ハイスクールD×D~『光』と『王の石』を持つネオ戦士~ 作:ライダー好き(全部)
どうも最後辺りがしっくりこなくて何度か書き直した感じです。
あの場から逃げ出すように去ったAGITΩ、――一誠は近くにあったコンクリートの壁を殴り唇を噛み締める。思い起こす二つの事件、一つは親子を救うつもりが己の心の未熟さ故に少女を守る母親を傷つけてしまった。もう一つは己の心の弱さに打ち勝てず救えた筈の命を見す見す散らしてしまったという2つの後悔。
唯一救えた少女と少年。それがあの二人だとはこの時まで一誠は気がつかなった。
ふと己が殴りつけた壁を見る。コンクリートは砕かれ奥にあったであろう鉄筋も突き破っていた。それ程の破壊をしておきながら自身の身体は傷一つついていない。それが逆に惨めに思えた。
無論、過去の話であり今ほど力強かった訳でもない。未熟なのは承知の上で戦った、しかしそれでも当時敵対した集団、堕天使達に負ける要素は何処にも無かった。それが例え防衛戦であるとしても。
それ程までにAGITΩの力は凄まじかったのだ。
それを活かすことすらできないで、覚悟を決めることができないで目の前で少女の母が崩れ落ちる様を見せられた。少年に希望を託し眠るように散った少女を見せつけられた。
その二つの光景をあの場所で思い出してしまったのだ。
数年前一誠が小学校低学年の頃、とある事件に巻き込まれAGITΩの力に覚醒した一誠はその力を己のモノにしようと鍛錬を始めた。通常時ですら五感が発達し同年代の子供達よりも人一倍運動神経が良かった一誠だが覚醒と同時に更に向上し多少抑えながらでなければいけない程に発達していた。その五感をフルに使用し山奥の森の中を駆け回りAGITΩとなった際の力の把握を行っていたのだ。
そんな時AGITΩの聴覚が女性の悲鳴を捉えその悲鳴の下へと駆け付けた。
一誠が篭っていた山の頂上そこには古い神社が建てられていた。その場所で古風な格好をした集団が黒髪の美しい親子に躙り寄って行く所だった、その腕には日本刀が握られており遠目から見ても切り裂くという概念を感じられる程の名刀だった。
一誠は迷うことなくその親子の前に立ちその男たちと対峙した。
人を拳で殴る、それだけでドレだけの被害を出すか当時の一誠には予想も出来ていなかった。それだけではない、愚かしいことにその時の一誠は憧れていた存在になったという幸福感と優越感に思考が働かなくなっていたのだ。
その結果、自身の一撃でその男の胴体を貫通させ絶命させてしまった。
余りにも呆気ない光景に一誠は暫し硬直し、次第に自身が犯してしまった過ちに気付き震えてしまう。
―他人の命を奪ってしまった。―
前世を含め人の死を直視したことのない一誠にとって自身の行いによってなった死という結果は予想以上の罪悪感を一誠に与えたのだ。声すら出ない、後悔の念に押しつぶされそうになりながらも敵として認識した集団達の攻撃を捌き続ける。数分という短い時間であったが男たちの攻撃を間一髪で躱し、いなし続けて唯々逃げる事しか出来なかった。
それ故に、――――
「朱乃ッ!!?」
斬ッ!!
視界の端で助けようとした筈の女性から赤いあかい鮮血が吹き出していた。
「お母様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあッッ!!!!」
神社内に少女の悲鳴が響き渡る。
「――――ぁっ」
声にならなかった。崩れ落ちていく女性がやけにゆっくりに感じていた。
誰のせいだ?どうしてこうなった?――――俺のせいだ、俺が迷っていたから彼女が傷ついた
一誠はその事実に彼の中にあったナニカが音を立てて崩れ落ちていくのを感じた。
微動だにしない一誠に好奇と感じた一人の男が斬りかかる。その刃を無意識に掴み、そして握り潰してしまった。男は名のある名刀がいとも簡単に砕かれたという事実に驚愕していたが一誠はその手を見て笑いがこみ上げてきそうになった。
(これだけの力があるのに、俺は女性一人すら救えないのか。こうやって簡単に武器を握り潰せるのに、少女一人すら守ることすら出来ないのか!?)
