ヤンデレに監禁されるわけwww   作:むにゃ枕

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二幕 霹靂薄氷姫
11.王国ぐちゃぐちゃ動乱


 俺に王家への召喚状を持ってきたのは、ウスラが現地で雇った男である。壮年の朴訥な男であり、ビクビクしながら俺に召喚状を差し出した。

 

「き、騎士様が……これを魔術師に渡せって……オラはどうすれば……」

 

 あわあわわわ。まだ慌てる時間じゃない。そう。マジで慌てる必要がないのである。そもそも現状のウスラであっても小国家を破滅させられるくらいの能力はある。そこに、都市くらいならやれる俺がいる。

 抑止力としては十分なはずなのだ。剣士という盾はいないが、遠距離から攻撃したりは出来る。また、転移で都市に侵入し毒をばら撒いて即退散するなどのテロ行為も可能だ。

 

 イバヤ王国は、俺を宮廷魔術師にさせるくらいには魔術師の層が薄い。なので、ウスラと俺という抑止力は十分に作用するはずなのだ。

 

「ウスラを呼んできてくれないか。彼女と相談したい」

「へっ、へい。オラ、姫様を呼んできます」

 

 えー、ウスラは来ませんでした。やって来たのはイバヤ王国親衛騎士団の紋章を引っ提げた騎士サマでした。

 

「考えてみればおかしな話だよな。転移魔術で呼び出された俺の存在を、イバヤ王国が把握できるわけがない。しかし、現実として召喚状が来ている。つまり、ウスラの雇った従者の中に王家のスパイが紛れ込んでいたんだろ。さっきのおっさんがスパイだったのかもしれないな……」

 

 クソデカため息を吐く俺の前で、王家の騎士が見事な礼をする。仕方がないので俺も軽く返礼する。

 

「久々だな。カイ・マサン卿。レオーネが世話になったようだ。あんなでも、彼は私が手を掛けた部下でね。ウスラ姫に懸想し浮かれていたとは言え、まさか、性別が変わってしまうとは思わなかったよ」

 

 逃げやがったなクソ野郎! ウチのメンツを潰しやがって!! という言葉を丁寧に包装して言ってくれましたね。

 

「その説は申し訳ない。私はイバヤ王国にはお(・)世(・)話(・)になりましたからね。しかし、ヨイツ親衛騎士長が自ら足を運ばれるとは思いませんでしたよ。それで私への指名手配は解かれたのですか??」

 

 指名手配掛けておいてよく言うよ! お前ら、俺を利用し尽くす気だろ! 死ね! ということをオブラートを二重三重にして伝える。クソジジイめ!

 

「残念ながら、貴公と王家には不幸な行き違いがあったようだな。しかし、貴公は有能な魔術師であり、我が王国にとってかけがえのない人材だ。共に王家を支えるべき人物だと、私は思っているよ」

 

 ひぃん。怖いめう。助けてウスラ。ま〜じでウスラは何をしてるんですかね??

 

「ウスラ姫には、少し休んでいただいている。君は彼女を制御出来るのだろう? 王国に制御出来ない兵器は必要ない。君を王家は高く買っている」

 

 ウスラはおそらく睡眠薬か何かを盛られた。この親衛騎士長殿の手の者がウスラに盛ったのだろう。ウスラちゃんの味方が少なすぎる。この離宮の中で、ウスラ個人に忠誠を誓う者は片手の指で数えられる程度だろう。

 幽閉されていたウスラの面倒を見た侍女や料理人くらいしか、ウスラの味方がいねぇ……王家とウスラ個人だったら、王家の方に忠誠を誓っちゃうよな。もしくは、金に忠誠を誓っているのか。

 

「ウスラは属性魔術を氷の魔術のみしか使えない。それに生まれ持った魔術の才能がある。胎児の頃に加工したんだろう? そうでなければ強力過ぎる。

 王家の血を引いているとは言え、あれ程の魔力量を自然に持てるわけがない。加工を引き受けたのは、腕利きの魔術師だな。生後、制御が出来なかったのはソイツに逃げられたから、もしくは秘密を漏らさないために処刑したからだろう?」

