賢者の石と緑の目の少女編での、注意事項を
10話の前書きに、のせております。
そちらの注意事項を、よくお読み頂いてから
先へとお進みください。
厳しめ、原作改変、独自設定、独自解釈、独自展開など
多数です。
その為、何でもあり、大丈夫、な方のみ
お進みください。
それではどうぞ!
▷視点、リリローゼ、
競技場の真ん中にほうきを持ったマダム・フーチが立っている。審判だろう。正直に言うと、私は前世からスポーツに興味がなく、せいぜいオリンピックの結果を同僚と話す程度だった。特に野球は好きな番組がつぶされることが、よくあったので、苦手である。
スリザリンの観客席の隅で、前世のことなどを考えながら、ハリーを目で追いつつ、目立たないようにあくびをしていると――ついにほうきの暴走が始まった。妙な動きを繰り返し、グルグル回転するほうきに、観客席のあちこちでも騒ぎが湧き起こりはじめた。
グリフィンドールの観客席を見ると、ハーマイオニーが難しい顔をして双眼鏡を置いて、観客席を出ていくのを見た。
(あぁ、やっぱりハーマイオニーは教授を犯人と勘違いして教授のところに行くんだろう。せっかくフラッフィーに噛まれずにすんだのに、・・・よし、)
私は教授にやけどをさせたくなくて、教授のいるスタンドへ走り出す。その途中で、ハーマイオニーがクィレル先生にぶつかるのが見えた。すぐにハリーの方へ視線を戻すと、ほうきの暴走はすでに収まっていた。
それを確認した私は、ハーマイオニーの腕をつかむ。ふりかえったハーマイオニーは、私を見て驚いた顔をした。
「ローゼ、ごめんなさい、今は、」
「大丈夫よ、ハーマイオニー。上を見て、ハリーのほうきの暴走は収まってるわ」
私の言葉に、ハーマイオニーが上を見上げる。急降下していくハリーは手で口を押さえ、四つん這いで着地した。そしてハリーの手の平に、金色の物が落ちる。
――スニッチだ。
試合終了後、
原作通り、クィディッチはグリフィンドールの勝利で終わった。私はハーマイオニーに引っぱられ、ハリーとロンと一緒にハグリッドの小屋に来ていた。ハグリッドが入れてくれた濃い味の紅茶に、ミルクを多めに入れて飲みながら、みんなの話を聞く。
ロンが言った。
「ローゼには悪いけど、僕もハーマイオニーもスネイプが、ハリーをじっと睨みつけたまま目を離さずにブツブツ呪文を唱えているのを見たんだ!」
ハグリッドはそれを否定してくれる。ハーマイオニーは首を横に振った。
「ロン、スネイプ先生よ。……それにそれなんだけど、私、何もしてないのよ。それなのにローゼに言われてハリーを見たら、もう暴走が止まってて……何があったのかしら。それに、スネイプ先生はトロールの時だって助けてくれたし、そんなことする人だと思いたくないわ」
ハリーも難しい顔をしながら、それに同意する。私は(なんで私ここにいるんだろう?)と考えながらも、口を開いた。
「ほうきが暴走している時、ハーマイオニーを追いかけながらハリーを見てたの。でも、走っていたハーマイオニーがクィレル先生にぶつかった直後、ほうきの暴走が収まったわ」
私のその言葉を聞いて、ハリーがハッとした顔をする。ハリーは、クィレル先生がハロウィーンの夜に足にケガをしていたことを思い出し、あの三つ頭の犬に噛まれたのではないか、と推測し始めた。
ハグリッドは「クィレル先生はホグワーツの先生だ」と必死に否定する。それでも、焦るハグリッドは口を滑らせ、ぽろぽろと失言を繰り返すのだった。
「あの犬、フラッフィーが守っている物のことも忘れろ! あれはダンブルドア先生とニコラス・フラメルのお二人が――」
「ニコラス・フラメルっていう人が関係してるんだね?」
ハリーにそう切り返され、ハグリッドはまたしても情報を与えてしまう。ハグリッドは自分の口を慌ててふさぐも、ハリー達はニコラス・フラメルについて盛り上がり始めた。私は紅茶を飲み終わり、ハグリッドにお礼を伝える。
「みんな、とりあえず今日は戻りましょう」
3人組にそう声をかけてハグリッドの小屋から連れ出し、私たちは戻ることにした。3人は図書室でニコラス・フラメルを調べることにしたらしく、図書室に行くそうだ。ハグリッドの小屋を出てしばらく歩くと、ハリーが口を開いた。
「ローゼ、そう言えばあの犬……フラッフィーだっけ? あいつを見つけた時のこと、まだ聞いてなかったよね?」
その言葉に、隣を歩くハーマイオニーとロンの視線も私に集まる。
(話さないですむなら、そのほうが良かったのにな……)
心中でため息をつきながらも、私はあらかじめ用意していた表情を作って口を開いた。
