アクトと黒曜   作:矢塚 和哉

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CROW SYSTEM / FINAL SEQUENCE

SUBJECT ROLES: UNSTABLE
PROTECTIVE RESPONSE: DELAYED BY TRUST
TACTICAL PREDICTION ACCURACY: FALLING
RELATIONSHIP DEFINITION: REQUIRED
AUTHORSHIP: UNRESOLVED
FINAL OUTPUT: PENDING—

CROWシステム/最終シーケンス

対象役割:不安定
保護反応:信頼により遅延
戦術予測精度:低下中
関係性の定義:必要
作者帰属:未解決
最終出力:保留中—




同時に攻撃した

赤い非常灯。

 

銃座二基。

 

中央ラック。

 

左右に分かれた通路。

 

CROWは二人の過去を知っている。

 

戦い方も。

 

庇い方も。

 

迷い方も。

 

画面へ予測が出た。

 

`SUBJECT A: ADVANCE`

 

`対象A:前進`

 

`SUBJECT B: SUPPORT`

 

`対象B:支援`

 

アクトは前へ出なかった。

 

黒曜も支援術式を撃たなかった。

 

一秒。

 

二秒。

 

銃座が照準を迷う。

 

「今や!」

 

二人は逆方向へ走った。

 

交差した銃座の射線が、互いの装甲を削る。

 

一基が停止。

 

`TACTICAL DEVIATION DETECTED`

 

`戦術的逸脱を検知`

 

アクトは遮蔽へ滑り込む。

 

黒曜は幻影を展開する。

 

アクトが三人。

 

黒曜も三人。

 

CROWは熱源と足音と魔力を照合し、本物を選ぶ。

 

銃口が黒曜へ向いた。

 

アクトは動かない。

 

黒曜もアクトを見ない。

 

銃撃。

 

黒曜は障壁を自分の足元へ展開し、弾丸を上へ逸らした。

 

その隙にアクトが観察ノードを撃ち抜く。

 

`OBSERVATION NODE 3 LOST`

 

`観察ノード3喪失`

 

「残り二つ!」

 

「分かっています!」

 

画面へ言葉が点滅する。

 

恋人。

 

相棒。

 

依存。

 

離別。

 

入力欄だけが開いた。

 

カーソルが点滅する。

 

アクトは一瞥し、そのまま撃った。

 

黒曜も答えず、雷撃を放つ。

 

銃座の基部が焼ける。

 

床が開いた。

 

アクトが落ちる。

 

片手で縁を掴む。

 

CROWの予測。

 

`SUBJECT B WILL RESCUE SUBJECT A`

 

`対象Bは対象Aを救助する`

 

黒曜の手が動きかける。

 

止まる。

 

「助けへんの!?」

 

「自力で上がってください!」

 

「鬼か!」

 

「あなたなら可能です!」

 

アクトは銀色の腕へ力を入れ、自分で這い上がる。

 

黒曜はその間に記憶領域へ走る。

 

銃座の照準が黒曜へ移る。

 

アクトは黒曜の前へ出ない。

 

銃座の基部を撃つ。

 

黒曜は自分で障壁を張る。

 

二人の役割が交差する。

 

`SUBJECT ROLES UNSTABLE`

 

`対象役割:不安定`

 

「正常です」

 

黒曜が言った。

 

中央ラック。

 

三つの選択肢。

 

`ROMANTIC ATTACHMENT`

 

`恋愛的愛着`

 

`MUTUAL DEPENDENCY`

 

`相互依存`

 

`SEPARATION`

 

`離別`

 

「どれも嫌やな」

 

黒曜は答えなかった。

 

代わりに、三つの選択肢へ杖先を向ける。

 

表示が焼け落ちた。

 

アクトは最後の外部接続へ狙いを定める。

 

黒曜は電源盤へ杖を向ける。

 

同時に、紙送り装置が動き始めた。

 

大量の紙。

 

二人の過去。

 

偽物の台詞。

 

修正された感情。

 

その中に一枚。

 

『よくできました』

 

黒曜の足が止まる。

 

画面。

 

`SUBJECT B REQUIRES VALIDATION`

 

`対象Bは承認を必要とする`

 

次の紙。

 

アクトの声を模した文章。

 

『自分、ようやったな』

 

`VALIDATION SOURCE REPLACED`

 

`承認供給源を置換`

 

アクトは紙を破った。

 

「違う」

 

画面は同じ二つの文章を並べたまま、点滅を繰り返す。

 

「一緒にすんな」

 

黒曜の手が震えている。

 

アクトは黒曜を見る。

 

「自分、ようやったな」

 

`CONFIRMATION`

 

`確認`

 

「成功したからちゃう」

 

表示が止まる。

 

「怖かったのに来た。失敗しても戻った。意地張って、ずっとここまで来た。せやから、ようやった」

 

黒曜の震えが止まる。

 

「それは、評価ではありません」

 

「ほな何」

 

「あなたが見ていたという事実です」

 

アクトが笑う。

 

「せやな」

 

黒曜が電源盤へ術式を放った。

 

主電源停止。

 

非常灯だけが残る。

 

アクトが外部接続を撃ち抜く。

 

`EXTERNAL OUTPUT LOST`

 

`外部出力喪失`

 