それはやがて怒りとなり男たちにぶつけていく。
理不尽だ、理解している。自身のミスを棚に上げた行動だ、先刻承知だ。
だがそれでも今はそれを貫き通す。
一誠は男たちに一撃一撃確実に拳を叩きつけて絶命させていく。
(恨め、憎め、嘆け、そして俺を嘲笑え。同じ穴の狢だと罵倒しろ。――だが二度と迷わない。俺はもう逃げたりはしない、俺はお前たちを殺す。俺は戦う!!)
―――――――終わってしまってみれば呆気ない結果だった。
男たちは全員絶命し一誠は無傷。しかし未だに母に駆け寄り揺さぶる少女に声をかけてやることすら出来なかった。
一誠はそんな彼女たちに静かに近寄る。ナニカが近寄る気配を察したのか少女は振り向き母を守るように前に立ち通せんぼする。
瞳には大粒の涙をためながら気丈に仁王立ちしていた。その姿に一誠は心を打たれた。
自分よりも遥かに弱い筈の少女が自分よりも遥かに気高くある事実に愕然としたのだ。
それを見た一誠は直ぐ様少女と女性に駆け寄りどうにかして女性の傷を塞ごうとする。
一瞬にして近づいたモノに少女は震えるが母を抱き寄せ傷を塞ごうとしている姿を見て何も言えなくなっていた。
(何か、何かないのか!?この人を救う手立ては俺にはないのか!)
傷を塞ごうにも切り裂かれた傷跡は深く未だに血が絶えず流れている。
「頼む・・・・・・・・頼む」
「―――ぇ?」
声がマスクから漏れてしまう。初めて聞く仮面の男から聞こえる少年の声に少女は戸惑いを感じたのだ。
(何も出来ないのか!?これだけ強い力があるのに俺は女性一人の傷すら癒せないのか!!)
「頼むよ、・・・・・・・なんでもいい」
(彼女を、助けてくれぇぇぇ!!!)
そのとき、不思議なことが起こった。
一誠が当てている手からAGITΩとは違う「光」が発せられていったのだ。その「光」はやがて女性を包み込みそして切り裂かれた筈の傷を癒したのだ。
・・・・・・・・・・・・・だが、女性は一向に瞳を開けずに横たわったまま。
傷が癒えたことに少女は微かな喜色を浮かべるも一向に動かない母に目を覚まさせようともう一度揺さぶりをかけた。
「お母様、起きてください。お母様っ」
一誠は後ずさってしまった。
確かに傷は癒せた。しかしそれで女性が目を覚ますことはなく依然と結果は変わらずに母にすがりつく少女の姿を呆然と見つめ続ける事しか出来なかったのだ。
嗚呼、何て無力なんだ・・・・
そう無感情に感じていると突如上空から光の槍が降り注いできた。
その光では一誠を傷つけることはできない。しかしその衝撃だけで一誠を親子から引き離すのには充分な威力だった。
「朱璃ッ!朱乃ッ!!」
一人の堕天使がその親子に駆け寄る。そしてその女性に付着している血の跡、切り裂かれた衣類を見て硬直し、そして憤怒した。その怒りをただ立ち尽くしていた一誠に向け、
「貴様ぁぁァァァァァァァァァァァァッッ!!!」
悲愴感を感じる雄叫びが再び一誠に現実を突きつけてきた。
何度も光の槍を投げつける堕天使、それを避けようとせず、しかし一切のダメージを負わすことができない。何とも滑稽で惨めな光景、しかしそれが一誠の心に更に深く突き刺さった。
そして、堕天使は怒りのままに一誠を殴りかかる。何度も何度もただ受けるだけの一誠に血で傷ついた手で殴り続けた。最後の一撃としてありったけの魔力を込め腹部に拳を振り下ろす。
「ガッ!?」
その一撃により神社から吹き飛ばされ階段から転がり落ちていった。
「やめてッ!!」
少女の悲鳴がその堕天使の動きを止める。最後に一誠が目にしたのは堕天使の足にしがみつき動きを止めようとする少女とその少女に困惑しながらも抱きしめようとする堕天使の姿だった。
その後、どうやってその場から離れたのか覚えていない。いつの間にか一誠は寂れた建物の影で倒れていたのだ。
「う、うぅぅぅぅぅ」
一誠は泣いていた。痛みでではない、自身の不甲斐なさに涙を流していた。
「うぅうう、うぅぅぅッ!」
浮かれていた、慢心していた。そんな言葉で済まされない後悔に一誠は無様に地べた伏せ声を噛み殺して泣いていた。それしかできなかったのだ・・・・・・・・
その日から一誠は何がなんでも『AGITΩ』の力を極めようとした。その日から日が沈むまで肉体を痛め続け、剣術・槍術・武術を学び続け、高校に上がるまで必要最低限での人間関係を続けていた。
それは両親さえも同様でその結果二度目の後悔を味わう事になる。
それは中学2年のことだった。その日自身を鍛えるために山篭りしかしていない一誠に不安を覚えた両親によって無理やり旅行に連れて行かされた。当時の一誠は精神的に不安定でそんなことよりも己を鍛えておかなくてはというある種の脅迫概念に悩まされていた。
