ヤンデレに監禁されるわけwww 作:ヤンデレエアプ
ウカタマモ様の権能は非常に強力である。本人(本神)に聞いたところ、魅了の力は術者が女性であり、魅了対象を男性とする時に強く働くという。
ヨイツ騎士長は、男性であったが性転換薬により少女へと変わった。それにより、異性という魅了の前提が崩れ、魅了が弱化するか無効化されたのだろう。
騎士長は恐ろしいほどに、剣の腕が立つ。遠距離なら逃げられるが、近距離で襲われたら俺はひとたまりもない。俺が今、生きているのは、彼に生け捕りが命じられており、俺を殺せなかったからだ。
ウスラに対しても殺す許可は降りていなかったのだろう。だから、ヨイツ騎士長は不覚を取った。そのお陰で、王家の闇は短期解決しそうである。
「つまり、お父様に近しい者がヨイツ騎士長を魅了した上で洗脳していたということですか?」
「状況から見てそうなる。邪神であるウカタマモの使徒となり、権能を何らかの手段で手に入れたのだろう」
「そうでしたか。では、早速王宮に行ってお父様たちをぶちのめしましょう!」
ウスラはシンプルで分かりやすい解決策を好むようだ。脳筋である。実は
王宮という場所は、大抵の場合転移魔術が阻害されるようになっている。俺のような不審者がいきなり侵入するのを防ぐためだ。
今回、王都に転移しこっそり王宮に侵入するのは、俺とウスラ。そしてヨイツ騎士長だ。レオーネはダメそう。
ヨイツ騎士長は、あまり信用できない。敵だった奴をホイホイ信用できるわけがない。
「ウスラ。ヨイツ騎士長には、これを付けろ」
「これは、何ですか?」
「隷属の首輪だ。ウスラが主人となりヨイツ騎士長に付ければ、騎士長はウスラを裏切れない」
「……分かりました」
ちょっと俺の首を見たのと、間があったのは何なんだろうか……やめてくれウスラ。その術は俺に効く。
俺が作った隷属の首輪は、
「身に余る光栄です。ウスラ姫の猟犬として、この身が果てるまで忠を尽くします」
首輪を付けられたヨイツ騎士長と、俺、そしてウスラの三人で王都へ転移する。転移魔術の妨害は、王宮と中核部にしかない。増築された王都の外郭部になら転移が可能なのだ。
王都はかつて、司教座都市だった。魔帝国は
エルド教の序列は、教皇の下に司教、そしてその下に司祭がいるというものだ。番外として聖女がいるが、神の声を聞ける存在は稀有であり、聖女認定は滅多に起きない。
イバヤ王都は、魔帝国時代から司教座が置かれ、その区画が整備された。王都中核部は司教座都市の色合いを濃く残している。王都中核に直接転移できないよう転移妨害魔術陣が敷かれていることも、魔帝国の建築技術や魔導技術の高さを伺わせる。
「先生、私はあれが食べたいです…!」
ウスラの指差した露店からは、豚肉の焼ける良い匂いがする。ここ、王都外郭は、中流市民が住む区画である。都市内で放し飼いにされている豚や鶏が、おこぼれを狙ってあちこちをウロウロしている。
王都の中核とは違い、下水道設備はあまり整っていない。中核部には魔帝国が作ったコンクリート製の上下水道や、下水処理施設がまだ現役で稼働しているのだ。
汚い話だが、人間の屎尿は処理が大変なのだ。王都 外郭も大きい道は凹型にへこませる作りをし、中央に排水路を設けることで、なんとか都市内に汚物が留まらないように設計されている。
あとは都市内にいる豚とか鶏がSDGsしている。エコロジーだ。
「おいひぃです! あつ。ありがとうございます先生!」
「それは良かった」
白皙、という印象をウスラは周囲に与える。しかし、俺に対しては割と自分のやりたいことを主張したりしている。最近の俺は、ウスラが見た目だけクールな子どもに見えてきている。
実際、年齢も17と若い。この世界で、この年齢だと働いていたり社会の荒波を耐えたりしているはずではある。でも、ずっと監禁されてたからね。仕方ないね。
「あ、あれも買いたいです!」
「良いよ。買っておいで」
「……買い方が分かりません。ごめんなさい先生」
しゅんと、怒られた子犬のように元気がなくなるウスラ。ウスラは筋金入りの箱入りなため、買い物もしたことがないのだろう。ヤバいな。無知な女の子に対して庇護欲が湧いてしまう。
ずっと塔に閉じ込められて、青春を台無しにされたのだ。ウスラにも青春を楽しむ権利は十分にある。でも、俺じゃなくて良いよね? 女友達とか作って青春しなよ。
