魔剣を拾ったら中身が飯にしか興味のない生意気少女だった 〜無限の魔力と空間魔法でダンジョン無双〜   作:竜刃丸

28 / 28
第23飯 フルーツ狩り(打合せ編)

 

フルーツバスケットとのコラボ配信。その打ち合わせで、俺は新宿に来ていた。

 

事務所は「ピーチ・エモーション」。桃瀬財閥グループの芸能事務所らしい。財閥って桃瀬さんの実家か。そう言えばお嬢様ってどこかで聞いた気がする。

 

芸能事務所までやってるのか、金のあるところは何でもやるな。

 

駅から事務所へ向かう道すがら、でかいデジタルサイネージが目に入った。その時、腰のヴィヴィが実体化した。

 

ボンッ。

 

「下僕っ! 見よあれを!」

 

人混みのど真ん中で堂々と現れるな。

 

ヴィヴィの指さす先、巨大な広告にフルーツパフェが映っていた。背の高いグラス、色とりどりのフルーツ、てっぺんのソフトクリームに、きらきらのソースが垂れている。

 

「なんじゃあれは! 冷たそうで、甘そうで、宝石のようじゃ! 食べたい、食べたいのじゃ!」

「今は打ち合わせが先だ」

 

「なぜじゃ! あそこに店があるぞ!」

「約束の時間があるんだよ。……わかった、後で考えてやる」

 

「後でとは、いつじゃ!」

 

騒ぐヴィヴィの手を引っ張って、事務所へ向かう。油断も隙もない。

 

 

 ◇

 

 

打ち合わせ室にいたのは三人。柿山さんと桃瀬さん。それに黒髪ストレートロングの落ち着いた女性。

 

「フルーツバスケットのマネージャー、一条美桜(いちじょうみお)と申します」

 

きっちりとスーツを着こなしたできるマネージャー、という雰囲気だ。だが挨拶の途中、その視線がヴィヴィにちらりと動いた。

 

「……あの、そちらが、噂の」

「ヴィヴィだ。ほら、挨拶しろ」

 

「うむ! わしがヴィヴィアンじゃ! 崇めてよいぞ人間!」

 

一条さんの表情が、一瞬だけ崩れた。

 

「……っ。ほ、本物の、ヴィヴィアン様……」

「一条さん、ヴィヴィのファンなんですか」

 

「え!? ファンなんて恐れ多くて……むしろ下僕……い、いえ! マネージャーとして、客観的にチェックを……!」

「え……下僕?」

「美桜さん、ヴィヴィアン様の配信、いつも全部見てますものね」

 

「聖ちゃん!? それは言わない約束!」

 

約束してたのか。まあ、悪い人ではなさそうだ。

 

 

 ◇

 

 

「では、コラボ配信の内容を詰められれば。狭間様は、ご飯配信であればいくらでも、とのことでしたので、料理系の企画がいいのかなと」

 

さすが柿山さん、話が早い。打ち合わせ室に全員でソファに座って話し合う。

 

「ああ。派手なダンジョン攻略は勘弁してください。前回のようなボス攻略は流石に大変ですからね」

「はい。そこで、いくつか案を――」

 

「フルーツが食べたいのじゃ!」

 

ヴィヴィがソファによじ登り、話を遮った。

 

「さっきのパフェじゃ! 冷たくて甘い、宝石みたいなフルーツの、あれが食べたいのじゃ!」

「おい、話の途中だろ」

 

「フルーツ料理がいい! それがわしの希望じゃ!」

 

「フルーツ、フルーツ」と騒ぐ魔剣様。……こうなると止まらない。頭を抱えていると、意外な援護が入った。

 

「……フルーツ、いいですね」

 

一条さんだった。

 

「デザート配信。画も華やかですし、聖ちゃんもいる。何より……ヴィヴィアン様が食べる姿は、絶対に伸びます。むしろ私が見たい……」

 

……最後本音が漏れてないか?

