Sword Art Online ーPhantom Knightー   作:陣禅 祀

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Story 01 創造者『The Creator』

ー第30層・主街区ー

どうもこのフロアのメインテーマ(主題)は芸術らしい。主街区に入ってすぐにキャンパスに筆を走らせるNPCが幾人も見受けられた。活気に溢れた賑やかで美しい街。

しかし、私の目にはそんな全てが味気ないモノ()クロ()に見えていた。

壮麗な彫刻やアーチの建ち並ぶこの主街区の大通り(メインストリート)も、明るい色で彩られた美しい街並みも。かつてなら、生きていた頃の「私」ならはしゃいで、喜んで、NPC露店の絵画や彫刻を見て回ったことだろう。『生きていた』私は美術が好きで、学校の長期休暇にはよく近所の美術館に行って絵画や彫刻を見て回ったものだ。

 

「ーーー…あの絵…確か…最後の審判」

とある露店にどーん、と飾られた絵、それは登場人物全てが筋骨隆々、男性も女性も例外無くマッチョに描かれたルネサンス期の絵画だった。

絶対に有り得ない不自然な絵なのであまり好きではないが、よく訪れていた美術館にも複製が展示されていた。

 

「……また、行きたい…な」

もう永遠に訪れることは叶わない、現実世界の馴染みの場所を、一目見たいと思った。

すると、熱いものが喉の奥から込み上げてきて、つーっ、と一筋の涙が頬を伝った。

 

「…あれ?なんで…涙…?」

もう枯れたと思っていた感情の滴。

一度流れればそれは堰を切ったように溢れ出した。

 

その場にうずくまって、嗚咽を漏らしながら、涙を両の手で拭う。

叶うことは有り得ないんだ…望むな…私はもう現実世界に生きてはいないんだから…

そう思って涙を堪え、無理矢理立ち上がった時だった。

周りの喧騒が遠退き、一帯がホワイトアウトした。

 

「?!」

 

『Shimon42…シモン君、初めまして』

コツコツと歩いて此方に来る、白衣の青年。何処かで見た覚えがあるが、私はそういったことには疎いので思い出せない。警戒することに集中することで自然と感情の波は収まり、涙は収まった。

 

「…貴方は?」

不審に思いながらも、白衣の青年に問い掛ける。データ世界なのだから幻覚というものは有り得ないだろう。そこに存在しているのは確実だし、この空間に私を引き込んだのもこの男性で間違いはない筈だ。

 

『私は茅場晶彦という。SAO…アインクラッドの創造者だ』

茅場晶彦…SAOの創造者…つまりあの凄惨な事件の主犯?

彼は自殺していたと報道されていたが、違ったのか?

 

『まぁ…正確にはその残滓といったところだが』

『簡単に言えば今の君と同じ状態だ』

 

「…何千何万分の一という確率の上での成功例?」

 

『ふっ…そうなるな。君との違いは自らの意思か第三者の意思かの差だ』

愉快そうに語る茅場というこの男、どうも同類らしいが…

 

「そう…なら幾つか聞いても良い?」

 

『…あぁ、良いだろう。私は君に興味があって干渉したのだから、答えられることには答えよう』

随分と大きく出られたものだ。しかし…対価は求められていないだけマシだろうか。

 

「じゃあ…私をこうしたのは?それと、私の現実での名前は?」

 

『ふむ…君は自らの名を覚えていないのか…それが死の直後にスキャンを被けた代償なのかも知れないな』

ぼそり、と呟く彼に、やはりと言うべきか研究者の気質というものを感じとる。全ては自分の理想の実現と興味の赴くままに、という思考がなんとなく伝わってきた。

 

『では1つ目の質問への答えだ』

『それを行ったのは君の兄、景原(かげはら)(あさひ)だ』

 

「え?兄、さん…?(あさひ)兄さん…なの?」

そう、私には兄がいた。しかしこんなことをしておいて名乗らないというのはおかしい。実直な性格であった兄さんが名乗らない筈がない。確かに医者をしているし私の担当医でもあったが…

 

『そうだ。彼には脳医学の視点からナーヴギア開発についてアドバイスを貰っていた…まさかこうなるとは思ってもみなかったがな』

目を瞑って軽く肩を竦める茅場。真の天才と謳われた彼にも本当に予想できなかったことだったのだろうか…

 

「兄さん、なんでこんなことを…」

 

『…事故で君と一緒にいた御両親は即死だったらしい。彼は…景原君は唯一となってしまった家族を失いたくなかったんだろうな。』

『しかしこの事が公になってしまえば彼も只では済まされない。だから正体を明かさなかったのだろう』

そう言うと共にひとつのニュースページのウィンドウを開き、私に送ってきた。

 

「…っ」

数日前のニュース記事だろう、歩行中の家族連れ三人に居眠り運転の軽トラックが突っ込み、両親は即死、娘は意識不明の重体で、二日後に意識を取り戻したものの三日後に死亡した、と書かれている。

名はーー父、景原映二(かげはらえいじ)と母、景原理恵(かげはらりえ)…そして娘、景原栞奈(かげはらかんな)

 

「かん…な、そう、栞奈。それが私の名前…」

思い出した。お父さんお母さんに貰った大切な名前。でも、もう…二人は居ないのか…会えないのか。信じられないし、受け入れられもしない。ただ漠然と、意識が遠退くような感覚に陥っていくだけだった。

 

『…真実を伝えるべきではなかったかもしれないが、私はそれを伝える他に手段を持たない。関わった以上は…求められた情報を渡すのが私の流儀なのでね』

若干同情を含んだような、独り言のような言葉。

ほんの少し申し訳なさそうに投げ掛けられた言葉に意識が引き戻された。

この人は…この人なら、私と一緒にいてくれるのではないだろうか?ふとそんな考えが頭を(よぎ)る。

 

「…ねぇ、茅場、さん」

 

『何かね?』

 

「あの…私と一緒に居て…くれます…か?」

無意識に涙が(こぼ)れる。孤独に(さいな)まれた時、最も欲するのは側に居てくれる者なのだろう。ああ、願わくば是と答えて欲しい。

 

『ふむ…それはーーー』

『まぁ、久し振りに「創った世界(The Seed)」の発展系を体験してみるのも良いか』

暫し考えた後、不敵な笑みを浮かべた彼は、その姿を変えーーー

 

 

 

私と同じスプリガンと成った。

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーさぁ、宜しく頼むよ。シモン君」

黒い髪と翅をはためかせ、狐色のファーのついた灰色のフーデッドコートを白衣のように着た姿で、彼はゆっくりと私に手を差し出した。




色々と話が進みまくった挙げ句、まさかの茅場マン参戦という暴挙に出ました。
反省はしている。だが後悔は微塵もないッ!

…すみませんでした

活動報告にて三月まで更新しないというのを書きましたが、余裕ができましたので、短めではありますが投稿致します。
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