アクトと黒曜 ――銃声と魔法、軽口と理屈。関係に名前をつけないまま、共に走る 作:矢塚 和哉
暗い。
最初に分かったのは、それだった。
次に、狭い。
胸のすぐ上に何かがある。コンクリートか、梁か、それとも床だったものか。見ようとして、首がほとんど動かないことに気づいた。
最後に。
手がない。
脚もない。
分かっている。 自分で切った。
それでも、右手を動かそうとすると、指が曲がる感覚だけは返ってきた。
握る。 開く。
感覚だけ。
「……気色悪いな、これ」
声にすると、胸の奥が痛んだ。
表示が視界の端に浮かぶ。
《予備酸素系:稼働》 《推定残存時間:00:51:43》
「減るん早ない?」
返事はない。
通信は死んでいる。
アクトは息を吐こうとして、途中でやめた。
呼吸を意識すると余計に苦しくなる。肺そのものが止まっているわけではない。ただ、胸郭の損傷と瓦礫の圧迫で、まともな換気量を稼げない。内蔵酸素系が足りない分を押し込んでいる。
一時間。
正確には、もう五十二分もない。
「まあ――」
言いかけて、やめた。
黒曜に怒られる。
通信が切れていても怒られる気がした。
◇
「そこを退いてください」
黒曜の声は低かった。
目の前には、崩れた保守通路がある。
つい数分前まで通路だった場所だ。
いまは梁と床材と搬送レールが斜めに噛み合い、巨大な栓になっていた。奥へ進む隙間はない。
EVOの救助要員が二人、黒曜の前に立っている。
「二次崩落の危険があります。現在、構造解析を――」
「分かっています。退いてください」
「黒曜」
理香子が呼んだ。
黒曜は振り向かなかった。
「退いてください」
「そこではありません」
今度は振り向いた。
理香子は床に膝をつき、端末を三枚開いていた。 顔色が悪い。
「……何がです」
「アクトの位置です」
崩落前の構造図。 最後に受信したアクトの座標。
ガウスライフルの射点。 四肢接続基部の緊急分離ログ。
それらが重ねられている。
「最後の座標から、落下方向だけで追うとそこです。でも、建物は落ちていません。捩れています」
理香子の指が地図を滑った。
「床面が先に東へ傾斜。その後、中央梁が沈下。アクトは垂直に落ちたのではなく、床材ごと横へ移動しています」
「どこへ」
「推定中です」
「何分かかります」
「分かりません」
黒曜の眉が動いた。
「分からない?」
「分かりません」
理香子は同じ言葉を返した。
声は平坦だった。 指だけが、いつもの倍ほど速く動いている。
「切断ログが四つあります。右腕、左腕、右脚、左脚。時刻差は一・七秒。そこから胴体の移動方向を逆算します」
「酸素は」
「最後の表示では一時間強」
「最後の表示では、でしょう」
「はい」
黒曜が杖を握り直した。
「なら急いでください」
「急いでいます」
「もっとです」
「急いでいます」
理香子の声が、ほんの少しだけ上ずった。
黒曜は黙った。
その横を、巨大な影が通った。
ダンボだった。
瓦礫の前で止まり、救助要員を見る。
「これ、どかしゃいいのか」
「待ってください」
救助主任が即座に止めた。
「荷重が読めていません。一本抜けば上が全部落ちる可能性があります」
「じゃあ読め」
「いまやっています」
「急げ」
「やっています」
ダンボは舌打ちした。
それ以上は手を出さなかった。
ただ、瓦礫の前から離れもしなかった。
◇
EVOは速かった。
慈善事業ではない。
旧施設はEVO由来。 生存して回収されたナギもEVO案件。
アクトは契約下の実働要員。 しかもMCT由来の技術と人員まで絡んでいる。
死者が増えれば、責任も増える。
だから企業は金を使った。
大型救難ドローン。 地中探査レーダー。 構造解析用センサー。
