エオルゼアに転生したけどヒカセンじゃなかった   作:からめる

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第04話 深い雪と深い森

 イシュガルドの大審門を抜けると、目の前には再び白一色の世界が広がっていた。チョコボ達と共に、クルザス中央高地への道を進んでいく。振り返れば、白亜の尖塔がだんだんと小さくなっていく。あの街でのことを思い出すと、まだ胸の奥がちくりと痛んだ。

 

 肩の上に乗ったおしえるくんが、風でぐらつきながらも器用にバランスを取っていた。目を細めて、遠くの雪原を見つめている様子は、いつになく静かだった。

 

「先生、最近よく肩とか頭に乗ってるよね」

 

「さて、何のことでしょう」

 

 はぐらかすように答えるけれど、私は薄々気づいていた。きっと、高地ドラヴァニアで狼から雛チョコボを助けた時、置き去りにしてしまったことを気にして、対策しているのだろう。

 

(……ヒカセン達がミニオンを頭や肩に乗せて連れ歩いているのを見て、真似しているだけかもしれないけれどね)

 

 ちなみに見た目より軽いのは、持ち運び用に重量軽減の魔法がかけられているかららしい。おかげで、肩に乗せていても、肩が凝ったりすることはなかった。

 

 やがて空模様が怪しくなり始め、あっという間に吹雪へと変わった。真っ白な粒が横殴りに吹きつけ、視界がどんどん奪われていく。

 

 シロお姉ちゃんのお下がりの防寒具を着込んでいても、頬を刺すような寒さは容赦なく身体に染み込んでくる。サイズが少し大きいその防寒具は、彼女の優しさを思い出させてくれるけれど、寒さそのものを防いでくれるわけではなかった。

 

「さむ……っ」

 

 視界が白く霞む中、チョコボの首にしがみつくようにして進んだ。二羽も、心なしか首をすくめて歩みを進めている。誰も好きこのんで、こんな悪天候の中を歩きたくはないだろう。時折、おしえるくんが「もう少しの辛抱です」と声をかけてくれるのが、唯一の慰めだった。

 

       ◇

 

 クルザス中央高地の魔物達は、ドラヴァニアのそれと比べると、それほど恐ろしくは感じなかった。遠目に見える狼や鳥型の魔物も、動きの速さこそあれ、以前のように足がすくむような恐怖は感じない。

 

 一対一なら、今の私でも戦えなくはなさそうだ。それでも、この雪と寒さの中で自分から攻撃を仕掛けたり、倒したあとに素材を集めたりする気には、とてもなれなかった。指先の感覚すら怪しくなるこの寒さでは、戦って成長するより先に凍えてしまう。とにかく早く、暖かい場所に辿り着きたい。それだけだった。

 

 途中、キャンプ・ドラゴンヘッドに差し掛かったけれど、あまり長居はせず通り過ぎることにした。

 

 ニーズヘッグと竜達の襲撃の報せが届いているのだろう、兵士達は皆、慌ただしく防衛の準備に追われていた。矢羽根を束ねる者、投石機に油を差す者、伝令が慌てて駆けていく音。物々しい空気が、キャンプ全体を包んでいた。竜の群れの影を思い出し、私は思わず身を縮めた。あの光景が、この場所にまで及んでくるのかもしれない。

 

 その騒がしさの中、何人ものヒカセン達が、同じ建物の扉の中へと吸い込まれるように入っていくのが見えた。私は少し離れた場所から、その様子をじっと見つめる。防衛準備に追われる兵士達の中を、ヒカセン達だけが、まるで別の時間軸を生きているかのように、落ち着いた足取りで歩いていく。

 

(あの建物……)

 

 記憶の奥に、見覚えがあった。たしかあそこは――メインストーリーで何度か訪れることになる、オルシュファンの応接室。通称「雪の家」。暖炉の火が絶えず灯り、いつも誰かを温かく迎え入れてくれる、そんな場所だったはずだ。

