ヤンデレに監禁されるわけwww   作:むにゃ枕

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08.つよつよ不器用幼馴染

 死にかけている魔族の女から、事情聴取を行うこととなった。普通に排泄物の臭いがするので、魔術で綺麗にする。

 

「感謝します。わたくし、何でも喋りますわ。ですから生命だけは助けてくださいまし。出来れば、その貞操とかにも配慮していただけると助かります。……痛いのも嫌ですわ」

 

 物凄く注文が多い。生殺与奪を握られているのに図太すぎる。

 

「わたくしは不死の魔王にしてアールブ王国王女、ミシフ・アールブですわ! わたくしは、魔族と劣等、失礼……人類種との間で毎年、戦争をしていることを馬鹿らしく思ったんですの!

天才であるわたくしは、素晴らしい作戦を思い付きましたわ。名付けて、濁流作戦です! まず、白骨山脈の赤龍の卵を盗みます。そして、禁域の森の魔物を傷付けまくって、魔物の大暴走を起こします。それをノルド聖公国の軍にぶつけるのですわ! 人類と魔物が殺し合って、残った奴を我々が潰します! 魔物の誘導とかは、わたくしと配下の魔術師がやっていました。そして、ソワレオール駐屯地に騎兵をぶつけて攻城兵器とか、デカブツを潰させましたわ!

 ここでわたくしたちは高見の見物を洒落込むつもりでしたのに、気が付いたら大規模魔術でみんな殺されていましたの……」

 

 情報が……情報が多いっ!!

 

 つまり、禁域の森の魔物を刺激してスタンピードを起こして、ノルド聖公国の軍を滅ぼそうってことだな。そんなことしちゃ……ダメだろ!

 真面目な話、禁域の森は伊達に禁域と名付けられているわけではない。立ち入ってはいけないから禁域なのだ。人類も魔族もそこら辺は弁えているはずなのだが……

 

「ミシフ様は私と同じ神に仕える者ですよね? 禁域の森の魔物を刺激し氾濫を起こすことは人類にも魔族にも禁忌です。過去の大罪を忘れたのですか!! 神の教えを何だと思っているのです?」

「勝てば官軍ですわ!! 無駄な戦争を終わらせて何が悪いんですの??」

「先人の教えを無視すれば災いが降りかかります。災いを招き寄せるような真似をどうして為さったんですか??」

「老害の教えを墨守しただけでは、何も始まりません。わたくしは、過去の老害とは違いますわ!!」

「その結果、あなたはここで無様に倒れていますよね? カイ様、引導を渡しましょう!! コイツは神の敵です!」

 

 アンジェラが、ミシフをめちゃくちゃ殺したがっている。神の教えをガン無視してるから仕方ないね。

 聖教の過激派からすれば、アンジェラもミシフも邪教徒なのだが、そこら辺は、まぁ……

 俺は宗教の話には関わらないことにしているのだ。

 

「ふふ……わたくしの騎兵が、今にこの城を包囲しますわ…! まんまとわたくしの時間稼ぎに引っ掛かりましたわね。いかに魔術が強大であろうと、戦士が囲んで棒で叩けば魔術師はザコです! 数こそ正義ですわ!」

 

 尖塔から見張りをしているギルベルト隊の兵から、土煙が上がっている! と報告が入る。

 

 猛烈な勢いで騎兵が城に迫っているようだ。迎撃をするべく、歩き出そうとした瞬間、猛烈な悪寒と恐怖が全身を襲った。

 

「契約者(マスター)くん。英雄になる時だ。白骨山脈の主である赤龍が、わざわざ君に殺されに来たようだね。大丈夫。僕を使えば龍だろうと殺せるさ」

 

 クソ杖が…! お前、これ全部知ってただろ…!! 答えが分かった。地脈だ。スタグは地脈を探り、情報を得ていたのだろう。ノルディアンナに来る前から禁域の森の動きに気が付いていた。

 性格が悪すぎてぶち壊したくなるが、ここは我慢だ。このクソ杖は味方である。

 

 俺はドラゴンという存在が怖い。竜が故郷の村を焼いたからだ。俺は皆を守るために必死になり竜を倒した。けれど、本当に守りたかった幼馴染は、俺の盾になり、業火に絡まれ火傷を負っていた。

 あの女は、本当にバカで余計なことをする。あの時、俺を庇う必要なんて無かった。俺の傷なら魔術ですぐに治る。わざわざ庇う意味は無かったんだ。

 

 竜を倒してから傷を負ったアイツを俺は必死に看病した。そして、傷がもうすぐ治るというところで、アイツは村から居なくなった。

 俺は、アイツを追って街に出た。アイツは男と手を繋ぎ歩いていた。追い縋って言葉を掛けたが、奴は、釣り合わないとか、他に男が出来たとか、クソみたいなことを言った。

 あれは最悪の里帰りであった。それからヤケクソになった俺はクジマー魔術学院の忌み書庫に突入したのである。

 

「スタグ。アレを出す。受肉しろ」

「契約者(マスター)くん、本気じゃん。いやー、ゾクゾクするね」

 

 死者の都で鹵獲した戦乙女の形骸と銘打たれた等身大の人形。それが、スタグの受肉先だ。

 空間魔術で保管庫から取り出したソレは、古い神秘と禍々しさを孕んでいた。

 

「僕さ、これあんまり好きじゃないんだよね。魂を封じ込めて強制的に従わせ、限界以上に稼働させるとか呪具だよ。僕に対する虐待だ!」

 

