「アイランドクジラ……なんでここに?」
「それには訳がある。ある日私がいつも通り、ここで灯台守をしていると……意気揚々と海賊がリヴァースマウンテンを降ってきた。そして、その海賊を追うように……1匹のクジラが降りてきた。まだ小さかった、ラブーンだ。アイランドクジラの群れから逸れたのだろう」
とある海賊。俺はそれを知っている。ただの原作知識。あってはならないはずのイレギュラーがここにいるからこそ、成立しているもの。
……ルンバー海賊団。
「西の海ではそいつらと旅をしていたらしくてな。偉大なる航路は危険だからと、置いてきたつもりだったらしい。だが、ラブーンにとって仲間とは群れや親ではなく、彼らだったのだ。……船が故障して数ヶ月岬に停泊していたとき……もうわたしも随分と、彼らと仲良くなっていた。その時、頼まれたのだ」
ブルックはおそらく、まだ魔の三角地帯で、スリラーバークで囚われているだろう。必ず……事が運べば、ルフィがブルックを助ける筈だ。
「2、3年、こいつを預かってくれないか。この海を一周して、必ず戻ると」
「こいつが時々吠えるのは、そういう理由か」
「ああ……だが現実は残酷かな。もう50年は昔の話だ」
「!!」
「そんなの……!!もう死んで──」
「言うなロー」
「……まだラブーンは、帰りを待ってる。間違いなく居ると、信じている。それを壊すのは……俺たちの役目じゃない」
「……っ、でも……」
「でもじゃない」
その役目は、俺ではない。
「わかった」
「なら、待たせてやろう。思う存分、こいつが死ぬまで」
「そうか……。ありがとう」
クロッカスが礼を言う。
そして、気づいたように俺に聞く。
「……そういえば、船長は君なんだよな?」
「ああ。俺だ」
「……海賊団の名前と、船の名前を教えてくれ。少し君たちが気になった」
「……ん?」
あれ……名前、決めてなくないか?
「まずいな、決めてないぞ」
「そういやそうじゃねェか!!」
「なんと……海賊が名前を持たずしてどうするのだ。海賊旗もないと言うのに」
ごもっともな指摘だった。
もしかしたら、俺は心のどこかで海賊になることを恐れていたのかもしれない。
「……そう、だな。俺たちはこれから、『ヘックス海賊団』として船を進もう」
由来としては、『Hex』……魔女などがやる、呪術的な呪いを意味する単語から来ている。
「おおおおおおお!!!」
「さすが船長!!ネーミングセンスバッチリじゃないですか!!」
「ありがとう。……しかし、船の名前か」
船の名前……あ。
「なあ、この船に今乗ってる人数って何人だ?」
「え?それはショウとおれとローとフェリィさんと……あとはエドラムの奴らが10人だろ?合わせて14人だ」
「……そうか」
14、14……14にまつわるものか。
確かアメリカのギャングが、忠誠を誓うために彫ってたタトゥーの数字があったな。頭文字の『N』がアルファベットの14番目だから、14と。
「ノルテニオス」
「え?」
「ノルテニオス号だ」
格好いいだろ。
そう言った俺に、ロシナンテはぽかんと口を開け、その後笑った。
「いいな!ノルテニオス!!」
「それで行こう!」
「あ、海賊旗ならおれが描きました!!」
どうやらフスカが海賊旗を描いてくれたらしい。
デザインを見ると、これがなかなか良いものだった。
2対の目と、頬にもうひとつ口のあるドクロ。後ろに描かれるばつ印の骨は、俺の4本腕になっている。そして、黒い布の背景にはローマ数字で『14』……『XIV』が刻まれている。これ以上俺たちを表す海賊旗はないだろうな。
「流石だ、フスカ」
「ありがとうございます!!」
「いい旗じゃないか、ショウくん。これで君も、本格的にお尋ね者だぞ」
「構わない。……俺は、俺のやりたいようにやるだけだ」
「ありがとう、クロッカス」
「ああ。ログも溜まったようだな。行きたい島は指しているか?」
「大丈夫。ちゃんと指してる」
「よし……準備は出来たなお前ら!!」
船員の大声が船に響く。
「ヘックス海賊団……出航だ!!」
「「「「おおおおおおおお!!!!」」」」