 

 開いた扉の隙間から、中の様子がちらりと覗けた。ヒカセン達が、誰も座っていない椅子に向かって、親しげに話しかけている。時折、笑い声も上がっているようだった。

 

 FF14は、プレイヤーのクエスト進行度によって、マップ上で見える光景が違う。この世界でも同じ仕組みが働いているのだろう。NPCである私の目にも、その椅子はやはり空席のままに映っていた。きっとこれから先も、私の目には、あの人が座る姿は決して映らない。分かっていたことのはずなのに、実際にこの目で確かめると、思っていた以上に胸に堪えた。

 

 前世の記憶の中で、あの人の声を何度も聞いた。明るく軽妙な口調で、それでいて誰よりも仲間を大切にする、そんな人だった。ヒカセンとして彼と冒険を共にしたヒカセン達を、少しだけ羨ましく思う自分もいた。

 

(今抱えてるこのモヤモヤを、自分の中でちゃんと消化して、もっと強くなれたら――お墓参りに、行こう)

 

 前世で、同じくらいの進行度で同じようにショックを受けていたフレンドと、示し合わせてお墓を探しに行ったことを思い出す。

 

 今度はこの足で、この目で、ちゃんと確かめに行きたい。誰かと一緒にでなくても、自分の力で辿り着けるくらいには、強くなってから。そんなことを思いながら、私はキャンプを後にした。

 

       ◇

 

 親チョコボの背に揺られて駆けているうちに、いつの間にか吹雪が止んでいることに気がついた。視界を遮っていた雪と氷の壁を越えたその先には――

 

 急激な気温の上昇と共に、立ち並ぶ大きな木々、多様な植物、虫や動物達の気配で満ちた深い森林が広がっていた。そうか、これが、黒衣の森。

 

 厚手の外套を慌てて脱ぎながら、私はその変化に何度も瞬きをした。ついさっきまで凍える吹雪の中に居たとは思えないほど、湿った緑の匂いと、鳥やら虫やらの鳴き声が辺りに満ちている。

 

 相変わらず、マップが切り替わるごとに気候ががらりと変わることには感動してしまう。それと同時に、この気温差で風邪を引かないか、少し心配にもなった。

 

(ヒカセンなら、状態異常のデバフ以外で体調を崩したりしないんだろうけど……NPCの私は、どうなんだろう)

 

 前世では何度も体調を崩した記憶があるけれど、この身体になってからは、一度も風邪を引いた覚えがない。もしかしたら、この世界に来てからずっと体が丈夫なだけかもしれないし、単に今まで運が良かっただけかもしれない。どちらにせよ、確かめる術は無い。それでも、もし何かの感染症にかかって、院のみんなに移してしまったらと思うと、ぞっとする。街に着いたら、先生にエスナを教えてもらおう。そう心に決めた。

 

       ◇

 

 木々と植物が生い茂り、思っていた以上に進みづらい。クルザスは一面の雪景色だったけれど、視界だけは開けていて見通しが良かった。この森は、頭上まで葉が生い茂り、昼間のはずなのに薄暗く、影が濃い。

 

「先生、道案内、お願いできる? 自分だと地図見ながらでも、グリダニアまで辿り着ける自信がない」

 

「承知いたしました。この程度、造作もございません」

 

 地図を広げておしえるくんと道を確認していると、暇を持て余していたらしい親チョコボが、飛んできた虫型の魔物を嘴と足であっさりと仕留め、雛と分け合って食べ始めた。バリバリという小気味良い音が、静かな森に響く。

 

「――野菜や木の実以外も、食べるんだ……」

 

 思わぬ一面に驚きつつ、確認を終えて再び歩き出す。木漏れ日の下、雛が満足そうに小さく鳴きながら、私の後をついてくる。ところが、地図にあったはずの道に、大きな木が生えていて通れなかった。

 

「そんなはずは……」

 

