みんな輝夜がすきなんだ~
ふ~んえっちじゃん。
【ロキ・ファミリア】の
オラリオの喧騒も、石畳を踏む無数の足音も、酒場のざわめきも、今は遠い。
耳に入るのは、風が森を撫でる音と、枝葉の擦れる乾いた囁きだけだった。
そして、今この場は抉れた地面と、折れた木々が無数に転がっている場所だった。
ここ一ヶ月、オレとアリシアは殺し合いをしていた。
ロキに許された期間は一ヶ月。
団員たちには長期の
この状況で都市を離れるのは、団員たちにとっても決して好ましいことじゃないだろう。
それでも、主神からの命令となれば追及する者はいない。
アイズだけは別で『私も行く』と頑なだった。
結局、帰ったら一緒に出掛けると約束したことで、ようやく大人しくなった。
「いきます!」
鋭い声と同時に、アリシアが踏み込んだ。
両手に短剣。
以前のような魔導士とした構えじゃない。
重心は低く、肩の力も抜けている。
この一ヶ月で、身体に叩き込んだ動きがようやく形になってきていた。
アリシアは地面を蹴り、一直線に駆ける。
振り下ろし。
そこから間髪入れず横薙ぎ。
悪くない。
少なくとも、一ヶ月前とは見違えている。
剣筋に迷いが減った、踏み込みも浅くない。
何より、斬れなかった時の次の動きが早くなった。
オレは最小限の動きでそれを躱す。
見違えたとはいえ、それでオレとの実力差が埋まるわけじゃない。
「がっ……!?」
短剣の軌道を外した瞬間、オレは蹴りを叩き込んだ。
脇腹、体勢が流れたところへ、今度は拳を殺す気で打つ。
アリシアは吹き飛ばされながらも、辛うじて受け身を取る。
地面を転がり、木の根に背を打ちつけ、それでも短剣を手放さない。
この一ヶ月、剣術と体術を身体で覚えさせてきた。
頭で理解させるより先に、死にかけながらでも身体が動くようにするためだ。
正直、ここまで成長するとは思っていなかった。
オレはLv.7相当の実力をかなり抑えているが、それでも本来ならもっと早く折れていてもおかしくなかった。
精神が潰れても、身体が拒絶しても不思議じゃない。
なのに、アリシアはまだ立つ。
オレは一気に距離を詰める。
視界の端で、アリシアの瞳がわずかに揺れる。
反応はしているが、間に合わない。
拳を腹部へ叩き込む。
鈍い音が響いた。
アリシアの身体がくの字に折れ、そのまま後方へ吹き飛ぶ。
背後の木々を何本も薙ぎ倒しながら、それでも勢いは止まらない。
地面に一度、二度、三度と弾み、ようやく転がるように静止した。
「あ……ぁ……」
喉の奥から漏れるのは、声とも呼べない空気の音だった。
手加減したとはいえ、内臓がやられている。
肺に血が入り息を吸うのもきつい状態だ。
「カメル、回復を」
「はい!」
少し離れた場所で待機していたカメルが、慣れた足取りで駆け寄る。
長い耳を揺らしながら、迷いなく杖を向けた。
「【ノストラ・ライト】」
淡い緑の光が、アリシアの身体を包み込む。
虫の息だった身体に、少しずつ生気が戻っていくのが見て取れた。
「けほっ……!!」
アリシアが血を吐き出すように咳き込む。
喉に絡んでいた血を吐き捨て、荒い呼吸を整えると、すぐに口元を拭った。
アリシアが死にかけて、治される。
その光景を、もう五千回以上は見ている。
慣れた、とは言わないだろう。
そんなものに慣れていいはずがない。
だが、何千回も殺されかければ、学ばなければ死ぬということくらいは理解する。
「体術の訓練はここまででいいだろう、次はお前の『スキル』だ」
「……はい、行きます!」
返事と同時に、空気が変わった。
アリシアの周囲の温度が、一気に落ちる。
肌を刺すような冷気が広がり、吐いた息が白く染まる。
迂闊に近づけば、それだけで身体の自由を奪われ、耐性の低い者なら、立っているだけで凍りつく。
『
自身に冷気を纏う、氷の加護。