切断機。 油圧ジャッキ。 医療班。
現場責任者の御厨は、到着した機材を見もしなかった。
「生存者一名。最優先で回収します。旧施設の保全順位はゼロへ変更」
MCT側の監査員が口を挟む。
「証拠保全は」
「人命回収後です」
「当社資産由来の――」
「崩落事故の現場で、瓦礫を証拠品として抱えて人間を窒息死させた記録が欲しいなら、どうぞ正式に異議を出してください」
監査員は黙った。
御厨は端末へ視線を戻した。
「救助を継続します」
企業は優しくない。
だが、責任から逃げない時の企業は強い。
◇
《推定残存時間:00:37:08》
「三十七分か」
アクトは呟いた。
時間を見るのをやめようと思って、三十秒後にはまた見た。
《00:36:36》
「見ても増えへんか」
当たり前だった。
右手を握る。
ない。
左脚の膝を曲げる。
ない。
頭では理解しているのに、身体地図はまだ四肢を持っている。
右腕の装甲が瓦礫を押している気がする。
左脚の踵が床に触れている気がする。
だが実際にあるのは、接続基部より先が空白になった胴体だけだ。
「……返事くらいせえや」
存在しない右手に言った。
返事はなかった。
代わりに。
遠くで、音がした。
ごん。
アクトは目を開いた。
ごん。
規則的ではない。
機械の振動でもない。
ごん。
「……おい」
瓦礫の向こうからだった。
「雑やなあ」
少し笑った。
胸が痛んだ。
◇
「ここです」
理香子が言った。
端末上に赤い円が出た。
最初の推定位置から十一メートル以上ずれている。
「切断された右脚が途中の空洞で止まっています。左腕はさらに下。胴体は――ここ」
地中探査レーダーの像と重なる。
不規則な空洞。
人間一人が横たわるには狭い。
だが、アクトには四肢がない。
そのことが、生存空間を作っていた。
黒曜が一歩出る。
「行きます」
「直進は無理です」
「分かっています」
「上から掘ります」
「何分」
救助主任が答えた。
「安全にやるなら四十五分」
「ありません」
「分かっています。だから安全率を落とす」
御厨が言った。
「二十五分で開けます」
黒曜が彼を見る。
「可能ですか」
「可能にします。ただし途中から人力が必要です。機械を入れると空洞を潰す」
「人力ならいるぞ」
ダンボが言った。
救助主任が彼の腕を見る。
「出力制御は」
「俺がやる」
「外部補正なしで?」
ダンボの顔が固まった。
一瞬。
本当に一瞬だけ。
右腕が止まった。
何かを待つように。
許可を。
補正を。
動かしていいという、外からの命令を。
ダンボは自分の右手を見た。
握った。
開いた。
もう一度、握った。
「……俺がやる」
今度ははっきり言った。
「荷重だけ教えろ。抜く順番もだ。勝手にはやらねえ」
救助主任が頷いた。
「それなら使えます」
「使うって言うな」
「協力をお願いします」
「最初からそう言え」
ダンボは瓦礫へ向かった。
◇
救助は、派手ではなかった。
一本ずつだった。
梁を二センチ持ち上げる。 ジャッキを入れる。 固定する。
砕けた床材を切る。 小片を吸い出す。
黒曜は防壁を張った。
瓦礫を止めるためではない。
崩落そのものを魔法で支えるには大きすぎる。
落ちる小片の方向を変える。 切断中に跳ねる破片を止める。
作業員の頭上だけを覆う。
守る場所を選んだ。
鼻の下に乾いた血の跡が残っていた。
「右、三センチ」
理香子が言う。
ダンボが梁をずらす。
「止めて」
止まる。
「二ミリ戻してください」
「二ミリ?」
「二ミリです」
「分かるか、そんなもん」
「あなたの身体なら分かります」
ダンボは黙った。
右腕を少し戻した。
「そこです」
「……分かるじゃねえか」