 おしえるくんも珍しく困惑した声を上げる。もう一度地図を確かめようと振り返ると、今度は来た道の方にも、さっきまで無かったはずの木が立っていた。

 

(――まさか)

 

 ようやく気づいた。木に擬態したトレントだ。周囲を見渡せば、確かに何本もの「木」が、微かにこちらへ向けて枝のようなものを蠢かせている。

 

「戦闘準備!」

 

 剣を構え直し、大ぶりな木の魔物に向けて、覚えたばかりの範囲魔法――炎の渦を放つ。

 

 木は大きかったので、確実に仕留めるために火力を上げすぎたのがまずかった。炎は瞬く間に周囲へと燃え広がり、あわや山火事かと肝を冷やしたけれど――燃え広がった先の木々もまた、ほとんどがトレントやドライアドの擬態だったことに、その時ようやく気がついた。悲鳴のような軋み声が方々から上がり、慌てて距離を取りながら追加の炎を放つ。動きの遅い相手だったのが幸いして、大きな怪我をすることなく、何とか全て片付けることができた。

 

 どうやら、擬態と誤った判断のせいで、数時間も同じあたりをぐるぐると彷徨っていたらしい。すっかり煤だらけになった手のひらを見つめながら、私は大きくため息をついた。モンスターの頭上にネームプレートが見えないことと、ゲームの頃と違って常に一人称の視点であることが、擬態に気づけなかった原因なのかもしれない。

 

(もっと観察して、モンスターについても、ちゃんと学ばないと)

 

 イディルシャイアに帰ったら、シャーレアン製の魔物図鑑を、もう一度読み直したい。木の擬態、岩の擬態、水面に潜む者達――思い返せば、ゲームの頃にも似たような仕掛けはいくつもあった気がする。それなのに、いざ自分の身に降りかかると、まるで初めてのことのように戸惑ってしまった。そう心に留めながら、燃え尽きた木々の残骸を後にした。おしえるくんも、珍しく少し反省したような声で「ワタクシとしたことが、迂闊でございました」と呟いていた。

 

 その日はすっかり日が暮れてしまい、森の中で野営をすることにした。焚き火を囲みながら、おしえるくんに今日一日の反省点を色々と指摘される。トレントの一件について、特にお説教が長かった。

 

「今後は、周囲を観察する癖をお付けなさい。見た目に惑わされず、気配や違和感を大事にすることです。そして炎の魔法はとても強力ではありますが、時に自信や周囲の味方までを危険に晒すことがあります。制御は甘くならぬように」

 

「うん……肝に銘じます」

 

 反省しきりの私の頭を、おしえるくんがぽんぽんと軽く叩いた。慰めているつもりなのか、それともまだ呆れているのか、その表情からは読み取れなかった。

 

 雛と親チョコボは、焚き火の傍で寄り添うようにして眠っている。虫の声と葉擦れの音を子守唄代わりに、私も少しずつ瞼が重くなっていった。

 

       ◇

 

 翌朝、身支度を整えて再び歩き出す。いくつか襲いかかってくる魔物もいたけれど、どれも問題なく倒すことができた。

 

 昼過ぎ、開けた場所を見つけて小休憩を取ることにした。院から持ってきた干し肉と、道中で摘んだ木の実を分け合って食べる。雛と親チョコボも、木の実を美味しそうについばんでいた。木漏れ日の下で座り込むと、ここ数日の疲れがどっと押し寄せてくる。それでも、こうして小さな旅の仲間達と食事を分け合う時間は、不思議と心を落ち着かせてくれた。

 

「先生も、何か食べる?」

 

「ワタクシに食事は不要ですが……お気遣い、痛み入ります」

 

 やれやれと言いながらも、どこか嬉しそうな声色だった。ふと、院のみんなは今頃何をしているだろうと考える。クロは相変わらず「いいこと」を考えているのだろうか。チャ・ケビは寂しがっていないだろうか。そんなことを思いながら、私は残りの干し肉を口に運んだ。

 

