かめはめ×ハンター 作:波動待ち
四話を投稿しようと作品を開いたら、お気に入りが1000件を超えていた。
な……何を言っているのか分からねーと思うが、俺も何が起きたのか分からなかった……
というわけで、本当にありがとうございます!
……え、本当に何が起こってるんですか?
感想も返しきれないほどいただいてますので、順次返信させていただきます!
※今回は旅立ちまでのお話になるので、少し短めです。
感想でいくつかご指摘をいただき、ごもっともだと自分でも思ったので一部描写を差し替えました。大筋には影響はありません。
――強化系。
水見式によって突きつけられた答えを前に、俺はしばらくの間、机の上へ広がった水を眺め続けていた。
何かの間違いではないかと思い、水を入れ替えてもう一度試した。葉を新しいものへ替え、コップまで洗い直したうえで《練》を行ったものの、結果は変わらない。
水の色は変化せず、代わりに量だけが増え、再びコップの縁から机の上へ溢れ出した。
三度目も同じだった。
「……本当に強化系なんだな」
ようやく諦めて呟いた声には、自分でも分かるくらい落胆が滲んでいた。
放出系だと信じていた。
子供の頃からかめはめ波へ憧れ、この世界へ生まれ変わってからも、そのためだけに三年以上も修行を続けてきた。自分の生き方が念の系統へ影響するのなら、これほど放出系に相応しい人間はいないと、本気で思っていたのだ。
それなのに、強化系。
かめはめ波は、身体からオーラを放ち、遠く離れた相手へ届かせる技だ。放出系と比べれば、強化系では習得できる技術の限界も、引き出せる威力も落ちるだろう。
だからといって、今さら諦められるはずもなかった。
前世で一度は忘れてしまった憧れを、この世界でようやく取り戻したのだ。系統が予想と違った程度で捨てられるのなら、三歳から毎朝同じ構えを繰り返したりはしていない。
そもそも、原作にだって強化系でありながら、凄まじい放出技を使っていた人物は存在する。
アイザック=ネテロ。
あの武人は強化系能力者でありながら、百式観音の奥義《零の掌》では、観音の口から莫大なオーラを光線として放ち、キメラアントの王へ叩き込んでいた。
見た目だけでいえば、あれも立派なビームだ。
……かめはめ波というよりはファイナルフラッシュに近いだろう。
強化系だから放出技を使えないわけではない。ただ、放出系本人が扱う場合と比べて、効率が落ちるだけなのだ。
その損失についても、原作には実例があった。
ナックルが《
単純に考えれば、込めたオーラの大半が無駄になるということだ。
「……なら、落ちても問題ないくらいまで増やせばいいのか」
口に出してみると、驚くほど単純な答えだった。
二千込めて五百しか残らないのなら、最初から四万込めればいい。届くまでに八割近く失われるなら、残った二割だけでも相手を倒せるところまで、元となるオーラを増やしてしまえばいい。
もちろん、現実にはそんな簡単な計算ではないだろう。
オーラの総量を増やすだけでなく、放出の精度も、射程も、形を維持する技術も必要になる。今の俺が撃てるのは、五十センチほど伸びただけで消えてしまう、威力すらない光だ。ネテロの《零》や、ゴンの《パー》と比較すること自体が烏滸がましい。
それでも、やるべきことは見えた。
身体を鍛え、扱えるオーラを増やす。放出の修行も続け、少しずつ損失を減らしていく。それでも減る分については、減ったあとに十分な威力が残るまで、元の出力を引き上げればいい。
遠回りではあるし、効率も悪い。
普通なら、もっと自分の系統に合った能力を考えるのだろう。
「でも、鍛えれば解決するなら問題ないよな」
そう呟いた瞬間、自分でも少し可笑しくなった。
どうやら水見式の結果は、間違っていなかったらしい。
オーラを増やせばいい。身体を鍛えればいい。足りないなら、足りるまで続ければいい。
