賢者の石と緑の目の少女編での、注意事項を
10話の前書きに、のせております。
そちらの注意事項を、よくお読み頂いてから
先へとお進みください。
厳しめ、原作改変、独自設定、独自解釈、独自展開など
多数です。
その為、何でもあり、大丈夫、な方のみ
お進みください。
それではどうぞ!
今回の視点は前半オリ主視点で後半キャラ視点です。
▷視点、リリローゼ、
そして、ついに飛行術の授業の朝を迎えた。大広間で食事をしていると、毎朝のフクロウ便の配達がやってくる。私は、ドラコが家から送られてきたお菓子の包みを得意げに広げているのを見ていた。
(やっぱり、詳細は忘れちゃったけど、ハリーが皆に届く手紙や荷物に寂しそうにしてた気がして……。今日が飛行術の最初の授業だし、激励になると思って、手紙と小物を送って良かった)
視線でハリーの方を見ると、嬉しそうにロンと小箱を見ているのが分かった。それを確認して、私は胸の中で呟く。
(この間、教授に距離を開けろって言われたばかりだけど、この位はいいよね)
私は脳内で言い訳を考えながら、届いた『日刊預言者新聞』を受け取った。それを横に避けて、そのまま食事を続けた。少しすると、グリフィンドールのテーブルが騒がしくなった。
(ああ、ネビルのおばあさんからの『思い出し玉』か。しっかし、お坊っちゃんのくせに手癖が悪いな、ドラコ)
原作のイベントを目の当たりにしながら、私は変なところに感心していた。
その日の午後三時。よく晴れた、少し風があるとても過ごしやすい気候だった。スリザリン生は先に到着し、グリフィンドール生とマダム・フーチが来るのを待つ。目の前には、箒が整然と並べられていた。
(うわあ、面白いな。まあ、前世が普通の人間としては、箒が何本も並べられているなんてお店くらいだし、見慣れないのも当然か)
などと考えているうちに、グリフィンドール生たちも到着していた。私はハリーとロンを視界に入れて、目線だけでそっと挨拶を交わす。ロンは気づいていないみたいだったけれど、ハリーはニコリと笑って返してくれた。すると、鋭い声が校庭に響き渡る。
「何をボヤボヤしているんですか。みんな、ほうきのそばに立って。さあ、早く!」
マダム・フーチだ。鷹のような鋭い目をした彼女の指示に従い、生徒たちが一斉に「上がれ!」と声を上げる。私のほうきはハリーと同じく、すぐさま飛び上がって綺麗に手のひらへと収まった。
一方、ロンのほうきは映画の通りビシッと彼の額に一撃を喰らわせ、ハーマイオニーのほうきは床をコロンと転がり、ネビルのほうきにいたってはピクリとも動かなかった。
その後、マダム・フーチは生徒たちの間を歩き回り、ほうきの握り方や姿勢を正していった。一通り指導を終えると、彼女は「自分が笛を吹いたら地面を強く蹴るように」と説明を始める。だが、そのカウントが三になるよりも前だった。
――ネビルのほうきの暴走が始まった。
▷視点、ハリー・ポッター
ようやく、待ちに待った飛行術の授業の日がやってきた。僕は空を飛ぶ授業をずっと楽しみにしていた。それなのに、よりにもよって自慢話ばかりのマルフォイがいるスリザリンとの合同授業だなんて、正直うんざりしてしまう。
(……いや、ローゼと同じ授業なのは、すごく嬉しいんだけどな)
ホグワーツ特急で同じコンパートメントになってから――いや、本当はもっと前だ。ダイアゴン横丁のマダム・マルキンの洋服店で初めて会って、彼女のあの綺麗な目を見てから、僕はあの女の子のことがどうしてだか頭から離れずにいた。
(同じスリザリンなのに、ローゼとマルフォイでは、どうしてああも違うのだろう?)
そんなことを考えていると、大広間にフクロウ便の集団がやってきた。僕のところには、前にハグリッドから手紙が届いた後、一通も郵便なんて来ていない。そう少し寂しく思っていると、一羽のフクロウが僕の前に、手紙と小さな小包を落として飛び去っていった。
(誰だろう?)