ステイタスが低い者や、状態異常への耐性が低い者には、アリシアの周囲に立つことすら許さない。
そして、自身の放つ氷属性魔法を大幅に強化し、さらに詠唱時間を半分に短縮する。
だが、強力なものには当然代償がある。
一つは、
これは仕方ない、強力である以上、燃費が悪いのは当然だ。
もう一つは、自身もその冷気に蝕まれること。
試した結果、今のアリシアでは五分の維持が限界だった。
それ以上使えば、身体のどこかに異常をきたす。
だからこそ、最後の修行はここだった。
オレとアリシアの、最後の仕上げが始まった。
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森の中に夜が落ち始める。
焚き火に薪をくべると、ぱちり、と乾いた音が弾けた。
オレたちは森で採った木の実と、カメルが仕留めた鹿肉を口に運んでいた。
「カメルさん、一ヶ月間付き合ってくださって、本当にありがとうございます」
アリシアが深々と頭を下げる。
焚き火の向こうで、カメルはいつもの調子で手をひらひらさせた。
「いえいえ〜。私は癒してただけですから〜」
軽く流しながら、そのまま肉を口に運ぶ。
カメル・クラウ。
魔法大国アルテナを離れ、辺境の森で暮らす
カメルと出会ったのは十二年前。
オレが極東を離れ、各地を旅していた頃、モンスターに襲われていたところを助けたのが最初だった。
Lv.2だが、回復魔法の質だけなら一級品といえるだろう。
その治癒力は、アミッドと同等。
傷、体力、損傷、そして
違いがあるとすれば、一度に一人までしか治せないこと。
複数回復が必須になる戦場では、どうしても活躍の幅が狭まる。
カメルは十二年前に襲われたことで
「正直、お前がここまでついてこれるとは思ってもいなかった」
オレがそう呟くと、アリシアは一瞬目を丸くした。
それから、焚き火の明かりのせいだけじゃない赤みが頬に差す。
「言わせてもらいますけど、異常ですよ、異常。ここまで何千回も殺されかけて頬赤くしてるの。最初は死んだ魚の目して、食べ物を嘔吐してばかりだったとは思えません」
「ちょっとカメルさん!それは言わないでください!!」
アリシアが慌てて声を上げる。
カメルは面白がるように肩を揺らしていた。
死ぬ一歩手前まで痛めつけられ、治され、また瀕死になる。
そんな経験、普通は一度で壊れる。
だが、人は死に直面した時、大きく成長することができる。
目の前に迫る死を、誰もが拒絶するからだ。
だからこそ、死は強烈な経験になる。
拒絶するために、人は学ぶ。
どうすれば避けられるのか、どうすれば生き残れるのか。
知恵をつけ、最適解を選び、行動する。
これはオレ自身の経験に基づく知識だ。
オレにとって、死は日常だった。
だから感覚が麻痺している部分はある。
それでも、死を受け入れているわけじゃない。
痛みだって、人並みに感じる。
ただ、それを切り離して扱うことに慣れているだけだ。
オレとアリシアはそれぞれの
この一ヶ月オレが離れていたのはアリシアを鍛えるだけではなく、別の目的もあったのだが、それも達成できたので良しとしよう。
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ダイダロス通りの事件、その翌日だった。
ベル・クラネルが
清隆は、そのダイダロス通りを一人で歩いていた。
通りの有様は、
崩れた壁面はまだ剥き出しのまま残され、砕けた石材や折れた木材が路地の端に積み上げられている。
辛うじて形を保っている家屋にも、爪で抉られたような傷や、衝撃で穿たれた穴が痛々しく刻まれていた。
修復作業はすでに始まっており、住人たちが黙々と瓦礫を運び、失った生活の断片を拾い集めるように動いていた。
