ、Nソード

【山札】
N羽ラビット、Nソード、Nソード、N石コング。

 
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