しかし、この理論はウスラには通用しない。疑心暗鬼の人間不信と言うよりも、愛着形成がされていない方が近い。生育環境が悪かったのだ。歪みが生じているのは仕方がないだろう。
「……せんせ、意地悪しないでください」
俺の腕をつんつん引っ張る。そして目が合うと小さく頬を膨らませた。
「悪かったよ。一緒に買いに行こう」
「はい。せんせ、大好き♡」
ウスラは、地味な服装にはなっているが、良いところのお嬢様感が隠せていない。
「ヨイツ騎士長、この辺りで正しいんだよな?」
「ああ。私の記憶が正しければそうだ」
王宮や王都中核に入るには、衛兵の守る門を通らなければならない。怪しい魔術師である俺、お嬢様オーラのするウスラ、刺突剣を持っている美少女ヨイツ、衛兵からしたらコイツらは不審者間違いなしだ。
「ここからが抜け道だ。あの時、子どもたちを運んだからよく覚えている。私は、荷物の中身を知らなかった。だから、中身を知った時には酷く驚いたものだよ。王を誑かした毒婦め…! 私は今まで奴がこの所業を行ったことを忘れていた」
ヨイツ騎士長がブツブツと呟いている。どうも愚痴っているらしい。
魔帝国が作り上げたのは現在の王都中核部までだ。中核部の下水道出口は、外郭部の拡張時に、その存在を地図や人々の記憶から消されたらしい。イバヤ王族や親衛騎士長にのみ抜け道として伝わっているという。
マンホールから下水道に下る。臭いはあまり強くない。この抜け道は地下水路を経由するため、正しい道を知る人物が居なければ遭難間違いなしだ。
「王妃の動きは巧妙だった。己の子に禁術を刻んだ以外は、何もしていない。だから、私を含め誰も王妃を怪しまなかった。少女となってからは、17年前の出来事がありありと思い出せる」
俺がヨイツ騎士長に性転換薬を飲ませてから、凄いピタゴラスイッチが生じている。
ヨイツ騎士長の話だと、王妃が魅了による洗脳を行使したのは、王とヨイツ騎士長を含めた重臣ら数人だそうだ。洗脳を行使した理由は、胎児であったウスラに禁術を刻んだことを隠すためである。
ヨイツ騎士長の記憶では、王に命じられウスラに禁術が行使されたことになっていたらしい。彼も子どもを犠牲にするというやり方に、内心思うところはあった。
王が命じたから非道を行ったと、合理化を図っていたようだ。しかし、魅了による洗脳が消えたことで王が命じたのではなく、王妃が命じたこと。そして、王にも魅了が刻まれている。これをもってウスラに忠誠を誓うことにしたという。
めっちゃ騎士ムーブしてるじゃん。イケジジイだ。外見は美少女だけど。
「ウスラ。大丈夫か? 辛くはないか?」
「…大丈夫です。私はお母様から禁術を掛けられていた。お母様も私を愛していなかっただけですから。こういうことには慣れています。だって先生が居ますから」
「そうか。辛かったら言って良いんだぞ」
ウスラはこういう時に自分から言い出さない。だから、俺から抱きしめた。
「せんせい!? ひゃ」
「弱音を吐ける時は吐いとけ。溜め込んでいると、いつか心が壊れる」
「っ〜〜 もう、先生のおかげで元気出ましたよ」
ウスラの陶器のような肌に赤みが差す。どうやら少し照れているようだ。あからさまに口角が上がっており、嬉しそうだ。
「そろそろだ。ここは、私が先行して様子をうかがう。使われていない倉庫脇の古井戸に出るはずだ。こんな場所を見張る奴がいるはずはない。だが、念には念を入れる」
果たして、見張りは居なかった。騎士長は、慣れた足取りで広大な王宮内を進んでいく。
魔術で王の安否を探ると、彼は執務室に居るようだ。俺たちは勢いよく突入した。
「開けろ! 閉架検閲官だ!」
ドアノブを吹き飛ばし、ウスラの氷が素早く王を拘束する。
「待て、話せば分かる…!」
「ほう。何を話すのだ?」
俺たちはクジマー魔術学院の閉架検閲官に成りすましている。彼らは、アカシックレコードという全知に至るために、魔術や魔帝国の異物を収集する狂人である。
殺人や拉致も平気でする学院の実働部隊だ。イバヤ王家にいきなり凸るくらいは、やりそうな連中だからな。
「君たちの狙いは何だ?」
「魔帝国の異物の回収が目的だ。王の身柄と引き換えに引き渡してもらう」
ここまで全部デタラメです。
「魔帝国の異物だと……私は、それを知らない」
「そうか。じゃあ、死のうか」
社会的に死ぬであろう王に祈りを捧げた。
並大抵の手段では神の権能に抗えない。ウカタマモ様の魅力であれば、対象者の性別が男であれば強く作用する。そこで、性転換薬が必要だったんですね。やったね王様、女の子になれるよ!