 

「――勘の良い魔術師は嫌いだよ」

 

 ヨイツ騎士長が、露骨に視線に殺意を籠めている。適当に言ったものが正解だったらしい。

 

 勝てねぇわこれ。せめてスタグが居れば……

 

 停滞を司るスタグであれば、魔術抵抗が無ければ大抵の人間の動きを即座に止められる。対人戦においてのチートなのだ。

 

「騎士レオーネは、どうも王家に忠誠を誓うのではなく、ウスラに惚れていたからな。俺を捕らえたらウスラに引き渡そうとしたんじゃないか。ミンネザング(騎士道精神)に忠実な素晴らしい騎士だった。だから俺も洒脱な対応をさせてもらった」

「情に絆されるとは、親衛騎士失格だな。彼、いや彼女には教育が必要だろう。助言に感謝する。

 さて、ウスラ姫が休まれている間に、貴公と王宮へ向かいたいのだが、ご同行いただけるかな?」

 

 不味いな。王宮に連れて行かれたら俺はモルモットだ。PUI PUI。手足をちょん切られるかもしれない。スタグ……スタグちゃん! 助けて!

 

「生憎、俺は男の誘いは断るクチでね。ウスラは俺の教え子なんだ。先生として弟子を見捨てるなんてダセェこと出来るわけ無いだろうが!!」

 

「ほう。生かして捕らえろとは言われているが、五体満足でとは言われていない。腕や足の一本は覚悟してもらおう」

 

 来る! 身体強化! 身体強化! 身体強化! 身体強化!

 

 うぉぉぉぉ! 死ぬ気で回避! 前世で体育は5だった! 唸れ俺の筋肉ぅぅぅ!

 

 ヨイツ騎士長の突きは疾風のようだった。おそろしい速さの突きが繰り出されている。刺突剣は魔物ではなく、人間を殺す武器だ。その恐ろしさが遺憾無く発揮された。

 

「やるではないか! 魔術師で有りながらこの距離で生き残れるとは! なかなか歯応えがある!」

 

 ジジイのテンションが上がっている。レイピア使いのジジイは強キャラ、はっきり分かんだね。

 

 俺は下手くそなステップやらローリングやらで無様に逃げ回った。お願いローリング! 現実は非常であり、ローリングに無敵時間は付与されない。なので逃げ回るしかない。

 

 転がったり逃げること数回。おねロリむなしく、俺は逃げ場を失った。

 

「貴公。見えているな。いや、違うな。予見している。予知魔術と身体強化の合わせ技だな。なかなか愉しめたぞ」

 

 元々近接戦だと魔術師と剣士であれば、圧倒的に剣士の方が強い。逃げ場を失った俺は、まな板の上の鯉である。

 

――吐く息が、いつの間にか白くなっていた。冷え切った空気で体温を失った身体が、小さく震える。

 

――目覚めたのだ。氷の姫が。

 

「オラ、姫様をお連れしただ。マサンさん無事か?」

 

 朴訥なおじさんはスパイではなかった。そして、危険を犯してまで約束を守ってくれていた。おじさん! ありがとう!

 

「私、とても不愉快です。ヨイツ騎士長、私を騙しましたね?? お茶を飲んだら急に眠気が来ました。私は魔力を制御出来ず、ずっとお父様やお母様から、軽んじられてきました。

 ようやく、先生という私の本(・)当(・)を手に入れられたんです。それすらも奪おうと言うのですか? 私、我慢出来そうに有りません」

 

 ヤバい!! 氷防御! 氷防御! バフ全マシ! おじさんにも全マシ!

