Sword Art Online ーPhantom Knightー   作:陣禅 祀

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今回は茅場マン視点です。
前半は前話終盤の茅場視点です。



Story 02 絶剣『Sword of Absolute』

ーーーー…

 

『ふむ…それはーーー』

 

「一緒に居てくれ」、か。

私が、茅場晶彦がそう請われた、ないしは頼まれたことなど今まであっただろうか。

そして、未だかつて無い程私が「他人」に同情…いやこれは…何だろうか…そうか、ふむ。これが「共感」というものだろうか。

アインクラッドを創造する以外のこれといった欲求を持ったことも無く、人と関わろうともしなかった私が、死して(ようや)く人と、「本心から」関わりたいと思っている。

ふふ、皮肉なものだ。

 

ーーーーーまぁ良い

久方振りの欲求、素直に従おうではないか!

 

『まぁ、久し振りに「創った世界(The Seed)」の発展系を体験してみるのも良いか』

そう言い放ち、私は脳内(…とはいってもただ表情や声で表現せずに操作、宣言しているだけだが)でALOの利用登録をし、新たな分身を作成し始めた。

 

SAOテスト用アカウント、Code:Herth(ヒース) ログイン。

セーブデータ、ジェネレート。

キャラクター名、Herth。性別、男。

選択種族『()()()()()』。

 

自動生成されたアバターの姿になった私は、彼女に手を差し出した。

 

「ーーーさぁ、宜しく頼むよ。シモン君」

 

彼女は戸惑いながらも涙を拭って、嬉しそうに微笑みながら手をとった。

元は須郷伸之(すごうのぶゆき)が隠れ蓑として創った世界だが、今ではデータを買い取ったベンチャー企業の手によって本来のゲームとして運営されている。アインクラッドとはまた違うが、此処ももうひとつの現実…なのだろうな。

 

さぁ、今一度始めるとしよう。新たなる鉄の城の攻略を。

 

そんな思いを胸に、私は今まで居た白の空間に別れを告げ、彼女(シモン君)と共に新生アインクラッド24層に姿を現した。

 

「さて、シモン君。今は十四時五十三分だ。もうすぐここで『絶剣』と呼ばれる人物が辻デュエルを始める。私は彼女と戦ってみたいと思うのだが、君はどうするかね?」

 

「え?かや…

「此処ではヒースと呼んでくれ。下手に本名で呼ばれると奇異な目で見られるのでね」

シモン君に念のためだが注意し、で、どうかね?と再度問う。

 

「そう、ですね…私は遠慮します」

 

「それは残念だな…あぁそうだ、ひとつ頼みがあるのだが…」

 

「な、何でしょう?」

 

「取急ぎ大型の盾と、片手用直剣をひとつずつ用意してくれないだろうか?」

 

「…武器くらい調達してから言って下さいよ…わかりました。ストレージにあったと思うので探してみます」

何分始めたばかりでアイテムの類が存在しない。テスト用アカウントとはいえ一応SAOのスキル熟練度を引き継いでいるので多少のソードスキルは使える。〈ヒースクリフ〉には到底及ばないが…

 

シモン君がアイテムストレージを漁って出してくれた直剣と大盾を装備し、軽く振る。

ふむ、重量も質感も中々どうして…手に馴染むな。

 

「あ、三時になりましたよ」

ぱらぱらと集まっていた見物人と、現れた黒いインプの少女を見て、私はにやりと笑った。

 

「今日最初の挑戦者さん、いますか~?」

明るい調子の声だ。シモン君とは真逆だな…

そんなことは置いておこう。さぁ…肩慣らしといこうじゃないか。

 

「お相手願いたいが宜しいかな?絶剣殿」

 

「はーい、いいよー!形式はどうする?」

 

「完全決着モード、地上戦のみ、魔法は無し。これで如何かな?」

そう、それはアインクラッド(S A O)とほぼ同じスタイル。正々堂々剣と自身の技量のみで戦うスタイルだ。

 

「オッケー!それじゃ、宜しくね、ヒースさん♪」

送られてきたデュエル確認ウィンドウのOKボタンをタップすると、1分間のカウントダウンが始まる。

 

60、59、58、57、56・・・

 

7、6、5、4、3、2、1、デュエルスタート!