 

「わたくしも賛成ですわ! 甘いもの大好きなんですの!」

 

桃瀬さんまで乗ってきた。多数決の空気だ。まあ、飯なら何でもいいが。

 

「わかった、じゃあフルーツでいきましょうか材料は買ってくるんですか?」

 

そこで柿山さんが「あ」と思い出した。

 

「真宿ダンジョンの密林ステージに、食用のフルーツが自生しているエリアがあるらしくて。ダンジョン産の食材は、味が濃いと評判です」

 

ダンジョンのフルーツか。ボア肉が絶品だったのと同じ理屈で美味いのかもしれん。

 

「じゃあ、真宿ダンジョンでフルーツを採る。それを配信する。持ち帰って、調理室でデザートを作る。それも配信する。狩りと料理、二本立てですかね」

「採るところから作るところまで……! いいですね!」

 

「フルーツ狩り! みなぎってきたぞ! 行くのじゃ! 今すぐ行くのじゃ!」

 

一番はしゃいでいるのは、企画の元凶だった。

 

「日程はどうします?」

「明後日で、いかがでしょう」

 

一条さんが手際よく進める。

 

「フルーツ狩りは真宿ダンジョン。デザート作りは、うちの調理室を。告知はこちらで担当します」

「告知?」

「はい。フルーツバスケットの公式から、大々的に。狭間様とのスペシャルコラボですから」

 

さっきヴィヴィのファンだとバレて赤面していた人と、同一人物とは思えない。完全に仕事モードの顔だ。

 

「今季一番の話題に、してみせます」

 

ふんす!と意気込んでいる一条さん。……なんか、大ごとになってきたな。

 

 

 ◇

 

 

その夜、フルーツバスケットの公式が、告知画像を投稿した。

 

『【スペシャルコラボ決定】あの人気探索者が、FRUITS BASKETと初コラボ! コラボゲストは――あの人!』

 

ゲスト名は伏せられていた。だが、シルエットと、隣の小さな影で、誰の目にも明らかだった。

 

ネットは一瞬で沸いた。

 

『短剣ニキじゃん!!』

『ばればれで草』

『フルバと短剣ニキとかバグってる』

『ヴィヴィアンちゃんと聖ちゃんの大食いまた見れる!?』

『これは事件』

『明後日、絶対見る』

 

拡散は止まらず、その日のトレンドを駆け上がっていった。俺の知らないところで、話がどんどん大きくなっている。

 

 

 ◇

 

 

明後日。コラボ配信、当日。

 

場所は真宿ダンジョン。難易度ランクC。密林ステージが広がる緑のダンジョンだ。

 

ゲート前にフルーツバスケットの五人が揃った。今日は全員参加。梨路梨花さん、龍梅藍さん、栗花落吟さん、柿山藤里さんと桃瀬聖さん。それに、俺とヴィヴィ。

 

フルーツ狩りはフルバのチャンネルで配信する。配信が始めると、同時接続数がみるみる伸びた。開始早々で五万人超え。告知の効果は絶大らしい。

 

「皆さんこんにちは、フルーツバスケットです! 今回はなんと! 今話題沸騰中の!通称短剣ニキて有名なRENさんにゲストとしてきてもらいましたー!」

 

>きたああああ

>同接やば

>フルバ五人フルメンバー

>ヴィヴィアンちゃんかわいい

>コラボということできました

>楽しみ

>8888

 

「今日はコラボということで! 真宿ダンジョンにフルーツを集めて、それを料理していきたいと思います!」

 

>マジで!めっちゃ豪華じゃん

>フルーツ集めと料理配信、二度美味しい

>このダンジョンのフルーツ、オークションとかでたまに見る

>高いんだよなー

>ダンジョンもCランクだしなかなか手が出ない

>出てくるモンスターも結構厄介

 

ヴィヴィがカメラに向かって胸を張った。

 

「うむ! 皆の者、おぬし等は今日からわしの下僕じゃ! 今日はうまいフルーツを狩るのじゃ!」

 