我ながら、随分と強化系らしい結論だった。
◇
「天空闘技場へ行きたい?」
夕食を終えた食卓で、父さんが怪訝そうに眉を寄せた。
俺は二人の正面へ座り直し、できるだけ真剣な表情を作って頷いた。
「うん。正確には、天空闘技場で戦いたい」
「駄目よ」
父さんが何かを言うより先に、母さんが即答した。
「絶対に駄目! あそこがどういう場所か、テレビで見たでしょう? 大人が本気で殴り合って、血を流していたじゃない」
「分かってる」
「分かっていたら、そんなことは言わないわ! レイはまだ子供なのよ!?」
母さんが反対するのは至極当然の流れだろう。
俺はこの身体で六年ほど生きているが、二人にとっては、まだ一人で遠くの町へ行かせることすら不安な年齢だ。ましてや天空闘技場は、金と名誉を求める格闘家たちが集まり、勝敗によっては大怪我を負うし、最悪の場合は死に至ることもある。
前世の記憶があり、念を使えるから大丈夫だと説明したところで、二人には理解できない。
念の存在を知らない者へ、「オーラで身体を守れるから安全だ」と言ったところで、母さんの中で病院へ連れていく理由が一つ増えるだけだろう。
「どうして、急にそんなことを言い出したんだ?」
母さんを宥めるように手を上げた父さんが、静かに尋ねてきた。
「前から考えてた。俺には、実際に人と戦った経験がないから」
「そんなものはなくてもいいんじゃないかな?」
「でも、強くなるには必要なんだ」
「何のために、そこまで強くならなければならない?」
その問いに、すぐ答えることはできなかった。
かめはめ波を撃つため。それが本当の理由だ。
けれど二人にとって、かめはめ波は俺が幼い頃から言い続けている、存在しない空想の技でしかない。昨日ようやく五十センチだけ出たと言ったところで、母さんには何も見えず、案の定、心配そうな顔をされただけだった。
「俺は……もっと強くなりたい」
結局、俺が言えるのは、そんな単純な、きっと子供なら誰でも持つ願いの原点だった。
「この家で暮らすのが嫌なわけじゃない。父さんも母さんも大好きだし、ここにいれば安全なのも分かってる。でもこのまま、何も知らないまま大人になるのは嫌なんだ!」
二人は何も言わず、俺の言葉を聞いていた。
「外には、俺よりずっと強い人がたくさんいる。そういう人たちと戦って、自分に足りないものを知りたい。今のまま庭で一人で修行を続けても、強くなれているのか、本当に戦えるのかも分からないから。そしていつか……!」
「だからって、六歳の子どもを一人で行かせられるわけがないでしょう!」
「母さん」
「駄目なものは駄目よ!」
母さんの声が少し震えていた。怒っているのではない。怖いのだ。
俺が家を離れ、知らない土地で傷つくことが。もしかしたら、そのまま帰ってこないかもしれないことが。
その気持ちが分かってしまうからこそ、胸が痛んだ。
「……見せたいものがある」
言葉だけで納得してもらうのは無理だ。
俺は椅子から立ち上がり、二人を裏庭へ連れ出した。
◇
庭の端には、いつからここにあるのか分からない、大きな岩が置かれている。
俺の腰よりも高く、父さん一人では動かせないほど重い。かめはめ波の的にするには硬すぎるため、これまで修行には使っていなかったものだ。
「少し離れてて」
「レイ、何をするつもりだ?」
「俺が、普通の子どもじゃないってところを見せる」
父さんと母さんが数歩下がったのを確認し、俺は岩の前へ立った。
呼吸を整え、全身を《纏》で包む。
そのうえで、身体の奥にある生命力を一気に引き出し、《練》によって通常以上のオーラを生み出した。
両親にはオーラが見えていない。
それでも、俺の周囲を覆う空気が変わったことだけは感じ取ったのか、父さんの目が僅かに見開かれた。
拳を握り、増やしたオーラの一部を右腕へ集中させる。
