ヤンデレに監禁されるわけwww 作:ヤンデレエアプ
一般通過転生魔術師である俺は、自分を恋人だと主張する悪霊の宿った杖と、自分を婚約者だと言い張る神降しのケモミミシスター巫女に挟まれていた。
俺とアンジェラ(あとスタグ)は、ギルベルト隊の一員として軍の集結地に向かい歩いている。
スタグちゃんは、特定の人物にだけ己の霊体化を見せるという謎の技術を習得したらしい。俺とアンジェラと、ギルベルト隊の飼い犬だけがスタグを認識している。
スタグちゃんは犬が好きなので、姿を見せているそうだ。飼い主に従順なところとか、序列に忠実なところが好きらしい。
アンジェラとスタグの間には、停戦協定が結ばれたらしく、表立ってギスギスはしていない。それどころか、二人ともお互いに大して友好的に接している。
アンジェラはスタグの話す俺との冒険譚を楽しそうに聞いているし、スタグはアンジェラの作ったウカタマモ様人形とよく話している。
ウカタマモ様人形はアンジェラお手製のぬいぐるみである。このぬいには、ウカタマモ様の分霊が宿っており、念話や会話が出来るのだ。
スタグが狂って、いきなり人形に話し掛けるようになったたわけではない。
そもそもヤンデレ死霊だから、元から狂っているのでは? 俺は訝しんだ……
「
「ウスラは、魔術師としては正規の教育を受けていない。それに、魔力異常症のせいで、属性魔術は氷の魔術しか使えない。ただ魔力が多いし潜在的なセンスが高い。あとは、俺の教えた遠見の魔術や転移魔術が使える。かなり厄介な魔術師だよ」
「ふーん。一点特化という意味では僕と似てるね」
イバヤ王国の前に訪れた死者の都で、スタグとは色々有ったのだ。コイツが操られ、敵に回った時はめちゃくちゃ厄介だった。財布が空っぽになったのはこの女のせいである。
イバヤ王国では、ボロボロになったスタグはほとんど寝ていたので、ウスラと面識が無いのだ。
「カイ様、そのウスラ姫は遠見の魔術でこっそり覗き見をしているのですか? カイ様のあんなところもこんなところも…!」
「遠見の魔術は、そこまで万能じゃない。そもそもイバヤから距離が離れすぎているし、魔力使用量もバカにならない。見れて半刻くらいだろうな」
俺を覗いても、ウスラに何のメリットもないと思う。ウスラが俺に依存しては良くない。あと、ダル絡みされるのは面倒くさいという理由でイバヤ王国を後にしたのだ。むしろ居なくなってせいせいするぐらいは思ってもらわないと困る。
軍の集結地であるソワレオールまで、ほんの僅かというところで、鬨の声が聞こえた。金属音や、鉄砲の音も聞こえる。
「ギルベルト…! 俺が使い魔を飛ばす」
「分かった。場合によっては後退する」
阿吽の呼吸でギルベルトが部隊の行軍を止めた。瞬時に撤退を考えられるのは、ギルベルトが優れた指揮官である証左だ。
使い魔の視界を通して見た戦場は酷いものだった。敵の騎兵が味方の歩兵を蹂躙している。平地に集合しようとしたことが仇となった。ソワレオール野営地の改築や、野戦築城が間に合って居なかったのだろう。
「ダメだ。味方は総崩れだ。敵に騎兵がいる。俺が隠蔽の魔術を掛ける。隊の進路を決めてくれ」
ノルド聖公国とアールブ王国の国境は、峻険な地形であり大軍の移動には不向きだ。トレオールの谷ならば比較的平坦であり、魔族軍の移動も叶う。
しかし、それをノルド聖公国が見逃すだろうか? もしくは、白骨山脈の麓に広がる禁域の森を通ったという可能性もある。
「騎兵が居るのなら後方を遮断される可能性がある。ノルディアンナはノルド河を盾にし保つだろう。敵をなんとか迂回しつつノルディアンナに戻ろうと思う。マサン、それで大丈夫だと思うか?」
普通ならばそうするべきだ。しかし何かが引っ掛かる。そうだ。スタグの態度だ。この悪霊は何かを知っているはずである。性悪杖であり、素直ではない。
「俺が敵の騎兵部隊の指揮官なら、ノルド聖公国軍と傭兵部隊の集結地点であるソワレオールではなくて、後方の補給線を狙う。つまり、俺が言いたいことは、伏兵か予備兵力が後方を既に遮断している可能性だ」
「一理あるな。だが、野戦軍が野戦築城もせず無防備に見えたから襲ったのかもしれん。後方が遮断されているなら数が必要だな。よし、味方部隊と合流するとしよう」
ギルベルトが立てた作戦はシンプルだった。俺の懸念した後方の遮断に対して、味方を増やして突破しようということを考えたのだ。
なお、騎兵に襲われている友軍を救出しようとはしていない。俺に隠蔽魔術を掛けさせたまま、ギルベルト隊は潜伏している。
ギルベルト隊は俺とアンジェラ以外は戦士である。槍やら短銃を持っている騎兵と雑多な装備の戦士であれば、明らかに騎兵の方が有利だ。
襲撃されているソワレオールは、元々軽い防備を施した野営地だったようだが、金が尽きたのか防御設備はボロボロだ。なので騎兵を防ぎようがない。
軍用馬はクソ強いし、クソ高い。軽戦車のような存在だ。
魔族サイドか張り切っている理由は謎である。人類側も魔族側も金がないけど、負けたと言われたくないためにやっているファニーウォーだったはずなのだ。
(スタグ、どうなっている? お前は何を知っているんだ?)