 

「がッ!?」

 

 どこからともなく生じた氷が、ヨイツ騎士長に向けて殺到する。面制圧だ。凄まじい速度である。空間全てを氷に閉ざす勢いがあった。

 

「氷のないところで、これほどの氷魔術を……流石は氷の魔女ですな。ここらで引かせていただく」

 

 ヨイツ騎士長が盾にした刺突剣は、根本からポッキリと折れている。全身を氷が覆ったはずだが、騎士長は生きていた。恐るべき生命力だ。

 

「逃がすと思って? 私の先生を傷付けて無事で済むとでも?」

「姫君なら己の立場を弁えるべきだ。私を殺せばこのイバヤ王国は割れる。それに父上と母上が嘆かれますぞ」

「……お父様もお母様も私にとっては、赤の他人です。あの人たちは、魔力を制御出来る私が好きなのであって、ウスラのことを愛しているわけではありません。王国など、どうなっても構いません。先生のためなら、国を滅ぼすくらい何の問題もありません」

 

 ウスラが怒っていることが伝わってくる。しかし、ウスラは王女であって、王位継承権も持っている。それに、強い魔力も持っていると来れば、どう足掻いても周囲が放っておかないだろう。

 

「ふっ、我が王の愛と? 王とは理性的でなければならない。ウスラ姫、王は兵器としての貴方の価値を買っている。それ故に恐れるのです。

 そこの魔術師、カイ・マサンを差し出し、魔女であるあなたの制御法を王家が持てれば何の問題もありません。あなたは、戦争に協力すれば良い。そうすれば平穏に暮らせますよ。姫殿下が折れないとあらば我々は手段を選びません。では、いずれ相まみえましょう」

 

 騎士長を中心とし、転移魔術陣が発動する。懐にでも隠し持っていた転移結晶を砕いたのだろう。

 

「くっくっく。はっはっは……何……不発か?」

「ウスラ。拘束しろ!」

「はっ、はい!!」

 

 ヨイツ騎士長が戸惑っているうちに、さっさと拘束する。逃げるなら転移魔術だよな。俺もそう思うよ。だからこそ、対策させてもらった。

 

「ヨイツ騎士長。形勢逆転したが、ウスラ姫に寝返るつもりはないか?」

 

 氷の鎖で何重にも縛られている騎士長は、どう足掻いても脱出が出来そうに無いと考えたのだろう。

 

「馬鹿め」

 

 そう呟くと、奥歯を噛み締めた。しかし、白髪の老人が歯軋りをしているだけであり、特に何も起きなかった。

 

「奥歯に仕込んでいた毒なら消した。それに、自決用の刃物も消したぞ。おっと、舌を噛もうとしても無駄だ。ウスラ姫のことを調べているなら、俺のことも当然知っているだろう? 俺の起源は万象。器用貧乏だが何でも出来る魔術師だぜ」

 

 ヨイツ騎士長は、驚愕の表情を顔に張り付けている。俺をさっさと殺さずに嬲っていたのが、お前の敗因だ。格下相手だろうと、初手から全力を出して殺せば良いのだ。

 

「くっ……殺せ…!」

 

 万事休すということで、くっ殺になった。爺のくっ殺とか誰得だよ。俺の脳内に天啓が降ってきた。爺でダメなら美少女にすれば良いのでは???

 

「そ、それはまさか……性転換薬…!? やめよ……やめろ! やめてくれ、私は王家の親衛騎士として、我が王に忠誠を誓ってきた。頼む…! そのようなモノを飲ませるな、騎士たる私を辱めるな!」

 

 俺さ、プライドが高そうな爺の鼻を圧し折るの好きなんだよね。やっぱ鍛えた身体が無くなるの嫌だよね。自分が自分でなくなるの嫌だよね。へへへ。だからこそやり甲斐があるってもんだ!! オラ! 注射!!

 

「話す。何でも話す。だから、それだけはやめてくれ! 男のままで殺してくれ!!! 私は、親衛騎士長だぞ!! バカな真似はよせ!! うわぁぁぁ!」

 

 数時間後、ヨイツ騎士長の姿は無かった。その代わり、シテ…コロシテと呟いているレイプ目の少女がいた。

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