 ははは。無機物に虐待とか。器物だろお前は。

 

「あ゛ーー!! わたくしの部下たちがァァァ!!」

 

 騎兵隊は、灼熱のようなドラゴンブレスをモロに食らってしまい。消滅したり、炭化した人形のようになってしまっている。赤龍は、形を保った馬や人間だったモノをぼりぼりと貪っていた。

 

 なんだこれチャンスか?? 赤龍は明らかに舐めプしている。

 

 アンジェラは9本の尻尾を生やし、煌々と神気を纏っている。スタグも準備万端と言った様相だ。

 

「アンジェラ、スタグ。初撃で殺すぞ!」

「はい! ウカタマモ様お力をお貸しください!」

「ふふ。僕たちならやれるよ」

 

 アンジェラの神格を伴った幻惑魔術が、赤龍の視覚を奪った。そして、受肉し力を増したスタグの停滞魔術が、赤龍の心臓を止める。確かに魔術でそう確認した。

 

「やったか??」

 

 おい! ギルベルトてめぇ、なんてことを!! 『やったか?』なんて言うな! このバカ!

 俺はダメ押しとばかりに、土属性魔術で龍の翼に穴を開ける。生きてても飛べなければやりようはあるからだ。これで、ぶっ殺せていれば良いんだが……

 

――咆哮が全てを薙ぎ払った。失ったはずの視覚を龍は取り戻した。止まった心臓の鼓動も再び脈打っている。翼の穴も時間を巻き戻したように消えていた。

 

「ちょっとこれは反則じゃないかな?? 契約者(マスター)、これどうする?」

 

 俺たちの全力が通じなかったと言うことは、俺たちは赤龍を殺せないと言うことである。

 

「決まってる。逃げるんだよ」

 

 赤龍が魔力を高めているこの隙に逃げるしかない。勝てない戦いはしない。どうしようもないことは、世の中にあるのである。

 

「ギルベルト。俺たちは勝てない! 逃げるぞ!」

「あい分かった!」

 

 赤龍が魔術陣を展開する。込められているのは転移魔術である。はえ〜賢い…! 取り巻きを呼び出して数の暴力でぶっ殺す気だ。逃げられねぇ!

 クソデカ蜥蜴とは思えない賢さである。コイツ呼び出した奴誰だよ!! 

 

「ひっ、ひぇ……も、もぅおしまいで…す……わ」

 

 自称魔王様は、ガクガクと震えながら体育座りで丸まっている。お尻を中心に湖が出来ている。せっかく綺麗にしたのに……

 

「ミシフ、お前はどうやってあの化け物を制御しようとしたんだ!? それに卵を盗むなんてどうやったんだ!?」

「…………わたくしたち、もう死ぬんです……ママぁぁ」

「しっかりしろ! まだ俺たちは生きてる!」

 

 ミシフの頬を叩いたり、身体を揺すぶっていると彼女は正気を取り戻したようだ。

 

「ひぃッ!? 怒鳴らないでください……強い冒険者さんに全部丸投げしたんです。わたくしだって本当に出来るとは思っていなかったんです!! もうやだぁ……おうち帰るぅ……」

 

 誰だよその冒険者!? 

 

 赤龍が、口腔内に魔力を集中させている。おそらくドラゴンブレスが来る。

 

「スタグ! 防壁貼るぞ!」

「言われなくても!!」

 

 赤龍の放ったブレスは、ビームだった。火炎放射器のようなものではなく、一点集中させた極光である。

 魔術師の防壁は一点集中に弱い。なので、赤龍の取った手段は非常に効果的なものだ。蜥蜴のくせに並みの人間よりも頭が良い。

 

「ぐっ…!」

「こりゃぁ、ダメかも……ごめんマサンくん。ノルディアンナに来るべきじゃなかった。僕が赤龍のことを舐めていたよ」

 

 なんとか耐えられたが、スタグが泣き言を言い出した。本格的にヤバい。

 

「ウカタマモ様、打開策は有ります?」

「妾……武闘派じゃなくてのう……すまん」

 

 万策尽きたな。赤龍は転移魔術の妨害まではしていない。今なら俺とスタグくらいなら転移で逃げられる。だが、アンジェラやギルベルトたちを犠牲にしたくはない。

 しかし、生き残るにはそうするしか無いだろう。

 

(……スタグ、転移で逃げる。悔しいが……ギルベルトとアンジェラは見殺しにする)

(分かった。ま、そうするしか無いよね)

 

 尻尾を巻いて逃げ出そうとした時、パキリと空間が割れる小さな音がした。長距離転移だ。

 

「燃やして喰らえ! バルムンク!!」

 

 呆気なく赤龍の頭が長い首から切り離された。それから、赤龍の頭は、ぱっかりと左右に割られた。マグロならぬ赤龍の兜割りだ。赤龍の呼び寄せた雑魚も剣の一振りで灰燼に帰した。

 遠目からも感じられる魔力の煌めきに、悍ましさすら感じさせる剣。俺は、その魔力をよく知っていた。

 

 そこにいたのは俺の幼馴染であり、俺を振って消えた女だ。

 

「カイ! 探したんだ。村に戻っても魔術学院に行っても、居なかったから心配したよ……わたし強くなったよ? これで君の隣に居て良いかな?」

 

 とんでもない身体能力で城に飛び移り、そのまま俺の隣ににじり寄った女の声には、少しの不安と大きな期待が漂っていた。

 

 こいつはフレア。俺の大嫌いな幼馴染である。

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