(マサンくんが、僕を恋人だと認めるのなら教えてあげよう)
(俺はお前の顔と見てくれは好きだが、恋人にはなれない。せいぜい友人か相棒ってところだ)
(僕としては
(やなこった)
スタグは大魔術師マーリンの娘であり、魔力についてはエキスパートかつ古い知識も持っている。俺には、何が起きているかさっぱり分からん。
味方がボコスカやられているうちに、俺たちギルベルト隊はスタコラと逃げ出した。目的地はルイフの廃城である。
毎年、ここらへんで北の大演習をやっているので、そこそこ生きている建物は有る。ルイフはかなり古い廃城であり、北伐で使用されていない。いわば死んだ場所だ。
元々北の地は、白骨山脈から溢れた魔物が跳梁跋扈する魔境であった。その時代に、人類側の開拓拠点かつ最後の逃げ場として作られたのがルイフ城である。
この城は、小高い山の上にある。開拓時代に仕掛けられた罠が、たまに作動し盗掘者を殺すという厄介な場所だ。ちなみに価値のあるものはない。
ギルベルトは、この場所に逃げ込むと決断したのだ。確かに騎兵を迎え撃つには城のほうがマシだ。
目端が利く傭兵なら、ここに逃げ込むだろうという判断である。
「カイ様、あのお城に敵がいるようです!! 神の敵です! ウカタマモ様が告げています」
ウカタマモ様人形の黒い釦で出来た瞳が怪しく輝いた。
(スタグ。ヤバい敵らしい。俺の魔力を貸す。思いっ切り使え)
(了っ解…! お゛っ゙♡
(違うが)
(…………釣った魚には餌をあげるべきだよ)
「ギルベルトさん、ルイフ城には招かれざる敵がいるようです。これから俺の使い魔を出して、大規模魔術を掛けます」
「了解した。魔術師は便利だな。遠距離から攻撃されては俺のような戦士では為す術がない」
霊体化したスタグは、魔力に酔い恍惚とした表情を浮かべていた。少女でありながら妖艶で、大人の魅力を浮かべた彼女の姿に、ギルベルト隊の戦士が鼻の下を伸ばしている。
ちょっとムっとしたが別に、嫉妬してはいない。
スタグが神に捧げる祝詞のように、大魔術の詠唱を謡い上げる。
「万物は流転し全てを塵に変える。時は残酷にして優しい。けれど英雄よ、永劫に謳われし英雄よ。停滞の中で藻掻く君を我は縛らん。停滞せよ。
俺に向けてウインクを飛ばすスタグ。なんなんだよスタグちゃんビームって!! ねぇ、何なの!? お前絶対適当に言っただろ…!
アンジェラもギルベルトもその部下も、違和感を覚えつつ特に発言はしない。専門外だから黙っていようみたいな空気が漂っている。
「お前、無詠唱で撃てたよな? なんなんだよその詠唱は?」
「気分。詠唱すると気分よく撃てるからね」
使い魔を飛ばすと、城内に無事な人間は見当たらなかった。スタグの停滞はチート属性なのだ。人間は血流や呼吸が
「ゴホッ、うぅ……お、おのれぇ……グブガブル様の加護を受けし魔王たるこのわたくしを…………」
城内の死体を片付けると、息のある女がいた。呼吸と循環が止まっても生きてるのヤバいな……
彼女はうつ伏せに倒れており、股間の辺りに水たまりが広がっている。便臭がするため便も漏らしたのだろう。
「あの……その剣はなんですの?? わたくしはアールブ王国の王女にして魔王ですのよ!? こ、殺すんですの?? 無抵抗で歩けない女を…?? 今、生命のストックが切れておりますの。消滅してしまいますわ…! 全部喋るので殺さないでおいてくれます??」
すごい良く喋るな。普通の人間ではないらしいが、無力化されているのは間違いない。洗いざらい吐いてくれるらしいので、魔族側の事情を伺うとしよう。