ヤンデレに監禁されるわけwww 作:ヤンデレエアプ
どうすんだよこの空気…… 俺のことを好きな女が3人。ギスギスしている。渦中の人物は俺である。ここで俺は思った。逃げようと。
三十六計逃げるに如かず。俺の好きな言葉です。
幸い、この場には転移を阻害する因子はない。そして転移魔術を使える術者は、俺とスタグくらいだ。よし、問題ないな。
転移をするためのアンカーは、ノルディアンナの街にきっちり付けてきた。
俺は何も言わずに、転移魔術を行使した。目の前で消えた俺に対してフレアが手を伸ばしたが、無意味である。
「自由だ!」
スタグはそのうち追い付いてくるだろう。アイツに見張られているとおちおち風俗にも行けない。行っちゃおうかな〜!! エッチなお店に!!
転移魔術は魔力消費が重い。赤龍とやり合ったこともあって俺の魔力はスカスカだ。だが、俺は魔術だけの魔術師ではない。下手くそな棒振りもテレフォンパンチも出来る。護身程度なら問題ないはずだ。
とはいえ、魔術師なので、腕利きの騎士に襲われたら負ける。ノルディアンナの街中で、そんなハプニングに遭遇するわけがない。
飯! 酒! 女! 今日の俺はチートデイだ!
酒と飯をかっ喰らい上機嫌で雑踏を歩く。いやー、良い日だ。高いお店に行くぞ!! 金は有る!
「おっと失礼…」
「こちらこそ済まなかっ、貴様! カイ・マサンだな!! ようやく見つけたぞ!!」
「……人違いッス」
「嘘をつくな! 貴様、イバヤの騎士たるこの私を忘れたのか!」
マジで誰? 俺、女騎士に知り合いなんていたっけ??
「貴様、覚えていないな! 私に疲労回復薬ではなく毒を盛っただろう! お陰で私はいい笑い者だ! 姫様にも見限られ、貴様を見つけなければイバヤ王国を放逐すると脅されたのだぞ!」
「誰?? イバヤ王国で毒なんて盛った覚えないぞ」
女騎士は、端正な美貌を歪ませていた。めっちゃキレてる。
「ひ、人を女にしておいて覚えていないのか! こ、殺しゅ! お前は殺す!! 雪解けよアイシクルブレード!」
「…………我は、その、戦いたくないんだが」
「何故だ? 主である私の命に背くと?」
「その魔術師には怖いインテリジェンスギアが居る……怖いもん!! ん? 居ない? ふへっ、さぁ主よ! この魔術師をギタギタのズタボロにしてくれよう! アイシクルブレード様をバカにした罰だ!」
「いざ尋常に勝負! 私はイバヤ王国の騎士、レ
騎士が名乗りを上げようとした瞬間に、魔術陣が展開された。魔力がスカスカな俺は、何の抵抗も出来ずに魔術陣に招かれるまま吸い込まれていく。
――転移先には、蕩け切った氷の魔女姫がいた。
しゃらりと、氷の鎖が俺の四肢を拘束する。捕まっちゃったぁ……ヤンデレに監禁されるわけww と侮っていた結果がこれである。
「せんせ♡ あぁ、せんせいの匂い♡ ずっと会いたかったです。いっっっつも周りに、泥棒猫がいて、ずっと、モヤモヤしていました。先生は、私の恋人なのに、どうして迎えに来てくれないんだろうって。だから私が招きました。ようこそ。私のイバヤ王国に」
ウスラは、軽く拘束されている俺の頭皮の匂いとか首筋の匂いを嗅いでいる。そして、首元に軽く噛み付いた。
「抵抗しても無駄ですよ。先生がもう、どこにもいかないように、魔力を吸い上げる私の印を付けました。転移は塞がせてもらいますね。あと、先生の友人さんも来れないようにしました。これから、先生はずっと私と一緒です。ふふ。嬉しいですかぁ?」
おへっ!? これ詰んだかもしれない。まずスタグが居ないのが非常に辛い。停滞は概念に作用するチート魔術なのだ。それがあれば大抵のことはなんとか出来る。
俺も停滞魔術を使えないことは無いが、魔力消費が大きくコスパが悪い。俺は、一目見れば大抵の魔術は再現出来るが、如何せん器用貧乏だ。魔術師であれ剣士であれ一芸特化の方が強い。
「ウスラ。俺は詐欺師だぜ。クジマー魔術学院なんて卒業してないし、お前に教科書に乗っていない適当なことを教えたんだ。お前は俺に恋をしているんじゃなくて、恋という幻想に恋をしているんじゃないか?」
「ふふ。先生は変なことをおっしゃいますね。カイ・マサンは、忌み書庫に侵入しクジマー魔術学院を放校になった万象の起源を持つ天才魔術師ですよ。確かに教科書には無いやり方でしたが、それは先生がその先に居るからです。稀代の魔術師にして、私の恋人で、愛しの先生ですよ♡」
わぉ。全部バレてる。ストーカー怖いなぁ……俺、ウスラとずっと一緒なの??? えっ、マジで??
ウスラのやり方は非常に巧妙だ。
自業自得だって…? それはそう。はっきり言って油断していた。まさか騎士の体内かどこかに魔術陣のタネを仕込んでいたとは思わなかったのだ。
生きた人間に魔術陣を仕込むのは、ゴリゴリの禁術で、違法なんだけどな……
よし、決めた。へりくだることにしよう。俺はウスラちゃんの彼ピだ!