封筒を見ても、差し出し人の名前はどこにもない。不思議に思いながら中を開けてみると、そこには丁寧できれいな文字が広がっていた。
『ハリー、無記名でごめんなさい、リリローゼよ。突然の手紙ごめんね?本当はロンにも送ろうと思ったんだけど、二人ともいつも一緒だし、一つでいいかなって思ったの。今日は初めての飛行術ね、お互い頑張りましょう!小包にはチョコレートが入ってるわ。小腹が空いたら二人で食べてね! じゃあね』
(そっか……。スリザリンのローゼが、僕に手紙をくれたって周りにバレたら、ローゼが困るから。名前を隠してまで、僕に元気をくれようとしたんだ)
そう気づいた時、胸の奥がじんわりと温かくなり、とても嬉しかった。隣のロンに手紙を見せると、
「へえ、スリザリンなのに、やっぱりローゼはいい子だな!」
と、僕が半分分けたチョコレートを美味しそうに頬張りながら言った。僕たちのためにわざわざお菓子を用意して、応援の手紙までくれるなんて。手紙をそっと破らないようにポケットに仕舞いながら、僕は午後の授業がますます待ち遠しくなった。
そして午後三時。
少し風が吹く、けれど過ごしやすい秋晴れの校庭に、僕たちグリフィンドール生が到着した。先に着いていたスリザリン生の列の中に、ローゼの姿を見つける。視線を送ると、ローゼは目線だけで静かに挨拶をしてくれた。僕がニコリと笑って返すと、彼女は柔らかな笑顔を見せてくれた。
「何をボヤボヤしているんですか。みんな、ほうきのそばに立って。さあ、早く!」
鷹のような鋭い目をした、マダム・フーチの鋭い声が響く。地面には二十本ほどの古ぼけたほうきが整然と並べられていた。マダム・フーチの指示通り、生徒たちが一斉に「上がれ!」と声を上げる。
驚いたことに、僕が声をかけるとほうきはすぐさま手のひらに飛び込んできた。ふと横を見ると、ローゼのほうきも彼女の手にぴったりと収まっている。やっぱり、彼女はすごい魔女なんだ。一方で、ロンやハーマイオニー、ネビルのほうきの反応はそれぞれ個性的で面白かった。
その後、マダム・フーチは全員のほうきの握り方や姿勢を厳しく直して回った。マダム・フーチが笛を吹いたら、地面を強く蹴って上がり、また戻るようにとの指示がある。だが、彼女のカウントが三を数え終えるよりも前だった。極度の緊張で頭が真っ白になってしまったのか、ネビルがフライングをして地面を思いきり蹴り上げてしまったのだ。
「あ、戻りなさい、ミスター・ロングボトム!」
先生の声も虚しく、ネビルを乗せた箒は完全に制御を失って、まるでロケットのように上空へと暴走していく。
「うわあああーーーっ!! 助けてーーーっ!!」
泣き叫びながら、地上数十メートルの高さで、必死にほうきにしがみつくネビル。だけど、ほうきが急旋回した拍子に、ネビルの手がツルリと柄から滑り落ちてしまった。
「ネビル!」
誰かが悲鳴を上げる。ネビルの身体が、真っ逆さまに硬い地面へと落下していく。誰もが最悪の結末を想像して目を覆った。
――次の瞬間だった。
フワッ。
猛スピードで落ちていたネビルの身体が、地面に激突する寸前、まるで目に見えない巨大なクッションに受け止められたかのように、一瞬だけ不自然に宙で静止したのだ。そのまま、ネビルは芝生の上へとゴロリと静かに転がった。
「……え?」
校庭全体が、水を打ったようにしんと静まり返った。人が一人落下したんだ。凄まじい音がするはずだったのに、何も聞こえなかったからだ。そこには、無傷のまま「あれ? 痛くない……?」とキョトンとしているネビルの姿だけがあった。
「おぉ、マーリンの髭……! なんという奇跡でしょう!」
マダム・フーチが真っ青な顔で駆け寄り、ネビルの身体を大慌てで調べ始める。どうやら、本当にどこも怪我はないみたいだ。
念のため、マダム・フーチはネビルを医務室へ連れて行くことにした。僕たちに「もしほうきを一本でも動かしたら、ホグワーツを退学処分にします」と言い残して、彼女は城へと消えていった。
僕はホッと胸をなでおろしながら、ふとスリザリンの列を見た。ローゼは、何事もなかったかのように静かに空を見上げていた。けれど、彼女の右手がローブの袖の中に深く差し込まれているのが、なぜか僕の目に留まった。
(……気のせいかな?)
