かめはめ×ハンター   作:波動待ち

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なんか気がついたら評価バーに色ついてるしお気に入り3桁超えてるし、日間入ってるしでびっくりしました。
評価、お気に入り、感想、ありがとうございます!


かめはめ波が出た!

 

 《纏》を習得してから、数ヶ月が過ぎた。

 

 一度感覚を掴んでしまえば、《纏》そのものは思っていたほど難しい技術ではなかった。初めの頃こそ、少し意識を逸らしただけで身体を覆うオーラが乱れていたものの、毎日欠かさず繰り返すうちに、それは呼吸と同じくらい自然なものへと変わっていった。

 

 今では、歩いている最中はもちろん、食事をしているときや本を読んでいるときでも、オーラを身体の周囲へ留めていられる。眠っている間まで維持できているかは確かめようがないが、起きている限りは意識せずとも《纏》が続くようになっていた。

 

 かめはめ波の構えを取らなければ集中できなかったのも、最初の二、三日だけだ。

 

 何千回と繰り返してきた型によってオーラの感覚を掴み、それを身体へ覚え込ませたことで、今では普通に立った状態からでも《纏》へ入れる。

 

 念の入口へ辿り着くまでには随分と遠回りをしたものの、一度道を見つけてしまえば、そこから先へ進むこと自体はそれほど苦手ではなかったらしい。

 

 問題は、その先だった。

 

「ふんぬぬぬぬぬ……!」

 

 朝日が昇り始めた裏庭で、俺は全身を覆うオーラを膨らませながら、歯を食いしばっていた。

 

 《練》

 

 身体中の精孔から通常以上のオーラを生み出す技術。

 

 オーラを増やす感覚そのものは、《纏》を習得してから一か月もしないうちに掴めた。

 

 身体の奥にある生命力へ意識を向け、それを全身へ押し広げるようにして精孔から放つ。初めは筋肉へ力を込めることとの違いが分からず、顔を真っ赤にして踏ん張っただけの日もあったが、一度正しい感覚へ触れてからは、再現すること自体は難しくなかった。

 

 だが、出せることと、扱えることは別だった。

 

 精孔から大量のオーラを噴き出させることはできる。ところが、それを《纏》によって身体の周囲へ留めようとすると、流れが乱れて勢いを失ってしまう。

 

 逆に、《練》の出力を保つことばかり意識すれば、増やした分のオーラが身体から次々と漏れ出し、僅かな時間で息が上がった。

 

 蛇口を全開にしながら、溢れ出す水を一滴残らず桶へ収め続ける。

 

 そんな器用な真似を、覚えたばかりの俺が簡単にできるはずもなかった。

 

「……もう少し、いける」

 

 額から流れた汗が、頬を伝って地面へ落ちる。

 

 全身を包むオーラは《纏》だけのときよりも遥かに厚いが、まだ流れが安定していない。肩の辺りから大量に漏れたかと思えば、今度は脚を覆っていたオーラが薄くなり、その穴を埋めようと意識した瞬間、胸元の流れまで崩れてしまう。

 

 十秒。

 

 二十秒。

 

 三十秒。

 

 一分を超えた辺りで、全身を覆っていたオーラが一気に萎み、俺は膝へ両手をついた。

 

「はぁ……はぁ……まだ、二分も無理か」

 

 《練》そのものを習得するまでには、それほど時間はかからなかった。

 

 しかし、通常より多くのオーラを生み出し、それを安定させたまま長時間維持するとなると、話はまるで違ってくる。

 

 原作でビスケが、何十分、何時間と《練》を続ける修行をさせていた意味が、今なら嫌というほど理解できた。

 

 瞬間的に大量のオーラを出すだけなら、気合でもどうにかなる。

 

 それを身体の周囲へ留め、流れを乱さず、必要な場所へ動かしながら維持し続けるには、地道な訓練を積み重ねるしかない。

 

「まあ、焦っても仕方ないか……」

 

 呼吸を整えながら、俺は自分の両手へ目を落とした。

 

 《練》を覚えてから、すでに数か月が過ぎている。

 

 当初は十秒と維持できなかったものが、今では一分を超える程度まで伸びた。成長していないわけではない。

 