 休憩を終えて立ち上がると、雛が名残惜しそうに私の裾を嘴でつついてきた。

 

「大丈夫、また休憩するからね」

 

 そう声をかけると、納得したように鳴いて、親の隣に並んで歩き出した。この子達との時間が、思っていた以上に旅の支えになっていることを、改めて実感する。ここまで一人ではなかったことが、こんなにも心強いとは思わなかった。

 

 一度、巨大な猪のような姿をした魔物に突進を仕掛けられたことがあったけれど、教わった通りに横へ受け流し、隙をついて剣を叩き込んだ。牙が掠めた頬にひやりとした感触が走ったけれど、致命傷には程遠い。以前なら逃げることしか考えられなかったはずの相手を、今はきちんと見極めて対処できている。そのことに、少しだけ誇らしい気持ちになった。

 

「先生、今の見た?」

 

「見ておりました。上出来です」

 

 珍しく素直な褒め言葉に、思わず頬が緩んだ。

 

 植物や獣、虫型の魔物と、この森には大きさも強さもさまざまな相手がいる。ドラヴァニアやクルザスでは、モンスターの多くを物陰に隠れてやり過ごし、遠回りをしてでも戦闘を避けることが多かった。格上の相手ばかりで、まともに戦う選択肢自体が無かった。吹雪の中では体力を温存することを優先していた。

 

 それに比べると、この森は今までよりずっと戦いやすく感じられる。

 

 弱い相手なら一撃で仕留められるし、多少手強い相手でも、剣と魔法を織り交ぜれば何とか渡り合える。強いものと弱いものの差がはっきりしている分、自分の実力を測る物差しにもなった。今の私が、どれくらいのところまで戦えるのか。この森を歩きながら、少しずつその輪郭が見えてきた気がした。

 

 ただ、遠くから魔法を撃ってくるスプライト系はどうにも苦手だった。ふわふわと上下左右に位置を変えられると、剣も魔法も上手く当たらず、一方的に魔法を受け続けてしまう。ケアルで傷を癒しながら戦っても、倒すまでに余計な時間と魔力を消費してしまう。

 

 実際、道中で出くわした水色の光の玉のようなスプライトには、開幕から立て続けに氷の礫を撃ち込まれ、防御が間に合わずに何発も被弾してしまった。距離を詰めようとする度に、ひらりと後ろに逃げられる。

 

「くっ……もう!」

 

 苛立ちながらも、教わったばかりの障壁の魔法を張り、次の礫を受け止める。防御の隙間から詠唱の間合いを計り、隙が出来た瞬間を狙って一気に距離を詰めた。渾身の一撃を叩き込むと、スプライトは光の粒になって消えていった。

 

「先生、ああいう相手には、どう対処すればいいの?」

 

「盾や防具で防御力を高める、詠唱を止めるスキルを使う、障壁を張って防いだり反射したりする、あるいは敵の詠唱の隙をついて攻撃や回避を行う――方法は色々ございます」

 

「反射……あ、そういえば」

 

 前世の記憶の片隅に、ふとよぎるものがあった。エウレカという場所で、装備を脱ぎ捨て魔法の反射効率だけを上げながら経験値を稼ぐ、そんな変わった遊び方が流行っていたっけ。今思うと、随分と変わった稼ぎ方だったなと、懐かしさに頬が緩んだ。もっとも、この世界で同じことを試す気にはとてもなれなかったけれど。

 

 結局、スプライト相手には、障壁の魔法をこまめに張りながら、詠唱の隙を突いて距離を詰めるという、地道なやり方に落ち着いた。慣れないうちは魔力の消費も激しかったけれど、何度か繰り返すうちに、少しずつ間合いの感覚が掴めてきた。

 

 倒した魔物が落とす、使えそうな素材はこまめに拾っておく。グリダニアにはクラフターギルドもあるので、もしかするとイシュガルドよりも高く買い取ってもらえたり、何かに加工してもらえたりするかもしれない。そんな淡い期待を抱きながら、鞄に詰め込んでいった。

