ヤンデレに監禁されるわけwww 作:ヤンデレエアプ
ヨイツ騎士長だった
正当防衛である。過剰防衛と言われると……んにゃぴ……そうかな…? そうかも。
「情報を提供して頂き、ウスラ姫の味方に付いていただければ男に戻しますよ」
「……本当だな」
ダウナーボイスの美少女親衛騎士長(元男)という、過剰な属性を背負ったヨイツ騎士長は、俺の言葉に同意した。はい契約魔術一丁! それから、ダウナーボイスでポツポツと語りだした。
「先生……ヨイツ騎士長が可愛らしい見た目になってますけど、殺さなくて良いんですか?」
ウスラ、すげえ物騒なこと考えるじゃん。心を折っているから多分、大丈夫だとは思う。一応契約魔術も重ね掛けしておこう。
「先生が無事で良かったです。私、先生のためならお父様もお母様も殺します。だから先生、どこにも行かないでくださいね。ずっと私の傍に居てくださいね♡」
重っ。やだよ。
ヨイツ騎士長が語った内容によると、ウスラが胎児の時に魔帝国の魔術を知る
明らかにヤバい儀式であったため、儀式が終わった後に証拠隠滅のためにエルフ魔術師を処刑したという。
王と妃は魔力量が多く、非常に優れた魔術師が生まれると期待し、幼いウスラを愛した。しかし、成長したウスラは魔力の制御が出来ず周囲を氷漬けにした。そのため、道具への愛でしか無かった王と妃の愛は、消えたと言う。そして暴走を恐れ幽閉した。
高名な魔術師を雇っても、ウスラの魔力は制御出来ず、それどころか年とともに酷くなるばかりであった。そこに、俺が雇われて見事にウスラの魔力を制御させたのだ。しかし、俺は逃げた。
魔力を制御してクソ強になったウスラは、山を吹き飛ばすというパフォーマンスを行った。それで、離宮を貰った。それから騎士レオーネに俺を探させ、転移魔法で拉致したというわけである。
うーん。これ、俺が悪いの?? イバヤ王国がヤバいだけでは? 逃げ出した俺は悪くない。あと、レオーネくん不憫なだけだな。女騎士にしちゃってごめんね。
「現状、俺たちには戦力が少ない。王家をどうにかするには、これでは無理だぞ。レオーネを呼び戻し、諸侯にも協力を仰ぐしかないんじゃないか?」
「先生がそう仰るならそうします。私は王家なんてどうでも良いのですが、先生と私が一緒に暮らすのを邪魔するなら容赦はしません」
ガンギマってるウスラちゃんを放置して逃げてぇなぁ。そもそもだ。そもそも論として、どうして王はウスラを強化したのだろうか?
莫大な魔力を持たせ、属性魔術を氷のみしか使えないよう制限することで、高威力の魔術が使えるようになる。これはかつて存在したとは魔帝国の技術ということで、まあ納得できる。
魔帝国は、普通人種にとっての敵であった。精霊人とかエルフ、耳長、と呼ばれる魔族が作り上げ、世界を支配したのが魔帝国だ。
長い寿命と高い魔力により世界を支配した魔帝国は、普通人種を属住民や奴隷として扱ってきた。聖教の過激派にとっては不倶戴天の敵である。
「精霊人を魔術師として雇うなんて随分と先進的な王だったんだな。ウスラ、お前のお父さんであるイバヤ王国の王は、どんな奴なんだ?」
「お父様ですか……分かりません。子どもの時に会ったきりですので」
ヨイツ騎士長に、王がウスラを禁忌の儀式で強化した理由を聞く。このジジイなら知っているだろう。
「知らぬ」
「は? ヨイツ騎士長、この期に及んで黙秘ですか?」
ウスラの持ち物であるフリフリの可愛いワンピースを、ヨイツ騎士長に魔術で着せた。騎士長は憤死しそうな表情になっている。可愛いね。
「……くっ、私がこのような仕打ちを受けるとは。本当だ。本当に知らないのだ。王が非道を働こうともそれは国のためになる。現にウスラ姫は強力な魔術を使える。制御出来れば兵器としては傑作だ」
「ヨイツ騎士長、あなたのそれは忠誠でないですよ。見たくないことに目を瞑って蓋をしただけです。子どもを生贄にするなんてマトモじゃないですよ」
「国家のための犠牲となったのだ。多を活かすために少を切り捨てることは戦場ではよくあることだ」
「切り捨てたのが子どもなんですよ。戦場なんて昔のことだ。ウスラが生まれる前後にはそんなことはなかった」
「ふん……剣には剣の王には王の役割がある。情報は必要なものしか与えられぬし、部下に与えん。それが親衛騎士の矜持よ」
こっちには契約魔術がある。ヨイツ騎士長は、俺とウスラ、それからこの屋敷の使用人には暴力を振るえない。つまり、レスバしか出来ないのだ。
「ヨイツ騎士長。今日のところは、これくらいで終わりましょう。聞くことはまだ多そうです」
ヨイツ騎士長とお話して分かったことは以下の通りだ。イバヤ王家がウスラをおそらく禁術であろう魔術で強化した理由は不明。そして、ヨイツ騎士長もその理由を知らない。
王が特に野望もなく、単に己の子どもを強い魔術師にしたいと思ったのだったら話は簡単だ。しかし、禁術を使ってまでそんなことをやるだろうか。いや、やりかねないな。