 ただ、俺が求めている技には、それでもまるで足りなかった。

 

 かめはめ波を撃つために必要なのは、《練》だけではない。

 

 増やしたオーラを身体の周囲へ留める。その状態を崩さず、両腕を通して掌の一点に集める。

 

 集めたオーラを体外へ押し出し、掌から供給を続けながら、一本の流れとして前方へ伸ばす。

 

 さらに、身体から離れるほど弱まっていくオーラの形と出力を、最後まで維持しなければならない。

 

 言ってしまえば、かめはめ波とは複数の念技術を同時に成立させる複合技だ。

 もちろん、簡単ではないことくらい分かっていた。なにせ亀仙流の奥義とも言える技だ。

 

 実際に念へ触れてみると、俺が子供の頃から何気なく真似してきたあの技が、どれほど高度なことをしているのか思い知らされる。

 同時にあんな見よう見まねで最初に撃てた悟空の天才性を再認識させられた。

 

「でも、掌に集めるところまではできるんだよな」

 

 呼吸が落ち着いたところで、いつもの構えを取ると、それまで乱れていたオーラの流れが、身体へ刻み込まれた型に従って少しずつ整っていった。

 

「かー……めー……」

 

 声に合わせて呼吸を整え、全身を《纏》で包む。

 

 そこから身体の奥へ意識を向け、通常よりも多くのオーラを生み出す。

 

 増やしたオーラを一度に動かそうとすれば、《練》も《纏》も崩れてしまう。そのため流れを維持したまま、脚から腰へ、腰から背中へ、肩から両腕へと、少しずつ掌へ送り込んでいく。

 

 この操作だけは、《練》の維持よりも早く上達した。

 

 三歳から何千回と繰り返してきた、全身の力を両手へ集めるイメージ。

 

 当時は存在すら感じられなかったオーラも、一度その感覚を掴んでしまえば、三年間の積み重ねに沿って自然と両腕へ流れていった。

 

「はー……めー……」

 

 重ねた掌の間に、淡い光が生まれる。

 

 初めは温かさとしてしか感じられなかったオーラが、今では目を凝らせば、薄い青白い光として輪郭を持っているのが分かった。

 

 拳よりも小さな塊。

 

 まだ密度も低く、少し集中を乱しただけで消えてしまう程度のものではある。それでも、全身から掌へオーラを集め、一か所へ留めるところまでは安定して成功するようになっていた。

 

 問題は、ここからだ。

 

「波ぁぁぁぁっ!」

 

 両腕を前へ突き出す。

 

 掌の間にあった光が一瞬だけ前方へ膨らんだものの、一本の流れになる前に大きく歪み、霧のように散っていった。

 

「……また駄目か」

 

 両手には、何も残っていない。

 

 増やしたオーラを掌へ集めることはできる。

 

 塊として維持することも可能だ。

 

 しかし、それを体外へ押し出し、掌から供給を続けながら前方へ伸ばそうとすると、オーラは形を失って空気へ溶けてしまう。

 

 勢いよく押し出しても駄目。

 

 腕を振る速度へ乗せても駄目。

 

 息を吐き出すのと同時に放とうとしても、結果は変わらなかった。

 

 オーラは俺の生命力だ。

 

 身体の周囲や掌の間にあるうちは、どこへ流れているのかを明確に捉えられる。ところが掌より先へ伸ばそうとした瞬間、急に存在が曖昧になり、供給するオーラと先端の形を同時に制御できなくなってしまう。

 

 掌から水を噴き出しても、流れを整えなければ四方へ飛び散るだけだ。

 

 今の俺がやっているのも、それと同じだった。

 

「放出系なら、もっと簡単にできるはずなんだけどな……」

 

 思わず、そんな言葉が漏れた。

 

 自分の系統は、まだ水見式で確認していない。

 

 それでも俺は、何となく自分が放出系なのだと思っていた。

 

 子供の頃からかめはめ波へ憧れ、それを撃つためだけに三年間修行を続けてきた。念能力が本人の性格や生き方に強く影響されるのなら、俺ほど放出系に相応しい人間もそうはいないだろう。

 

 だから、今うまくいかないのも、単に経験が足りていないだけだと考えていた。

 

