「着いたな」
「ああ。だが……」
そこは、ナガメルーン王国の沿岸にあるとある港。
……いや、
「……人1人いねェ」
「それどころか家すら建ってないぞ。港だよな……?」
「オーシ・ヤン島は夏島だ。この辺りでしか獲れない魚もいて、輸出業でも栄えてた。……その、はずなんだがな」
澄んだ海を覗けば、そこにあるのは砂と海藻類。魚はおらず、ただただ美しい海が広がるばかり。
「不気味だな……」
「……ロシナンテ、ここのログはどれくらいで溜まる?」
「ざっと1週間」
「わかった。上陸するぞ」
もちろん物見櫓や監視などいるわけがなく、容易に碇を降ろして島に立つことができた。
「……人どころか、生物の声すら聞こえねえな」
「どうなってる。ここは本当にナガメルーン王国なのか?」
「ああ。海図でもその通りに書いてある。……間違いなく、ここはナガメルーン王国だ」
「……っ、わけわかんねえなほんと」
「進むぞ。このまま行けば人がいる可能性がある。どのみち1週間はこの島に滞在しなきゃならないんだ、今は探すほうがいいだろう」
「……そうだな、キャプテン」
「……ざっと20kmは歩いたな」
「やっと、街に着いたか……」
ナガメルーン王国。世界政府加盟国であり、この辺りの海域でしか取れない海産物をよく輸出していた。……だというのに、ここ数年交易や国交は断絶状態。世経*1が掴んだ情報は、王が代替わりしたということだけ。それにより何が変わったのか知らないが、かなり不気味だ。
「流石に、出てくるよな」
街は壁に阻まれている。恐らく城壁みたくぐるりと囲んでいるのだろう、門の近くに駐屯所もある。……そこから、2人の兵士が出てきた。海兵はいない。
「……手を出すなよ」
「キャプテン?」
ロシナンテの疑問の声を気にすることなく進む。
「『人斬り小僧』だな」
「2億の首を目の前にして、動じないか」
「我々は、この門を、この国を守る兵である。貴様を通すわけにはいかない」
「海軍はいないのか?」
「居ない」
「正義に意味はないと?」
「ない。あるのは愛国心のみである」
……洗脳とかではなさそうだな。こいつらは単純に、規律を重んじてるだけだ。少し忠実すぎて困るが。
「……民間人という体ではダメか?」
「無理だ。賞金首を国内に入れるわけにはいかない」
「……あの港は国のものじゃないのか?」
「国王がお捨てになった土地である」
「……わかった。また来る」
「未来永劫、ここへ来ることは許されない」
あまりにも不気味だ。何が起こってる。
(この調子だと、外から来た人々は残らず閉め出されているかもな)
遭難したと誤魔化す術もなさそうだ。入れられないの一点張りだな。
「どうする、キャプテン」
「幸い、森がある。野宿と行こう」
「ログ溜めるとき、船乗ったらダメだもんなー」
結局その日は寝床の確保をして、硬い木の上で眠った。
翌朝。
「助けてくれェ!」
漸く、なにか手がかりが掴めそうだ。