賢者の石と緑の目の少女編での、注意事項を
10話の前書きに、のせております。
そちらの注意事項を、よくお読み頂いてから
先へとお進みください。
厳しめ、原作改変、独自設定、独自解釈、独自展開など
多数です。
その為、何でもあり、大丈夫、な方のみ
お進みください。
今回はドラゴン事件に関して、
ハグリッドへの厳しめが含まれます。
それでもいいという方のみお進みください。
後の苦情はお受けしませんのでご了承ください。
それではどうぞ!
▷視点、リリローゼ、
気がつけば、教授が審判をすることになった、グリフィンドール対ハッフルパフのクィディッチの試合当日を迎えていた。
確か原作では、この試合は何もトラブルが起きずに最速で終わったはずだ。クィディッチにはあまり興味のない私は競技場には行かず、静かな図書室で本を読みながら時間を潰すことにした。
前から少しずつ作っていた、グリフィンドールのタペストリーをモチーフにした手編みのチャームが、ようやく完成したのが昨日のこと。
同室の子たちに怪しまれないよう、夜中にこっそり編んでいたため、思った以上に時間がかかってしまった。私はそのチャームに、以前「必要の部屋」で読んだ魔術書にあった『プロテゴ(盾の呪文)』を、お守り代わりにしっかりと懸けておいた。
そして今朝のフクロウ便でハリーの元へ届くように、『気負うな!ファイト!』と書いた小さなメッセージカードを添えて、すでに無記名で発送してある。
朝食の席で、ハリーがその小包を無事に受け取るところまでは遠目から確認済み。
しばらく図書室で過ごしていたけれど、さすがに読書にも疲れてきた。私は通販で取り寄せたある物を持って、お城の厨房へと向かうことにした。これまでにも何度か足を運んでいたため、厨房にいる屋敷しもべ妖精たちは、私の姿を見るなり歓迎してくれた。
今日ここで作るのは、クリスマスの時にイギリスになくてがっかりした、あの食べ物だ。
「日本人のクリスマスといえば、やっぱりこれ一択でしょ!」と言うべき、生クリームと苺のホールケーキだ。
妖精たちにも手伝ってもらいながら、スポンジを焼き、クリームを重ねて、苺を飾り付けていく。完成したケーキの出来栄えを確認し、崩れないようにそっと箱へと納めた。厨房から一歩外へ出ると、窓の向こうのホグワーツの敷地には、すでに少しずつ夕闇が広がり始めていた。
出来上がったホールケーキを入れた箱に、念のため保冷の呪文をかけておく。明日、同室の子たちとお茶会をする約束をしているから、その時にでも出してみるつもりだ。どんな反応をするか少し気になりつつも、ケーキの箱を落とさないよう大事に抱え、私はスリザリン寮への道を急いだ。
すると、廊下の向かいからハリーたち三人組が歩いてくるのが見えた。新学期が始まって以来、自分が彼らを避けている自覚はある。気づかれないうちにやり過ごそうと、慌てて振り返って元来た道へ戻ろうとしたけれど、一歩遅かった。
「ローゼ!」
ハリーに名前を呼ばれてしまった。私は一瞬肩を揺らしたけれど、聞こえなかったふりをしてそのまま早足で歩き出す。
けれど、私の背中に、必死なハリーの叫び声が突き刺さった。
「ローゼ、僕、何かした!?」
そのあまりにも必死な響きに、私はどうしても無視することができず、思わずピタリと足を止めて振り返った。振り返った私の目に飛び込んできたのは、今にも泣き出しそうな顔をしたハリーだった。
(えっ……えええっ!?)
あまりの衝撃に、私は慌てて彼の後ろにいるロンとハーマイオニーに「何があったの!?」と視線で助けを求めた。けれど、二人は困ったように苦笑しながら、左右に小さく首を振るだけだ。私の脳内は、
(なんで!? なんでそうなるの!? 私、ただ避けてただけなのに、なんでハリーが泣きそうになってるの!?)
