ヤンデレに監禁されるわけwww   作:むにゃ枕

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06.この状況から入れる保険ってあります??

「スタグ。霊体化してくれないか。頼れるのはお前だけだ」

「はいは〜い。もしかして、僕に惚れてくれたかな? 恋人(マスター)が僕に頼ってくれて嬉しいな」

 

 嬉しそうにニヤニヤとしているスタグ。

 コイツ、性格以外はパーフェクトなんだよな。そう、俺は前世がオタクだったからか知らないが、黒髪ゴスロリ風の衣装を纏っているスタグちゃんの見た目が好きなのである。

 忌み書庫で、死にかけながら助けたくらいには好きだ。あの時はヤケクソになっていたこともあるが。

 

 ケモミミも好きだが、ゴスロリロリババアの方が好きだ。今思い出したんだが、コイツ、俺に魅了と読心の魔術を掛けていたような? もしかして、アンジェラにやられたのに、気が付いていたんじゃないか??

 

 問いただすと、スタグは悪びれる様子もなく答えた。

 

「薄々は気が付いていたよ。君の魔術抵抗力が低下していたからね。いつもは通らない魅了と読心が通ったしね」

「お前、あわよくばとか考えてなかったか?」

「そりゃあ勿論。誰かさんの言うように僕は性格が悪いからね」

「無機物な上に悪霊の類だよ……」

「捻くれた愛情表現をありがとう」

 

 スタグに感謝しているのは本当だ。今の俺が有るのは過去があったからである。それを捻じ曲げるのは、何か違う気がするのだ。

 

 さて、元凶であるアンジェラに会いに行こう。霊体化したスタグが、俺にしな垂れ掛かってきていて少し邪魔だ。仕方ない。これは必要費用である。

 

「やあやあ、女狐風情がよくも恋人(マスター)と僕の仲を引き裂いてくれたね」

 

 萌え袖をぶんぶんと振り回し、スタグがアンジェラを威嚇している。アンジェラは、それに対して怪訝な表情をしている。霊体化したスタグを見るのは初めてだから当然だろう。

 

「アンジェラ、俺に魅了の呪いを掛けたことに何か弁明は有るか?」

「カイ様? 何のことですか?」

 

 こてんと、首を横に傾けるアンジェラ。平静を保とうとしているが、少し目が泳いでいる。

 

「今、罪悪感を覚えたよな? 人の意識を奪おうとすることは犯罪なんだぜ」

「…………その、悪気はなかったんです。お母さんから、耳は特別だから特別な人にしか触らせちゃいけない。見せてはいけない、って言われてたんです。でも、耳を見せるとなんだか物事が上手く行くっぽいんです。だから、私は……その……ごめんなさい」

 

 今は、ベールを被っていないためしょんぼりと垂れた耳が見える。

 

「まあ、俺の方も迂闊だったよ。アンジェラが俺を殺そうとか、身ぐるみ剥ごうとか思っていなかったのは分かった。だから、これまでのことは水に流そう」

 

 アンジェラが、少しは己の持つチカラについて意識していたようだ。しかし、狡猾な術者というよりも、うっかり力に溺れたという感じがする。そもそも催眠能力があるとか分かっていたのだろうか?

 

「分かりました。こ、これも、うう、名残惜しいですけど」

 

 サラッと婚姻届けが出てきた。書かれている氏名はアンジェラと俺のようだ。書いたかもしれない……

 こいつ、純真無垢なように装っておいて抜け目がない。

 

「ん? これ複製だよな?」

 

 アンジェラの頬を、汗が伝っていった。

 

「はい。原本は神様のところに有るんです。淫蕩神ウカタマモ様が持っています。なので! 有りません!」

 

 半ばヤケになっているようだ。それから、アンジェラは今までの詳細な事情を話してくれた。

 

 金等級魔術師である俺の財布を、教会の子どもであるレニアが盗んだことでアンジェラ凄く焦った。もしかしたら、レニアが殺されてしまうかもしれないからだ。

 彼女は、必死に神様に祈った。するとどうだろう、今までぼんやりとしか聞こえなかったウカタマモ様の声が、克明に聞こえるようになったという。

 

 そして、ウカタマモ様は、ベールを取り耳を見せれば苦境を救うと教えてくれたようだ。そして、アンジェラはベールを取り耳を俺に見せたのだと。

 そうしたら、何と魔術師からプロポーズされ、教会の借金も全額立て替えてくれるとなった。そして、魔術師は割とイケメンで、アンジェラの好みであったらしい。

 

 その後、アンジェラの望むまま、トントン拍子に話は進んでいった。アンジェラも薄々おかしいとは思っていたそうだ。でも、都合が良かったので気が付かない振りをしていたらしい。

 

「今、ウカタマモ様は、『イケメンだし魔術師としては特級品。しかも情に篤い。かと言ってタマナシというわけでもない。これは、アンジェラの婿として相応しい』と仰っています」

「本当か? 神様をダシにしてアンジェラが都合の良いことを言ってるとかじゃないんだよな?」

 