「……誰にも言わないでほしいんだけど。あの夜、どうしても眠れなくて、色々と考え事をしながら歩いていたら、気がついたらあそこに迷い込んでいたの」
かなり無理矢理な言い訳を並べ立てながら、私は心中でため息をつく。
(原作知識でフラッフィーが音楽に弱いと知っていたから、なんて言えるわけがない。原作展開を守るためとはいえ、いくらなんでもやり過ぎた。私がとっさに歌を唄うなど、弱点を知っていなければおかしいし、あそこにいた理由も不自然極まりない)
ハリー達の様子を伺いながら、核心の「歌」についての言い訳を付け足す。
「それから、あの三頭犬だけど……マグルのギリシャ神話に、冥界の門番である『ケルベロス』という魔獣が出てくるの。昔、竪琴の名手オルフェウスが、亡くなった妻を連れ戻すために冥界へ向かった時、ケルベロスに遭遇してね。その時、竪琴の音を聞かせて眠らせたっていうお話があるのよ」
一息にそこまで言って、私は困ったように笑ってみせた。
「だから、本当にただの賭けだったんだけど……歌を聞かせてみたの。そしたら上手くいっちゃって」
「その神話なら知ってるわ! 甘いものも好きなのよね」
ハーマイオニーが目を輝かせて、我が意を得たりとばかりに頷いた。ロンは「へえ、マグルの神話ってのが役に立つこともあるんだな」と、感心したように呟いている。
(……信じた)
自分の寮へと戻りながら、私は内心で盛大に脱力していた。あまりに簡単に信じてもらえて助かった。助かったのだけれど――。
(この子たち、こんなに簡単に人を信じちゃって大丈夫? 悪い大人に騙されたりしない……?)
想定外の素直さに、安堵よりも、なんだか彼らの将来が本気で不安になってしまう私だった。寮に戻り、ようやく自分のベッドに潜り込むと、どっと疲労が押し寄せてきた。布団の温もりに包まれながら、私は今日行われたクィディッチの試合のことを思い出す。
(とりあえず……ハーマイオニーが偶然クィレル先生とぶつかってくれたおかげで、教授のマントが焼かれずにすんだ。本当、一安心……)
次の問題は、ハリーたちが追っている「ニコラス・フラメル」について。前世の知識がある私からすれば、答えを教えてあげることなんて簡単だ。だけど、それを今教えてはいけない。ハリーたちがフラメルの正体を必死に調べて図書室を探索するからこそ、あの「みぞの鏡」を見つけ、両親の姿を見るイベントへと繋がるのだから。
(みぞの鏡をハリーが見つけるまでは、まだニコラス・フラメルのことは絶対に言えないよね……)
そこまで考えたところで、私はがばりと布団をはねのけ、暗闇の中で頭を抱えた。
(――って、なんで私、情報を教える前提で考えてるの!?)
内心でセルフツッコミする。おかしい。私の当初の目的は、教授の死亡フラグを折ることだ。そのためにギリギリまで原作通りに物語が進むよう、ただのモブのスリザリン生として過ごし、最終決戦のナギニ対策をひそかに練るはずだったのに。それなのに、今の私の立ち位置はがっつりメインキャラの距離感になってしまっている。モブとはほど遠い。
「……これ以上、イベントに関わったら駄目だ。教授を救えなくなる」
自分に言い聞かせるように、小さく呟く。ハリーたちが図書室でフラメルについて調べ回るなら、私がやるべきことは一つだけ。
(とりあえず、クリスマス休暇が明けるまでは、絶対に図書室には近づかない!)
固く心に誓い、私は今度こそ布団を頭まで被って目を閉じた。
時間がたつのは早く、十二月の半ば。
朝、目を覚まして窓の外を見ると、ホグワーツは息をのむほど美しい雪化粧に包まれていた。クリスマスまで、あと少し。
「大広間がすごいことになってるわよ!」
という同室の子たちの言葉に誘われて見に行くと、そこには言葉を失うほど素晴らしい眺めが広がっていた。壁にはきらびやかな飾りがいくつも施され、壁際に並んだ十二本もの巨大なクリスマスツリーが堂々とそびえ立っている。
ツララが本物の宝石のようにきらめくツリーや、何百本ものロウソクが灯って光り輝くツリーもあり、見ているだけで胸が躍った。
マクゴナガル先生やフリットウィック先生が、魔法の杖を忙しなく振りながら最後の飾り付けに追われている。
そんなお祭りムードの中、大広間にハリー、ロン、ハーマイオニーの三人組と、ハグリッドがやってくるのが見えた。何やら親しげに話し込んでいる。
(……十中八九ニコラス・フラメルのことだろう)
正確にはわからないけど。
(関わっちゃダメ、関わっちゃダメ……。今の私はただの背景、空気……!)
