終末世界の魔法学園   作:冬月雪乃

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玉虫色の雲海事件 解決編 2

ちょっと気まずい中、帰宅してすこし。

寮内の計都の部屋に二人はいた。

計都は椅子に座り、いづみはベッド。

ウォーターベッドを使っているからか、座り心地は中々だ。

いづみは計都から渡された一枚の紙を見ながら口を開いた。

 

「……七咲雪菜、ねぇ……」

 

書類には少女の写真がクリップされており、それは先ほど取り逃がした少女だ。

やってしまった、という罪悪感はあるが、あんな追いかけ方をしていた方も方だと思う。

物理に不審者でしかなかった。

 

「勇者に属する1年だとよ。さっき確認してきた」

「急にいなくなったと思ったら……あんたなんで捕まえなかったのよ」

「……さすがに異世界人多数相手取るのは俺でも辛いぞ? 勝つけど」

 

それはつまり、言外に少なくともクラス丸々襲いかかってくるだけの人望が彼女にあるということだろうか。そうだったらやだな、と適当に考えつつも返事をするために口を開く。

 

「さすが理不尽の権化よね……っていうか、なんで? 校則どころか法律すらぶっちぎってるのよ?」

 

あー、それな。と計都が苦笑いで理由を言うために口を開く。

 

「俺ら勇者って基本的に法の外側なんだわ」

「はぁっ!?」

「いやだってさ、俺とかよく建物壊すじゃん」

 

うん、といづみはうなずく。

純然たる事実だからだ。

 

「でも俺はそれに関して賠償とかしたことない」

「え、ほんとに? 嘘じゃないよね」

「嘘ついてどーすんの」

 

というか、実際にはある程度の行動に関しては治外法権が認められていると言うだけで、完全に法の外というわけではないのだが、ざっくりその理解で良い。と計都は笑う。

 

「んで、そのある程度の行動ってのが、俺らが勇者として動くときなんだわ」

「勇者として動くとき?」

「そ。つまりは、対世界の災厄って場合だな」

「……?? 結局七咲雪菜のやってることは逮捕案件じゃないの?」

「忘れてるぜ、いづみ。俺たち勇者の特徴をさ」

 

それは、固有能力。

勇者が勇者であるために必要な異能と呼ぶべきバグ同然の存在。

 

「……まさか」

「そ、七咲雪菜の固有能力は神格の召喚を確実に成功させること。ただしその善悪は問えず、しかも残念なことに基本、指示に従わない。つまりは呼び出すだけってこったな。で、今回のはその暴走……っていうのがオチだ。暴走についてもまた、法の外なんだよ」

「……納得行かないわよ」

「そりゃそうだ。俺たちも、七咲雪菜も納得してない」

 

じゃあ逮捕してしまえばいいじゃないの。といづみは息巻くが、それは出来ない、と計都は制する。

それは同じ勇者として、七咲雪菜の苦労を理解しているからだ。

 

「まぁ、納得するなとは言わない。でもさ、俺たち勇者はあいつの苦労が分かるんだ」

「は? 苦労が分かるからって--」

「まあまあ、最後まで訊けよ。考えてみろって。いきなり身一つで異世界に飛ばされて、しかも帰れません、所持しているのは飛ばされた当初の持ち物だけ、追加で訳わからん能力を持ってますときた」

「……」

「しかも、その能力が周辺に影響を及ぼし、尚且つそれが悪い方向に特化してるとしたら……いづみはどうする」

 

私なら……といづみは黙考する。

 

「……そりゃ、制御とか、考えるけど」

「だよな。あいつもそうだった。で、辿り着いたのは『生命樹』の書き記した『次元の門』」

「ハァッ!? アンタそれマジで言ってんの!? 二百年前の大英雄『生命樹』の著書なんて一冊億どころの騒ぎじゃないのよ!?」

「あぁ、びっくりだよな。俺もびっくり。クラスの連中もびっくり。なによりびっくりしてたのはその本の価値を知った瞬間の七咲だろうよ」

「待って、どういうこと」

「--『天命の園』って分かるよな。勇者を元の世界に帰すのを目的とした国家テロ集団が絡んでた。改悪した次元の門開かせて、それ使って勇者を一掃……っていうのが計画だったらしい。『蒼天』が調べた」

 

計都の口から出たビッグネーム二つにいづみは目を白黒させた。

『天命の園』は国際テロ組織であり、その中核には勇者がいると見られる犯罪者たち。

目的こそ勇者を元の世界にという立派に思えるものだが、その手段は善悪を問わない。

彼らにとって必要なのは勇者が帰るという結果であり、その結果が達成されるならいかなる犠牲も問わないからだ。

そして、『蒼天』は情報系において最強の勇者。

世界連合の情報部を若干十六歳で任命された勇者の一人だ。

その異能は『天の目』と呼ばれ、彼に得られない情報は無い。

そんなグローバル視点から見ても目立つビッグネームが関わっていたのだ。

いづみの反応は不思議じゃ無い。

 

「……とにかく、分かったわ。じゃあ、どうするのかしら。また暴走するけど見逃してとでも言うつもり?」

「いんや。今回の処遇は勇者と魔王合同で七咲雪菜の能力を解析し、把握、その後トレーニングして制御する事に決定した」

「……私に少しは話通してくれてもいいじゃ無いの」

 

拗ねたように口をすぼめるいづみに、計都はまぁ、だよな、と頭に手を置いた。

そのまま左右に動かして撫でる動きとする。

 

「……俺たちも急に貰ったオーダーなんだよ」

「……分かった。ワガママは言わないわ。ただし、今日は一日買い物に付き合いなさい」

「了解了解。まずはどこいく?」

「お腹すいたわ。ラクノラルドにいくわよ」

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