「はい」
ダンボは鼻を鳴らした。
また握る。
自分の手で。
◇
《推定残存時間:00:14:51》
音が近い。
アクトにも分かった。
何かが切断される音。 瓦礫が擦れる音。 怒鳴り声。
そして。
「アクト!」
黒曜の声だった。
遠い。
けれど、聞こえた。
「おー」
声を出したつもりだった。
ほとんど息しか出なかった。
「アクト!」
「ここやー」
胸が痛い。
「返事をしてください!」
「しとるわ……」
「聞こえません!」
「知らんがな……」
頭上で何かが動いた。
細い光が落ちてきた。
眩しかった。
アクトは目を細めた。
その隙間から、黒いものが見えた。
髪。
黒曜の顔。
ひどい顔だった。
「……なんちゅう顔しとんねん」
「誰のせいですか」
「建物?」
「あなたです」
「建物やろ」
「あなたです」
「理不尽やなあ」
黒曜の顔が歪んだ。
怒っている。
たぶん。
泣いているようにも見えた。
「手ぇないで」
「見れば分かります」
「脚もない」
「分かっています」
「ほんまに?」
「黙ってください」
「はい」
素直に黙った。
数秒後。
「黒曜」
「何ですか」
「帰れる?」
黒曜は一度だけ目を閉じた。
「帰します」
「そか」
「あなたも帰るつもりだったのでしょう」
「そらな」
「なら最後まで、そのつもりでいてください」
「おう」
黒曜が隙間から手を伸ばした。
届かない。
アクトにも、伸ばす手がない。
二人ともそれに気づいた。
黒曜は手を引かなかった。
アクトは少し笑った。
「あとでな」
「当然です」
◇
回収された時、酸素表示は七分を切っていた。
そこから先は速かった。
EVOの医療班がアクトを受け取る。
四肢接続基部を封鎖。 胸郭固定。 循環維持。
内蔵酸素系から外部呼吸補助へ切り替え。
医療担当が数字を読み上げるたびに、別の誰かが処置を終える。
アクトは途中から眠らされた。
今度は妹を見なかった。
◇
目を覚ました時、天井が白かった。
「病院か」
「医療施設です」
「似たようなもんやろ」
「違います」
黒曜がいた。
椅子に座っている。
「何時間?」
「十九時間です」
「寝たなあ」
「寝かされていたのです」
「腹減った」
黒曜の眉間に皺が寄った。
「あなたは」
「はい」
「本当に」
「はい」
「何を考えているのですか」
「蕎麦食いたいなって」
「そういう話ではありません!」
怒鳴られた。
アクトは目を瞬いた。
黒曜が怒鳴るのは珍しい。
「帰るつもりだった、と言いましたね」
「言うた」
「退避計算もあった」
「あった」
「固定解除も間に合った」
「間に合った」
「それでも、安全余裕を削ったのはあなたです」
アクトは黙った。
「結果論やろ」
「結果がこれです」
黒曜の視線が下がる。
シーツの下。
そこには、腕も脚もない。
「あなたの『まあ、大丈夫やろ』は、見積もりではありません」
「……厳しいな」
「雑なのです」
アクトは天井を見た。
言い返そうと思った。
いくつか浮かんだ。
全部、やめた。
「……次から、もうちょい余裕見るわ」
「もうちょい、ではありません」
「善処します」
「信用しません」
「せやろな」
黒曜はしばらく黙っていた。
やがて、小さく息を吐いた。
「生きていてください」
アクトはそちらを見た。
黒曜は見返さなかった。
「おう」
それだけ答えた。
◇
ダンボが来たのは二日後だった。
見舞いではない、と最初に言った。
「EVOに呼ばれただけだ」
「へえへえ」
「ついでだ」
「はいはい」
「その顔やめろ」
「どの顔や」
「ムカつく顔だ」
「元からや」
ダンボは鼻を鳴らした。
右手を見た。
一瞬だけ、止まる。
それから握った。
開いた。
アクトはそれを見ていた。