前世でも、子どものためなら何でもする親はいた。そういうのの究極系かもしれない。
「ウスラはどう思う。イバヤ王は何を考えて、ウスラを強化したんだ?」
「特に何も考えていなかったのかもしれません。お父様もお母様も、私を愛してくれませんでしたから」
ウスラは、前世風で言うとネグレクトを受けており、与えられなかった愛情を求め、俺を依存先としているわけだ。ウスラから情報を得ることは難しそうである。
現状はかなり難しい。ウスラは強いが1人しかいない。仲間が必要である。ウスラが王宮に転移し全てを凍らせるということも、手段として無いこともない。最終手段としてはそうなるだろう。
もしくは、ウスラと俺で逃避行を図るのも悪くない。しかし、そんなことをしたら、地の果てまで追われることとなるだろう。これも望ましくない。
必要なのは、ウスラと俺、そして王宮が求める妥協点を見つけることだ。そのためには、話し合いが必要である。しかし、武力が無ければ話し合いのテーブルに付くことすら困難となる。それに、どうしても仲間が必要となる。
「ウスラ。騎士レオーネを転移させられるか?」
「出来ますけれど、あの役立たずをですか?」
「レオーネは強い。騎士として戦力となる。この先に必要な人物だ」
ウスラの騎士レオーネへの信頼度はけっこう低い。レオーネくん、好きな子にぞんざいにしちゃうタイプっぽいな。ウスラと打ち合わせをして騎士レオーネを転移させる。
「貴様! カイ・マサン!! 姫様!? なぜ私を拘束するのです!?」
「先生は私の恋人です。レオーネ、私と先生の未来のために協力してくれますか?」
俺の腕に自分の腕を絡ませるウスラ。恋人繋ぎってやつですね。目の前のレオーネは顔面蒼白で、表情が抜け落ちていた。脳が破壊されてるっぽい。
レオーネはウスラに惚れてたみたいだからなぁ。
「…………はい」
レオーネに性転換薬をまたぶち込む。魔術を掛けて、元の身体に戻す。よし、これで円満解決だな!
「身体が戻った…!」
脳破壊の衝撃から立ち直れていないようで、騎士レオーネは泣き笑いのような表情になっている。今は、戻さない方が良かったかもしれない。
翌日、再びヨイツ騎士長の尋問を行うこととした。ヨイツ騎士長の様子を遠見の魔術で伺うと、鏡に向かって決めポーズをしたり、髪を撫でつけていたりした。
そして、女性ものの服を着替えては、その度に口角を上げている。下着も上下がしっかり女性のものに変わっている。おい、ジジイ! 立ち直ってやがる…!
「マサン卿、昨日の私の態度は間違っていた。このような素晴らしい身体を得られたこと感謝する。貴公に対しての暴言を許して欲しい」
ジジイ!? なんて変わり身の早さだ! 俺でなきゃ見逃しちゃうね!
「私は若さと健康というものを甘く見ていた。今朝、起きてから全く疲れがない。昨日は今までの経験を失ったと嘆いていたが、我が魂に刻まれたものは変わらん。新しい身体の使い方に慣れれば私は更に強くなれるだろう。ウスラ姫。私の忠誠を姫に誓おう」
いや、変わり身早すぎだろ! おかしいって絶対! 俺、洗脳とかしたかな?? 老人は健康に執着するとは聞く。前世の日本でも運動習慣を持つ割合が高かったのは若者よりも高齢者だ。
若返れたということを踏まえても、ヨイツ騎士長の変節はかなり奇妙だった。
ワンチャン、ヨイツ騎士長の性癖がTSだった可能性がある。もしくは親衛騎士の適応力の凄さが考えられる。
騎士レオーネに目をやると、まだ脳破壊されているようでぼんやりした様子だった。親衛騎士の適応力が異常というよりも、ヨイツ親衛騎士長が異常なのか?
分からないということが分かったため、思考するのはやめて、棚上げすることにした。
「ヨイツ騎士長。どういう理由でウスラに忠誠を誓うんです?」
「マサン卿、貴公の話を聞いてな。私は盲目的に王を崇めていたのだと気が付いたのだよ。ウスラ姫の人格を無視し、兵器と呼ぶのは極めて侮辱的だ。それに、騎士長たる私が幼子の犠牲を看過することなど許されん。憑き物が落ち、蒙が啓かれる思いだよ」
映画版の綺麗なジャイアン??? いや、おかしいって、洗脳でもされていたのか…?
俺自身もこうなっていたため、非常に思い当たるフシがある。おそらく洗脳魔術だ。それも、本人に疑念を抱かせずそれが真実だと思い込ませるタイプの非常にタチが悪いやつである。
魔族の崇める邪教に、似たようなものが無いのであれば、これはウカタマモ様の権能だ。ちなみに、邪教は普通人種側が侮蔑を込めて言っているだけで、魔族側はエルド教と呼んでいる。多神教であり、たくさんの神を抱えている。
ウカタマモ様と言えばアンジェラだ。しかし、アンジェラがノルディアンナから移動してイバヤ王家を乗っ取るのには、時間が足りなすぎる。おそらく別件だろう。
イバヤ王かそれに近しい人間が、ウカタマモ様の使徒なのだろう。ならば、少数精鋭で奇襲を掛けて一気に倒すことが最善のはずだ。
これでもし、全部違っていて俺の勘違いだったらどうしよう。その時は逃げれば良いか。ヨシ!