賢者の石と緑の目の少女編での、注意事項を
10話の前書きに、のせております。
そちらの注意事項を、よくお読み頂いてから
先へとお進みください。
厳しめ、原作改変、独自設定、独自解釈、独自展開など
多数です。
その為、何でもあり、大丈夫、な方のみ
お進みください。
それではどうぞ!
▷視点、リリローゼ
翌日から、すぐに本格的な授業が始まった。
校内はすでにハリーの噂で騒がしい。昼食時に遠目から見たハリーは、疲れが出ているのか難しい顔をしていた。
ちなみに、スリザリン寮での私の同室メンバーは以下の通りだ。
・パンジー・パーキンソン(気が強そう)
・ミリセント・ブルストロード(体格のいい子)
・ダフネ・グリーングラス(賢そう)
・トレーシー・デイビス(おっとり系)
まさに、人格の見本市である。
それはさておき、今一番困っていることがある。今まで住んでいた家が普通の間取りだったせいか、こんなに広い城の中を一朝一夕で覚えるなんて不可能なのだ。
(だいたい魔法界だからって、階段なら階段らしくしっかり床にくっついてなさいよ! ドアも性格があるのか、それぞれ対応を変えないといけないとか本当にないわ!)
前世での私は、方向音痴とまではいかないものの、あまり道を覚えるのが得意な方ではなかった。今世では若さのおかげか、知識に関してはスポンジの如く吸収して理解できているというのに。
(座学で得られる知識と、空間認識能力って別物なのかしら……)
何より、あのピーブズとかいうポルターガイストの悪戯が酷すぎる。救いなのは、今のところ管理人のフィルチさんと、その飼い猫のミセス・ノリスとは関わらずに済んでいることくらいだった。
(みんなはミセス・ノリスを嫌がっているけれど、元猫飼いから言わせてもらえば猫の可愛さに差なんてない。あ~、なでなでしたい!)
今世ではペットを飼っていないし、今後の実用性を考えると、飼うとしてもせいぜいフクロウくらいだろう。
前世では白い猫を飼っていたのだが、私が死んだ後、あのコはどうなったのだろうか。天涯孤独だった私の葬儀や、身の回りの片付けはどうなったのか――。
気にはなるが調べようもないので、なるべく考えないようにしている。
そんな切ない感傷はさておき、ホグワーツの授業はどれも新鮮だった。
水曜日の真夜中に行われる天文学も楽しいし、薬草学や呪文学も興味深い。何より、元歴史教師の私として嬉しいのが『魔法史』の授業だ。元々歴史教師の道を選んだのは、前世で日本史を調べていてドハマりしたからなのだが、まさか異世界の歴史を学ぶことになるとは。ゴーストの先生というのも面白かった(面白がってはいけないのかもしれないけれど)。
マクゴナガル先生の変身術もなかなかやり甲斐があった。マッチ棒を針に変えるのも、コツを掴めば意外と簡単だったのだ。
逆に『闇の魔術に対する防衛術』は、クィレル先生の後頭部の正体(あの人)を知っている私としては、生きた心地がしなくてヒヤヒヤものだった。緊張しすぎて、正直授業の内容をほとんど覚えていない。
――そして、私が待ちに待った、あの授業の日がやってきた。
金曜日の朝。
今日こそが、原作・映画・二次創作のすべてにおいて、お約束であり最大の見どころでもある、教授の『魔法薬学』最初の授業だ。
私は同室の子たちとスリザリンのテーブルで朝食を食べながら、チラリとグリフィンドールのテーブルへと視線を向けた。
大広間では、ハリーとロンが楽しそうに話をしていた。その頭上を、フクロウの集団が各々の目的地へ向けて郵便を届けるために飛び交う。
(さすがにそろそろ慣れてきたけれど、やっぱり壮観だな~)
この大量のフクロウは、何度見ても飽きなくて楽しい。私は定期購読している『日刊預言者新聞』をその中の一羽から受け取った。
新聞を汚さないように避けてから食事を終わらせると、一度寮に戻って新聞を置き、授業に必要な教科書や文房具を抱えて地下牢へと向かう。
地下牢の少しヒヤリとした空気感は、実家であるスピナーズ・エンドを思い出させた。
壁にずらりと並ぶ、怪しげな液体に浸かった瓶詰めの標本たち。これらもこの数年間、教授に直々に指導してもらったおかげで、今ではすっかり平気になっていた。
そうして懐かしむように地下牢を見回していると、ハリーと目が合った。
「ローゼ、席決まってないならここ空いてるよ?」
私は一瞬考える。けれど、せっかく声をかけてくれた友人をあしらうわけにもいかない。
「ありがとう」とお礼を言って、ハリーの隣に腰を下ろした。
「ハリー、ロン、どう? この一週間は慣れた?」
「まあ、ぼちぼちかな」
と答えたのはロンだった。ついでハリーが言葉を続ける。
「そうだ、ローゼは今日の午後予定ある? なければハグリッドのところに行かない? 三時頃にお茶に誘われてるんだ」
「嬉しいけど、いきなり一人増えたら相手に迷惑じゃない?」
少し抵抗してみるものの、笑顔で「多分大丈夫」と言われてしまった。結局断りきれず、午後にはハグリッドの小屋でお茶会をすることになってしまった。
お誘い自体はとても嬉しい。嬉しいのだが、――「メインキャラには近づかない」という私の最初の目的は、どうやら明後日の方向へと飛んでいってしまったようだ。
もとはと言えば、最初に気さくに話し掛けたのが原因だろう。だが、今更後悔したところで手遅れだった。