まさか、今の不思議な現象が彼女の仕業だなんて、この時の僕は思いもしなかったんだ。
マダム・フーチとネビルの姿が遠くへと消えると、途端にマルフォイが大声で笑い出した。ローゼ以外のスリザリン寮生たちが、一斉にマルフォイと一緒になってはやし立てる。マルフォイは、芝生の上に落ちていたネビルの『思い出し玉』を拾い上げた。
僕はたまらなくなって、一歩前に踏み出す。「マルフォイ、こっちへ渡してもらおう」僕が声をあげると、周囲の喧騒が途端に静まり返り、全員の視線が僕とマルフォイの二人に集中した。
「それじゃ、ロングボトムが自分で取りに来られる所に置いておくよ」
そう言い捨てると、マルフォイは手慣れた動作でほうきに跨がって飛び上がり、あっという間にのっぽの木のてっぺんと同じ高さまで舞い上がってしまった。僕はマルフォイの挑発に乗り、ハーマイオニーの引き止める叫びを無視して、ほうきに跨がり一気に急上昇した。
風を浴びて髪が激しくなびく。その感覚に、僕はあの日、マダム・マルキンの店に入ってきた時のローゼの髪を思い出していた。僕の髪はローゼほど長くないし、厳密には全然違うんだろうけれど、なんだか一瞬お揃いになれたみたいで、少しだけ嬉しくなった。
遥か下の方では、みんなが上を見上げて大騒ぎしていた。僕はほうきを安定させ、のっぽの木のてっぺんでマルフォイと真っ向から向き合った。
「こっちへ渡せよ。さもないと、ほうきから突き落とすぞ」
「へぇ、そうかい! 取れるものなら取るがいい、ほらっ!」
マルフォイは意地悪く笑うと、手の中の『思い出し玉』を空へと放り投げた。ガラスの玉が、秋の日の光を浴びてキラキラと輝きながら、放物線を描いて真っ逆さまに地上へと落ちていく。
――逃がさない。
僕は無我夢中でほうきの柄を前方に傾けた。身体が重力から解き放たれ、弾丸のような猛スピードで急降下を始める。耳元で風が凄まじい音を立てて鳴り響き、下で見上げているみんなの叫び声がどんどん遠ざかっていった。
怖いなんて、不思議と少しも思わなかった。
朝、ローゼから貰ったあの温かい手紙が、ポケットの中で僕の背中を力強く押してくれているような、そんな無敵の気分だったんだ。彼女が見守るこの空で、絶対に格好悪い姿なんて見せたくない。
地面が視界の先で、恐ろしい速度で迫ってくる。僕は右手を思いきり伸ばした。指先がガラスの感触を捉えた。
――その瞬間、僕は全力でほうきの柄を引き絞り、衝突寸前で水平飛行へと軌道を修正した。
ズサァッ、と芝生をかすめる乾いた音が響く。僕は地面のわずか数センチ上で体勢を立て直し、右手にしっかりと握りしめたネビルの思い出し玉を、高く掲げてみせた。
「やったぁぁぁーーーっ!!」
ロンやグリフィンドールの仲間たちが、割れんばかりの歓声を上げて僕の周りに駆け寄ってくる。ほうきから降りた僕の心臓は、興奮と高揚感でトクトクと激しく跳ね上がっていた。
息を切らしながらスリザリンの列を見ると、ローゼがいつものお行儀のいいポーカーフェイスのまま、けれどその綺麗な緑色の瞳を満足そうに細めて、小さく小さく拍手を送ってくれていた。
(よかった……! ローゼ、僕、うまく飛べたよ!)
彼女に認められたことが誇らしくて、胸の奥がじんわりと熱くなった。マルフォイは信じられないものを見たような顔で、悔しそうに唇を噛んでいる。だけど、僕たちの勝利の余韻は、鋭い一言によって一瞬で引き裂かれた。
「――ハリー・ポッター!!」
氷のように鋭い、厳格な声だった。
振り返ると、そこには翡翠色のローブを大きく波立たせながら、大股でこちらへと歩いてくるマクゴナガル先生の姿があった。その四角い眼鏡が激しく光っている。
「こんなこと、ホグワーツで一度も……よくもまぁ……! 命を落としていたかもしれないのに。さあ、ポッター、一緒にいらっしゃい」
「あ、でも先生、これは……!」
ロンが慌てて庇おうとしてくれたけれど、先生は聞く耳を持たなかった。僕はキャッチしたばかりのネビルの思い出し玉をロンに託すと、退学の二文字が頭を過った。一気に血の気が引いていくのを感じながら、マクゴナガル先生の背中をとぼとぼと追いかける。
途中、ローゼと一瞬だけ目が合った。
彼女はハラハラした顔をして僕を見つめていたけれど、その唇が小さく「大丈夫よ」と動いたように見えた。初めての飛行術の授業。僕は全力で頑張ったけれど、――僕のホグワーツでの生活は、早くも最大の危機を迎えてしまっていた。
今回後半はハリー視点です。
オリ主視点でネビルを助けるより、
別視点からの方がふしぎ度が増すと思いました。
それでは次回もお読み頂けましたら嬉しいです。
失礼します。