 

開始を知らせるアラートと共に、盾を構えて突撃(チャージ)をかける。

それはバック宙で避けられ、無数の剣戟が向かい来る。

それを盾の後ろに身を隠して防ぎ、基本ソードスキル、スラントを放つ。

 

「おっとっと!?」

しかしその切っ先は絶剣の胸部鎧を掠めるだけに終わった。

これは…桐ヶ谷君よりもーーー速い、かも知れない…な。

思わず頬が弛む。

悔しくもSAOが終了した後にこのような逸材に出会うことができるとは、な。

 

「お兄さん、強いね~!タンクみたいなのに攻防自在って感じがするよ」

太陽のような満面の笑みでそう言われた。

全く、私の戦闘スタイルをたった一合で見切られるとはな。驚嘆に値するよ、流石はALO最強と呼ばれるだけはある。

 

「ふ、光栄だな。まさかあの絶剣にお褒めに与るとは」

 

「いや~、ボクもそんなこと言われるとちょっと照れるな~」

にへら、と笑う絶剣。桐ヶ谷君と戦って以来だな、こんなに勝ちたいと思ったのは。

ふふふ、ふははははは。心中で高らかに笑う。そして、盾を構え直して。

 

「早速だが決めさせて貰おう!」

全力で後ずさって距離をとると、次に剣を構えた。

そして地を抉る勢いで蹴り、片手用直剣のソードスキル、ヴォーパルストライクの如き速度で突進する。

その切っ先は絶剣の左腕を捉え、身体に密着させるように構えた盾は絶剣の身体を捉えた。

それこそダンプカーに牽かれたように、絶剣の小さな身体は宙を舞った。私は盾の下部と剣でもがりがりと地面を削りながら勢いを殺し制止した。

しかし、制止したその瞬間、形容し難い圧力を背後に感じ、瞬時に振り向いて盾を構える。

 

「はぁああぁぁぁあぁぁぁぁッ!!!」

砂煙を切り裂いて現れた、紫に輝く10撃もの刺突が、盾に十字の傷を刻む。そしてーーー最後の突きが十字の交点に放たれた時、盾はそれを受け止め切れずに貫通され、切っ先は私の胸に突き刺さった。

耐久値も殆ど満タンだった筈の盾を貫通するとは、恐るべき破壊力だな…噂の『絶剣の十一連撃』というのは。

 

「…完敗だよ、絶剣君」

急所である心臓部分を圧倒的な破壊力を誇る突きで貫かれたことによるクリティカルの大ダメージで、盾の耐久値と同じようにほぼ無傷だった私のHPはみるみる内に減っていき、全損した。

 

爆発と共に私の身体は消滅し、意識のみがその場に残る。これが『リメインライト』という状態か…デスペナルティは別に惜しくも何ともないが、種族の都に戻されてしまうのは勘弁して欲しいので、早く蘇生して貰いたいものだが…

 

「やはりヒースさんの負けになりましたか」

シモン君が駆け寄ってきて、そんなことを言いながら蘇生アイテムらしき小瓶の中の水滴をぽちゃんと落とした。

魔方陣が現れた次の瞬間には、私の身体は元の通りになっていた。

 

「お兄さん、本当強かったよ!ボクのHPもギリギリだったしね~♪」

結果詳細を確認してみれば、確かに絶剣…ユウキ君のHPバーも全損一歩手前まで減っていた。

ふむ、咄嗟の思い付きでやってみたあの突進だが、中々破壊力はあるようだな。後で…確かオリジナルソードスキルだったか?それに登録しておくか。

 

「さて、次はシモン君、君の番だ」

 

「私、ですか…いや、私はやりませんよ?先程言いましたよね?」

 

「…そこは乗るのが筋というものではないのかね」

 

「私はモンスターと戦って死にたいのです。プレイヤーに殺される気はありません」

 

「…らしいので私たちはこれでおいとまさせて貰う。楽しませてもらったよ、ありがとう」

 

「えぇ~…おねーさんもやろうよ~…」

む?シモン君が物凄い諦めたオーラを…

もしやシモン君はあれか、子供からごねられると断れない質の人間か。

私が言うのも何だが、人間味が薄いのにこういう時はとても人間臭いな。

 

「うっ…わかりました、わかりましたよ…じゃあ絶剣さん、宜しくお願いします」

ほう、やるのか。シモン君の腕がどれ程のものか、見定めさせて貰うとしよう…




今回は気が向いてまた辻デュエルを始めたユウキとヒース(原野)と名乗った茅場マンとのデュエルでした。
何気に強い茅場マン。システムのオーバーアシストなんて無くても強いんだからな!
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