賢者の石と緑の目の少女編での、注意事項を10話の前書きに、のせております。
そちらの注意事項を、よくお読み頂いてから先へとお進みください。
厳しめ、原作改変、独自設定、独自解釈、独自展開など多数です。
今回はホグワーツ教師陣へのオリ主のモノローグでのツッコミがあります。
厳しめとなりますので、原作の空気感を楽しみたい方は、決してこの先に進まないでください。
その為、何でもあり、大丈夫、な方のみお進みください。
それではどうぞ!
▷視点、リリローゼ
初めての飛行術の授業があった、その日の夜。
私はスリザリンのテーブルで美味しい夕食をとっていた。ちらりとグリフィンドールのテーブルを見ると、昼間にマクゴナガル先生に連れられて青い顔をして去っていったハリーが、今はロンと楽しそうに話を弾ませている。
(良かった……。何とか原作通り、グリフィンドールのクィディッチの代表選手になれたみたいね)
正直に言うと、元教師の私から言わせてもらえば、校則を教師自らが破って、特例として1年生のハリーを寮の代表選手にするなんて、納得がいかないけれど、原作を大幅に変えない為には、ここはどうしても動かせない。
――けれど。原作を読んでいた時から思っていたことを、出来ることなら今ここで大声で言いたい。スネイプ教授が自分の監督するスリザリン寮ばかりをえこひいきするのもどうかと思うし、今回のマクゴナガル先生の特例という名のルール違反もそう。
そしてダンブルドア校長が『賢者の石』のラストで、それまで一生懸命頑張って勝利を掴みかけていたスリザリン生たちの目の前で、突然自分の出身寮であるグリフィンドールに大量加点をして逆転優勝させるあのやり口は、今思い出しても本当に腹立たしい。
(この世界の教育者に、公平さや遵法精神を望むこと自体が、そもそも間違っているのかしら……?)
そんなことを考えていると、グリフィンドールのテーブルがまたもや騒がしくなった。遠目に見ると、どうやらドラコがハリーとロンのところに突っかかって、何かを絡んでいるようだ。
(あれ?このあと何か事件があったっけ?)
さすがに目覚めてから7年も経てば、細かい事件や時系列の細部などはあやふやになってくる。とりあえず私は余計なことに関わらないでおこうと判断し、夕食を終えてそのままスリザリン寮へと戻って行った。
緑色の炎が静かに爆ぜる暖炉のある談話室を通り抜け、自分の寝室へと戻る。私は教授から貰った日記帳を開き、羽根ペンを走らせた。当然、他人に見られたらまずい部分だけは日本語で綴っている。
(今日は飛行術の最初の授業。ほぼ原作通りに進むもネビルのケガだけは防ぐことができたと思う)
日記帳を書きながら、ふと夕食時のグリフィンドールのテーブルの光景を思い返してみる。そういえば……あそこに、ネビルの姿はなかったはずだ。
(な〜んか、大事なことを忘れている気がするんだよね……)
ちらりと机の上の時計に目をやると、時刻はもうすぐ夜の11時を回ろうとしていた。同室のパンジーたちは、すでにベッドの中で気持ちよさそうに夢の中だ。私もさっさとベッドに入りたいのに、どうしても忘れている何かが胸に引っかかって落ち着かない。私はこれまでに書き溜めてきた日記の束を、パラパラと読み返してみた。そして、ある部分に目が留まった瞬間に気づいた。
(――あ! 飛行術の最初の授業の夜って、ハリーとロンがドラコと『真夜中の決闘』の約束をする日じゃん!)
結構な大事件を忘れていたことに冷や汗を流しながら、私はそのページの続きを読む。
『トロフィー室に行こうとする二人をハーマイオニーが止めようとして、結果的に太ったレディが肖像画から出かけて締め出される。さらには合言葉を忘れたネビルも合流して、四人で校内を逃げ回る羽目になる。ドラコの告げ口で動いたフィルチさんが追いかけてきて、パニックで逃げ込んだ先には――三頭犬(フラッフィー)がいる』
原作の物語では、確かこの四人に怪我はなかったはずだ。けれど、それはあくまで物語の上の話。今、私が生きているこの世界は、物語なんかではなく紛れもない「現実」なのだ。それに気づいた私は、弾かれたように再び時計を見た。時刻はもうすぐ11時半になろうとしている。決闘の約束の時間だ。
私は大急ぎでベッドから這い出ると、パジャマの上にローブを大慌てで引っ掛けた。足音を少しでも抑えるため、室内履きのまま、静まり返ったスリザリン寮を飛び出した。
(目指すは、ダンブルドア校長の言っていた4階よ!)
急いで4階へと駆け上がると、廊下の奥で、ちょうどハーマイオニーが『アロホモラ』の呪文でドアの鍵を開けたところだった。
(ヤバい、一緒に入らないと、私が廊下に取り残されてフィルチさんに捕まる!)