 アンジェラは己の信じる神を疑われてムッとしたようだ。頬をぷくっと膨らませている。

 

「疑っているようでしたら、ウカタマモ様を降ろしますね。ウカタマモ様も是非やってくれと仰っていますから!」

「い、いや……」

 

 止める間もなく、アンジェラは神を降ろした。

 

「はっはっはっ! 久々の下界じゃな! 妾をこうも見事に降ろせるとは、流石は組織の最高傑作よの! 大したものだと思わんか? 魔術師と悪霊?」

 

 アンジェラの周囲には、狐火がふよふよと浮かんでいる。髪は白くなり、かわいらしかった狐耳は大きく尖り、腰からは九つの尻尾が生えている。

 強大な魔力だ。存在としての格の違いを、魔力密度から感じてしまう。

 

「アッハイ……」

 

(スタグ、勝てるか?)

(2人なら……と言いたいけど相性が悪い。僕は特殊なタイプの死霊だからね。神格には弱いんだ)

 

「むっ? 妾の威光に怯えているのか? そこの悪霊よ、妾は寛大ゆえ、貴様を祓ったりはせぬ」

「そ、それはどうも」

  

 スタグが眉を顰めている。何とかしてくれとこっちに視線を投げてくるが、それは知らない。死霊タイプのスタグにとって神格は天敵だ。なので、困っているのだろう。

 

「神降しはアンジェラに負荷がかかる。我が愛し子を苦しめるのは本意ではない。

 よく聞け魔術師! アンジェラを泣かせるでない。もし、アンジェラを悲しませるようなら妾がシバいてくれよう。以上。では、さらばだ」

 

 アンジェラの身体が、ゆらりと崩れたので慌てて支える。

 

「アンジェラ? 無事か?」

「はい! 元気です! 殿方に抱かれるのは、その、恥ずかしいのですけど……」

 

 アンジェラの身体を椅子に預けようとすると、彼女は名残惜しそうな表情を浮かべていた。

 

「……カイ様になら、ずっと抱かれていたいです」

 

 そのやり方は、ズルくないか??

 

「アンジェラ。俺は君と結婚することは出来ない。俺はまだやるべきことがある」

「カイ様のやるべきことって何ですか?」

 

 考えてなかった。え、俺の人生でやるべきことって何だ?? 適当に喋るべきではないな……

 

「それを説明する前に、今の俺を取り巻く現状を説明する必要がある。長くなるぞ」

「はい! カイ様!」

 

 あれぇ…? 聞く気満々なんですけど……

 

 俺は掻い摘んで話をした。両想いだと思っていたクソ幼馴染が俺を振ったこと、ヤケになって魔術学院の忌み書庫に突入してスタグと会ったこと。

 スタグと数多の冒険をしたこと。死者の都に突入し死にかけ、すっからかんになったので、イバヤ王国の宮廷魔術師をやってたら依存体質のネグレクト姫に絡まれたこと。そういうことを、アンジェラに話したのだ。

 

「つまり、スタグ様はカイ様のパートナーであると言うことですね。素晴らしい友情です。ですがスタグ様は、お身体が無いので精神的恋愛しか出来ないのですよね?? つまり、カイ様には恋人が居ないと言うことです!」

 

「へぇ、淫乱狐娘は理屈ということを知らないようだね。おおかた自慰のしすぎで、頭がパーになったんじゃないかな? 君は男性器の張り型が恋人なんだろう? 

そもそも、恋愛と言うのは高尚なものなんだ。単なる愛欲を満たすために行うものではない。僕と恋人(マスター)とは魔力で深く繋がっているからね。君のような部外者に指図される覚えはないね。嫉妬かな? 淫蕩狐くん」

 

 アンジェラはにこやかな笑顔を浮かべているが、目が全く笑っていない。

 

「人間の温もりも無い死んだ人が、何を言っているんですか? 悪霊とかオバケって、無意識に人間の温かさに寄ってくるって言いますからね。カイ様と身体を交わすことも子を産むことも出来ないのに、どうして恋人面が出来るんですか?」

 

 スタグも冷静だが、ピキッている。スタグちゃん、割と子どもっぽいところが有るんだよな……

 

 神降ろしの巫女と、停滞を司る死霊姫。アンジェラもスタグも一つの都市、もしくは小国家くらいなら滅ぼせるだろう。

 俺? 俺は都市なら滅ぼせるけど国家は無理かな……毒を入れたり病気を流行らせるとかすればワンチャンあるかもしれない。やらないけど。

 

 アンジェラとスタグのレスバは終わったらしい。2人は、妥協点を見つけたようだ。どうも、イバヤ王国のウスラ姫を共通の敵として団結したようだ。

   

 そう言えば、イバヤの騎士がノルディアンナに居るらしい。王国クラスになると、魔術か何かで爆速移動してきたのだろう。ひょっとしたら転移魔術かもしれない。

 転移魔術を使える術者は……そうだ。ウスラがいた。これ、ひょっとしてウスラに俺が監禁されるのでは??

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