「ホシノちゃん、終止符事務所なんて聞いたことあったりする?もしかして新しい会社か何かかな?」
「聞いたことないですよ...あとただでさえ砂漠化が進んでるアビドスに新しい会社ができるとも思えませんし...」
2人は俺に聞こえないようにとお互いに後ろを向き小声で相談のようなものしていた。
会社か...2人の反応からしてこのあたりにはフィクサーの事務所がないのか?だとしても聞いたことはあるはずだよな...
「ところで聞きたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」
「あ!すみません。なんでしょうか?」
今もなおおそらく俺のことについて話している2人の背中に声をかけると薄緑色の髪の少女がはっとしたように振り返ると笑顔でこちらに向き直った。
その笑顔には不思議と今まで俺が会ってきた人間にあったどこかこちらの価値を見定めるようなものがなかった。
作り笑顔ではないな...何だかそういうやつとばっかり関わってきたせいで少し気が狂うような。
「...では一つ聞きますが、ここは何番区、即ち何社の自治区ですか?」
「え?番区...?何社...?自治区ならここはアビドス自治区ですけど...」
「アビドス...?そんな翼の名前は聞いたことがないな…」
俺は彼女からの答えに頭を抱えひどく困惑した。彼女の番区や翼の事について全く知らない様子、聞いたことがない”アビドス”というこの場所の名前、少しでも自分の置かれた状況を把握しようと聞いたことが逆効果になってしまった。
事務所と言い、いくらなんでも都市に住んでいれば誰しもが翼や自治区について知っているはず。ということはこの結果から導き出せる答えは一つしかない。
「もう一つ聞いても?」
「あ?え?ど、どうぞ」
「...ここは都市ではないのですか?」
「と、都市...?」
「やっぱりか...」
「へ?」
俺は彼女の再び困惑する様子を見て確信した。
確かに最初から考えてみれば幼い子どもがあんなにも高価な銃や銃弾をこんな俺に脅し程度で使えてしまう事がおかしいよな。
「あの、リーウェイさん?私からも少し聞いていいですか...?」
「なんでしょうか?」
「リーウェイさんは一体、どうしてあんなところで倒れていたんですか?」
先程までの質問について未だに分からないというかのように今もなお困惑するような声で彼女は俺に向かって聞いてきた。
「......」
「り、リーウェイさん...?」
「...それは私自身もあまり分かっていないためお答えすることはできませんが、気づいたらここにいました」
「なるほど...」
さっき図書館で死んだかと思えばこの場所にいたなんて話せば話が拗れるだろうし、何よりも正直あんまり図書館でのことは思い出したくないしな。
「じゃあその前はどこに居たんですか?」
「それは...ん?」
「っ!伏せて!」
彼女の質問に答えているのに詰まっていた矢先、ふと何かが風を切るような音がこちらへ近づいて来るような気がしたのと同時にホシノが俺に飛びかかってきた。
「いいから伏せろ!」
「急にどうし...!」
急に上に乗っかったホシノを退けようともがいていると、俺が怒鳴り終わる前に部屋の壁を何かが爆発しながら突き破った。
「うっ...くそっ!」
「ゴホゴホ...!...またあいつらか...!」
「痛てて...また来たんだね。...なら対処しないと」
分からないことの上に更に分からないことが積み重ね、理解しようとするのを放棄しようとも感じる思考を巡らせ何が起こったのかを推測しようと、俺は崩れた部屋の壁の残骸から体を起こした。
一体何が起こったんだ?壁の向こうを見ても誰の気配を感じられないことから誰かが武器で壊した訳ではなさそうだな。...となると遠距離から誰かが壁を壊した?それは有り得ない。壁を壊すほどの銃火器があったらそれは都市の禁忌に反している。
いや待て、ここは都市じゃない。都市の禁忌なんて通用しない可能性もある。
「...考えるだけ無駄に思えてくるな」