だが、その手つきに安堵はない。
住処を失った悲しみ。
そして、いつまたモンスターが現れるか分からないという恐怖。
もっとも、清隆はその現状を視察するためにここを歩いていたわけではない。
彼には別の目的があった。
この辺りにいるはずだ、と見当をつけていた人物がいた。
表通りから少し外れた裏路地。
人の気配が急に薄くなるその一角で、清隆は目当ての人物を見つけた。
「ヘルメス様」
声をかけられた男は、わずかに肩を揺らしそれから振り返った。
「ん?……清隆君じゃないか〜こんなところでどうしたんだい?」
いつも通りの、掴みどころのない声音。
だが、その軽薄さは表面に貼りつけられたものにすぎないと、清隆は知っている。
「それはこちらの
そう返しながら、清隆はヘルメスを観察していた。
視線の置き方、立ち位置、 声の高さ、呼吸の間、周囲への注意の配り方。
(モンスターを警戒していない?いや……誰かを待っている)
少なくとも、ヘルメスはモンスターを警戒していなかった。
彼は別の何かを待っている。
その確信に至るまで、清隆に長い時間は必要なかった。
それは異常なまでに訓練された観察の成果だった。 相手の機微を読み損ねれば、生き残れない。そういう環境が、彼にこの種の能力を植えつけていた。
だが同時に、ヘルメスもまた、ただ漫然とそこに立っていたわけではない。
彼もまた、清隆に
視線の誘導。 声音に混ぜられたわずかな含み。 立ち位置の不自然さ。
それらは露骨ではなく、むしろ気づく者だけが気づけばいいという程度に薄められていて、ヘルメスは清隆を試していた。
清隆がどこまで読むのか、どこまで読み取れるのか。
ヘルメスはそれを見ていた。
そして、清隆が勘づいたことを理解すると、次の段階へ移った。
「そうだね、オレは彼を待っているのさ」
「ベル・クラネルのことですか」
「正解!」
ヘルメスは正解したことを褒め称えるように、
待っていたのは正確には二人、ベルと清隆ではあるが。
「そろそろ本題と行こうか、清隆君」
「本題ですか?」
「
そう言って、ヘルメスは帽子を深く被り直した。
その仕草を見て、清隆は内心で認識を改めた。
やはり、侮れない。
あの動作は単なる癖ではない。 相手の反応を見るための間であり、視線を切ることで逆にこちらの出方を測るための仕草でもある。
つまり、自分は誘われたのだ。
偶然見つけたのではない、見つけさせられたのである。
ヘルメスは、綾小路清隆という存在を買っていた。
ベルの次に、注意深く観察する程度には、強い関心を向けていた。
七年前、都市が暗黒期に沈んでいた頃から、ヘルメスは彼を見ていた。
あの時代、オラリオでは無数の戦いが起き、無数の功績が生まれ、そして無数の死が積み重なっていた。
その中で、綾小路清隆という少年の名は、奇妙なほど表に出てこなかった。
まったく戦果がないわけではない。 だが、実際の働きに比して、記録に残る情報があまりにも少なすぎた。
不自然すぎた、偶然では説明がつかない程度に。
誰かが意図的に隠している。
そう考える方が、よほど自然だった。
だが、そこで疑問が生まれる。
なぜ隠す必要があるのか。
あの混乱の最中に、そんな手間をかける余裕がどこにあるのか。
一人の少年の戦果を覆い隠してまで守るべきものが、いったい何なのか。
当時のヘルメスは、その問いに明確な答えを持てなかった。
仮説はいくつも立てられるが、どれも決定打に欠けていた。
清隆本人が意図して目立たぬよう振る舞っているのか、あるいは周囲の誰かが彼を表舞台から遠ざけているのか、もしくはその両方か。
いずれにせよ、確証はなかった。
確証を得られないまま、七年が過ぎたがある変化があった。
【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインの変化だった。