かめはめ波のように身体から離す必要はない。強化系である俺にとって、拳の硬さを増すだけなら、放出より遥かに簡単だった。
腰を落とし、地面を蹴る。
「ふっ!」
短く息を吐きながら、岩の中心へ拳を叩き込んだ。鈍い音が庭へ響く。
一瞬遅れて、拳を当てた場所から太い亀裂が走り、岩全体へ蜘蛛の巣のように広がっていった。
完全に砕け散ったわけではない。
それでも、人間の拳で生まれたとは思えない亀裂が、硬い岩の中央を深く割っている。
自分の拳を確認すると、皮膚には傷一つついていなかった。
「……嘘」
母さんが呟いた。
父さんも岩と俺の拳を交互に見つめたまま、しばらく言葉を失っていた。
「今見せた力について、詳しくは説明できない」
念の存在は、一般人へ不用意に広めるべきものではない。
二人を信頼していないわけではないが、知らない方が安全な世界もある。
「でも、俺は自分の身体を守れる。普通の六歳よりはずっと強いし、天空闘技場へ行っても、簡単に死んだりはしない」
「……こんな力を、いつから持っていた?」
「修行して身につけた。父さんが作ってくれた木箱に、毎朝かめはめ波を撃ってた頃から、ずっと」
「何も出てなかったじゃない」
「それは……最近、やっと少し出たんだけど」
母さんの視線が、やはり心配な子を見るものへ変わりかけたため、俺は慌てて話を戻した。
「とにかく、俺はもう、自分で思っていたより強くなってる。でも、力があるだけで戦えるわけじゃないんだ。相手との距離も、攻撃の避け方も、殴られたときの立て直し方も知らない。この力をちゃんと使えるようになるには、実際に戦って覚える必要があるから」
父さんは、亀裂の入った岩へ手を触れた。
そのまま長い間、何かを考えるように黙り込んでいた。
「……私は反対よ」
母さんが、絞り出すように言った。
「どんなに強くても、レイがまだ子どもなのは変わらない。こんな力があるからって、絶対に怪我をしないわけじゃないでしょう?」
「うん」
「だったら――」
「でも、行きたいんだ!」
迷わず答えると、母さんはそれ以上何も言えなくなった。俺のせいで泣きそうな顔をさせている。
それでも、ここで引くことはできなかった。
「止めても、行くのか?」
父さんが背を向けたまま尋ねた。
俺は少しだけ迷い、それから頷いた。
「……うん」
「そうか」
父さんが岩から手を離し、ゆっくりと振り返る。怒られると思ったけれど、父さんの顔にあったのは怒りではなく、諦めと、ほんの少しの寂しさだった。
「ただし! 条件が二つある」
隣にいた母さんが顔を上げる。
「一つ目。半年に一度は、必ずこの家へ帰ってこい。どこへ行っても、何をしていてもだ。手紙だけでは認めない。生きている姿を、俺たちに見せろ」
「……分かった」
「二つ目」
父さんは一度言葉を止め、俺を真っ直ぐに見つめた。
「強くなれ!」
あまりにも単純な条件に、俺は瞬きをした。
「中途半端な覚悟で家を出て、傷ついただけで帰ってくることは許さない。自分から危険な場所へ行くというなら、誰にも簡単に負けないくらい強くなれ。そして半年後、胸を張って俺たちの前へ帰ってこい」
怪我をするな、とか言われるのだと思っていた。
けれど父さんは、俺が強くなりたいと願うこと自体を否定せず、その願いを条件として突き返してきた。
「約束できるか?」
胸の奥が静かな熱で、アツくなる。
「うん。絶対に強くなる!」
「なら、行ってこい」
「あなた!」
「止めても無駄だ」
声を荒らげた母さんへ、父さんは困ったように笑った。
「こいつが三歳の頃から、毎日何をしてきたか、お前も知っているだろう。一度決めたことを、俺たちが言った程度で諦める子じゃない」
「でも……」
「ならせめて、快く送り出してやろう」
母さんは唇を噛み、しばらく俯いていた。
やがて俺の前へ膝をつき、力いっぱい抱き締めてくる。
「半年よ」
「うん」
「一日でも遅れたら、私が天空闘技場まで迎えに行くから」