そんな脳内反省会を開いていると、地下牢のドアが勢いよく開いた。
「この授業では杖を振ったり、馬鹿げた呪文を唱えたりはしない」
映画でも二次創作でも有名な、教授のセリフだ。
「諸君らが魔法薬調合の持つ緻密な美とその厳格な芸術性を真に理解できるとは、吾輩は微塵も期待していない」
教授は一気にそう演説した。正直、そのバリトンボイスには、父親であるのに惚れてしまいそうだ。
教授はそのまま出欠を取り始めた。ハリーの名前を呼び、彼を見つけると、その真横にいる私に気づいたのだろう。一瞬だけ言葉が詰まり、深く眉間に皺が寄った。
(あっ、教授怒ってるな。後で呼び出しされるかも……)
私が冷や汗をかきながらそんなことを考えている間にも、教授は淡々と全員の出欠を取り終わった。
一安心したのも束の間だった。
「ポッター。アスフォデルの粉末にニガヨモギを煎じると何になるか」
二次創作でも定番の、あの質問タイムが始まった。私はすでに用意しておいたメモに、すかさず答えを書き込む。
『生ける屍の水薬』
そう書いて、ハリーに見えるようにそっと差し出した。
「えっと……生ける屍の水薬です」
教授は少し目を細めると、さらに言葉を続けた。
「では、もう一つ。ベゾアール石を見つけるにはどうするね?」
私はまた、急いで答えを殴り書きする。
『山羊の胃から取り出す石。大抵の毒の解毒剤になる』
「や、山羊の胃から取れる、大抵の解毒剤になる……?」
「では、モンクスフードとウルフスベーン。この二つの違いは?」
『両方トリカブトの別名!』
「……トリカブトのことです」
ハリーの答えが終わると、地下牢内の温度がさらに一段階下がった気がした。
教授はさらに深く眉間に皺を寄せた。
「ふむ。教科書には目を通しているようだな。……どうした? 諸君、なぜ今のをノートに書き留めんのだ? ……グリフィンドール、一点」
私は驚愕した。あのスネイプ教授が、グリフィンドールに加点するなんて!
私が脳内で激しく動揺している間にも、生徒たちは一斉に羽根ペンを走らせ始め、地下牢に羊皮紙の擦れる音が忙しなく響き渡る。
そんな中、隣のハリーからそっとサムズアップをもらった。私は引きつった笑顔を、なんとか彼に向けて返すことしかできなかった。
その後、しばらく座学が行われ、いよいよ実際の調合に入る。教授は生徒たちへ、二人一組に分かれるように指示を出した。
私はハリーとロンの方を見ながら、ふと思い出す。
(そういえば、この最初の調合でネビルが怪我をするんじゃなかったっけ?)
一瞬だけ思考を巡らせた後、私はハリーとロンに向き直った。
「二人で組んで。私は他の人と組むから」
そう言って、私はネビルのところへと近づく。
「ミスター・ロングボトム。良ければ私と組んでくれないかしら?」
不意に声を掛けられたネビルは、ひどく驚きながらも応じてくれた。
「えっ、あ、僕でいいなら……」
「よろしくね」
そのやり取りが聞こえたのだろう。教授がいるであろう方角から、心なしか凄まじい冷気が漂ってきた気がする。
調合が始まると、私はネビルの手元をしっかりと注視しながら作業を進めた。途中で教授が私とネビルの後ろを通りかかったが、これ以上グリフィンドールに加点したくないのか、特に何も言わずにスルーされた。
ドラコを褒める教授の声が地下牢に響く中、調合は順調に進み、何事もなく平穏に初めての調合が終わった。
「そこまで。各自、大釜を綺麗に洗浄し、私物をまとめて速やかに退出しなさい」
教授の一言で授業が締めくくられる。無事にネビルの怪我を防ぎきった私は、胸の中で小さくガッツポーズを掲げた。
「あ、あの……ミス・スネイプ? 組んでくれてありがとう。上手くできると思わなかったから、すごく嬉しいよ」
ネビルは少々怯えながらも、私に向き直ってお礼を言ってくれた。
「あら、お礼なんていいのに。ミスター・ロングボトムの実力でしょ? 落ち着いて手順を守れば、一年生がやる調合は滅多に失敗しないわ。手順の確認と、それを守ること。これでいいのよ」
私とネビルがそんな風に話していると、突如として背後に巨大な黒い影が立った。教授が漆黒のローブを翻して、私たちの前にやって来たのだ。
「ミス・スネイプ。話があるので、夕食後に吾輩の教授室に来るように」
あ、やっぱり呼び出しされた。
隣にいたネビルが恐怖のあまり完全に立ち尽くしているのを横目で確認しつつ、私はしっかりと「はい」と返事をした。
その後、入り口で待っていてくれるハリーやロンと合流し、私たちはお茶会に向けてハグリッドの小屋を目指した。
読者の方から「改行や読点(、)が多くて少し読みづらい」という貴重なアドバイスをいただいたため、文章のリズムやバランスを見直す実験をしています。前より少しでもスマホでサクサク読めるようになっていれば幸いです!
ちなみに、本作のオリ主について少しお話しさせてください。
彼女は元々教師になるくらいなので、とても子供好きです。そのため、子供がケガをしたり傷ついたりするのをできるかぎり回避しようと、無意識のうちに動いてしまいます。
そして、体が動いたあとに「あちゃー、やっちゃった……」と一人で後悔するタイプだったりします。
それでは、また次回もお読みいただければ幸いです。失礼します。