というパニックになっていた。
さすがに見かねたのだろう、ハーマイオニーが私の手を引き、ロンがハリーの手を引いて、私たちは近くにあった人気のない空き部屋へと滑り込んだ。
空き部屋に入り、落ち着いて話を聞いてみると、ハリーは堰を切ったように胸の内を明かしてくれた。みぞの鏡の前で校長先生と話して以降、私と全く話していないことに気づいて寂しかったこと。教授が審判をすることへの周りの不安に、自分は反論できず、私に申し訳ないと思って悩んでいたこと。
そして――今朝届いたばかりのチャームを、先ほどの試合中に無くしてしまったこと。ハリーは今にも泣き出しそうな震えた声で、それらの不安をすべて話してくれた。
(……あぁ、そういうことだったんだ)
ハリーが絶望的な顔をしていた理由がようやく分かり、私は一つずつ、彼の不安を解きほぐすように言葉を返していく。
「まず、新学期になってからなかなか会えなかったのはね……みぞの鏡で何を見たのか、聞かれたくなかったからなの。ごめんね」
困ったように笑ってそう告げる。
(実際は、みぞの鏡に映った自分の本当の望みがあまりにも受け入れがたくて、彼らと顔を合わせるのが怖かっただけなんだけど。……こればかりは、もっと言えない)
「次にお父さんの話だけど。あのお父さんの普段の態度が態度だから、みんなが不安になるのは当然よ。ハリーが気に病むことなんて何もない。あなたは何も悪くないんだから」
私がそう言って笑うと、ハリーの肩の力が少し抜けたのが分かった。
そして最後に、チャームの紛失について語りかける。
「それからね、ハリー。あのお守りのチャーム、無くしたんじゃないのよ」
「え……?」
不思議そうに目を見開くハリーを見つめ、私は説明を続けた。
「ハリー、そのチャームにはね、『プロテゴ』っていう盾の呪文をかけておいたの。だから、それを持っていたあなたに向けて、試合中、おそらく何かしらの攻撃がされたんだと思う。その衝撃を肩代わりして、チャームがあなたの代わりに消滅したのよ」
それを説明した瞬間、ハリーよりも先に、後ろにいたハーマイオニーが身を乗り出してきた。
「詳しく教えて!」
凄まじい勢いで食いついてきた彼女に、私は思わず目を丸くした。
「毛糸という魔力を込めにくい素材に、どうやってプロテゴの術式を定着させたの!?それに、身代わりとして消滅するような高度なエンチャントなんて、一体どこの本に載っていたの!?」
質問攻めにしてくるハーマイオニーに、私はある程度『プロテゴ』と『エンチャント』の仕組みについて噛み砕いて説明してあげた。熱心にメモを取ろうとする彼女の相手をしている間に、ハリーの呼吸もようやくいつものように落ち着いてきたようだった。
ハリーの暗かった顔が消えて私がホッと一息ついたのも束の間、今度はハリーが、先ほど禁じられた森で目撃してきたばかりの出来事を真剣な面持ちで教えてくれた。教授がクィレル先生と何やら不穏な話をしていたこと。そしてその会話の中に、『賢者の石』という単語が出てきたこと――。
(……あ、忘れてた)
原作のこの時期にそんなイベントがあったことなんて、すっかり頭から抜け落ちていた。私が厨房で屋敷しもべ妖精たちと呑気にケーキ作りに励んでいる間に、裏ではきっちり話が進んでいたのだ。私は自身の脳内で頭を抱え、ツッコミをしていた。すると、ハリーが真っ直ぐな目で私を見つめ、こう言った。
「スネイプ先生がクィレル先生を警戒して、賢者の石を守ってくれているなら、きっともう大丈夫だよね。……普段はちょっと怖いけど、先生、あのハロウィンの時にはトロールを一撃で倒しちゃったし。なら何が起きても心配いらないね」
「……あはは、そうだね」
まさかのセリフに、私は苦笑いを返すしかなかった。原作のハリーなら「スネイプが石を盗もうとクィレルを脅しているんだ!」と誤解して敵視を強めるはずなのに、あの一撃トロール事件で、教授への信頼が上がっている。
(モブに徹するはずだったのに、まさか教授の信頼度が上がってるなんて……!)
そのまま、私たちはその空き部屋にあった机を囲み、作ったばかりのケーキを四人で食べることにした。ハリーはさっきまで、不安や疲れでいっぱいいっぱいになっていたのだ。そういう時には、やっぱり甘いものが一番効く。
私は一度スリザリン寮へと急いで戻り、以前通販で買っておいた簡易フォークと紙皿を持ってきた。明日のお茶会用にと、作ったケーキは最初から小分けにして箱に納めてあったのだ。そのうちの数個を三人へと振る舞うことにする。
「わあ……! 何これ、すごく美味しい!」
「こんなふわふわしたケーキ、食べたことないぞ!」
三人とも目を輝かせて、本当に美味しそうにパクパクと食べてくれた。その喜びようを見ながら、私はふと不思議に思う。ハーマイオニーや、マグル育ちのハリーまで不思議そうな顔をしていたからだ。
(ロンはまだしも……やっぱりイギリスには、こういう苺の生クリームケーキって無いのかな?)