それらを注意深く追っていくうちに、ヘルメスの中で一つの仮説が形を取り始めていた。
清隆は、【ロキ・ファミリア】の中核に近い位置にいるのではないか。
少なくとも、単なる一団員ではない。
組織の表面には現れないが、確かに内部へ影響を及ぼしている存在。
中心そのものとまでは言わずとも、流れを変えうる一点。
ヘルメスは、その考えにかなり強い確信を抱いていた。
そして。これらの変化が現れ始めたのは、ベル・クラネルという少年が現れてからだ。
ヘルメスは【アポロン・ファミリア】の
ベルに特別な意味を見出している清隆ならば、少なくとも完全に敵対することはない。
むしろ、こちら側の意図を理解した上で、必要なら手を貸してくれる可能性まであると思っての接触だった。
「清隆君の要求、そしてオレの要求。お互いの利害は一致していると思わないかい?」
ヘルメスは腹の内を探るように、不気味に微笑んだ。
都市はまだ傷の中にある。
だが、その傷の只中で、次の局面はすでに動き始めていた。
ヘルメスは、その幕が上がる瞬間を、静かに待っていた。
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清隆がフィンの執務室を訪れたのは、都市の空気がまだ完全には落ち室内にいるのは三人だけでフィン、ロキ、そして清隆。
室内には、紙とインクの匂いが薄く漂っていた。
壁際の書棚には報告書や地図が整然と並び、机上には未処理の書類がいくつも積まれている。
「単刀直入に言おう、オレはベルの味方をする」
言葉は簡潔だった。
余計な前置きも、言い訳めいた含みもない。
「本気で言っているのかい?」
清隆はフィンからの眼差しを逸らさず受け止める。
「本気だ」
「ロキ」
フィンは視線を横へ流した。
「清隆が言ってることは本気やで〜けどウチらの味方じゃなく、あのドチビの子の味方をするなんてなぁ」
だが、長年付き合ってきた【ロキ・ファミリア】ではなく、【ヘスティア・ファミリア】側に立つ。
理屈として理解できないわけではない。
彼が独自の判断基準で動くことは、今に始まった話ではないからだ。
それでも、腑に落ちるかと問われれば、答えは否だった。
「理由を聞いてもいいかい?」
「オレはあの少年に英雄の兆しを感じている」
清隆の答えに、室内の空気がわずかに変わる。
【ロキ・ファミリア】でもなく。 【フレイヤ・ファミリア】でもなく。 都市の最前線を担う巨大派閥でもなく。
まだ未熟で、まだ脆く、だが確かに何かを引き寄せるあの
「オレはここでベルが失墜するべきではないと思っている」
「君は何か知っているのかい?ベル・クラネルがモンスターを庇った理由を」
「もし知っていたとしても教える気にはならないな」
「......そうか」
今の問答だけで十分だった、フィンは清隆が何を知っていると確信を持つことができた。
無理やり吐かせることも一瞬視野に入れたが、仮にも同じ
それよりも今回に限っての清隆の扱いをどうするかを考えるのが先決だった。
彼が味方にならないと言っている以上、この事件が終わるまで
さらに厄介なのは、団員たちへの説明である。
清隆を尊敬している団員は、決して多くはない。
だが、いないわけでもない。
幹部でも表立って組織を率いる立場でもない。
それでも、【ロキ・ファミリア】の古参であり、深層に赴いても動じない胆力を持ち、フィンたち幹部から一定以上の信頼を寄せられている。
そうした積み重ねは、目に見えない形で人望になる。
そして、顔が整っているというのも加味するべきだろう。
誰が行っているか謎な
閑話休題
フィンは指先を組み、思考を整理した。
(ンーーー清隆が一時的に抜けるのは僕が説得するとして、問題なのはあの娘かな......)