「ちょっと待って!」
私は小さく声をかけ、驚くハリーたちに慌てて強制合流した。4人はギョッとして目を見開いたが、私がすかさず口元に指を当てて「シーッ」と合図すると、静かにしてくれた。ドアの向こうを通り過ぎる、管理人のフィルチさんの足音が徐々に遠ざかっていく。
「ふぅ……フィルチはもう大丈夫だろう。それにしてもローゼ、急にどうして――」
不意に、ハリーの言葉が途切れた。目の前にそびえ立つ、天井に届きそうなほどの巨大な三頭犬。私自身、本物の怪物との対峙に心臓が跳ねそうになる。けれど、こうなることは分かっていた。みんなをこのまま怯えさせたままではいられない。声が震えないように深く息を吸い込み
――私は、歌う。守りたい想いを込めて。
―――降り給えや 恵みの雨よ 大いなる祈り 捧げ給う―――
それは教会の聖堂に響く、神への祈りの曲だった。前世の頃の大人びた声とは違う。石造りの部屋に響き渡るのは、鈴を転がしたような、けれど凛と張り詰めた幼い少女の声。
―――御霊眠りし 広き大地よ 守護の魂 大いなる眠りを―――
目の前の三頭犬の3つの頭が、私の歌声に合わせて少しずつ、重そうに揺れ、やがて心地よさそうに眠りにつこうとしていく。私は真っ直ぐに前を見据え、最後の祈りを絞り出すように声を震わせた。
―――我が祈り どうか届きて―――
最後の一音が静かに済んだ、まさにその瞬間だった。ハリーが私の腕を掴んで、勢いよくドアを開け放った。
「走れ!」
その勢いのまま、私たちは全員で廊下へと転がり出る。重い扉がバタンと閉まり、カチャリと鍵が掛かる音が静まり返った廊下に響いた。
「はぁ……っ、みんな、大丈夫?」
私が肩を上下させながらハリーたちに声をかけると、4人は魂を抜かれたような顔で私を見つめていた。
「ローゼ、どうしてここに? しかもあの怪物……ローゼの歌で眠っていたけど、……何か知っているの?」
そうハリーに真剣な目で言われ、私は内心でまたしても頭を抱えた。
(そうだよね。前世の知識からフラッフィーは音楽に弱いと知ってたから歌った、なんて言える訳ないし……どうしよう!)
言い訳が思いつかない私は、とりあえず目の前の現実を優先することにした。
「とにかく、早くここを離れよう!」
私たちは急いでその場を離れ、フィルチさんに見つからないよう、それぞれの寮へと逃げ帰った。詳しい話はまた後日ということで強引に押し通して。
次の日の朝。
私はスリザリンのテーブルで朝食を取りながら、一人で考えこんでいた。
(原作の展開を守る為とはいえ、いくらなんでも昨日の夜はやり過ぎた……)
原作のこの時点において、フラッフィーの弱点を知っているのは、あの部屋に配置したダンブルドア校長と、貸し出したハグリッドくらいなものだろう。私がとっさに歌を唄って眠らせるなんて、弱点を知っていなければおかしいし、私が夜中にあそこにいた理由だって、ハリーたちになんと説明するべきか。
頭を悩ませながら、ふと近くにいたドラコに目を向けると、彼は大広間のどこかを見つめて驚いた顔をしていた。その視線の先を追ってみると、向こうのテーブルでは、ハリーとロンが疲れを見せつつも、何やら楽しそうに話を弾ませている。
(あ~もう、楽しそうでよござんすね! 私が勝手にやったことだけどさ! 男の子って、ちょっと怖いもの知らずにも程があるんじゃない!?)
私は自分の選択を棚に上げ、心の中でハリーとロンを理不尽に責め立てた。するとフクロウ便の時間になり、原作通り複数のフクロウが細長い包みをハリーの前に置いて行った。ハリーが一緒に届いた手紙を開けると、隣のロンとコソコソ話していた。
(ああ、マクゴナガル先生からのほうきね。このあと、ハロウィーンまで何もないし、ハリーはクィディッチの練習で時間は取れないはず、しばらくはスルーだ!)
半分ヤサグレながら私は朝食を終え、授業の荷物を取ってくるため、スリザリン寮へと戻る。
その日の夕食後、
私は自分のベッドの上で通販で頼んでいたものを確認していた。それは毛糸と編み棒だ。入学を機に教授からお小遣いを貰えるようになったので、今度のクリスマスには、手編みのマフラーをプレゼントしようと思っている。前世では趣味でよく作っては友人に贈っていたので、プロとは言えないが素人でもない。
(久しぶりの編み物楽しいな♪)
私が教授に合いそうな濃紺の毛糸を使って、編み棒を進めていると、隣のベッドのダフネ・グリーングラスが話しかけてきた。
「ねぇ、ローゼ何やってるの?」
「あぁ、編み物よ。今度のクリスマスにお父さんにプレゼントしようと思って、マフラーを編んでるの」
私が話すと、ダフネは純血のお嬢様らしく、どうにもよく分からないらしい。それに、教授がマフラーを巻いている姿を想像できない、と大真面目に言っていたのには思わず笑ってしまった。そのあとも、ダフネとおしゃべりをしながら編み物を続ける。
私が呑気に編み物を進めているなか、時間はついに『賢者の石』での最初の事件と言えるハロウィーンが、すぐそこまで近づいていた。
クリスマスなら、プレゼントは編み物くらいしか思いつきませんでした。
原作には、名前しか出てなかったダフネ・グリーングラスですが、確か妹がドラコ・マルフォイと結婚したんですよね?
※作中でオリ主が歌っている曲は、本作オリジナルの詩(作中歌)です。(イメージとしては、和風の切ない賛美歌や、厳かな合唱曲のようなメロディで脳内再生していただけると嬉しいです!)
それでは、読了ありがとうございました。
また次回お読み頂けますと嬉しいです。
失礼します。