ダンジョンに実力主義を求めるのは間違っているだろうか   作:修羅シュラ

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ただのサポーター

『清隆…正義は巡るよ…』

 

オレの腕の中で呟いた少女は、オレに何かを訴えかける。

血を吐き、目は虚。

複数の臓器が吹き飛び、腹部が赤く染まっている。

まだオレの腕の中で生きている、だがもう死ぬ。

生憎にも、腕の中で息絶える少女に、オレは何も感じないし、何の感情も湧かない。

周りの人達は涙を流し、少女の名前を叫ぶ。

 

『私…英雄譚が大好きなんだ…』

「知っている」

 

『だから…清隆……英雄になってよ』

 

そう少女は告げ、少女は息を引き取った。

オレが何かを告げる前に、彼女は死んだ。

人はいつか死ぬ、冒険しなくてもしていても。

だが、死ぬべき人はあらかじめ選んで置くべきだ。

事前に準備をしておくことで、多少は心を痛めない。

 

だからオレはこの少女を見捨てた。

 

『英雄になって』

 

そう最後に願われた、その時オレは最後に彼女に、何を伝えようとしたのだろうか?

もう思い出せないし、興味もなかった。

 

━━━だが事実は変わらない。

 

オレが『アーディ・ヴァルマ』を殺した。

死ぬとわかっていて、見殺しにした。

全ては悲願のために。

 

 

「清隆、飯を寄越せ」

「ああ」

 

ベートに言われるがまま、オレは(バックパック)に入っていた携帯食を手渡す。

ベートは勢いよく食べ、満足したのかオレにこれ以上何も要求はしなかった。

 

現在オレたち【ロキ・ファミリア】は遠征の帰りだ。

今回の遠征で新しい領域まで進みたかったが、異常事態(イレギュラー)が発生し、オレたちはやむなく帰還というわけだ。

 

「清隆〜嫌だったらいいんだよ?この狼にご飯なんて渡さなくて〜」

「オレはサポーターだ、第一級冒険者が要求することは従った方がいいとオレは思ってる」

「うげ〜、清隆ってこういう時真面目だよね〜」

 

ティオナはオレの真面目な回答に「つまんなーい」と言いながら一緒に歩みを進めていく。

 

『グオオオオオオッッ』

 

「ミノタウロスの群れ…」

「腹ごなしにはちょうどいいぜ」

 

アイズ、ベートが戦闘体制に入る。

他の第一級冒険者も念のため戦闘体制に入った。

だがしかしこの階層で戦闘になることはなかった。

ミノタウロスが踵を返して逃げていったからだ。

 

「モンスターが逃亡!?ありえないでしょ!?」

「逃すな!ミノタウロスが向かった方角は上層に繋がる道だ」

 

ティオネが驚愕の声を出すが、直ぐにフィンが的確に指示を飛ばす。

このままオレたちが逃してしまえば、上層で探索している冒険者に被害が出るのは確実。

早急にオレたちが処理する必要がある。

 

ベート、アイズが迅速に飛び出し追いかけた。

それに続いてオレたちも追いつこうと飛び出す。

 

 

オレはミノタウロスを追うために、単独で動いていた。

サポーターのオレがいなくなったところで、問題はないし、気にされることもない。

しかもここは上層。

オレ一人でも十分に探索できるフロアだ。

 

「うわあああああああっっ!?」

 

上層に響き渡る叫び声。

オレは一直線に叫び声がした方へ走り出す。

現場に着くと、白髪の少年がミノタウロスに襲われているところだった。見たところ駆け出しといったところだろう。

しかも逃げようようにも、行き止まりで逃げられない。

 

「うわああああああ…ってあれ?」

 

襲いかかったミノタウロスは白髪の少年に、到達することはなく、赤い血を撒き散らし灰となって消えた。

 

「大丈夫か?」

「え、あ…」

 

オレが少年に手を差し伸べると、少年は何が起こったのかわからない放心状態だった。

 

「わあああああああああっ!」

「……」

 

少年がオレを追い抜いて、どこかに駆けて行ってしまった。

正直嫌な気持ちになったかというよりかは、元気ならばそれでいいか、という気持ちの方が強い。

オレは行き場の失った手を引っ込めた。

 

「クッ…ハハハハハハハッ!!」

 

振り返るとそこにはベートとアイズがいた。

ベートは大笑いしており、アイズは心配そうな顔でオレのことをみつめていた。

アイズ…オレをそんな可哀想な目で見るな…。

 

「清隆…大丈夫、元気出して」

「別に気にしてないんだが…」

 

アイズはオレに肩に手を置き、慰めをかけてきた。

正直その反応される方が辛い…

 