 

 道中、荷馬車を引く行商人とすれ違った。人懐こそうな中年の男性で、こちらに気づくと気さくに声をかけてくれた。

 

「おや、嬢ちゃん一人旅かい? 珍しいチョコボだね。観光かね?」

 

「グリダニアを目指してるんです。なにかやれる仕事とか無いかなって」

 

「そりゃいい。あの街は最近、グランドカンパニーが新兵を募集してるらしいぞ。食い扶持に困ってるなら、悪くない話だ」

 

「新兵、ですか」

 

「なんでも、旅の衆が増えて物騒な話も多いらしくてな。人手が要るんだそうだ。まあ、無理にとは言わんが」

 

 行商人は快活に笑って、遠ざかりながら大きく手を振ってくれた。

 

       ◇

 

 やがて視界が開け、大きな街並みが見えてきた。グリダニアだ。イシュガルドの時と違って、門番に呼び止められることはなかった。あっさりと通してもらえたことに、逆に少し拍子抜けしてしまう。

 

 木々を活かした街の造りは、石造りのイディルシャイアやイシュガルドとはまるで違う雰囲気を纏っている。街路樹の根が石畳と一体化していて、まるで森そのものが街に溶け込んでいるようだった。

 

 大きな樹を囲むように建物が並び、その合間を縫うように水路が流れている。石造りの街並みばかり見てきた目には、木と緑に囲まれたこの光景が、ひどく新鮮に映った。

 

(ついに、辿り着いた……)

 

 エオルゼア三大国の一つに、ようやく足を踏み入れることができた。人の多さも、街の賑わいも、これまで見てきたどの場所とも違う活気があった。露店から漂う香草の匂い、子供達の笑い声、機織りの音。院にも似た温かさを感じて、少しだけ気持ちが軽くなった。

 

 通りを歩けば、木工細工を並べる商店や、薬草を天日干しにしている家々が目に留まる。今まで訪れたどの場所とも違う、この街ならではの生活の匂いがした。

 

 広場の掲示板には、「新兵募集」と書かれた紙が貼り出されていた。行商人が言っていた通りだ。ぼんやりとその文字を見つめながら、私はしばらく立ち尽くしていた。

 

 市街をひとしきり見て回った後は、冒険者ギルドと、グリダニアのグランドカンパニーである双蛇党に話を聞きに行ってみようと思う。皆と自分を守るための強さも、この世界を見て回るためのお金も、少しずつでも手に入れられる一歩になることを望んで。

 

「先生は、これからどうするのが一番いいと思う?」

 

「まずは情報収集からですな。グランドカンパニーの仕事内容、ダンジョン攻略の実情、そのあたりを聞いた上で判断なさるとよろしいでしょう。焦らず、一つずつ」

 

「うん、そうだね」

 

「もっとも――今のあなたなら、どちらの道を選んでも、案外うまくやれるとワタクシは思っておりますよ」

 

 思いがけない一言に、少し驚いて肩の上を見上げる。おしえるくんは、いつも通りのやれやれとした声色のまま、視線を前に向けていた。それでも、その一言だけで、胸の奥がじんわりと温かくなった。

 

 肩の上のおしえるくんに頷きながら、私は改めてこの街を見渡した。イディルシャイアを出てから、ここまで長い道のりだった。凍える吹雪も、燃え広がる森も、次元の違う竜の脅威も、この目で見てきた。それでも、まだ始まったばかりだという実感の方が強かった。

 

 鞄の中で揺れる素材の重みを確かめながら、私は掲示板に貼られた募集の紙を、もう一度見つめた。ここまで歩いてきた道のりを思えば、次に待っているのはきっと、また新しい形の一歩になるはずだ。焦らず、けれど着実に。そう自分に言い聞かせながら、私は掲示板から目を離し、冒険者ギルドへと続く通りを歩き出した。

 

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