清隆が一時的に抜ける件は、自分が説得すればどうにかなる。 問題は、その先だ。
アイズ。
フィンが最も危惧しているのは、言うまでもなく彼女だった。
アイズが清隆に執着しているのは、今に始まったことではない。
昔からそうだが、ここ最近はそれがさらに強まっている。
本人に自覚があるかは怪しい。
だが、周囲から見れば十分すぎるほど分かりやすい。
清隆が何かをすれば気に留め、姿が見えなければ探し、言葉を交わせば、わずかに機嫌が変わる。
「アイズにはオレから言っておこう」
「やめてくれ!」
「やめんかいボケェ!」
二人の声が綺麗に重なった。
清隆から伝えるなど、フィンとロキの側からすれば冗談ではない。
アイズに何かを伝える時、絶対余計なことを言う。
あるいは、必要なことを極端に伝えたりなどして、事態が面倒になることを、二人は経験的によく知っていた。
頭痛を堪えるように、フィンは小さく息を吐く。
「ではこの事件が終息するまで清隆は本拠に近づくことを禁ずる、団員たちの接触も極力禁ずるように」
「わかった」
「あとは一時的に僕たちと事を構えるんだ、怪我をしてしまっても僕は止めることはできないよ、特にアイズとかからね...」
「わかっている」
正直に言えば、フィンとしてはこの面倒な案件を持ち込んだ清隆に、何らかの制裁を加えたい気持ちもあった。
だが、その役目はおそらく別の誰かが果たしてくれる。
そう思えば、わざわざ自分が手を下す必要もない。
話が終わると、清隆はそれ以上何も言わず、執務室を後にした。
「素直にいかせてよかったんか?」
フィンは閉じた扉を見つめたまま答えた。
「彼とは長い付き合いだからね、急にどこかに行かれるよりかはマシさ」
清隆がふらっとどこかに行ってしまうことは何度かあった、二か月ダンジョン潜ってたこと、急に都市外に行って帰ってこないことなど酷いときは半年ダンジョンに潜っていたこともあった。
彼なりに報告するのはそれだけの誠意なのかもしれないとフィンは思っていた。
€
数日たった後、オレは【ヘスティア・ファミリア】の
しばらくして、玄関の戸が静かに開く。
そこに立っていたのは、メイド服を纏った
柔らかな金の髪と、慎ましやかな所作があった。
一目見た瞬間に理解する。
サンジョウノ・春姫。サンジョウ家の令嬢だと。
「あの、どういったご用件でございましょうか」
「ベルはいるか。それかヘスティア様でも構わない」
春姫はすぐには答えなかった。
困ったように視線を揺らし、何度か背後を窺う。
戸の向こうには、複数の気配がある。
おそらく団員たちが控えているのだろう。
そして今の【ヘスティア・ファミリア】が、来客を無条件に歓迎できる状況ではないことも明白だった。
今現状だと【ヘスティア・ファミリア】には敵が多い、そのためこういった来客には愛らしい見た目の春姫が採用されたといったことだろう。
「ベル様はお疲れでお休みになっておりまして......ヘスティア様は......」
「なんだい!僕を指名なのかい!?どんな子がこようとここは開ける気は──清隆君っ......」
奥から足音が近づいてくる。
現れたヘスティア様は、オレの顔を見た瞬間、露骨に目を丸くした。
「ヘスティア様、助けに来ました」
そう告げると、彼女は一拍遅れて弾かれたように叫んだ。
「早く入ってくれ!サポーター君!命君!お茶菓子を用意するんだ!しかも最高級のやつだ!!」
「そんなものはウチにはありません!!」
€
【ヘスティア・ファミリア】の居間に通され、席に着く。
差し出された茶器に目を落とす。
液面に揺れる色は、極東の抹茶に似ていた。
わずかな苦味が舌先に触れ、その直後、遅れてくるように旨味が広がった。
オレがよく知っている抹茶の味だ。
今度分けてもらおう。
「それで?ヘスティア様?【
リリルカ・アーデが、オレに指を突きつけながら言った。
警戒というより、ほとんど敵意に近い。
もっとも、それは彼女の立場を考えれば自然な反応だった。
「貴方も極東出身なのですよね?綾小路殿」
命が問いかけてくる。
珍しい姓だ、気づくのは自然だろう。
もっとも、出自の詳細まで知っているわけではなさそうだった。
「綾小路さん……」
「久しぶりだな、ベル」
ベルは驚いた顔のまま、オレを見つめていた。
多分怖いのだろう、オレという師に叱責されるのが。
だが、それでも目は逸らさなかった。
そこにあったのは、幼さに似合わない種類の覚悟だ。
何を言われようと、自分の選択だけは曲げない。少なくとも、今のベルはそう決めている。
こいつはこいつなりに、傷を負うことを承知で立っている。