>早速下僕認定で草

>下僕①です

>下僕②です

>下僕③です

>流れよくて草

 

すっかり配信慣れしてるな。それに何人かうちのチャンネル出身の視聴者もいるみたいだ。

 

ゲートをくぐると、むわりと湿った空気が絡みついた。目の前に広がるのは、見渡す限りの密林。

 

空を覆う巨木。絡み合う蔦。腰まで生い茂る下草。道らしい道は何処にもない。

 

「うわぁ……すごい密林ですね……」

 

桃瀬さんが呟く。フルバの五人も、揃ってこの密林がもつ陰鬱な雰囲気に気圧されている。

 

無理もない。まともに進もうとしたら相当な難所だ。フルーツを探すどころじゃない。

 

「あの、狭間様。ここ、どうやって進みましょうか……? 道もないですし……」

 

配信のコメントも同じ内容を指摘していた。

 

>どうやって進むのこれ

>密林えぐい

>普通に無理でしょ

>ニキならどうする?

>つーかニキいつもの装備で草

>安定のTシャツ、ジーパン、スニーカーの男

>今日はサンダルじゃないだけマシ

 

「ここをまっすぐか」

「はい、この方角のようです」

 

事前情報ではフルーツの自生エリアは、この密林の奥にあるらしい。

 

方角がわかるのならやりようがある。だがその前に、一つ確認しておく。

 

「栗花落さん、索敵得意だよな。この先に他の探索者はいるかな。……ちょっとなんとかしてみる」

「え? ちょっと待ってくださいね……」

 

盗賊職の栗花落さんが目を閉じ、気配を探る。少しして、首を横に振った。周囲に人はいない。

 

「周りには他の探索者はいないと思います」

「よし。なら遠慮はいらないな」

 

オーケー、なら他には被害はなさそうだ。()()()()()やれそうだ。

 

>ざわ……ざわ……

>なんか不穏なんだけど

>短剣ニキなにかやるつもり?

>やばすぎる予感しかない

>なにか来ちゃう?

 

先日メガガルーダからドロップした風魔槍ゲイボルグをインベントリから取り出す。

 

密林の進む方向に、魔剣ヴィヴィアンを両手で構える。左手を柄の先端、右手を中央より短く持つ。剣道の逆胴の様な構え。両腕に力を籠める。

 

ガルーダの翼を広げたような十文字の刃を持つ穂先形状。千鳥十文字と呼ばれる穂から緑の刃を形成した渦が巻きはじめた。

 

俺のディバイドを、ゲイボルグのサイクロンに乗せる。すべてを払い、斬りとばすイメージ。

 

「みんな後ろにいてくれ」

「狭間さん。何を……」

 

「飛ぶ斬撃を、見たことがあるか?」

「「「「「え?」」」」」

 

両腕の力を密林に向けて解放。槍を大きく振るう。木々の間へ左足を強く踏み込む。

 

断空(だんくう)

 

ズバァッ――!!

 

目の前の密林が、巨木も蔦も下草も、まとめて吹き飛んだ。真っ二つの木々が左右へ倒れ、ぬかるみの地面まで、綺麗な一本道が奥へと伸びていく。

 

「「「……は?」」」

 

フルバの五人が、口を開けたまま固まった。

 

配信のコメント欄も一瞬止まり、そして爆発した。

 

>は?

>いま何した

>森が消えたんだが

>またこいつやりやがった

>道がないなら作ればいい理論

>これがCランクダンジョンの光景か…?

