ヤンデレに監禁されるわけwww 作:ヤンデレエアプ
「カイ様……その、尻尾触ります?? さっきからチラチラ見てますよね?」
「そういうことは、北伐が終わったらにしよう。それに、知り合ってばかりの女の子の尻尾を触ったりはしないよ」
「えっ!? わ、私がそういうことばっかり考えてるみたいじゃないですか!!」
アンジェラは真っ赤に頬を染める。なんだこの破壊力は…!
もう、アンジェラと付き合っちゃおうかな。思えば俺の人生、碌な女が居なかった。
相思相愛だと思っていたのに、俺を振って旅に出た幼馴染のクソ女。1000歳越えの無機物ロリババア。ネグレクト食らってて、俺にめちゃくちゃ依存しようとしてくる氷の姫。
スタグは無機物だし、便利な杖かつ友人だから人間カウントはしない。クソ幼馴染は旅の空、依存姫は塔の中だ。コイツらは関係ない。
俺、北伐が終わったらアンジェラとイチャつくんだ…! アンジェラはめちゃくちゃマトモそうだ。現在のところ悪いイメージがない。
「ここが傭兵ギルドです」
「はぇー、大きい」
ノルディアンナの傭兵ギルドは、思ったよりも立派だった。国家に縛られない武装組織が、クソデカ建物を持ってるの、前近代って感じがする。
別に語る必要は無いのだが、傭兵ギルドは異世界ファンタジーにおける冒険者ギルド的なものだ。しかし、この世界は冒険者より傭兵がメインの職業となっている。
なぜなら、人類の住んでいる領域には、魔物はほとんど居ないし、冒険するような秘境はないからだ。
傭兵の相手はもっぱら人間である。極稀に魔物が出現することがあり、それに対処することも傭兵の仕事ではある。
基本的に、この世界の人間はクレバーであって、街道や通商路が広がることを歓迎している。武器や魔術がブイブイ言わせていた開拓時代と言うよりも、契約書と株式が物を言う時代なのだ。
国家の威光が届かない場所では、農民が自主的に関所を作って金を徴収するとか、この辺りでは盗賊が出るらしいよ〜、でも俺達を雇うと盗賊は出ないよ〜、マッチポンプやんけクソが!! みたいなことをやっている民度である。
国家や都市はそういうことをされたくないので、圧力を掛けるが田舎者は言うことを聞かない。
そういう民度なので、武力が商品になるのだ。
もっとも、人類領域の外には、自然環境がヤバかったり、生息している魔物がヤバかったりするため、禁足地となっている場所が存在する。
こういった場所には、冒険者というか勇者というか、一攫千金を夢見た愚か者が集まるのだ。そういった冒険者の寿命は一年も保たない。
おまけに傭兵ギルドのような団体もなく、互助組織が存在しているだけなので、社会的にも認められていない。
閑話休題。
傭兵ギルドには、酒場が併設されている。カウンターには、受付嬢や、椅子に座った義足の受付のおっさんがいて、ここで依頼を受けるという仕組みだ。
ちなみに、受付嬢よりも義肢義足のおっさんの方が人気だ。何故なら、手や足を戦闘や事故で失ったおっさんの方が現場を知っているからだ。受付が出来ると言うことは字の読み書きも出来て、計算も出来る人材と言うことだ。
受付嬢要らなくない? という意見も有るが、傭兵は荒くれ稼業であり、受付の椅子に座らせ仕事をさせるにはオツムの足りない奴が多すぎるのだ。受付嬢も必要である。
「おっ、あんた魔術師かい? しかも金等級だ。腕利きだね。手続きなら任せな」
義肢でこちらに手招きをするのは、中年のハゲた痩せぎすのおっさんだ。
「俺は受付のデュバルだ。兄さんとシスターさんは、北の大演習に参加するのかい?」
「ああ。俺はカイ・マサン。こっちは、アンジェラだ」
「よろしくな。今、空きがある梯団が、マージェのところとギルベルトのところだ。マージェは、金等級の女魔術師。ギルベルトは金等級の剣士だ。どっちが良い?」
「ギルベルトの梯団で頼む」
「ま、そうなるよな。ギルベルトは気の良い奴だぜ。金等級の剣士に金等級の魔術師がいれば安心だな」
すんなり参加する梯団が決まったのは幸運だった。梯団は、軍で言う小隊みたいなものだ。北の大演習と馬鹿にされているが、これから戦争に参加するのである。
個人ではなく、集団として一個の梯団という単位で動くことになるわけだ。
「ギルベルトのねぐらはどこだ?」
「金の鹿亭だよ。ギルベルトとその部下には俺から推薦したって伝えといてくれよ」