 《纏》も《練》も、最初からできたわけではない。

 

 オーラの放出だって同じだ。

 

 一度も成功していないから感覚が分からないだけで、何か一つきっかけを掴めば、あとは繰り返すうちに上達していくはずだ。

 

「よし、もう一回だ!」

 

 俺は再び構えを取った。

 

     ◇

 

 それからも、毎日のように失敗を繰り返した。

 

 《練》を維持したまま掌へオーラを集め、塊として形を整える。そこまでは、修行を始めてから二か月ほどで安定するようになっていた。

 

 しかし、そこから先へ進めない。

 

 掌の外へ出そうとすれば散る。

 

 前方へ伸ばそうとすれば、根元から流れが崩れる。

 

 無理やり大量のオーラを押し出せば、両手の前で破裂するように霧散し、腕が痺れることもあった。

 

 一度だけ、掌から数センチほど光が伸びたように見えたことがある。

 

 だが、喜ぶ間もなく根元から途切れてしまい、それ以降は同じ感覚を再現できなかった。

 

 そんな日々が、さらに二か月続いた。

 

 季節が変わり、体を震わすほどに冷え切った朝の空気も、少しずつ温かみを含んでいく。

 それでも俺の修行内容は変わらない。

 

 庭を走り、身体を鍛え、《纏》と《練》を繰り返す。そのあと両手を腰へ構え、掌へ集めたオーラを前へ伸ばそうとして失敗する。

 

 父さんに作ってもらった木箱は、庭の端へ置かれたままだった。

 

 表面には俺が炭で描いた丸い印があるものの、当然ながら傷一つついていない。

 

 そもそもオーラがそこまで伸びたことすらないのだから、的として役立つ日はまだ遠そうだった。

 

「最近、あの箱を見つめてるだけね」

 

 ある日の朝、窓から俺の修行を見ていた母さんが言った。

 

「見つめてるだけじゃないよ。撃ってる」

 

「何も出てないじゃない」

 

「母さんには見えないだけ」

 

「そう……」

 

 母さんの目が、少しだけ可哀想なものを見る形に変わった。

 ちなみに撃ててるわけではないので普通に強がりだ。

 

「違うからね? 本当に掌には集まってるから」

 

「お母さんは信じてるわよ」

 

「絶対信じてない言い方じゃん……」

 

 念を知らない母さんには、俺が毎朝何もない場所へ向かって両腕を突き出しているようにしか見えない。

 

 以前は技名を叫ぶだけだったので、今の方が症状が進行したと思われている可能性すらある。

 

 いつか本物を見せて、あの顔を驚きに変えてやる。

 

 そのためにも、まずは掌から外へ押し出したオーラを、一本の流れとして維持しなければならない。

 

     ◇

 

 転機が訪れたのは、《練》を習得してから半年ほどが過ぎた朝だった。

 

 その日も俺は、父さんの作ってくれた木箱から五歩ほど離れた位置で、いつもの構えを取っていた。

 

 全身を覆う《纏》を維持したまま、《練》によってオーラを増やす。

 

 数か月前なら一分と保たなかった出力も、今では五分程度なら大きく乱すことなく維持できるようになっている。

 

 もっとも、今日使うのはその全てではない。

 

 一度に大量のオーラを掌へ集めれば、体外へ押し出す前に形が崩れてしまう。だから今回は、これまでよりも遥かに少ない量だけを動かすことにした。

 

 威力は必要ない。

 

 速度も射程も、今は考えない。

 

 まずは僅かでもいいから、掌から外へ伸ばしたオーラを、流れとして維持する。

 

「かー……めー……」

 

 呼吸とともに、オーラを両腕へ流す。

 

 脚から腰へ、背中から肩へと繋いだ流れの一部を掌へ集め、両手の間で小さくまとめていく。

 

 以前は拳ほどの大きさにしようとしていた。

 

 今回は、その半分にも満たない。

 

 親指ほどの小さな光を両手の間に浮かべ、できるだけ密度を崩さないよう意識を集中させる。

 

「はー……めー……」

 

 ここから先が、何度やっても越えられなかった壁だ。

 

 これまでは、掌に集めたオーラを一気に前へ押し出し、最初から長い光線を作ろうとしていた。

 