 

『かんぱーーーい!!』

 

オレたちは遠征は失敗したとはいえ、死者なく帰還できた。

それは祝うべきに当たるだろうということで【豊穣の女主人】で打ち上げ中だ。

 

「清隆さん!これ飲み物です」

「ありがとう、レフィーヤ」

 

ニコニコしながら、オレにお酒を渡してくる妖精(エルフ)は同じ【ロキ・ファミリア】所属、レフィーヤ・ウィリディス。

現在はレベル3の魔導士。

リヴェリアから直々に指導は貰っているのだが、まだモンスターとの戦闘に慣れない、少し臆病な性格が残っている。

 

オレがレフィーヤを【ロキ・ファミリア】に誘った手前、オレがなんとかしないといけない。

どうするかは悩み中ではあるが…

 

「おい、清隆!あの話しねえのかよ!」

「あの話?」

「アレだよ!お前が助けたトマト野郎の話だよ!!」

「あー…」

 

ベートが席を立ち興奮気味に伝える。

酒も入ってるということもあり、いつもより上機嫌だ。

アレって、オレが助けた白髪の少年のことか…。

オレはあまりそういう話には興味はないので、話を流すように飲み物を煽った。

 

「なんだよ、覚えてねえなら俺から話してやるよ!」

 

ベートがオレが助けた一部始終を、可笑しく酒の肴にするように話していく。

その話に笑い声が響く、アイズやリヴェリアなどは面白くないとばかりに、逆に不快な表情をしていた。

 

「おい、ベート。あのミノタウロスは我々が逃した不手際だ…非難されることはあれど、我々が酒の肴にするのはおかしな話だ」

「黙れババア!弱い奴に弱ェと言って何が悪い!雑魚は大人しく巣穴に引っ込んでればいいんだよ!!」

 

ベートが言ってることは間違ってはない。

この神時代、自分の力を過信する人は増えている。特に新米冒険者に限ってはその傾向が大いに大きい。

 

「雑魚は憧れなんて許されねえんだよ!!」

 

「ベルさんっ!?」

 

一人の少年が酒場を逃げるように、駆けた。

女主人で働く、店員がその少年の名前を叫んだ。

あの少年だ、名前は確かベルと言われていたな。

捕まえることもできたが、特に興味がないということで放置していた。

食い逃げにはなるだろうが、ミアなら難なく捕まえるだろうしな。

 

「清隆さん…?」

「悪い、少し酔った…少し夜風に当たってくる」

 

オレはレフィーヤの疑問を振り払い、立ち上がり【豊穣の女主人】から退出する。

さてと、あの少年が気がかりだし見にいくか。

 

 

ベルは一人で戦っていた。

雪辱を晴らすように。

あの酒場で言われたことは事実だ、駆け出し冒険者に強さを求める方が理不尽だとは思うが、弱い事実は変わらない。

 

清隆は何も思わなかった、もしここで死ぬのならば器ではないし、ベルが生きてようが、死のうがどうでもいい。

 

そう考えていた。

だがしかし、清隆には確かな予感がしていた。

この少年に感じる英雄の器を。

 

(ただの駆け出し冒険者だ…)

 

冒険初心者(ルーキー)、戦闘技術もお粗末。

清隆は疑問を振り払うことはできなかった。

この少年に器を感じるのを。

 

齢22年、清隆は味わったことのない感情に苛まれていた。

分からない感情、これに従う事は正しいのか、それとも間違っているのか。

 

不明瞭である先の未来に振り回されるのは良くないと思っている。

━━━しかし…。

この知らない感情に振り回され、破滅するのだとしても面白いと。

 

 

「清隆ぁ〜こんな時間にステイタス更新とかやめてくれや〜ウチ寝るつもりやったんやけど」

「すまないな、この時間しかできないからな」

 

ロキは眠い目を擦りながら、オレを手招きした。

なんだかんだ言いながらステイタス更新してくれるみたいだ。

オレは上着だけ脱ぎ、ロキに背中を見せた。

ロキが慣れた手つきでステイタスを更新していく。

 

「ほい、できたで~...はあ清隆のステイタス見て思うわ...ちゃっちゃっと本気出してくれればな~って...」

 

綾小路 清隆

Lv.7

力:S 992 耐久:S 982 器用:A 872 敏捷:S 967 魔力:B 795

 

《発展アビリティ》

【直感:C】【耐異常:C】【闘争:D】

 

《魔法》

絶起(ぜっき)

・五節詠唱式強化魔法。

・詠唱ごとに効果を増し、身体能力を上昇。

・移行間隔あり、上位ほど魔力消費増大。

 

《スキル》

無為研成(むいけんせい)

