0.5秒の支配者 作:一般通過チート
初投稿ではありません。
それは、誰にでも起こり得る事故だった。
居眠り運転のトラック。
疲れから周囲への注意が散漫になっていた俺。
ニュースで何度も目にするような、ごくありふれた交通事故。
――それでも俺は、生きていた。
奇跡的に命に別状はなく、目立った外傷もない。
医師からは「念のため数日入院しましょう」と告げられ、今は病室のベッドで暇を持て余していた。
事故が起きた瞬間のことは、よく覚えていない。
ただ一つだけ、不思議な感覚だけが頭に残っている。
あのとき俺は、一瞬だけ未来を見た気がした。
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病室は静かだった。
退屈しのぎに本を読んでいると、不意に頭の奥で映像が流れた。
――病室の扉が開く。
反射的に顔を上げる。
コンコン。
ノックの音。
そして予想どおり、扉が開いて看護師が姿を見せた。
「失礼します」
……まただ。
事故以来、こんなことが何度も起きる。
ほんの一瞬先の出来事だけが、映像のように頭へ流れ込んでくる。
未来予知……いや、そんな大げさな話じゃない。
デジャブ。
きっとそれに近い感覚なんだろう。
そう思い込もうとしても、この奇妙な現象は何度も俺の前に現れた。
しかも、見える未来はほんの一瞬だけ。
一秒もない。
「……気のせい、だよな」
そう呟いたものの、どうしても確かめたくなった。
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最初は簡単な実験だった。
病室の外から聞こえる会話。
適当に一人を選び、「次に何を言うか」を予想してみる。
――分かった。
「ああ、なるほど」
数秒後。
「それってジョジョのジョセフじゃん」
思わず笑ってしまう。
当たった。
偶然だと思ってもう一度。
また当たる。
三回。
四回。
十回。
百発百中だった。
知るはずのない言葉まで、まるで最初から知っていたかのように分かってしまう。
「……面白いな、これ」
胸が高鳴る。
もしかしたら俺は、とんでもないものを手に入れてしまったのかもしれない。
その日から、暇さえあれば能力を試した。
コイントス。
買ってきたトランプの絵柄当て。
スマホのガチャ結果。
目に入るものすべてが実験台だった。
使えば使うほど、予想は確信へ変わっていく。
だが、それと引き換えに頭の奥が焼けるように痛み始めた。
視界が揺れる。
吐き気まで込み上げてくる。
「……さすがに、無制限ってわけじゃないか」
額を押さえながらベッドへ倒れ込む。
能力には、限界がある。
だけどこれなら最強を目指せる。
間違いなくチートといえるだろう。
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そのときの俺は、まだ知らなかった。
これは未来を"見る"力ではない。
未来を"選ぶ"力なのだと。