そして旅行先の九州に向かいそこで両親にはぐれ悪魔が襲いかかってきたのだ。それを察した一誠は二人には隠れて変身した。そのまま戦いに入った一誠だが相性のいいはぐれ悪魔戦で目潰しの毒霧を吐かれて逃がしてしまう。そして変身を解除したところを両親に見られてしまったのだ。その時の両親の表情を見てしまった。未知の存在に恐怖した顔、『バケモノ』を見て怯えた顔をしていた。
その瞬間一誠の身体中からサァーと血の気が引いていった。
見られた、それがどれだけ恐ろしいことか一誠は嫌でも理解していた。先ほどまでの自身の姿は人とは決して言えない『バケモノ』だ。自分の子供がバケモノになって同じバケモノと戦っている。それを受け止められる者はそうそういないだろう。現に両親は顔を強ばらせるだけ一誠に近寄ろうとしなかった。
それを一誠は察してしまったのだ。もうここに居場所は無いと、そう悟ってしまったのだ。
一誠はその二人から逃げるようにその場を去ってしまった。後ろから掛けられる声を無視して山道を駆け巡り只管走り抜けたのだ。
―――――どれだけ走り続けたのかは解らない。
確か1日は走り続けた気がする。衣類はボロボロで泥だらけになっている、それだけ山の中を駆け回っていた。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、・・・・・・・・・・・・」
息を整え近くにあった木にもたれ掛かる。その感触を感じながらこれからどうするかと漠然と模索していた。
最初はバレてもいいと、自身の正体を知られてもいいと考えていたんだ。しかし戦っていく内に一誠は考えてしまった、「奴等(堕天使やはぐれ悪魔など)と俺の違いはなんだ?」と。
『光』の力を使える?人を食べない?正義のためにこの力を使用している?
(―――――そんなチンケなものではない。基本的に同じなのだ。「俺と奴ら」は同じ『バケモノ』でしかない。普段ですら簡単に人の命を奪えるだけの力を持っているのだ。こんなのが正義ヅラして暴力を振るい続けているのだと。とんだお笑いだ、あの時の後悔を忘れないために力をつけていたハズなのに何も変わっていないのだから。――――――道化もいいところだ)
肉親にバケモノの姿を見られた、それだけでこんなに狼狽し自分すら見失ってしまっているのだ。
確かに戦い方を覚え力の能力の一部を使えるようになった。
―――だがそれだけだ。それ以外で変わったことなど何処もない。
どれだけ戦っても、どれだけ身を犠牲にしても皆から向けられるのは嫌悪のみ。そして否定的な発現だけが一誠にかけられるのだ。
存在しないはずの人々からの罵声、一誠はその中に自分の0両親の姿を見てしまった。
想像してしまった。それ故に心の何かが折れるような音が聞こえた。
―――――――――もう嫌だ。こんな苦しい思い耐えられない。
一誠はその場に座り込み膝を抱える。そのまま俯き動かなくなる。
もうこのままこの場で朽ち果てたいそう感じてしまう程に今の一誠は疲労していたのだ。
しかし、運命は一誠に安らぎを与えようとしない、更に追い詰めるように戦いに投じさせようとしていた。
俯くのと同時に悲鳴が聞こえたのだ。声からして男と女どちらも若く自身と同い年位ではと一誠は感じた。
だが・・・・
(関係ない、もう何もしなくていいじゃないか)
心が折れた一誠はその悲鳴を聞こうとは思わなかった。
寧ろ助けたところで何になる。助けてもきっと『バケモノ』と呼ばれるだけだ。
(だいたい今までもそうだっただろ、助けた筈の人から石を投げつけられたこともあったじゃないか)
過去に起きた戦いを思い出し歯を噛み締める。
今よりも前にはぐれ悪魔に襲われた少年を助けたことがあった。その時彼の目の前でそのはぐれ悪魔を倒し少年の身の安全を確認しようとした。だが、――
『バケモノッ!!』
少年から向けられた言葉は感謝ではなく自分に恐怖し怯えからくる罵倒だけだった。
元々誰かを助けて褒められたかったのではない。だが助けた筈の人物に自身を否定されてしまうというのは想像していたことよりも苦痛だった。
その言葉を受け一誠はその少年を残してその場から去ってしまった。逃げてしまったのだ。
そして同じように誰かを助け、その度に否定された。罵倒されてきた。
そして今度は両親にすら―――――
(だからもういいんだ・・・・・・もういい、何もしなくていい)
まるで自分に言い聞かせているかのように何度も何度も心の中で呟く。
・・・・・・・・・・・・・・しかし、
(もういいって言ってるのに、なんで動いてるんだよッ!)
