転生
「……」
ここがとある漫画の世界だと認識したのは、生まれ落ちてから2年の時が経ったある日だった。
(……ONE PIECE)
誰もが知っていた、世界的な創作。そこに生まれたという認識が、まだ頭に追いついていなかった。
言葉も拙く、親代わりの男との2人暮らし。
「ショウ、ご飯だぞ」
「あい」
そして、生まれはワノ国だ。そこの、ボロボロの村の一軒家。
「ごめんな、父ちゃんまたしくじっちまった。この木の実くらいしか……」
そう言って俺の目の前に置かれたのは、禍々しく毒々しい紫色の、人の頭くらいの大きさの実。十中八九、悪魔の実だろう。
「ぱぱ」
「先に食え。父ちゃんは大丈夫だからな」
大きく腹が鳴っている父に譲ろうとしても、父は受け取らなかった。根負けして結局食べたが、やはり悪魔の実。不味い。でも、これくらいしか食べるものがないから我慢するしかない。
「うえ」
「そうか、美味しくないか。……ごめんなぁ」
「ううん」
寂れた家でやせ細っていく父を見るのは、そしてそれを幼い体ゆえに見守ることしか出来ないのは、歯痒い。
(強くなりたい)
そんな想いが生まれるのは、当然だった。
あと2年。4歳ほどになれば、父の庇護下からある程度は自由になる。それで、鍛錬をしよう。体力をつけて、体術を修めて、悪魔の実の能力を理解する。
「ぱぱ」
「どうした、ショウ」
「おれがんばる。ぱぱたすける」
「そうか!そいつぁ父ちゃん嬉しいよ!」
嬉しさの中に、ほんの少しの悲しさと悔しさの混じった目で、俺を抱きしめて撫でてくる。ほんとうに、俺にはもったいない親だ。
「でもなあショウ。おれはお前の父ちゃんだ。ショウのことを守らなくちゃいけない。でも、お前がでっかくなって、強くなったら──その時は、俺じゃなくお前のために力を使ってくれ。父ちゃんは強いからな!」
たとえ見栄っ張りでも、やせ細った背中は、とても大きいものだった。子供から見ても、精神的な面で見ても。
だから、悪魔の実を食した数ヶ月後に空腹で餓死した父の亡骸を見て、とてつもなく悲しんだ。
(……強くなるよ、父さん)
どうか、俺を見守っていてくれ。
時が経って、4年後。この4年の間に、劇的な事……国がひっくり返るようなことは、起こらなかった。白ひげがやってきたり、おでんが死んだり、麦わらのルフィがカイドウを倒したりはしなかった。変わらない日常。
それでも、変化はあった。
「『
ヒトヒトの実、モデル"両面宿儺"……。俺が食った悪魔の実の力は、どうやら呪いの王のものだったらしい。
確かに日本書紀や飛騨のほうでも色々と記述があったが、流石にこれは転生特典と言ってもいいのではないだろうか。
「……形態変化ももう慣れたな」
動物系の悪魔の実ということで、もちろん形態変化が存在する。人型は言わずもがな、獣型が完全体の宿儺、人獣型はあの入墨が浮かび上がるもの。一応宿儺としては獣型が一番力を引き出せるが、人としての鍛錬をするに越したことはない。そのため、鍛錬はずっと続けている。
(……海に出るか?)
新世界で生きていくには、まだ早いかもしれない。でも、少し無理をすれば凪の帯を抜けて、北か西に抜けられる。
「
ワノ国の地形は独特だ。巨大な滝の上に成り立っている国で、国内と海とで高低差がある。その高低差を解消するために作られた「
その港は、白舞のほうにある。
「そうと決まれば出発だな」
殆ど何も持たない身軽な格好ではあるが……まぁ、ちょいと盗めばある程度生活はできるだろう。
「行くか」
その一声と同時に、俺は地を駆けた。