「リーウェイさん大丈夫ですか!?」
「...戦うのには支障は出ないはずだ」
壁の惨状から目を離し、痛みを感じる足を休ませようと壁にもたれかかりながら短刀と銃の状態を確認していると、ユメが驚きながらも心配そうに俺に声をかけた。
「...手伝ってくれるんですか?」
「助けてもらったそうだからな、その恩は返せる程度に」
「そうですか」
少し驚いた様子を見せるホシノに軽く返事を返しながら俺は短刀と銃の両方とも大した損傷がないことを確認すると、短刀を上着の鞘に収め崩れた壁からもうすでに外へ出ていた2人に続いた。
…
「今回はどう戦いますか?ユメ先輩」
「うーん」
「...この場所はいつもこんなに視界が悪いのか?」
俺は砂嵐のせいで痛く感じる目を細めながら、先程まで崩れた壁がすぐ後ろに見えていたのに少し歩いたと思ったら見えなくなってしまうほどの異常と言っていいほどの視界が悪い状況の中に立ちながら平然とした様子で作戦を立てていた2人に尋ねた。
「あ、もう少ししたら砂嵐が止むはずなのでそこは心配しなくて大丈夫ですよ〜」
「そういうことを聞きたかった訳じゃなかったんだけどな...」
「...いつもこんな状況で戦ってるわけではないです」
うまく俺の言ったことが聞こえなかったのかユメがそう答えたことに俺の近くにいたホシノが未だ俺への嫌悪感が拭えないのかうんざりしたように答えた。
「にしても視界が...っ!?」
ぼやくように愚痴をこぼすと急に前方から飛んできた何かを避けきれずにそれは俺の頬を掠った。
「こっちか...!」
「え?ちょっと!?」
俺は更に細めた目と傷口に砂が入る痛みを感じながらおそらく敵がいるであろう方向に走った。
「.........するな!」
「でも............じゃん!」
ひたすらに真っ直ぐ走り続けていると、前方からとぎれとぎれになっているが確かに声が聞こえた。
「...お前らも銃を持っているのか」
「え、はぁ!?大人!?」
声のする方へと近づいて行くとこちらも形こそは違うが確かに銃を持ち、防護のためなのかヘルメットをかぶっている3人の少女に遭遇した。
顔を何かが掠った時から薄々そんな気はしてたがここでは銃を持つのが普通なのか?
「あんたアビドス...じゃなさそうだよな...ていうかあんたこの砂嵐の中こっちに突き進んで来たのか!?死にたいのか!?」
3人のリーダーかのように俺に話し始めた真ん中に立っていたやつが驚いたように声を上げると自身の構えていた銃を下ろし残りの2人にも下ろすように指示を出すと俺に近づいてきた。
「あんた遭難でもしたのか?それならここから離れたほうが...」
「はぁ...」
「なんでため息なんて吐いて...」
俺は警戒もせず堂々近づいてくるそいつを見て口に砂が入るのを構わずため息を吐きながら、素速く上着から取り出した短刀で首元を狙った。
「がっ...!?」
俺は目の前の奴が血を流さずに首を抑えながら地面に膝をつくのを横目で見ながら残りの2人を片付けようと低くかがみながら背後に回った。
「え?」
「こいつ...!あっ...!?」
混乱している様子の一人を拳銃に持ち替え頭を撃ち抜くと、我に返ったようにとっさに銃で攻撃を受けようとしているもう一人の膝に蹴りを入れ体勢を崩す。
「う、うぅ...」
「......」
俺は無言起き上がろうとする最後の一人に向かって腹部に足を抑える顔に向かって銃口を向けた。
そいつは転んだ時にヘルメットが脱げてしまったのか、まだ幼く感じる顔で俺への恐怖を露わにしていた。思わずほんの少しだけ震える手はどうしてだか少し親近感が湧いたような気がしているのを体現しているようだった。
確かに首を切り裂いたはずなのに手応えと言い、血が出てないことと言い普段と同じように行かないことが多すぎるな。この世界は。
投稿まで結構時間がかかり申し訳ありませんでした...これからも時間はかかってしまうと思いますががんばります!
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