経験値(エクセリア)微量補正

・発展アビリティ、経験値微量補正

・発展アビリティ、発現可能数を最大三。

 

心眼(しんがん)

・動体視力向上。

・反射神経向上。

・使用時魔力消費。

 

天衣無縫(アルカナ)

・五節到達時に発現、最終強化段階。

・【天眼(てんがん)】使用可能。

・装填使用可能。

 

「契約忘れてないよな、ロキ」

「わかってるちゅうーの、ファミリアに入る代わりに詮索するなやろ?」

「わかっているならそれでいい」

「でもあの子達がヤバい時になったら助けてやってくれよ?レベル3(・・・・)のサポーター?」

「善処する」

 

オレは服を着て部屋から出ていく。

オレのステイタスはロキ以外知らない。

というよりもオレが意図的に隠している。

【ロキ・ファミリア】の団長であるフィンにも伝えていない。

オレが【ロキ・ファミリア】に入団する、二つの条件のうちの一つが誰にもオレのステイタスを広めない事。

 

オレは自室に戻り、ベットに横になる。

計画通り進んでいる、何も問題はない。

だが、計画を早めるか早めないかは少しだけ様子見でもいいだろう。

 

 

「清隆、ダンジョンにいこ?」

「…急になんだ?」

 

食堂で何の流れもなく唐突に、アイズがオレにダンジョン探索の動向を求めてきた。

オレは昼食を食べながら、昼食を持っているアイズに目の前に座るように促す。

 

「アイズさんと清隆さんって仲良いですよね?なんかわかります?雰囲気というか…」

「アイズさんと清隆さんはウチ(ロキ・ファミリア)の古株だしな、何ならアイズさんよりも入団早かったとか」

 

ひっそりと話している団員たちの声が耳に入る。流石にステイタスの影響もあり、聞こえなくていいものまで聞こえてしまうのはあまり嬉しくないところではあるが…。

 

しかし、オレとアイズに対する噂が多少なりともあるらしい。

確かにオレは【ロキ・ファミリア】の中でも古株の方だが、いつ入ったなんていちいち覚えてない。

 

「聞いた、清隆…?私たち仲良いらしいよ」

「何でお前は嬉しそうなんだ…」

 

ふふんっ!とドヤ顔してくるアイズは一般的に見たら可愛らしいといえる表情なんだろう。正直オレはコイツが子供の時から見ているから、何とも思わないんだが。

 

「それで何で唐突にダンジョンなんだ?…いやお前の場合別にダンジョンに潜るのは不思議じゃないのか」

「お金が足りない…」

「そんなに金欠なのか?」

「前の遠征の時、変なおっきい虫を斬った時剣の修理(メンテナンス)が必要なんだって…」

「だったら私たちも行く!!」

 

昼食を食べて話を進めていると、ティオナとティオネが会話に割り込んできた。

オレの横にティオナ、アイズの横にティオネが座り四人で小部隊(パーティ)ができた。

 

「私もお金なくなってきたし、ちょうど潜るって聞いたからね」

「そうそう!私たちも着いてこーって!」

 

別にオレもアイズも断る理由は特にないため、承諾する。

いつの間にかオレも着いていくことが確定したんだな、まあいいか。

特に今日やる事もなかったわけだし、コイツらに着いて行って楽させてもらおう。

 

「僕たちも着いていこうかな」

「団長〜!!」

 

声のする方を振り向くと、我らが団長フィン・ディムナが立っていた。

僕たちという事もあり、後ろにいたリヴェリアとレフィーヤも着いてくるのだろう。

正直これ以上増えるのは取り分が減るのでやめてほしいところではあるが、男がオレしかいなかったので、快く受け入れることにしよう。

ていうか、受けなかったらティオネがキレる。

 

 

道中はもちろん問題ない。

レベル6が2枚、レベル5が3枚、レベル3が2枚だ。深層も突破できる限界部隊編成(オーバースペックパーティ)だ。

オレはサポーターの勤めを果たすため、魔石を拾って大鞄(バックパック)に詰めるという作業をするだけだった。

 

「着いたあ!18階層!!」

 

18階層、迷宮の楽園(アンダーリゾート)と呼ばれるモンスターが生まれ落ちない安全地帯(セーフゾーン)

そして18階層にはならず者たちが運営している街が存在している。

オレたちは18階層に到着し、リヴィラに寄るとある宿に人だかりができていた。

 

「ボールズ、どうしたんだいこの騒ぎは?」

「…【勇者(ブレイバー)か、いやこの宿で殺しがあったんだよ」

「殺し?」

 

物騒な事件にオレは足を突っ込んでしまったらしい。

 

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