日本の定番スイーツの良さを噛み締めながら、ハリーたちとの和やかなケーキの試食会はあっという間に過ぎていった。みんなの笑顔が見られて、私もすっかり満足した。
部屋を出て別れる前に、私はハリーへもう一つ、ある贈り物を渡した。それは、以前通販で取り寄せた折り紙で作った、小さな『折り鶴』だった。
(実は、これにも『プロテゴ』のエンチャントを仕込んである)
本当は教授に渡すために作ったのだけど、前世ぶりの折り紙があまりにも懐かしく、嬉しくなってついつい量産しすぎてしまったものだ。さっきスリザリン寮へ簡易フォークなどを取りに戻った際、一緒に持ってきていた。
私はロンとハーマイオニーにもそれぞれ色違いの折り鶴を渡し、これが身代わりのお守りになるというエンチャントの説明をしておいた。ハリーは折り鶴を手のひらでそっと包み込み、
「ありがとう。無くさないように、大事にトランクにでもしまっておくね」と言った。
けれど、トランクにしまわれては身代わりのお守りの意味がない。
「ううん、お守りだからね? ちゃんとポケットにでも入れて、いつも持ち歩いておいてね」
私がそう言って説得すると、ハリーは「……分かった」と頷き、今度はしっかりとポケットへそれを仕舞い込んでくれた。
翌日。スリザリン寮の自室で、予定通りルームメイトたちとお茶会を開いた。そこに昨日厨房で作った苺のホールケーキを差し出すと、彼女たちの反応は昨日のハリーたちとほとんど同じだった。
イギリスにはないふわふわの食感と生クリームの甘さにみんな大興奮で、とても美味しそうに平らげてくれた。その姿を見るのは嬉しくて、私はまた今度、別のお菓子を作ってあげようと思うのだった。
それから、何週間かの月日が流れていった。
気がつけば、あと三ヶ月もしないうちに進級試験が始まるという時期になっていた。ハリーを不自然に避けたり隠れたりしていたあの時のことを、私は反省していた。どうせ隠し通せないのなら、もう自称モブなんて立ち位置は諦めて、彼らの『友達その1』を目指すことにしたのだ。
そう決めてからは、ハーマイオニー主導で始まった凄まじいスケジュールでの試験勉強にも、さっそく参加させてもらった。
――けれど運悪く、ハリーたちと一緒に図書室から出てくるところを、偶然教授に見られてしまった。
案の定、私はすぐに教授の自室へと呼び出される羽目になった。部屋に入ると、激怒している様子ではなかったのでまずはホッと胸をなでおろす。けれど、教授は相変わらず険しい顔のまま、低い声で私を咎めてきた。
「……ポッターたちとは距離を置けと言ったはずだ、リリローゼ」
教授が私を心配してくれているのは、よく分かる。ハリーたちの周りでは、これから先も事件が次々と巻き起こるのだから、遠ざけたいと思うのは当然だ。
だけど、私だって彼らを見捨てるような真似はしたくない。私は教授を安心させるため、言い訳を並べ立てて何とかその場をなだめにかかった。
「大丈夫だから! 本当に深入りはしないから……!」
(……って、本当に出来るかな、私?)
自分で言っておきながら、心の中では冷や汗を流していた。 すでに色々やらかしている身としては、説得力が皆無である。
それでも、私の必死の訴えが少しは通じたのだろうか。教授は深く重いため息をつくと、「厄介事には首を突っ込むな」という条件付きで、何とかハリーたちとの交友を許してくれたのだった。
ある日、いつものように図書室で三人組と一緒に試験勉強に励んでいたときのことだった。
「えっ……ハグリッドが、本を読んでる!?」
隣にいたロンが、素っ頓狂な声を上げた。視線の先を見てみると、本当にハグリッドがその大きな体を縮こまらせて、何かを周囲から隠すようにして熱心に本棚を漁っている。珍しいこともあるものだと、ロンがさっそく彼の様子を窺いに席を立った。
その時、私は少し離れた別の棚で本を探していたので、二人がどんな会話を交わしたのか詳しくは聞こえなかった。けれど、この状況――前世の原作知識を持つ私には、これから何が起きるのか思い当たる節があった。
(これって、絶対にハグリッドがドラゴンの卵を手に入れちゃった時のイベントじゃん……!)