 

「な、なな、何をしたんですか今!?」

 

「見ての通り、邪魔なものを斬って吹き飛ばした。道がないなら作ればいい」

 

「作ればいいって……! ダンジョンの木を、こんな、バッサリ……!?」

 

「どうせ一日で元に戻るダンジョンだ。遠慮するだけ損だろ」

 

「カッカッカ! ようやったぞ下僕! フルーツのあるところまで、一直線じゃ!」

 

ヴィヴィだけが大喜びだった。

 

俺は開いたばかりの一本道へ足を踏み出す。フルバの五人はまだ呆然としている。

 

「さ、進むか。フルーツ狩りだ」

 

こうして常識外れのフルーツ狩りが幕を開けた。

 

 

==========================

 カクヨムで先行配信しています。

 先が気になる方はそちらもご覧ください。

 

 https://kakuyomu.jp/works/2912051604673684115

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ダンジョンから帰ったら五十年経ってたんだが。~え?昔の仲間が今や大手ギルドの代表?なにそれ知らん……こわ……~(作者:蝉時雨)(オリジナル現代/冒険・バトル)

 世界にダンジョンという、いくつもの『扉』が出現してから、早五十年。▼ ▼ 人類はこの未知の脅威に対し、慎重に対処をしようとしていた。しかし、その『扉』から現れた異形のモノたちが蹂躙をはじめる。▼ 現代の兵器は異形には届かず、為す術なしかに思われた。▼ だが、人類は諦めなかった。▼ 自ら『扉』に乗り込み、戦果を持ち帰るものが現れ始める。『扉』の先で得た素材で…


総合評価:1070/評価:7.03/連載:33話/更新日時:2026年08月16日(日) 00:00 小説情報

【TSして最強】世界はまだ、俺が魔女で聖女だと知らない(作者:月森朔)(オリジナル現代/冒険・バトル)

ダンジョンが現れてから30年。▼俺は、黒歴史の自作小説キャラになれるという奇妙な能力を手に入れた。▼変身した姿は、▼紅い髪をなびかせるレベル500の魔女▼食いしん坊の女子高生ヒーラー▼希代の美少女魔道具師▼・・・▼かつて妄想で描いたキャラたちが、▼美貌も能力もそのままに、俺のアバターとして実体化する。▼そして能力は進化し、分身も加わり、アバターが連携を始める…


総合評価:1460/評価:8.29/連載:73話/更新日時:2026年08月15日(土) 21:01 小説情報

データを集めて拳で殴るダンジョン配信(作者:佐遊樹)(オリジナル現代/冒険・バトル)

計算によれば、この一撃で敵を仕留めきれる確率は30%……しかし、足りない分は気合と大声でカバーする!!!いくぞ!!!ウオオオオオオオオオオ!!!←『もうデータキャラやめろ』『そもそも確率が足りてなさすぎるだろ』『で、なんで敵は死んでんの?』▼大体こういう感じのお話です


総合評価:16267/評価:8.72/連載:29話/更新日時:2026年05月29日(金) 20:22 小説情報

アラサーTSメスガキ魔法少女に煽られて恥ずかしくないの?♡ざぁーこ♡(作者:夏川優希)(オリジナル現代/冒険・バトル)

アラサー社畜男性がメスガキ魔法少女に転職し、(口が勝手に)敵を煽って煽って煽りまくってボコボコにやっつけちゃう話。▼七瀬律はブラック企業でパワハラ上司にこき使われる社畜である。▼オフィスにて突如怪人に襲われ、死の淵に追いやられた律は思った。もっと自由に生きれば良かった、と。▼その願いに魔法の力が応えた。▼律は魔法少女に変身したのだ。▼アラサー男性なのに。しか…


総合評価:11137/評価:8.79/連載:54話/更新日時:2026年08月16日(日) 07:06 小説情報

人権ヒーラー(︎︎♀)に転生おじさん(作者:春に木漏れ日)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

超絶美麗グラフィックオープンRPG『冥魂』────。▼ ▼ リリース当初はそのゲームシステムや初期ストーリーのモッサリとした展開具合にユーザー離れも酷かったが、しかしVer6.4まで経てかなり評価を覆したこの作品。▼ ……の、周年限定的なガチャでしか手に入らない人権ヒーラー(♀)に転生したおっさんプレイヤー(♂)が原作を破壊したりしなかったり、厄ネタ(主人公…


総合評価:1642/評価:7.61/連載:22話/更新日時:2026年08月13日(木) 17:51 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>