「それは怖いな……」
「冗談じゃないからね」
声も体も震えていたが、しばらく離してくれなかった。
◇
旅立ちは、三日後に決まった。
母さんは着替えや保存食を必要以上に鞄へ詰め込み、父さんは天空闘技場までの道と、その途中にある町の地図を書いてくれた。
家にある金を持たせようともしてくれたが、それは最低限だけ受け取ることにした。天空闘技場では勝ち上がれば賞金が出る。これから自分の都合で家を離れるのだから、いつまでも二人に頼り続けるつもりはない。
出発の朝。
何度も確認した鞄を背負い、俺は家の前へ立っていた。
「無理だと思ったら、すぐ帰ってくるのよ」
「それじゃ俺が出した条件と逆じゃない?」
「あなたは黙ってて」
母さんに睨まれ、父さんが肩を竦める。
いつもと変わらない二人のやり取りを見ていると、決意が鈍りそうになった。
ここに残れば、きっと穏やかに暮らせる。
父さんの仕事を手伝い、母さんの料理を食べ、この家で大人になっていく。それも決して悪い人生ではない。
それでも俺の中には、どうしても消えてくれないものがある。
「行ってきます」
「ああ。強くなってこい」
「半年後には、絶対に帰ってくるのよ」
「分かってる!」
二人へ大きく手を振り、俺は村の外へ続く道を歩き始めた。
何度か振り返りそうになったが、そのたびに前だけを見る。
振り返れば、家へ戻りたくなるかもしれない。
この二人の子供として、普通に生きる道を選びたくなるかもしれない。
それでも。
(父さん、母さん、ごめんなさい)
胸の中で、二人へ謝る。
(俺はやっぱり、憧れを捨てきれない)
一度は大人になる過程で手放してしまった夢を、今度こそ最後まで追い続けたい。
たとえ強化系であっても、たとえどれだけ遠回りになっても。
いつか胸を張って、この掌から本物のかめはめ波を撃つために。
俺は生まれて初めて、故郷の村をあとにした。
次回、天空闘技場!
例によって後書きは読まなくてもなんら問題は起こりません。
アイザック=ネテロ
言わずと知れたハンター協会会長にして、世界最強の念能力者。強化系にも関わらず百式観音を具現化し、奥義は零という放出系のビーム。にも関わらず最強である。同じく強化系で、自分の分身を具現化したカストロさんはメモリの無駄遣いとヒソカに言われていた。この領域に行き着いたのは、武術への感謝によるものが大きいと思われる。やっぱり念能力は系統云々より想いなんだなって……
いつか亀仙人と戦ってほしい。
天上不知唯我独損
ナックル=バインの発。相手を強制的に絶にするあたり、殺さずに捕えるという本人の優しさが滲み出している能力。例によって本編登場はかなり後。レイが一ヶ月かめはめ波を撃たなくされたら発狂する可能性はわずかにある。或いはでないのにも関わらず毎日構えて叫ぶあの頃に戻ってしまう。
ジャジャン拳
こちらも言わずと知れた主人公、ゴンの必殺技。《グー》は、全力の《硬》で相手を殴りつけ、《チー》はオーラを刃のように鋭く変化させ、相手を切り裂く。GIでは木の枝を切り裂くので精一杯だったにも関わらず、その後のカイトと行ったNGLにおいては、硬いはずのキメラアントを簡単に切り裂いていた。相変わらずとんでもない成長速度である。
《パー》は念弾を放出し、相手を攻撃する遠距離攻撃。ナックル曰くまだまだらしいが、鍛え上げればビッグバンアタックになり得るかもしれない。
ビッグバンアタック
サイヤ人の王子、ベジータの――超ベジータの必殺技。おそらくは人造人間に殺される未来を回避するために編み出したと思われる技。宇宙の始まり(ビッグバン)の名を冠していることからも、相当の自信が伺える。
なお、某星喰いの方に「なんてことはない、ただの気攻波だな」と言われていた。ひどい。
「こいつがスーパーベジータの、ビッグバンアタックだ!!」
スーパーベジータ
「俺は、スーパーベジータだ」