 だが、それでは供給と形成を同時に制御できず、掌の前で散ってしまう。

 

 ならば、最初から遠くへ伸ばそうとする必要はない。

 

 ほんの少し、それこそ指一本分でもいい。

 

 掌から外へ出したオーラを身体と繋げたまま、途切れない流れとして保つ。

 

 そう考えた俺は、両手の間に浮かぶ小さなオーラを、僅かに前へ押し出した。

 

 光が、両手から数センチほど伸びる。

 

 同時に、先端から形が崩れ始めた。

 

 焦るな。

 

 大量に送り込むな。

 

 掌にあるオーラを根元として、必要な分だけを少しずつ前へ送る。

 

 細い水路へ水を流すように、根元から先端まで途切れさせない。

 

 これまでなら、ここで散っていた。

 

 しかし今回は、込めたオーラの量が少ないぶん、流れの全体へ意識を向ける余裕がある。

 

 小さな光が、掌からさらに伸びた。

 

 今だ。

 

「波ぁぁぁぁっ!」

 

 腰を回し、両腕を前へ突き出すのと同時に、掌からオーラを送り出す。

 

 ――ぽすっ。

 

 気の抜けるような音がした。

 

「……え?」

 

 両手の先から、指ほどの細い青白い光が伸びていた。

 

 勢いはない。ふにゃふにゃと頼りなく、真っ直ぐですらない。

 

 産まれたばかりの蛇が地面を這うように揺れながら、それでも確かに俺の掌から前方へ伸びている。

 

 距離にして、五十センチほど。

 

 木箱には到底届かない。

 

 ほんの一瞬だけ形を保ったあと、先端から急速に薄れ、最後には小さな煙のように空気へ溶けて消えた。

 

 庭の草は一本も揺れていない。

 

 地面にも傷はなく、木箱には当然何の変化もなかった。

 

 威力は、おそらく限りなくゼロに近い。

 

 射程も太さも、かめはめ波と呼ぶには烏滸がましいほど、情けないほど足りていない。

 

 それでも俺は、両腕を突き出した姿勢のまま動けなかった。

 

 見間違いではない。

 

 朝日の反射でもない。

 

 今、確かに俺の掌から青白い光が伸びた。

 

「出た……」

 

 声が震えた。

 

 ゆっくりと両腕を下ろし、自分の掌へ視線を落とす。

 

「出た」

 

 もう一度口にした瞬間、胸の奥から一気に熱いものが込み上げてきた。

 

「出たぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 気づけば、俺は庭の中を走り回っていた。

 

 両手を上げて飛び跳ね、何度も拳を握り締める。途中で足を滑らせて転びそうになったが、そんなことはどうでもよかった。

 

「やった! 本当に出た!」

 

 木箱には届いていない。

 

 威力もなければ、射程も太さもまるで足りていない。

 

 それでも出た。

 

 前世では、どれほど構えても掌から出るのは気合だけだった。やがて撃てないことを受け入れ、その夢を笑い話へ変え、大人になるにつれて忘れていった。

 

 そんな夢の続きを、俺は今、この世界で本当に始めることができた。

 

「かめはめ波だ……!」

 

 先ほど掌から伸びたものが、完成したかめはめ波ではないことくらい分かっている。

 

 あれは、ほんの一瞬だけ体外へ押し出した、細いオーラの流れだ。

 

 原作の放出系能力者たちが見れば、鼻で笑うようなものだろう。クリリンが初めて撃った、あの頼りない一発にさえ遠く及ばない。

 

 だが、最初から山を吹き飛ばせる必要なんてない。

 

 細くても、弱くてもいい。一度出たのなら、次はもっと遠くへ伸ばせる。

 

 さらにその次は木箱へ届かせ、いつかは傷をつけ、壊し、跡形もなく吹き飛ばす。

 

 これは、ほんの小さな一歩でしかない。けれど、ゼロじゃない! その一歩は、ちゃんと踏み出せたんだ!

