魔剣を拾ったら中身が飯にしか興味のない生意気少女だった   作:竜刃丸

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第27飯 フルーツコラボ配信(前編)

 

長くなったので2話に分けます。前半です。

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真宿ダンジョンから、シフトで全員まとめて脱出した。

 

ドラゴンパッションフルーツの木は、密林ステージのかなり奥にあった。俺がいなければ、往復するだけでも相当な時間がかかっただろう。フルバの五人も削れた大地を眼下に、空中移動には前回よりも慣れたようだった。

 

配信は翌日の予定だったので、ダンジョンを出たところで一旦解散になる。

 

「なぜ今日食べんのじゃ!」

 

ヴィヴィが頬を膨らませて俺に抗議する。

 

「明日って話だっただろ。聞いてなかったのか」

「知らん!」

 

今回のイレギュラーモンスター、金猿の出現はかなりの話題になったらしい。ライブ配信の同時接続数は20万人を超えていた。

 

八皇子ギルドの古館さんからも連絡が来ていた。状況報告のためにも近いうちに顔を出そうと思う。

 

採れたフルーツを少し残して手土産にするか。あの強面の受付がこのフルーツを前にどんな顔をするか少し見てみたい。

 

うちのチャンネル登録者数も、いつのまにか85万人になっていた。100万人まであと少しである。

 

採取したフルーツは全部インベントリに保存してある。インベントリの中は時間が経過しない。冷蔵庫よりも痛まないし、ドラゴンパッションフルーツなんて貴重品もある。そのため俺が預かる形にした。これなら盗まれる心配もない。

 

とりあえず明日のために準備をしておくか。

 

 

 ◇

 

 

翌日。

 

配信の会場はフルーツバスケットの事務所「ピーチ・エモーション」の自社ビルを使わせてもらうことになっている。

 

真宿の駅前に着いたとき、周囲からの視線をなんとなく感じた。

 

登録者数が85万人になってくると、俺を知っている人もそこそこ出てくるらしい。ふいに声をかけられることも稀にある。

 

「あのー、探索者のRENさん、でしょうか」

「あ、ああ」

「わぁ、配信よく見てます。あの! これからも頑張ってください!」

「ありがとう」

 

ボンっ。

 

「おうおう、応援ご苦労なのじゃ」

 

おい、勝手に出てくるな。

 

「キャー! ヴィヴィアンちゃん!!」

 

ヴィヴィが見知らぬ視聴者とワイワイやり始めた。まずい。待ち合わせに遅れる。俺は強制的にヴィヴィを引っ張ってその場を離れた。

 

 

 ◇

 

 

ピーチ・エモーションのビルは一階がエントランスになっていた。受付を済ませ一条さんを待つ。

 

「はぁ、はぁ。おいヴィヴィ、勝手に出てくるんじゃない」

「下僕! サービスじゃ、サービス! 固いこと言うでない!」

「あ、狭間さん、来られたんですね」

 

マネージャーの一条さんが、二階から降りてきた。

 

「一条さん、すみません。遅くなって……ちょっと駅で絡まれまして」

「ふふ、遅れてないですから大丈夫ですよ。もう狭間さんも有名人ですもんね」

「気軽に街を歩けなくなりました」

「次からは、帽子とかで隠して移動するのをお勧めしますよ」

「そうします……」

 

「よし、さぁ飯じゃ!」

「ヴィヴィアン様、準備はもうできてますよ。さあ、行きましょう」

 

 

 ◇

 

 

フルーツバスケットの五人はすでに揃っていた。

 

撮影場所はキッチンが併設されたレクリエーションルームでの撮影だ。ただの配信じゃなくカメラスタッフまでいる。撮影の本気度がうかがえた。

 

まずは、挨拶から。

 

「こんにちはー! フルーツバスケットでーす! 今回は! 短剣ニキこと、RENさんとのコラボ、二日目です!」

 

「RENです。今日もよろしく。前回はいろいろと大変なところを見せてしまったな。今日は先日採ったフルーツを使って、料理配信をやろうと思う」

 

>待ってた

>短剣ニキの料理きたああ

>昨日の金猿やばかったな

>今日は平和そうで安心した

>フルバとのコラボ二日目!