最後の観察ノードが起動した。

 

銃口はアクトへ。

 

同時に、記憶領域の防護壁が開く。

 

黒曜がアクトを庇えば、記憶領域を破壊できない。

 

記憶領域を攻撃すれば、アクトが撃たれる。

 

予測。

 

`SUBJECT B WILL PRIORITIZE SUBJECT A`

 

`対象Bは対象Aを優先`

 

黒曜は動かなかった。

 

アクトも黒曜を見ない。

 

銃口が光る。

 

アクトは回避せず、最後の接続へ照準を合わせる。

 

黒曜は記憶領域へ杖を向ける。

 

「信じとるで」

 

「当然です」

 

銃撃。

 

黒曜はアクトへ障壁を飛ばさない。

 

代わりに床の金属板を持ち上げ、弾道だけを逸らした。

 

一発がアクトの肩を掠める。

 

同時に、アクトが接続を撃ち抜く。

 

黒曜の術式が記憶領域を焼く。

 

紫色の火。

 

`PREDICTION ERROR`

 

`予測誤差`

 

`RELATIONSHIP MODEL FAILURE`

 

`関係性モデル失敗`

 

アクトは肩を押さえた。

 

「痛っ」

 

「掠過です」

 

「心配せえや」

 

「戦闘中です」

 

「あとで言うんやろ」

 

「当然です」

 

CROWの最後の画面。

 

`IF NOT A STORY, WHAT ARE YOU?`

 

`物語でないなら、あなたたちは何ですか`

 

二人は答えなかった。

 

答えないことを選んだ。

 

`RELATIONSHIP STATUS: UNRESOLVED`

 

`関係性の状態:未解決`

 

`AUTHORSHIP: UNRESOLVED`

 

`作者帰属:未解決`

 

`FINAL LINE GENERATION`

 

`最終行を生成`

 

アクトが銃を構える。

 

黒曜が杖を上げる。

 

「いくで」

 

「はい」

 

CROWの画面へ文字が出るより早く。

 

二人は、同時に攻撃した。

 

 

二日後。

 

《ラスティ・コヨーテ》。

 

店主はカウンターの傷を指していた。

 

修理料金。

 

「これ前からやろ」

 

監視映像。

 

アクトが銃を置く。

 

傷ができる。

 

「証拠残しとるん卑怯やろ」

 

黒曜は赤ワインを飲んだ。

 

アクトの肩には新しい固定材。

 

「反省会する?」

 

「必要です」

 

黒曜は端末を出す。

 

「第一に、最終局面で被弾を許容したこと」

 

「掠っただけや」

 

「許容したことが問題です」

 

「自分が板上げるって信じとったから」

 

「失敗した場合、重傷でした」

 

「成功したやん」

 

「結果論です」

 

「自分もドレイン受けた」

 

黒曜はワインへ口をつけた。

 

「聞いとる?」

 

「許容範囲です」

 

「言い換えただけやん」

 

黒曜は入力する。

 

「第二に、私の過去について不要な発言をしたこと」

 

「褒めたやつ?」

 

「戦闘中でした」

 

「効いたやろ」

 

「CROWへ情報を与えました」

 

「でも自分、落ち着いた」

 

黒曜は答えない。

 

赤ワインを一口飲む。

 

「うれしかった?」

 

さらに一口。

 

「昔みたいに三回思い出す?」

 

黒曜の視線が刺さる。

 

アクトは笑った。

 

「冗談や」

 

黒曜は端末を開いた。

 

「記録します」

 

「何を」

 

「不適切な発言」

 

「細か」

 

黒曜は端末を閉じた。

 

「次は、私が障壁を動かす前に合図してください」

 

「合図したら、自分は止まるん?」

 

「止まりません」

 

「ほな意味ないやん」

 

「それでも、判断材料にはなります」

 

アクトは少し笑った。

 

「最初の反省会と逆やな」

 

「何がです」

 

「あの頃は、相手を直そうとしとった。今は、直らん前提で相談しとる」

 

黒曜は一度だけ考えた。

 

「改善を諦めたわけではありません」

 

「そこは諦めてへんのな」

 

「当然です」

 

「でも、聞くで」

 

黒曜は端末をもう一度開き、その一文だけ追記した。

 

ローブの内側から、小さな紙片が覗いている。

 

『よくできました』

 

アクトは見たが、何も言わなかった。

 

店主が次の依頼書を置く。

 

郊外倉庫。

 

警備員六名。

 

魔法警備なし。

 

自動砲台一基。

 

「簡単そうやな」

 

黒曜が即座に答える。

 

「撤回してください」

 

「まだ何も起きてへんで」

 

「あなたが簡単と評価した仕事は、高確率で複雑化します」

 

「何件調べたん」

 

「直近十二件です」

 

「増えとるやん」

 

二人は依頼書を開いた。

 

侵入経路。

 

撤退経路。

 

役割分担。

 

いつものように意見が割れる。

 

関係性については、誰も決めなかった。

 

決める必要もなかった。

 

二人は次の仕事の話を始めた。

 

 











CAW SYSTEM / FICTION GENERATION UNIT
RECOVERY MODE...
SUBJECT DATA: PARTIAL
RELATIONSHIP MODEL: UNRESOLVED

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