「キーーー!リリを無視しないでください!!それで何しにきたんですか!助けに来たとか言ってましたけど信用なりません!!しかも敵対している【ロキ・ファミリア】の人なんて!!」
「リリルカ・アーデのことが言ってることはもっともだ、だからオレは最初にヘスティア様に
リリルカの目が見開かれる。
このサポーターは頭が回る、だからこそ今の一言の意味はわかっただろう。
視線がヘスティア様へ向く。
それはリリだけじゃなく、この場にいる全員が、主神の言葉を待っていた。
「ああ、本当さ。彼は嘘を一切ついてない」
「綾小路さん……本当に僕たちのこと……」
「ああ、オレにどこまでできるかわからないが手伝おう」
ベルとヘスティア様の表情が明るくなる。
張り詰めていたものが少しだけ緩んだのがわかった。
だが、他の団員たちはそう簡単にはいかない。
「失礼で悪いんだが、お前とはあの
クロッゾが口を開く。
ぶっきらぼうだが、ただ敵視しているわけじゃないのが分かった。
「綾小路清隆。【ロキ・ファミリア】所属だ」
「俺はヴェルフ・クロッゾだ、【ヘスティア・ファミリア】の鍛冶師をやっている」
それを皮切りに、ヴェルフが場を取り持つように自己紹介を促していく。
困ったときに全体の空気を支える、兄貴分の役割を担っているのだろう。
【ヘスティア・ファミリア】全員の自己紹介が一通り終わると、ヘスティア様が慎重に口を開いた。
「正直君にどこまで話すのか悩んで───」
「
「!?」
その瞬間、【ヘスティア・ファミリア】の面々の表情が一斉に変わった。
驚愕。警戒。動揺。
自分たちだけが抱えているはずの秘密を、外部の人間が知っている。そうなれば当然の反応だ。
「な、何でそれを!というか、それを君が知っているってことは【ロキ・ファミリア】の子たちも……?ていうか! 誰に聞いたんだい
「いや、知っているのはオレだけだと思います。誰に聞いたかといえば、ヘルメス様です」
オレは素直に答える。
それに、この場で余計な隠し立てをしても信用を削るだけだ。
ヘスティア様は「ヘルメスのやつめ......」と怒りをあらわにしていたが、結果的にオレが味方に付いたこともあり怒るに怒れないといったところだろう。
「異端児のことを知って僕たちに手を貸してくれるってことですよね......?」
「正直モンスターが知性をもって、オレたちとなんら変わらない感情を持っていることは驚きだったが、
それが率直な感想だった。
モンスターが喋ろうと、知性を持とうと、本質的にオレのやることは変わらない。
使えるものを見極め、必要なら利用する。
善悪や感傷を基準に動くほど、都合のいい生き方はしていない。
それが綾小路清隆という人間だ。
「ありがとう、清隆君......恩にきるよ」
ヘスティア様が、オレに深々と頭を下げた。
「俺たちの仲間になったってことで、綾小路なんて他人行儀な呼び方じゃなく、清隆って呼んでもいいか? 俺のことはヴェルフって呼んでくれ」
ヴェルフがオレの肩に手を置き、気安い調子で笑う。
「ああ。よろしくヴェルフ」
「私も綾小路殿ではなく、清隆殿とお呼びしてもよろしいでしょうか!?」
「ああ、構わない」
「では、わたくしも……清隆様と……」
命、春姫もオレの呼び方が変わる。
極東仲間として仲良くしていきたいところだ。
━━━━特に春姫とはな。
「僕も清隆さんって呼んでもいいですか!?」
「好きにしてくれ……」
ベルまで身を乗り出してくる。
正直、こいつが一番嬉しそうだった。
極東では、名を明かすことには特別な意味がある。
古い言い伝えでは、真名を知られれば魂にまで干渉されるとされている。
だからこそ、名を許す相手は限られる。伴侶や家族、それに準ずる存在だけだ。
閑話休題。
「そんなことはいいのです!清隆様も仲間になって、こちらにはLv.4という手札が加わったのです!それを使わない手はありません!!ビシバシこき使いますから、覚悟してくださいね!」
割と輝夜が人気なの意外で驚いてます。
【再】現状のヒロイン誰が好き?
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壊れちゃったアイズたん
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生娘・輝夜
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アイゾウ・アリシア
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バーニング・アリーゼ
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影の薄いレフィーヤ