 

「じゃあ、採ったフルーツを見ていこう」

 

インベントリから、採取したフルーツを取り出して、机に並べる。

 

まずは、ドラゴンパッションフルーツ。

 

これは事前に相談して、今回の配信で使うことにした。小ぶりとはいえ、小玉スイカほどの大きさはある。

 

取り出した瞬間、黒い実の見た目からは想像もできない、豊潤な香りが部屋いっぱいに満ちた。

 

「……これはすごいですね」

 

「ああ。大きくはないが、時価数億円の代物だ」

 

>数億!?

>さらっと数億円出すな

>香りが画面越しに伝わってきそう

>スイカサイズの数億円

 

「どうやって処理しましょうか」

「正直、俺もあまり自信がない。誰か、下処理ができる人はいないか」

「でしたら、藍ちゃんはどうでしょう」

 

柿山さんが龍梅さんを指名した。

 

「えっ、私……ですか」

 

まったく想定していなかったらしく、本人は目を丸くしている。

 

「ええ。藍ちゃん、メンバーの中でも一番、刃物の扱いが上手いんです。ご実家が剣術道場で、小さい頃からお料理も含めて、こういうのは得意だとか」

「なるほど……。すまない龍梅さん、お願いできるか」

「……はい。やってみます」

 

龍梅さんは手際よく皮を切り取り果実部を取り出した。きれいに切り分けた状態にしてくれる。

 

「ありがとう。すごくいい手際だ。慣れてるのがわかる。料理はよくやるのか」

「はい。食べるのも好きなんですが、作る方が好きで……。いつも狭間さんの配信を見て、勉強させてもらっています」

 

「いや、俺なんて貧乏料理しかやらないから、あんまり参考にしないでくれ。恥ずかしいからな……」

「おおー! おぬし、きれいに切れとるの! 下僕より上手いんじゃないか! よし、今日からおぬしもわしの下僕じゃ! うまい飯をたんと作れ!」

「はわわ、ヴィヴィアン様からの下僕認定……!? なんて、羨ましい……!」

 

一条さんが、隅ではわわと震えていた。見なかったことにしよう。

 

>侍っ娘、料理上手いの尊い

>下僕の椅子争奪戦

>一条さん情緒どうした

>ヴィヴィアンちゃんの下僕、狭き門で草

 

「せっかくだ。ドラゴンパッションフルーツ、食べてみるか。小さいと言っても、これだけあれば全員分は切り分けられる。ここにいる全員で味わってみよう」

 

スタッフも合わせて一切れずつ配る。

全員で口に運んだ。

 

「「「「「「おおおおお!」」」」」」

 

見た目からは想像もつかない、あふれるジューシーさ。炭酸みたいに、口の中がシュワシュワと弾ける。

 

しかも、一切れ食べただけなのに。心なしか、体に力が湧いた気がした。気のせいだろうか。

 

「……これは、すごいな」

「はい。これは確かに、億はいくかもしれません」

 

>全員の顔が幸せそう

>一口で数百万円か

>味の暴力

>スタッフまで試食とか役得

>うらやましすぎる

>参加したい

 

 

 ◇

 

 

フルーツの下処理を全員で分担した。

 

龍梅さんが主導して、柿山さんと梨路さんが山積みのフルーツを捌く。桃瀬さん、栗花落さんは、俺と一緒に他の料理の準備だ。

 

ヴィヴィ? あいつは見るだけだ。いや、見るというより、食べるだけだ。下処理の終わったフルーツを、片っ端からつまみ食いしている。

 