その心とは裏腹に一誠は立ち上がっていた。そしてその声の方向に一歩、また一歩と歩みを進めていた。
(なんでだよ、もういいじゃないかッ!?否定されるだけだ、今までのことも何もかも否定されるだけじゃないかッ!!なのに、どうして動いてるんだよ!止まれよ、バカじゃないのか?!)
声にする事すら出来ずただ只管歩みを進めていく。次第にその歩みは走りとなり腕を振って森の間を駆け出していた。
馬鹿げている、理解できない。自身のことでありながらそう考え罵っていた。
それでも止まらない、まるでその走りこそが本当の本心であるかのように――――
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」
少年の絶望に歪んでいくような悲鳴に一誠の頭の中が真っ白になった。
「変身ッ!!」
ただその言葉だけを残して・・・・・。
気がついたら自身は血に塗れになっており地べたには堕天使であろう黒い羽が数枚散っていた。それだけで一誠は何をしていたのか理解した。
―――アァ、タタカッテイタノカ―――
感情の篭っていないような言葉が脳裏に浮かび上がっていた。
後ろでは少年が少女を抱きしめ必死に声をかけていた。
その少女に外的の傷はない。しかしその口から溢れ出る大量の血が彼女の身体がもう持たないという事実を教えてくれた。
―・・・・・マニアワナカッタノカ?―
一誠はあの日の光景を思い出す。
崩れ落ちた女性に駆け寄る少女、その二人の姿を・・・・
そんな二人に駆け寄ろうとして、足が止まる。また罵倒されるかもしれない、嫌悪されるかもしれない、そう感じたのだ。そう思った一誠は彼女の元に向かうことが出来なかった。
少し離れた距離から二人の話声が聞こえるだけ、その距離がどうしても踏み込めない区切りに一誠は見えた。
「お願い、生きて。生きて私達の―――」
少女は血を吐き出しながらそう呟きそして眠るように瞳を閉じる。
「あ、あぁぁぁ・・・・うぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!」
少年はその少女の亡骸を抱きしめ泣き叫ぶ。それを一誠は何も口にすることが出来ずただ見守ることしか出来なかったのだ。
そんなときだ、一誠は目の前の光景に驚愕した。少女の体から白い光の球が抜け出たと思うとそれは倒れている少女の姿を形どったのだ。
そして少年を見守るように眠った少女の魂が少年を包み数秒して離れていく。その合間に少女が俺に目を向けた。
―――ありがとう、天使様―――
そんな声が聞こえた気がした。
一瞬何を言われたのか分からなかった、しかしその言葉の意味を理解したとき一誠は脱力してしまった。
何故俺なんかに礼をしたのか、寧ろ恨まれても仕方がないことなのに。
一誠の能力ならば彼女を苦しめていた原因を治すことが出来ただろう。しかしそれが出来なかった、「恐れられる」ことを恐れる余りに動くことができなかったのだ。そんな自分に何故少女はありがとうなどと声をかけて逝ったのだろう。
一誠はその時理解できなかった。彼女の真意に、彼女は託せたのだ。肉体を毒に汚され残り少ない命となっても自分を覚えてくれる少年に託すことができたのだ。
それだけの時間を一誠は与えることができた。
それで十分だったのだ、少女はそれだけでもう満足していたのだ。
それを理解出来ず一誠は呆然と少女を抱きしめる少年を見つめる。
暫くして、少年は少女の肉体を背負い立ち上がり、一誠の方を振り向いた。
「・・・・・・・・・・」
「ッ!?・・・・・・」
ビクッと肩が震えた。俯いたままの少年に一誠は恐怖したのだ。どんな悍ましいバケモノと戦ってきた一誠だったがそのどれよりも目の前の少年が恐ろしかったのだ。
またバケモノと呼ばれる、そう思い顔を強ばらせて俯く。
しかし―――
「ありがとう、・・・・・・・・ございます」
「え?」
少年の言葉に硬直し困惑した。少女に続いて目の前の少年、その二人の感謝の言葉に一誠は理解できなかった。
「彼女の、最後の時間を穏やかに過ごさせて下さりありがとうございました」