「それで、具体的に俺はどうすれば良いんだ? ウスラ姫はどうしたい?」
「……え?……どうすればって、その……と、殿方をお誘いするのは、恥ずかしいのですが……私と、お茶をしてください」
「それくらいなら良いぞ。全然構わない」
「えっ!? 良いんですか?? えっ…??」
ウスラ姫は、目を白黒させている。どこに驚く要素があったのだろうか?? 俺が協力的なところに驚いているのか? 嫌々従うよりも長いものには巻かれたほうが得だ。
「……どうして先生は、いきなり居なくなったんですか? 私を嫌いになったんですか? 怖くなったんですか? それなのにどうして、そんなに優しくするんですか?」
ぐるぐる目のウスラは、俺に質問を投げ掛けまくっている。本人も混乱しすぎて、何を言っているか分からなくなっているのだろう。
「先生は私と会うの嫌がってないんですか? 私のことが嫌だったから居なくなったんですよね? 先生が嫌がったら、ぎちぎちに拘束して私だけしか会えないように氷の空間に閉じ込めようと思ったのに……」
世間知らずのお姫様に依存されるのは嫌だ。貴族や権力者に対して俺は良い印象を持っていない。だから、ウスラが俺に依存することは避けたかった。
ウスラ本人に、俺は悪い印象を持っていない。魔力異常症で、ずっと閉じ込められていたにしては彼女は、マトモな性格をしている。貴族の血のなす業なのか、容姿端麗であり声は鈴の音のように美しく響く。
「俺はウスラのことをとても凄いと思っている。何事にもひたむきで、誰かを思いやることの出来る優しい子だと思っている。だから、氷の魔力を制御出来るようになった君には、俺だけに依存するんじゃなくて、色々な人と関わって欲しかった」
「先生は、私が嫌いになったとか、怖くなったってわけじゃないんですね?」
「ああ。俺の唯一の可愛い教え子を嫌いになるわけないだろ」
「良かった……」
ウスラのアイスブルーの眦には涙が浮かんでいた。
「私には先生しかいません。私を化け物とか魔女って言っていた奴らは、先生がいなくなった途端に私に擦り寄って来ました。お父様もお母様もそうです! だから、私にとっては先生だけが本当なんです。先生だけが私を化け物でと魔女でもなく、ウスラとして接してくれた! だから、他の人なんて私の心の中に要りません。先生だけがいれば良いんです! ずっと、私と一緒にいてください。先生のこと大好きなんです」
「正直に言うと、俺はウスラのことを、可愛くは思っている。けれどそれは、生徒に対しての感情だ。ウスラと生涯を共にしたいと思えるほど、君のことを知らない。もっと君のことを教えてくれないか?」
「はい。私のこと全部知ってください。嬉しい。ずっと一緒にいましょうね」
俺、君のこと恋人としては見れないけどねって婉曲的に振ったのに、こんなリアクションが返ってきた。チョロい。激チョロ女である。
ウスラの住処は、幽閉されていた還らずの塔から、離宮へと移っていた。山を吹き飛ばすパフォーマンスをし、治外法権の立場を手に入れたらしい。
この離宮は初代イバヤ王が命じて作り上げたもので、避暑地であるジャーデンにある。
己の世話をしていた侍女たちや使用人を引き連れ、ウスラはひっそりと離宮で暮らしているのだ。己に仕えていたかつて男だった女騎士レオーネを俺の捜索に回させたらしい。
そして、侍女からは炊事洗濯などを教わり花嫁修行をしているという。誰の花嫁だよ……俺か……
騎士レオーネは、単身、転移魔術によりノルディアンナに飛ばされた。やはり体内に転移魔術陣を仕込まれていたらしい。
この騎士は、ウスラにとって変わり身をした裏切者と認識されているようで、禁術を使っても問題のない相手だと認識されていた。
「ウスラ……その、本当に大丈夫なんだよな??」
「はい! 味見もしましたしレシピ通りに作ったので大丈夫です」
ウスラの望み通り、俺はお茶会に参加している。ウスラは最近まで幽閉されており、碌な家事の経験がない。最近、魔力を制御出来るようになったため家事を教わりはじめたという。
お茶会は、子どもの頃に参加したきりで、ウスラが主催するのは初めてだ。ホストであるウスラは、手ずからお茶を淹れている。クッキーやケーキも、ウスラが自ら作ったそうだ。
調理初心者のクッキーは往々にして毒物である場合がある。このクッキーの見た目は普通だ。匂いもバターが香っており食欲を刺激する。メシマズは嫌だ! メシマズは嫌だ!
「美味しい。上手いよ」
「えっ、そうですか。良かった。先生のために頑張って作ったんですよ」
ウスラは幽閉されていたため奪われた青春を取り戻そうとしているようだった。17歳であり、彼女は年頃の娘だ。俺、そんな若くねぇよ。
お兄さんで有ることは認めるが、おっさんであることは否認する年齢だ。
ウスラちゃんは、俺じゃなくてもっと若い同年齢の子とつるんだ方が良いんじゃないかなぁ……
そういうことを提案したら、マジトーンで否定された。こわ〜
純真なお姫様を騙してる感じがあって、すごい罪悪感がある。俺は、お姫様が恋人だぜゲヘヘ、みたいに調子に乗れる奴ではないのだ。
ウスラちゃんも性的な行為を求めて来ないし、すごいプラトニックで清い関係だ。これ、俺である必要ある? 女の子の友達とかいらっしゃらない? ……幽閉されてたからいないかぁ。
そんなこんなで、ウスラちゃんと青春してると、突然王家からの召喚状が飛んできた。にゃーん!!!