「おいヴィヴィ、つまみ食いしすぎるな。料理に使う分がなくなるだろ」

「なにぃ! 下僕よ、固いことを言うな! ケチケチするでないぞ!」

「狭間様、こんなにあるんですもの。ヴィヴィアン様にはこちらを取り分けておいて、料理はあちらの分を使いましょう」

 

桃瀬さんが、にこやかに助け舟を出す。

 

「……仕方がない。ヴィヴィ、これからもっとうまいのを作るから、ほどほどにしとけよ」

「早くするんじゃぞ!」

「うふふ。そういえば狭間様、今日はどういうお料理を作りますの?」

 

「ああ。今日はいくつか焼き料理と、デザートを作ろうと思う。必要な具材は、もう一条さんに連絡して準備してもらってる」

「はい、狭間さん。ちゃんとご用意できていますよ」

「ありがとうございます。作るのは三つ、考えてる」

 

机に並んだ、三種のフルーツを示す。

 

「まずはこの黄色いブドウ。リンゴに近い風味だから、ソースにする。豚肉と玉ねぎを一緒に煮込んで、煮豚にしよう。酸味と酵素が豚肉を柔らかくして、フルーティーな旨味を引き出してくれるはずだ」

 

「次に、この赤いメロン。オレンジみたいな、さわやかな酸味がある。ブドウの方が肉料理だから、こっちは付け合わせのサラダにしようか」

 

「最後に、七色のバナナ。見た目に反して、食感はシャキッとしてる。梨みたいな、くどくない甘さだ。これはジャムソースにして、デザートに使う。せっかくだから、赤いメロンも一部ジャムソースにしよう」

 

「とてもおいしそう……。デザートは、何にしますの?」

 

「最近暑くなってきたからな。かき氷にしようと思う」

 

>かき氷!

>この季節に最高

>ダンジョン産のフルーツでかき氷とか贅沢!

 

「ただのかき氷じゃない。一層目の氷の上に練乳と果実をそのまま入れて、上から氷を再度コーティング。その上に、作ったトロトロのジャムソースをかける。酸味の効いた赤メロンソースと、さわやかな甘さの七色バナナソース。好みの味を作って、みんなで食べよう」

 

「「「「「…………」」」」」

 

五人が、しんと黙り込んだ。

 

「え……どうした?」

 

「「「「「狭間さん!!! 天才です!!!」」」」」

 

「お……おう」

 

>キター

>聞いてるだけで腹減る

>かき氷のコーティングとかいう発想

 

コソコソと五人が何か話している。

 

「や、やば……。ダンジョン産のフルーツから、ここまでのレシピが出てくるなんて。マジで何者ですか」

 

柿山さんが引きつった顔で呟く。

 

「一家に一台、狭間様ですわ……。聞いただけで、私、涎が止まりませんの」

 

桃瀬さんはうっとりしている。

 

「正直言って、私たち全然役に立ってなくて、いる必要ある……? 女子力ってなに? って感じなんだけど」

 

梨路さんが遠い目をした。

 

「狭間さん、戦闘だけじゃなくて料理もいけるって、すごいよね……」

 

栗花落さんがしみじみと頷く。

 

「料理のレパートリーが広すぎる……。これはもう、師匠と呼ぶしかありません」

 

龍梅さんに至っては俺を拝み始めた。おい、やめてくれ。

 

>フルバが完全に餌付けされてる

>師匠呼び頂きました

>女子力の敗北

 

ゴゴゴゴゴゴゴ……。

 

「「「ヒエッ、なに……この音」」」

 

低い地鳴りのような音に、前衛三人が身を寄せ合う。

 

「おい下僕!」

 

「なんだ」

 

「腹が減って、たまらんのじゃ!」

 

「お前の腹の音かよ」

 

>金猿より恐ろしい腹の音

>ヴィヴィアンちゃんのお腹が本日のラスボス

>はよ作ってやれ

 

 

----------------------

次回、調理&試食、そして新たなダンジョンへ……

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