ギルベルトは剣士である。後衛職の魔術師は、前衛職の剣士と組むことがセオリーだ。なので、俺はギルベルトと組むことを選んだ。
「ギルベルトさんですか! 私も知っている方です。傭兵隊を指揮している方なので、そこに混ざるという感じになるでしょうね」
「剣士がメインの傭兵隊なのか?」
「おそらく、そうだと思います。ギルベルトさんの傭兵隊は、護衛や盗賊征伐、兵士としても優秀なんですよ」
「それは良いな」
金の鹿亭に到着した。スタグを完全に封印する。初対面の人間と何か有ったら面倒だからだ。
それから、ギルベルトと挨拶を交わす。カラッとした性格でありながら理知的だ。そして強い。中距離以下でやり合ったら酷い目に合う。
そもそも魔術師連中は陰険な引きこもりであって、遠距離から固定砲台をするくらいしか能がないのだ。一般的に剣士と魔術師だったら剣士の方が強い。
おべんちゃらが上手いのが俺の良いところだ。敵は作らないに限る。
「アンジェラの嬢ちゃん、良い男じゃないか」
「はい! カイ様はとても優しいんです! 私の耳を触りたいって言ってくれたんです!」
「ほう! カイ、お前なかなかガッツがあるな! 俺も今の妻が居なかったらアンジェラちゃんと家庭を持ちたかったぐらいだ!」
ギルベルトはガハハと豪快に笑った。耳触りたい=プロポーズが当たり前らしくてビビる。俺は、そんなつもりじゃ……いや、幸せならオッケーか…!
「俺はアンジェラとは、今日会ったばかりで何もないですよ」
「カイ様は私に一目惚れしてプロポーズしてくださったんです! 私もカイ様に一目惚れしたので、北伐が終わったら結婚するんです」
歴史修正が行われている。でも、アンジェラは良い娘だし、既成事実が作られているのも悪くない。カス幼馴染、コミュ障姫、ロリババア杖とはおさらばしよう。
俺はアンジェラと添い遂げるのだ。
それからと言うもの、アンジェラと共に北伐に備えて準備をした。夢のような日々だ。早く北伐終わらないかな〜〜。
こちとらチート持ちの転生者だ。俺の起源は万象であって、魔力でゴリ押してあらゆる魔術が使える。器用貧乏だが、普通に強いはずなのだ。
なのに、なんで俺は燻っているんだ? 確か、クソ強い幼馴染に打ちのめされて…? いや、俺に幼馴染なんて居ないな。前世から陰キャでモテなかったし。
燻っていた俺は、たまたま北の大演習に参加するためノルディアンナに流れてきたんだ。それから、エメンス教会の子どもに財布をスられて、アンジェラと出会った。
それで、アンジェラに一目惚れした俺は、彼女の耳を触りたいとプロポーズした。教会の苦難にも同情して、俺は借金を建て替えることにしたんだった。
北の大演習は肩透かしだろう。適当に金だけ貰って、アンジェラと楽しく過ごそう。それが終わったらノルディアンナでアンジェラと式を挙げる。
根無し草の風来坊はもう終わりだ。俺は、アンジェラと家庭を持つんだ。子どもは女の子と男の子、1人ずつ欲しいな。
(
(チッ、うっせぇな! 誰だよ! 俺はアンジェラと幸せな未来を掴むんだよ!)
(強力な呪い…? いや、魅了か。神の権能クラスのものだ。古い狐神のものじゃないかな? 淫乱と放蕩を司るタイプのやつ)
脳内に入り込む声がうるさい。誰だよ!
(これは相当深刻に擬似記憶を噛まされてるね……
(俺は、そんな魔術学院を知らない。俺は在野の魔術師だった。傭兵として各地を放浪しながら、魔術を磨いていたんだ)
(君は、万象の魔術師だ。どうして、そんな優秀な君が魔術学院に入らなかったのかな?)
(…………それは、確かにそうだな)
コイツはなかなか俺のことを分かっているらしい。
(そもそもさ、僕を封印するにしてはツメが甘かったよ。忌み書庫の封印よりも下手なものだった)
(……それにしては、解くのに時間が掛かったんじゃないか?
(はぁ、ようやく目が覚めたんだね)
初めてアンジェラのベールの下を見た時、そこには確かに狐の耳があった。そもそも俺は、一介の美少女のために大金を差し出すような人間だったか? いつから騙されていた?
アンジェラは神の寵愛を受けており、非常に強力な権能を持っているのだろう。
少しずらしたとしても、名は体を表す。彼女に名を付けた者は
ともかく、アンジェラの真意を確かめなければならない。