「手ぇ、返してもろたで」
「二度と借りねえ」
「次は利子取るで」
「借りねえっつってんだろ」
「高いで?」
「だから借りねえ」
ダンボは踵を返した。
「おい」
「なんだ」
「瓦礫、掘ったんやって?」
「知らねえ」
「理香子から聞いた」
「あの女、余計なこと喋るな」
「ありがとな」
ダンボは止まった。
振り返らない。
「借りを返しただけだ」
「まだ残っとるで」
「ふざけんな」
そのまま出ていった。
友情ではない。
たぶん、あれでいい。
◇
ナギは生きていた。
EVOの医療区画で治療と隔離を受けている。
理香子とは同居しない。
理香子は、それを提案もしなかった。
「今後の居住先、契約、治療方針は本人とEVOで決める事項です」
そう言った。
アクトは少しだけ笑った。
「拾ったんちゃうん?」
「拾いました」
「ほな面倒見たら?」
「拾うことと、人生を決めることは別です」
「せやな」
数日後。
理香子の端末に、一通だけメッセージが来た。
《まだ笑ってない》
三秒後。
《でも、生きてる》
理香子は画面を見た。
長く見た。
返信欄を開く。
閉じる。
また開く。
「何て返すん?」
「見ないでください」
「見てへんで」
「見ています」
「画面は見てへん」
「顔を見ています」
「フヒって言わへんの?」
「言いません」
理香子はアクトから端末を隠した。
しばらくして。
短く打った。
《はい》
送信。
三秒待った。
返事は来なかった。
それでよかった。
◇
ロクの話をしたのは、その少し後だった。
場所は病室ではなかった。
サルーンだった。
葬式、と理香子は言った。 アクトが想像したような祭壇も棺もなかった。
テーブルが一つ。
酒が数本。
空けた椅子が一脚。
その前に、誰も口をつけていないグラスが置かれている。
「……葬式いうより飲み会やな」
「そういうものだったそうです」
理香子が答えた。
「ロクが?」
「はい」
アクトは杖に体重を預けた。
医療施設から借りた四肢は、白くない。
装甲もない。
皮膚を似せる必要すらない、灰色の簡素なレンタルリムだった。
歩ける。
物も持てる。
それだけなら十分だ。
だが、いつもの歩幅で脚を出そうとすると半歩足りない。
いつものつもりで身体を傾けると、戻ってくる反応が遅い。
だから杖を借りた。
右手で床を突く。
借り物の右手で、借り物の杖を握る。
それでも、勝手には動かない。
動かせば動く。
止めれば止まる。
それでよかった。
「椅子、引きます」
黒曜が手を伸ばした。
「自分で座れるで」
「転んだら笑います」
「ひどない?」
「どうぞ」
アクトは杖をつき、椅子の位置を確かめ、ゆっくり腰を下ろした。
一度だけ、レンタルの左脚が予定より外へ流れた。
直す。
今度は止まった。
「……これ、あたしの脚ちゃうなあ」
黒曜の表情が固まる。
「いや、悪い意味ちゃうで」
アクトは膝を軽く叩いた。
「借りもんや。でも、ちゃんと言うことは聞く」
黒曜は何も言わなかった。
理香子がグラスを並べた。
ナギは来ていない。
まだ医療区画から出られない。
代わりに、テーブルの端末が一つだけ回線を開いていた。
音声だけ。
『聞こえています』
「ほな、全員おるな」
「一人、いません」
理香子が空いた椅子を見る。
「せやった」
誰が乾杯と言い出したのか、アクトには分からなかった。
グラスが上がった。
空いた席の前の一杯だけは動かない。
アクトのグラスには酒ではなく水が入っていた。
「なんであたしだけ水やねん」
「投薬中です」
「一杯くらい」
「駄目です」
「黒曜」
「私を見ても駄目です」
「けち」
「生きて帰った直後の人間が言う台詞ではありません」
アクトは諦めて水を飲んだ。