心の中で呪文のように唱えながら、私はそっと気配を消し、同室の子たちの陰に隠れてやり過ごした。
教授はスリザリンの寮監なので、当然クリスマス休暇もホグワーツに居残る。だから私も、実家には帰らずにホグワーツで休暇を過ごすことに決めていた。ホグワーツで過ごせるクリスマスが、今から楽しみで仕方がなかった。
そして迎えた、クリスマス前日。
私は自分のベッドの上で、用意したプレゼントを広げて、綺麗にラッピングをしていた。まず、一番の力作は教授へのプレゼントだ。一生懸命編んだ手作りのマフラー。教授のあの黒いローブに似合うよう、ベースは落ち着いた濃紺の毛糸を選び、フチにはスリザリンカラーである深緑のラインをあしらった。
我ながらなかなかの出来栄えだと思う。喜んでくれるといいな、と今から少し緊張してしまう。
ハリーには、クィディッチが好きな彼にぴったりな、毛糸で作ったほうき型のチャーム。ロンには、彼が得意なチェスのナイトを模した手編みのチャーム。ハーマイオニーには、読書家の彼女がいつでも使えるように、丁寧に編み込んだ毛糸の栞。
そして、いつも仲良くしてくれる同室の子たちには、可愛いクリスマスカードと、みんなで飲めるようにちょっと良い茶葉を添えて。
クリスマスの朝、目を覚ますと、ベッドの足元にいくつかのプレゼントが積み上がっていた。
「わあ……!」
胸を躍らせながら包みを開けていく。ハリー、ロン、ハーマイオニーの三人からは、それぞれ美味しそうなお菓子の箱が届いていた。同室の子たちからも、心のこもった可愛いクリスマスカードが届いている。
そして、ひときわ目を引くしっかりとした箱。教授からだ。そっと蓋を開けると、そこには信じられないほど綺麗で、高級そうな白いワンピースが収められていた。贅沢に広がる布地をそっと指先で撫でてみる。
(スゴイ……この手触り、もしかしてシルクかな?)
いつも黒一色のローブばかり着ている教授が、私のためにこんなに素敵な、しかも真っ白な服を選んでくれた。その事実に胸の奥がじんわりと温かいもので満たされていく。感動のあまり早く着てみたくて、私はさっそくその白いワンピースを身に纏い、大広間の朝食へと向かった。
大広間に到着すると、残っている生徒たちの視線が少しだけ私に集まった。席につくと、すぐにハリーとロンが声をかけてくれた。プレゼントのお礼を言い合うと、ハリーが少し照れくさそうに微笑む。
「ローゼ、そのワンピース、ローゼの黒い髪にすごくよく似合ってるよ」
「おう、なんかいつもと雰囲気違ってて、お姫様みたいだな!」
ロンの真っ直ぐな言葉に少し気恥ずかしくなりながらも、「ありがとう!」と笑顔を返す。クリスマス休暇中は残っている生徒が少ないため、寮の垣根を越えて、みんな同じテーブルに集まって食事をとるのだ。普段とは違う空気が心地よくて、あっという間に楽しい時間が過ぎていった。
そして、待ちに待った夕食の時間。
大広間に並んだクリスマスのご馳走は、圧巻の一言だった。
丸々太った見事な七面鳥に、山盛りのポテト。大皿に溢れんばかりのソーセージや、艶やかなバター煮の豆など、どれもこれも涎が出そうなほど美味しそうだ。もちろん味は最高だったのだけれど――。
(でも……やっぱり元日本人としては、クリスマスには生クリームと苺のケーキが恋しくなっちゃうな)
贅沢な悩みを頭の隅で転がしながら、私はイギリス風のクリスマスディナーを堪能した。
周りを見渡せば、ハリーやウィーズリー家の双子たちが、テーブルにあった魔法のクラッカーを鳴らして大はしゃぎしている。中から帽子や怪しげなオモチャが飛び出すたびに、大広間は笑い声に包まれた。
そんな楽しく過ごす生徒たちの横で、ふと職員席へと視線を向ける。
(……あ)
そこには、ダンブルドア校長やマクゴナガル先生に、何やら話しかけられている教授の姿があった。校長は悪戯が成功した子供のような笑顔で髭を撫でており、マクゴナガル先生もどこか満足げに、教授の顔を覗き込んでいる。当の教授はといえば、あからさまに嫌そうな、ひどく渋い顔をしてそっぽを向いていた。
そんな職員席の様子を遠くから見守りつつ、とても楽しく賑やかなクリスマスを過ごし、私はベッドに潜り込み一日を終えた。
クリスマス回です。
読了ありがとうございました。
次話もお読み頂けますと嬉しいです。
失礼します。