涙でグシャグシャになりながらも必死に笑顔を作ろうと顔を歪ませる。
不格好なその笑みが何故か先ほどの少女と重なったのだ。
その言葉に漸く彼が、彼女が浮かべた笑みの理由を理解した。
彼らは自分のことなんて端から考えていなかったのだ。
少年は少女を救おうと必死になり、少女は少年を生かそうと必死になっていた。そこに一誠が現れ彼等の窮地を救ったのだ。そのための感謝だった。
一誠はふと己の行ってきた行動を思い返した。「俺は今まで誰かのために戦っていたのか?」と。
最初の変身以外は全て己の行動を肯定させようと、あの時の悔しさを払拭しようという考えで行動していたのだ。
心の底から誰かを思った行動ではなかった。
それじゃあ怖がられても仕方がない。俺は今まで「守る」ではなく「壊す」しかしてないのだ。
そんな姿じゃ怯えられ嫌われても仕方がなかった。
数年経ってようやく理解したのだあの時本当にしなければいけなかったことを。
なんとも間抜けな自嘲の笑みを浮かべていただろう。
しかし、そんな合間にも堕天使達の集団が更に近づいていた。それを察した一誠は今度こそ背を向け構えを取る。そして、―――――
「―――行け」
「ぇ?」
少年に向かって逃げるように言った。少年は戸惑ったような声を出すも暫く一誠の顔を見て静かに頷く。そして少女の亡骸をしっかりと抱きしめその場から走り出していった。
「ありがとう、天使様」
その一言だけ残して・・・・・・・・・・
「生きろ」
一誠は言った、もう見えないであろう少年に向かって・・・・
「生きろッ!」
一誠は祈った、これから少年に待ち受けるだろう過酷な未来に安らぎを・・・・・
「生きろォォォォォッッ!!」
戦うことしかできないからこそ、一誠は叫んだ。誰かを守るために今度こそ後悔しないために。
愚かな自分のせいで少女の母が倒れた。愚かな自分のせいで自分よりも高潔な魂が天に召された。
一誠はベルトから剣と槍を引き抜き少年を殺すために来た堕天使達と対峙した。
今度こそ誰かを守るために。例え否定されても、恐れられてもそれが誰かの笑顔を守れると信じて。
ベルトが己の想いに答えてくれたかのように激しく金と赤と青が同時に激しく輝いた。
―――――その日、真の覚悟を決めた一誠は正しく『AGITΩ』となった。
それが一誠の罪、そして今の一誠を作り出した原点。
その後、両親達ともう一度顔を合わせ少々厄介事があったが再び家族としての絆を取り戻すことができた。
戦いに関しては両親から反対されたが一誠の持つ力故に争いを呼び込んでしまう。そのためには力をつけなければならない。という説得により両親は涙ながら了承するしかなかった。
当然その言葉を信じたわけではない。ただその時の一誠の瞳の奥にある覚悟を見てしまったのだ。
何を言っても決して変えることのない信念を感じてしまったのだ。
そして今日、一誠は自分が生み出してしまった被害者達と再び対面した。
覚悟は決めた、力もつけた、経験も積んできた。
だが彼等と顔を合わせると思うと足が竦んでしまうのだ。
一誠は胸の内に渦巻く感情を無理やり抑えて再び歩き始めた。
そのような心境故に注意散漫になっていたのだろう。角から現れた少女とぶつかってしまったのだ。
「―――ッ!ご、ゴメンね!?」
「―――!?」
その少女は流暢な英語を話しコチラの責任だと謝罪していた。
幸いなことに一誠はその英語を理解できたため同じく英語で彼女と会話しだす。
自身と同じ言語を話せる人と出会え少女の表情が明るくなった。恐らく今までまともに英語を話せる人物たちに出会えなかったのだろう。
「改めてすまなかった。俺は兵藤一誠だ」
「こちらこそ申し訳ありません。私はアーシア、アーシア・アルジェントと申します!」
シスターの服に身に纏った少女、アーシアはそう笑みを浮かべて言った。
今回で一誠の戦う意味と信念を持たせました。
これによりテレビで見ていた特撮ヒーローとしての覚悟ではなく何が何でも守りぬくという己の『覚悟』をさせるためですね。
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