 

「もう一回だ!」

 

 興奮したまま再び構えを取ろうとしたところで、家の窓が勢いよく開いた。

 

「レイ! 朝から大声を出さないでって、何度言ったら分かるの!」

 

「母さん! 出た!」

 

「何が?」

 

「かめはめ波!」

 

 母さんは窓から身を乗り出し、庭の様子を見回した。

 

 当然、木箱には傷一つなく、地面も草も何も変わっていない。念を知らない母さんには、先ほど掌から伸びた青白い光も見えていなかったはずだ。

 

「どこに出たの?」

 

「今、俺の手から伸びたんだよ! 短かったけど、ちゃんとオーラが!」

 

「オーラ……」

 

 母さんの顔から、喜びではなく心配が広がっていく。

 

「本当だから! 母さんには見えないだけで――」

 

「お父さんが帰ってきたら、一度ちゃんと相談しましょう」

 

「何を!?」

 

「病院のことを」

 

「だから病気じゃないって!」

 

 初めてかめはめ波を撃った記念すべき日だというのに、母さんの中では俺の症状が一段階悪化したことになっているらしい。

 

 それでも、今だけは何を言われても気にならなかった。

 

 誰に信じてもらえなくても構わない。俺には確かに見えた。この掌から伸びた、青白いオーラの光を。

 

     ◇

 

 夕方まで修行を続けたものの、二度目の成功は訪れなかった。

 

 掌へオーラを集め、体外へ押し出すところまではできる。しかし、一本の流れとして伸ばそうとした瞬間、形を失って散ってしまう。

 

 それでも、昨日までの失敗とは意味が違った。

 

 一度できた。

 

 ならば、またできる。

 

 偶然でなくなるまで、何度でも繰り返せばいいだけだ。

 

 満足した気持ちで部屋へ戻った俺は、机の上に置かれた水の入ったコップへ目を向けた。

 

 水面には、一枚の葉が浮かんでいる。水見式を行うために用意したものだった。

 

 自分の系統を調べる方法は知っている。

 

 強化系なら水の量が増え、変化系なら味が変わる。放出系なら水の色が変化し、具現化系なら不純物が現れる。操作系なら葉が動き、それ以外の変化が起きれば特質系。

 

 本来なら、念を習得した時点で確かめておくべきなのだろう。

 

 けれど《纏》を覚えたばかりの頃は、水見式を行えるほど安定してオーラを扱えていなかった。扱えるようになってからも、《練》や放出の修行に夢中で、後回しにしていた。

 

 そして今日。この掌から、オーラが伸びた。

 

 まだ五十センチほどしか届かない、細い光でしかない。

 

 それでも、体外へ押し出したオーラを、僅かな時間ではあるが前方へ維持することができた。

 

「やっぱり、放出系だよな」

 

 自然と笑みがこぼれる。

 

 子供の頃からかめはめ波へ憧れ、そのためだけに身体を鍛え、念を習得した。そして初めて成功した念の応用が、オーラを身体の外へ放ち、前方へ伸ばすことだった。

 これで放出系ではないと言われる方が、無理がある。

 

 分かりきってはいるが、それでも一応やっておくべきだろう。

 

 俺はウキウキしながら、水の色は何色に変わるのかな、やっぱ青かな! などと呑気なことを考えていた。

 

 水と一枚の葉っぱが入っているコップに手をかざし、《練》を行う。

 

 すると、コップの上に乗せてある葉が僅かに揺れ、続けて、並々注がれた水が、ゆっくり、しかししっかりと増えていた。

 

 コップの縁をなぞるように、水が机に滴り落ちていく。

 

 水の色は変わっていない。ただ、水が増えているだけだ。

 その変化は見間違えるまでもなく、前世で読んだ漫画の知識が、残酷なまでに答えを提示してくる。

 

「……強化系?」

 

 その問いに答えるように、増え続ける水が、ゆっくりと机全体に広がっていった。

 




本人は気づいていませんが、レイがやっているのは《練》というより《堅》です。独学だから仕方ないね。

ビスケ
本名、ビスケット=クルーガー。
念を四十年鍛え続けているベテランオバ――お姉さん。
本編登場は、まだまだ先。

《堅》
《纏》と《練》の応用技。練で生み出したオーラを纏い防御する技術。早い話が練を長時間維持すること。
レイは知らないうちに練習していた。独学とはそういうものである。
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