案の定、ロンが席に戻ってきたあと、みんなで今日の放課後にハグリッドの小屋へ行こうという話になってしまった。教授と「絶対に深入りはしない」と約束したばかりの私は、行くべきか否か、頭を悩ませるハメになる。
そして約一時間後。
結局私は、ハリーとハーマイオニーの二人に両腕をがっしりと引っ張られ、文字通り足取り重くハグリッドの小屋へと引きずられていた。後ろからついてくるロンからの、なんとも言えない哀れみの目が痛い。
(ちょっとロン、そんな目をするくらいなら、お願いだから今すぐこの二人を止めてよ!?)
必死のアイコンタクトで「助けて」と目線を送ってみたものの、ロンは「あーあ……」とでも言いたげな顔をして、両手をすくめてお手上げのポーズを取るだけだった。私は心の中で、そんな使えないロンを何度も往復ビンタではたき倒しておいた。
辿り着いたハグリッドの小屋は、予想通りすべての窓のカーテンが固く閉め切られていた。中に入ると、ハグリッドは私の姿を見るなり、あからさまに少し苦そうな顔をした。
(うん、そりゃそうだよね。よりによって、ホグワーツで一番容赦のないスネイプ先生の娘をハリーたちが連れてきちゃったんだから。それに……今のこの人、自分が『自覚ある犯罪者』だって分かってるわけだし)
もしもハリーたちに聞かれたら確実に怒られるであろう感想を心の中で呟きつつ、私はサウナのように暑い小屋の空気に困惑していた。汗がにじんでくるのを感じながら、私は大人しく彼らの会話に耳を傾ける。
ハグリッドが何を隠しているのか、ハリーたちが追及していく流れは途中まで原作通りだった。ただ、一つだけ原作と決定的に違っている点がある。それは、ハリーたちが『賢者の石』を狙っている黒幕として怪しんでいる対象が、教授ではなく、クィレル先生になっていることだった。
しかし、次のハリーの言葉に私は焦ることになる。
「フラッフィーは音楽か歌を聞かせれば大人しくなるんだよね? このこと知ってるのはどのくらいいるの?」
(ちょっと待ってハリー! それを今この人に聞くのは、私の首を絞めるのと一緒だから止めてーーー!!)
私が内心で冷や汗を流していると、ハグリッドは顔色を変えた。
「ちょっと待て、なんでそのことを知っとるんだ? そのことはオレとダンブルドア先生以外は知らんはずだぞ」
ハリーたちは驚いて私を見る。ハグリッドはその視線の先にいた私の肩を掴み、詰め寄ってきた。
「ローゼの嬢ちゃん、なんで知っとるんだ? 誰かに聞いたんか?」
「あ~、ハグリッド落ち着いて」
「落ち着いとる場合じゃ――」
と途中まで言ったハグリッドに、私はかつてハリーたちにした答えを説明した。あの三頭犬を見てギリシャ神話のケルベロスを連想し、オルフェウスが竪琴を弾いて眠らせた話を思い出して歌を歌ってみたのだ、と。私の説明を聞いたハグリッドは、
「なるほど、マグルの神話から思いついたんか……嬢ちゃんは賢いのう」
と、一応納得してくれたようだ。ガシッと掴まれていた肩から大きな手が離れる。ハリーたちも「やっぱりローゼはすごいや!」という顔で私を見ている。私は背中に冷や汗を流しながら、
(……神様仏様オルフェウス様、本当にありがとう……!)
と、心の中で感謝を捧げていた。
その後、ハリーたちがドラゴンの卵の話になり、ハグリッドは慌てて私を見た。私としても、さすがにこの件は見て見ぬ振りをして無視するわけにはいかない。私は腕を組み、ハグリッドを真っ直ぐに見据えて、しっかりと説教した。
「ハグリッド、あなた、大人でしょう? 子供たちが寝泊まりと勉学に励む目と鼻の先で、こんな危険な生物を孵そうなんて。……しかも、これが犯罪だって分かってるんでしょう?」
そこまで言われても、ハグリッドは巨体を小さく縮こまらせて、まるでスズメのような小声でモゴモゴと反論してきた。
(……はぁ。全く、聞く耳持たずの大男なんだから。……いっそ教授に言いつけるかな?)
教授の顔を思い浮かべ、そんな強硬手段すら頭をよぎったけれど、これ以上ここで揉めても仕方がない。結局、有効な解決策は見出せないまま、私たちはその日、それぞれ自分の寮へと帰るのだった。
ドラゴン事件って、子供に後始末させる描写が、
初めて読んだ時、信じられない気持ちでした。
今回は、説教程度ですが、
一応厳しめとなります。
恐らく次話でも、厳しめが含まれると思いますので
ご了承ください。
それでは読了ありがとうございました。
厳しめをご了承頂ける方、なんでもいいよという方は
次話もよろしくお願いいたします。
それでは失礼いたします。