少しだけ、場が緩んだ。
それから。
理香子がロクの話をした。
十一年前。
切断。
最後尾。
二人を先へ。
ナギの声が端末から返る。
『私は、切断によってロクが一人残されたと判断しています』
「私は、切断しなければ全員が残されたと判断しています」
『一致しません』
「はい」
『記録が不足しています』
「はい」
それで会話は止まった。
どちらも譲らなかった。
どちらも、相手を訂正しようとはしなかった。
アクトは空いた椅子を見る。
「でも、最後に残ったんはロクなんやろ」
「はい」
『はい』
「二人を先に行かせた」
「はい」
『それは否定しません』
「ほな、そこだけでええんちゃう」
理香子がアクトを見る。
アクトは水のグラスを持ち上げた。
「死んだ奴が何考えとったかまで、勝手に決めたらあかんやろ」
誰も答えなかった。
「せやけど、選んだことまでなかったことにするんも違う」
空席の前の酒を見る。
「ロク。あたし会うたことないけど」
少し考えた。
「二人とも、生きとるで」
理香子の指が止まった。
端末の向こうも沈黙した。
三秒ではなかった。
もっと長かった。
『はい』
ナギが言った。
理香子は自分のグラスを空けた。
「フヒ」
小さかった。
アクトがそちらを見る。
「今言うた?」
「言っていません」
「言うたやろ」
「言っていません」
黒曜が静かにグラスを置いた。
空席の酒だけが、最後まで残った。
◇
「で」
森田が言った。
「どうする」
アクトは診察台に寝かされたまま、天井を見た。
「どうする、て?」
「手足だ」
「ああ」
四肢接続基部の検査画像が並んでいる。
損傷はある。 だが再建可能。
旧仕様に近い四肢を作り直すこともできる。
森田が画像を切り替えた。
「同じものを戻すなら早い」
「ふむ」
「ただし今回、基部まで開ける。どうせなら接続規格から見直せる」
「ほう」
「四肢全部をモジュラー化する案もある」
アクトの目が動いた。
「交換式?」
「そうだ」
「戦闘用と、普通っぽいやつ分けられる?」
「できる」
「装甲は?」
「戦闘用なら今より詰められる」
「反射系は?」
「ついでに更新できる」
「WRは?」
「二までなら現実的だ」
「デルタ?」
「金があるならな」
「ある」
「即答か」
「身体やぞ」
森田は鼻で笑った。
「そうだったな」
表示が増える。
白い増加装甲を持つ戦闘用四肢。
合成皮膚で覆った低威圧の交換肢。
反射系。 装甲。 接続基部。 制御系。
元へ戻すための一覧ではない。
次を選ぶための一覧だった。
黒曜は少し離れた場所から、それを見ていた。
「前と同じでなくてもいいのですか」
アクトは視線だけを向けた。
「前のもあたしやで」
「はい」
「なくなったから言うて、あれが間違いやったわけでもない」
「……はい」
アクトはまた一覧を見る。
白い腕。
白い脚。
別枠に、人間の肌に近い四肢。
どれもまだ図面だ。
まだ自分の身体ではない。
だから。
選べる。
「次のも、あたしやろ」
黒曜は何も言わなかった。
ただ、少しだけ笑った。
アクトはそれを見て、眉を上げる。
「なんや」
「いいえ」
「なんか言いたそうやん」
「何も」
「絶対なんかあるやろ」
「ありません」
「怪しいなあ」
存在しない右手を動かそうとする。
まだ、握る感覚がある。
開く感覚もある。
けれど今度は、それを気味悪いとは思わなかった。
手はない。
だから終わりではない。
百本もいらない。
借りるなら借りればいい。
返す時には返せばいい。
そして、自分の手は。
生まれつきか、機械か、借りものかで決まるわけではない。
自分で選べばいい。
アクトは設計一覧へ視線を戻した。
「ほな、まず腕から決めよか」