イバヤ王国は大変なことになるだろうけど、そこは頑張ってね。
「あら……ウスラ」
タイミング良く后が、王の執務室に姿を見せた。そして、早速ウスラの存在がバレている。
「ウスラと、あと魔術師マサン。それと貴方は誰?」
「…………」
「無視するのね。賢明だわ。それで、王宮に乗り込んで来たということは、何か事情があるのでしょう? ウスラ、話しなさい」
「……お母様は、どうして私に禁術を掛けたんですか? 私は、普通に生まれたかったし、お母様とお父様に愛されたかった。愛して欲しかった。私が、魔力を暴走させなかったら、お母様は私を愛してくれましたよね…?」
后は、ウスラのことを心底嘲るように、頬を歪めた。
「愚かな子。私があなたを愛する? 何を言っているの? 私はあなたが魔力を暴走させた時、すごく嬉しかったわ! 呪い子が完成したのよ! あなたが周囲と関われないように手を尽くして、ようやく壊れるかと思ったのに!! 壊れたあなたが王国をめちゃくちゃにする日をずっとずっと待ち望んでいたの!!」
「お母様……?」
后は憎悪に身を焦がしているようだった。呪い子。それが魔帝国の知識が齎した禁術の正体らしい。
「私は、后になんてなりたくなかった!! 子も産みたくなかった! 慣れない異国で一人ぼっちで、必死に気を遣って愛玩品のように振る舞った! クオートの景色が懐かしい! イバヤになんて来たくなかった! クオートを脅して、私を差し出させたイバヤを憎んで何が悪いの!?」
「それは、アンタの八つ当たりだろ? 子どもを自分の復讐に巻き込むなよ」
つい、突っ込んでしまった。后は、般若のような表情で、俺を睨んだ。
「魔術師マサン、ウスラの呪縛を解いた男。私に許された、たった一つの復讐の芽を摘んだ憎むべき男。イバヤなど氷漬けになってしまえば良いのよ。くだらない人間にくだらないやり方。本当に嫌な場所。……『己で首を絞めて死になさい』」
ドヤってるところ悪いんだけど、アンジェラの件があってから魅力対策はガン積みしてるんだわ。
「それで、王妃様。子どもを自分の復讐に巻き込む正当性は見つかりましたか? 特に言うことが無いなら、捕縛させて貰いますよ」
王妃はギリギリと、音が聞こえるくらい奥歯を噛み締めていた。
「かつて魔帝国は司教に神を降ろす杖を与えていたの。この土地もかつては司教座都市だったわ。魔帝国の異物たる夢幻杖レスピティアよ、我レイ・クオートが命じん。その身をもってウカタマモを降ろせ!」
王妃に、人ならざるモノの証明である獣の耳と、獣の尻尾が生える。瞳孔は黄色く輝き、伸びた歯が口元から覗いている。
「ふふ、あははははは! 邪神とはいえ、私は神の使徒よ! 魔術師ごときにはどうすることも出来ないわ……【あっ、すまん、妾、マサンと戦いたくないのじゃ……普通に負けそう】」
王妃の口が勝手に動き、その身体から神威が抜けていく。ウカタマモ様ありがとう。すごく融通が効く。今度お供え物します。
「どうして…? 嘘よ。こんなの……」
「それじゃあ、約束通り捕縛させてもらう。これも、こちらで預からせてもらうよ」
王妃が夢幻杖レスピティアと呼んでいた杖。俺は彼女からそれを引き剥がす。
これで一件落着。かと、思ったら、俺の首には鈍く光る刃物が押し付けられていた。
そして、見知らぬ獣人お姉さんが俺の背後にいる。俺の肩から背中に掛けておっぱいがあたっている。そしてお姉さんの顔の位置は、俺の頭の上にある。うおっ、デッカ……