Sword Art Online ーPhantom Knightー 作:陣禅 祀
ソードアート・オンラインの二次創作は初めてで、殆どアニメ版とプログレッシブの知識しかありませんのでお見苦しい点もあると思いますが、宜しくお願いします。
※他の連載が行き詰まった時に更新するようになると思いますので、更新は不定期、そして遅いです
プロローグ -絶望の淵に立つ者-
ーーーどこだろ、ここ…
あぁ、そうか。私、死んだんだっけ…
感じるのは浮遊感。
見えるのは白一色。
覚えているのは病院のベッドの上で意識が遠退く感覚と、朧気に聴こえたバイタル計測器具のピーピーという警告の電子音だった。
そんなことを思い返していた最中、突然白い世界に茶色だか黒だかわからない点が見えた。それはどんどん大きくなって、広大な大地になった。
「っ!?きゃぁぁあぁぁぁああぁぁぁぁ?!」
逆らえない力、即ち重力によって極限まで加速された私の身体は、地面に激突した。
「っ痛ぁ…」
本来なら動けない筈なのに、むくりと普通に起き上がれた。
それに、反射的に痛いと言ったが、そう言った痛みも感じられない。
「ここ、どこよ…」
そこは鬱蒼と繁った森で、見上げても何も見えず、ただただ蒼い空が広がっていた。
ふと腕に目をやると、入院服の簡素な袖ではなく、凝った意匠の装飾が施された袖が目に入った。
「この服、どっかで…?」
立ち上がって服の全容を把握してみたが、青い地に銀色の刺繍が施され、胸部に金属製の胸当て、肘にも同様の肘当てが装着されており、形状は際どいスリットの入ったチャイナドレスのようなものだった。
腰に大きな白いリボンが巻かれているが、やはり体形がわかるような少々恥ずかしいデザインだ。
白ニーソの上からこれまた白いロングブーツを履いており、随分と自己主張の強めな衣装だな、と思うと同時に、見覚えがあると感じる。
「どこだったかなー?」
「何かのゲームだったよね…えーと…」
暫く悶々と考え続けた結果、ひとつの結論に達する。
「あ!ALOの私のアバターだ!」
そう思えば不自然な点もなんとなく納得できる。
そう思って左手を振れば、いつも通りのメニューウィンドウが出現する。
アバターネーム「Simon42」。
種族スプリガン。
身長163cm、体重53kg。
B80、W65、H94。
確かこんな感じだっけ…
「改めてみるとアレだなぁ…スプリガンなのにウンディーネみたいな服装してるの」
髪色は固定の黒だが。
「兎に角、ALOにログイン中ってことは私死んでないよね!ログアウトしたら現実に戻れるよね!」
一人でテンションを上げながら、メニューウィンドウの最下部のログインメニューを開きログアウトを押すが、
【WARNING!!】
と警告が表示されてログアウトできない。
「なん…で…」
愕然とするが、突然メッセージが届いたのでそれを確認する。
「差出人…不明?」
【君は死んだ。少なくとも現実世界ではね。
だが、死の直後、君に高出力脳内スキャンをかけることによって人格や記憶といったもの全てをコピーし、データ化してALOのアバターとリンクさせた。
君は何万分の一の確率で成功した。ログアウト自体はできない仕様になってしまったが、いつかネットの海を自由に行き来できるようにする。そしてもう消えたいと願った時のための自己消去コマンドも追々作成する。今は申し訳無いがそこ、ALOの中で過ごしていてくれ。
君を最も愛する者より】
「私を…最も愛する者…より……?」
「ログアウトできない?もう死んでる?今の私はデータ?何よそれ…信じられる訳無いじゃない…!」
「ふざけないでよっ…!」
急に鮮烈に沸き上がってくる、記憶の渦。
そう、私は車に轢かれたのだ。そして重傷を負い病院に搬送されて、それから数日後にその病院で死んだのだ。
「あ?…ああ!!」
「それならそのまま死なせてくれれば良かったじゃない!なんでこんな半端な生を!仮染めの命をくれたのよ!」
「あああ……ああああ…………あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
叫ぶ私に声をかけてくれる者などいない。
側にいてくれる人なんていない。
ここはゲームという名の檻だ。
SAO事件なんかよりもっと質の悪い檻だ。牢獄だ。
永久に現実に戻れない?なんでっ!なんで私が!
ーーー
「……どうにかして死ねないかな…」
「そうだ…あの鉄の城に……アインクラッドにいるフロアボスなら…私を殺してくれるかも…」
私は死ぬことしか考えられなくなった。
そこからのことは、あまり覚えていない。
ただ、浮遊するアインクラッドに突入して、最前線のフロアを進んでいたことは覚えている。
確か、第29層だっけ。
覚束無い幽霊のような足取りで迷宮区を抜け、気が付けばボス部屋の前にいた。
「……フロアボス…確か大規模レイド組まないと攻略できないのが普通なんだっけ…なら、私程度がソロで挑んでも勝てっこ無いよね…」
少し笑っていたかも知れないけど、周りに人が居ないからそんなの自分じゃわからない。
そして、私はフロアボスの間へと続く扉を開けた。
ーーー
部屋に響く、獣の咆哮。
甲高いそれは、狼の遠吠えのようでもあった。
そして出現したボスは、狼と女性を合わせたようなシルエットを持つ、身長約2mの獣人だった。
BOSS『カルブサイド』。
それが29層のフロアボス。
ゲージは4本、それなりに多い。
「さぁ、私を殺して見せてよ!」
片手用直剣を右手に持ち、ボスに一気に接近した私は、跳躍してボスの左目に剣を突き立てた。
カルブサイドは咆哮を上げてよろよろと後退したかと思うと、激昂したように突進してきた。
「あは、は…その調子」
迫る女狼を紙一重で回避し、そのままソードスキルを発動させる。
「…『バーチカル・アーク』」
突進の勢いが殺しきれずにまだ突進しているカルブサイドの背後からV字の剣閃を刻む。
「『スラント』」
さらに斜めに斬りつける。
技硬直が少ないのですぐに回避に移る。
カルブサイドがソードスキルの燐光を纏い、その鋭い爪で貫かんと飛びかかってくるが、それを突進技であるソニックリープで相殺し、あろうことか強制解除を発生させた。
「…ねぇ、貴女は私を殺してくれないの?」
強制解除のペナルティにより動けないカルブサイドの右目に、深々と剣を突き刺す。
そのままぐりぐりと抉っていると、あっという間に体力バーの一本目が消失した。
「確かバーが一本消える毎に攻撃パターンとか変わるんだっけ…」
「あはは、はははは…楽しみ…?わかんないや」
ディレイが解除された女狼が、吼えた。
「あれ?動けない…?」
自分のステータスを確認すれば、【スタン】のアイコンが点灯している。
「へぇ…咆哮によるスタンかぁ…この状態なら…殺してくれるよね…?」
右目からまだ赤いダメージエフェクトが出ているカルブサイドが、ソードスキルの燐光を纏い突進してきた。
「あはは、これで本当に死ねればいい…
「危ないッ!!」
突然そんな声が聞こえて、声とほぼ同時に現れた黒い影がボスの攻撃を受け止めた。
「え…?」
「速く!麻痺が解けたら距離をとれ!」
二振りの剣でボスのソードスキルを受け流し。
受け流されたと同時に放たれた返す尖爪での凪ぎ払いをも回避し。
攻撃しながらいとも簡単にボスの攻撃を受け止め、受け流し、弾く。
そして数秒後、スタンが解除される。
「……?」
それでも、呆然として動かない私を、影と共に来たのであろうシルフの少女が抱えてボスから離れさせる。
「貴女、大丈夫?!」
「フロアボスに何の対策もなくソロで挑むって正気なの!?」
「…死ねなかった」
「…は?」
「死ねなかった!死なせて貰えなかった…」
「何いってんの、ここ、ゲームの中だよ?死ぬ訳無いじゃない」
何言ってんだか、というように首を振るシルフの少女。
「それにしても、お兄ちゃんも御人好しだよねー」
「なんにも知らない貴女を助けようとしたんだから」
「…放っておいて!放っておいてよ!」
未だボスと戦っている影と、目の前の少女に向けて、叫ぶ。
「私は!私は…もう死んでるんだからッ…!」
後で聞いた話だが本来黒である筈の私の瞳は、青色に輝いていたらしい。
制止する少女の手を振りほどき、飛翔してボスの頭部に剣閃を叩き込む。
その一撃は影の青年も驚いたようだが、その減少量を見てさらに目を見開いた。
ボスのHPバーの0.5割。それを一撃で削ったのだ。
「ウソだろ…?」
今度は青年と少女が目を疑っていた。
青年の一撃でさえ私と同じように頭部に当てたとしてもそれほど削れない。寧ろ削れる方が可笑しい。
だが、私はそんな彼等には目も暮れず…いや、そもそも眼中にすら無く、神速と言って差し支えない速度で女狼を切り刻み、一気にゲージの三割を消し飛ばした。
それにより発生したタンブルでは、頭を重点的にーーー 本物ならば当の昔にミンチになっているであろうレベルで切って切って切り刻み、それが終わったのはゲージが一本飛んでタンブルが強制解除された瞬間だった。
バック転や側転等で一気に距離を開け、来る咆哮を、スタン有効範囲外であろうフロアの端で待つ。
「…フロアボスなのに…この程度…?これじゃあ私死ねないよ…」
青く輝く瞳はその移動速度故に燐光を残し、咆哮直後のボスの頭部に白刃が突き刺さる。
再び体力バーを三割飛ばし、タンブルに入れば瞬時に残り七割を持っていく。
これが、ALO現段階最高攻略難易度、フロアボス討伐戦なのであろうかとその目を疑う程のスピードで、殆ど私一人で、フロアボス・カルブサイドはポリゴンの結晶となって散った。
「……次」
「私を殺してくれるまで、この鉄の城が私の居場所…」
その後ろ姿は幽霊のように朧気で、儚く、そして確かな存在感を放っていたであろう。
「…待て!いや、待ってくれ…」
「キミは一体何なんだ?それにさっきの戦いは…」
「…私はシモン…現実世界では既に死を迎えてる…」
「戦いのことで、与ダメージのことを言ってるのなら、多分この剣のせい」
私は装備している剣のアイテムウィンドウを青年に見せる。
【首無王の呪剣】
『数百年に1度現れるという首無王の魔剣。
その刃は生きとし生けるもの全ての首を刈り取るという。
特殊効果:生物系のモンスターやプレイヤーの頭部にヒットした際、クリティカルダメージが10倍になる』
「な…」
驚きを隠せない青年を尻目に、私は上に続く階段を登る。そして、まだNPCMob以外誰も居ない30階層へと進んだ。